2012年6月26日火曜日

織機選びは、車選びに似ている

「始めて使ったタイプの織機が準備もしやすくて安心」という結論になる方が多いと思います。あと、予算とスペース?

糸の話を書いていたら、織機について書きたくなりました。長い文章になりました。織機も好きなのでしょう。

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「近所の買い物と駅への送り迎えが主だから、小型車でいい」と言っても、「少し排気量に余裕があったほうが運転しやすいし快適だ」と、男性方は主張して、予定以上に大きくて、維持費のかかる車を買ったりします。

ウールや綿などで、マフラーやひざ掛け、ランチョンマットなどを織るのなら、予算とスペースと相談しながら、ほどほどの大きさを選ぶとよいかと思います。いわば小型車タイプ。機がけのロスも少なく、気軽に楽しめます。ただし、本体が軽すぎると緯糸の打込み本数が増えた時に安定しない場合もあるようです。国産でも海外品でも構いませんが、筬や綜絖は微妙に仕様が違ったりしますので、簡単に買い足せるメーカーがお勧めです。


さて、もう少し本格的にとなると、何を織りたいかを考えることになります。「それなりの織機で、それなりの素材を選んで織たくなったという気持」の状態でしょうか。

選び方のポイントは、極端に例えると、スポーツカーを選んで高速道路を走るか、4WDで山野を走るかです。もちろんどちらも買い物に・使・え・ま・す。高速道路をツッ走りたかったのに4WDを買っては、楽しみは半減。スポーカーで、山道を?

「この産地に、この織機あり」です。絹なら日本。ウールなら英国、ニュージーランド。リネンなら欧州。ちょっと大雑把かもしれませんが、これでどの国の織機を考えればいいか方向は決まってきますね。ウールは伸縮性のある素材なので、どのタイプを選んでもまず大丈夫かなと思います。

織機を買うつもりのない方でも、お教室選びの時に、たぶん役立ちます。本格高級車を揃えていると雰囲気も素敵でしょうが教習料金もお高め、いろいろ乗り比べができるお教室も楽しいですね。


さて、大別すると、3タイプ。 日本の機、ジャックルーム(ジャッキ式織機)、北欧機。

日本の機は、つづれしか織れない特殊機などもあります。着尺や帯は織らないからと考えがちですが、金綜絖の一般的なタイプを選べば汎用性はあると思います。

私にとって一番の魅力は、男巻(ちきり)が取り外せること。仮筬をして、整経した縦糸を柱に結びつけ、経糸を確認しながら一人で巻くことができる。経絣をしたい人は、このタイプの織機以外は考えられないと思います。絣のずらし機は、この巻き取り段階で行うと問題なくきれいにできます。織機に乗せてずらす方法もありますが、やはり床に広げて巻き取るほうが安定し、納得の仕上りです。

織組織で大柄を追及するよりも、いわば染めと糸の種類で楽しむ織機。もちろん、綜絖4枚でもかなりの組織はできますし、ろくろ吊を2本にして8枚綜絖とする方法もあるようです。日本の先生方が、出版された詳しい書籍があるのも心強いです。

そして、当たり前ですが、絹が織れる(つまり、経糸で使える)。絹の織糸が入手しやすい日本で、絹の織りやすい織機は、それだけで価値があると思います。着物を織らなくても、シルクのクッションカバーとか、バック地、ショールなど老若男女、誰もが納得する手作りの高級品ができます。


ジャックルーム(ジャッキ式織機)
残念ながら織ったことも、触ったこともありません。音が大きいとか、ペダルが重いとか聞きますが、綜絖を吊下げないので織機の高さが低く、室内に置いた時に圧迫感が少ないのは魅力的です。糸の産地に関係なく趣味の分野から生まれた新しい織機のようです。

カナダやアメリカでよく使われていて、タイアップが簡単らしい?ので、多綜絖の場合の準備は簡単なのかなぁと想像しています。The Best of Weaver's シリ―ズで多綜絖の柄が多いのは、アメリカには多綜絖ファンも多く、ジャックルームと呼ばれるこの織機の所有者も多いという事なのでしょうか?16枚綜絖とか、試してみたいですね。
参考にしたい外国語の本や雑誌は豊富なので、海外の織機を使ってみたいと思う方は多いかもしれませんが、和訳出版されているケースはほとんどなく、あってもそれなりのお値段のようです。


最後に、北欧の織機。
スカンジナビアの日常の作品を紹介した海外の本は良く見かけます。自分で織って使いたいとなるとやはりこの織機です。ほとんどが木で作られているので温かみがあり、インテリアに調和しやすいという話です。

麻や綿糸を経糸にして、日常で使う布や品を織るのを得意とする織機です。クロスビームが胸木とは別に下にあるため、シャギーなど厚手の大きなラグを織るのにも適しています。特徴である糸綜絖は、うどんのような太さの糸も通せます。手で通せて光らないので老眼(?)にもやさしい。

綿糸は練習用の安い糸という固定観念が日本ではまだ残っているためか、綿の上質の織糸はあまり市販されていません。織機の特徴や長所よりも、北欧のイメージで選ばれているように感じます。

西洋の織機では共通する問題のようですが、一人で経糸をきっちりと巻くのはかなり難しい。できる方法もありますが、織幅が60cmを超えると、手伝ってくれる家族や織友が必要と思います。

基本仕様では、カウンターバランス(ろくろと同じ方式で滑車)、ドレル(多滑車)、カウンターマーチ(天秤を使用し、綜絖とペダルのバランスをとることで綜絖バーを上下)と織るものによって、仕掛けを変えることができます。標準型は多綜絖も24枚まで可能(!)ということですが、市販されているのは8~10枚。タイアップの手間を考えてもこの程度の枚数が常識的かと思います。さらに、ダブルビームにしたり、1.5倍の大きさとなる専用の仕掛けを増設するとダマスク織もできます。趣味でそこまでやれる方は少ないと思いますが。。。。


いろいろ説明を読んだり、書いたりしているとあれもしたい、これも欲しいとなります。が、結局のところ、趣味とか道楽で一番大切なことは心地よさだと思います。

織り心地とか織機の居心地。

「今度の車は運転しやすいとか、乗り心地がいいとか。。。。」よくわからないけど、男の方が嬉しそうに言ってますよね。たぶんそれと同じ気持ちなのだと思います。














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