2016年1月29日金曜日

飛び数って何?

タイトルを「飛び数をかぞえる方向」から変更しました。
「5の2飛び」「2飛5枚朱子」。よく朱子組織の図の下に書いてあります。
これは朱子の詳細名称なのでしょうか?誰もが同じ組織を思い浮かべることができる一般名称・・・・?というのが、最初の疑問でした。

同じ3飛びでも、タテ方向にかぞえる場合とヨコ方向のかぞえる場合。起点を左にするか、右にするかで、組織は線対称(鏡面対象)になるし、朱子線の角度も変わる朱子もある。誰もが同じ組織を思い浮かべるとは、思えません。

2飛び、3飛び・・・・とかいてあれば、同じ枚数の朱子に何種類かがあることがわかるけれど、誰もが必ず同じ組織を思い浮かべることができる「名称」ではないということになります。なんだかわかりにくい話。どうやって、区別するのか?認識するのか?

「かぞえる方向」と「起点の位置」という前提条件が書いあれば、同じ朱子組織を確実に伝え合うことができます。

「5の2飛び」「5の3飛び」など省略した呼び名があるのも、実は、工場や機場などで組織を確認するために日常的に使われいたからではないか?と思ったりします。それなら、「数える方向」「起点の位置」も毎回確認する必要もなく、組織は間違いなく相手に伝わります。「飛び」は、身内で使う朱子の組織詳細を伝える言葉?手織り好きの一般人が使うことは・・・想定外? 


さて、実際に織ってみて、手織りをする場合は、ヨコ方向に数えるのが、実践的と感じました。ですから、私の持っている海外の手織りの書籍では、飛び数はヨコ方向にかぞえているのだと思います。

では、タテ方向に数えるのは?
「組織点から緯糸を予定本数打込んだら、隣の経糸が浮く/沈んで次の組織点ができる。」という組織の確認のしかた。つまり、踏み間違いをしない場合は、このかぞえ方が効率的ですね。踏み間違いをしない人、力織機、動力機など。

タテにかぞえても、ヨコに数えても、飛び数を調整すれば、同じ朱子組織を書くことができるのに、
ヨコ飛びで組織点を求めて、その答えを使って、タテ飛びの組織を書くのは・・・・手織りから動力機へと進化した過程をたどっているように思えます。単に 組織点を求めたい/組織図を書きたい だけなら、毎回、過程をたどる必要はなさそうですね。


「朱子織りに使用する綜絖枚数を2つに分けたとき、公約数をもたないもので、分けた数が飛び数になります。」手元にある日本語の数冊の本には、このように書いてあります。欧米の朱子織りの説明文でもよく似た文章があるようですから、和訳したように思えます。

「どうして2つに分けるのか・・・・」「公約数をもたない整数?なぜ、公約数は、除くことになるのか・・・?」 日本の最近の手織りの本には、「これは、飛び数を求めるときの約束事です。」と書いてある場合もありますから、飛び数の説明ではなく、飛び数の求め方について書いてあるということになりますね。


最後に、肝心な「飛び数」って何?

Manual of Swedish Handweaving(英語版) を改めて、よく読むと、「factor」ということばが使われています。『飛び数』と訳したくなるのですが、ためしにそのまま『因数』で訳してみます。こんな感じ。

「7枚朱子は、左から右へ『因数2』 で描いてあります。もし、右から左へと数えたら、『因数5』が見つかります。もし、下から上なら、『因数4』、上から下なら『因数3』です。7枚朱子は、朱子線のため、朱子として・・・・」とあります。

朱子が朱子たるための構成要素となる数。つまり、因数。これが飛び数の正体なのでは?
「上下左右、四方に位置する経糸と緯糸の交差点同士が並ばないようになるための最小の数(素数?)」

ですから、飛び数は、どの方向へかぞえても、上下や対称、回転などの違いは生じますが、朱子は描けることになります・・・・・ね。

※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。


2016年1月26日火曜日

目飛び、緯飛び、経飛び、飛び数

ミシンで布を縫い合わせている時に、上糸が下糸に絡まらず、縫い目が大きくなってしまうのを『目飛び』と言います。「縫い目が飛ぶ」という意味。

さて、手織り。
朱子織りの組織点の求め方で、ヨコ方向に数えるのを『緯飛び』、タテ方向に数えるのを『経飛び』と書いてある本があります。

でも、「経飛び/たてとび」には、もう一つの意味があるようで・・・・。

「経糸が飛ぶ」の略で、経糸が緯糸と交差しないで、緯糸の下に沈む状態のこと。(写真;右上) この解釈で本当にあっている?のでしょうか??
『緯飛び』とか『緯浮き』とは、言わない・・・らしい。

経糸が緯糸と交差しないで、表面に出る状態は、『経浮き/たてうき』。「経糸が浮く」の略。(写真;右下)

英語では、どちらも「浮き/float/ フロート」。緯糸がfloat/フロート。経糸がfloat/フロート。

日本語も 『緯浮き/緯糸が浮く』 『経浮き/経糸が浮く』 という表現を使えばわかりやすいと思うのは、素人のわたしだけ?

どうやら、日本人は、『飛ぶ』という言葉が好きらしい。島国だから・・・?

「2飛びの経飛びの5枚の経朱子の場合、経飛びは・・・・」などと、詳しく伝えようとすると、『飛び』と『経』が入り混じって、まるで、呪文のよう・・・・・・。


さて、先日織り上がった5枚朱子のマフラー。あちらこちらに経糸が浮いてしまった織りミスがあり、補修。で、5枚朱子は、「どの経糸も緯糸4本分浮いて、5本目に緯糸の下に入る。」という当たり前のことを いまさらながら、実感。
つまり、11枚朱子なら、経糸は、緯糸10本分浮く・・・朱子の綜絖の枚数が増えれば増えるほど朱子の経糸の浮きは長くなり、布地の光沢が増すということ。朱子織りの基本中の基本。

基本は5枚朱子だからと5枚朱子の組織の書き順と飛び数ばかり気にしていると、2飛びは「経糸が2本分浮く/飛ぶ」 3飛びは「経糸が3本分浮く/飛ぶ」とか・・・思い違いをしそうになります。

飛び数は、英語では、「Satin Counter」というのが、最近(?)では、一般的なようです。直訳すると「朱子のかぞえ数」でしょうか?

5枚朱子を織ってみると、かぞえるのは、組織を描くときだけではなかったことに気がつきます。1段目の緯糸を織り入れ、2段目を織るとき、1段目の表に出た緯糸からかぞえて、(慣れてくると目測なのですが、)何本隣の経糸が沈んでいるかを確認する・・・・ちょうど、組織図を描くときに、左右へ飛び数を数えたのと同じように!

踏み木順が、どんなに間違いにくくても、たぶん、普通は経糸の上り下がりを目で確認して織っています。でも、朱子の『表』を見て織ろうとすると、経糸の密度があるので、かぞえにく、よくわからない。で、手織りなのですが、タイアップを直して、裏返して、つまり、緯朱子にして、織ることにしました。それが上の5枚朱子の組織図。
1段目の緯糸を織り入れ、2段目を織るとき、1段目の表に出た経糸からかぞえて何本隣の経糸が上がっているかを確認して、緯糸を入れることになりますね。

では、なぜ、織るのにこんなに時間がかかったか?
踏み木順は、右から左へ1、2、3、4としたのに、経糸の上り下がりは左から右へとかぞえて確認していたから・・・・。どちらも、右から左にすれば、身体をねじるような嫌な感じがなかったように思えます。

朱子織の種類を確認したり、組織点を求める時にも使う 『飛び数』。上へかぞえても、右へでも、左へでも、どの方向でも朱子織りの組織が描けてしまうのですから、どの方向に数えるのが正しくて、どれが間違いとは、いえませんね。

でも、組織図を、実際に手織りをするために描くなら、
緯糸を1本1本織り入れますから、かぞえるなら縦方向ではなくヨコ方向が実際的。
飛び数は、朱子線の方向や角度の違いだそうですから、『踏み木順の方向』や『かぞえやすい方向』を考えて、各人が選べばよいことになります。

今日の最後に、
綾は右上がり、朱子は左上がりと覚えたような記憶があります。糸の撚りとの関係だという話です。綾は右上がりにすると綾目がはっきりと浮かび上がり、朱子は、左上がりにすると朱子線が目立たず、表面が滑らかに見えるというような説明だったような・・・・・で、通常使用している糸は、S撚り?Z撚り?どちらなのか?質問するのは忘れたようです。

※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2016年1月12日火曜日

5枚朱子のマフラー織り上がり

三原組織のひとつ、朱子織 サテン・・・・この組織だけが、基本の組織の裏と表がことなります。これも話がややこしくなる原因のひとつ・・・・。

年末に、朱子の表面を上にして織初め、やり直すことにしたマフラー。
裏面(裏朱子)を見て織るようにタイアップを結び直して、織り始めたら・・・やはり、筬の通し間違いがありました。これは、下がる経糸が見えないと見つけられません。

出てくる組織は、右上がりの綾織の変化織り?いえ、間違いなく5枚朱子の裏。朱子の場合は、「朱子線/しゅすせん」というのだそうです。

「右上がり」と「左上がり」があるのだそうです。これを朱子の場合は、「2飛び」「3飛び」という呼び方で表現しているらしい・・・・よく拝見しているブログで検証してくださった結果なのです。(感謝!)

ですから、「2飛び」「3飛び」は、朱子組織の名称につけることもある「補足」のようなものと考えることにしてみます。5枚朱子は、2つありますが、7枚朱子では4つもありますから。
で、組織を書くときのかぞえ方でもあり、つまり、書き方の説明で・・・・朱子組織の説明文は、ここに重点をおいて書いてあるのが一般的と思えばよさそうです。そして、正則朱子と変則朱子との見分け方としても使うらしい・・・・。

さて、もう少しわかりやすい説明はないものか。綾織の組織の説明もこんなに複雑でしたっけ?

実際に、織ろうとすると、問題はミミ。平織で付けたくても基本が5枚綜絖なので数があいません。とりあえず、フローティングサルベージ(浮かしミミ?)を2本。でも、織り上がりは、あまりきれいとはいえないようです。手織り作品の作り方で知りたいことは、こんな些細なことだったりしますね。

色変わり(段染め)の糸の効果は予想どおりでしたが、ちょっと椅子張地のような顔をしています。裏面に出ている緯糸は、アンゴラのシルバーグレー。仕上げをしたらふっくらと毛羽立つといいのですが・・・・。


2016年1月5日火曜日

書籍;手織り 手紡ぎ工房

欧米の手織りの本だと勘違いする人がいると困りますので、この本の紹介文は書くつもりはありませんでした。でも、朱子の話で、「私の本にチョコット載っております。」と著者から直接コメントを頂戴したので、書くことにしました。

時間をかけ、この本を読んで気付いたことは・・・海外の書籍を読み、色と素材(風合い)と組織(柄)のバランスが大切だと思う私とは・・・・織物の組織への価値感の違いだけではなく、基本的な思考回路が全く違うのだろうということでした。


『手織り 手紡ぎ工房』 監修;馬場きみ、著者;彦根愛 2012年

最初に、日本各地の織物や世界の織りについて。そして、ニュージーランドの手紡ぎ機の写真が登場し、ページをパラパラとめくると、ろくろ式織機だけでなく、海外のレバー式織機や天秤式織機、組織図のイラストなどもあり、スパニッシュやブロンソンレース、ハックなどカタカナ名まえの織り方もでていますので、欧米の手織も学べるような印象を受けていました。
しかし、よく読むと欧米の手織りの本の説明とは、明らかに違う・・・「ガラパゴス系」とも思えるような解説書です。日本の手織りとしては一般的なのかもしれません。

別件で、著者から「女子美の先生とアメリカ人の先生から習いましたが、女子美の先生の方がわかりやすかったので、本はそちらにしています。」とコメントをいただいて、欧州の天秤式織機を使っていても、やはり、女子美式(?)独自(?)の手織りのしかたと説明をしている・・・と納得しました。


最後のページまで丁寧に見ていくと、裏表紙を開いた右下の隅に小さく、
ハンドクラフトシリーズ『手織りと手紡ぎ』2000出版、『手織り工房』2008年出版 を合せて再編集し、応用作品をすべて新しいものに作り直して、大改訂した--』とあるのを見つけました。似たような内容の本だと思ったら、改訂版でしたか。なぜ、改訂版を出版したのか・・・特に書いてありません。ちょっと聞いてみたい気がします。


内容構成は、手紡ぎ、手織りの入門、基礎、応用の4章です。

世界各地で再び愛好されているというウールの手紡ぎから始まります。「手織り 入門編」では、2枚綜絖の卓上織機を使い、手織りの基礎と必要な道具類・・整経台、管立て、符割、糸車・・、糸の用意などを、まず学びましょうという主旨のようです。

次の「手織り 基礎編」では、綜絖のある足踏み式織機です。ろくろ式織機、天秤式織機とレバー式織機の簡単な説明があり、「織り物の組織」や「完全意匠図」の説明が詳しく書かれています。つまり、この本では、機種に関係なく、「足踏み式織機は、いろいろな組織を織るための織機」と思えばよさそうです。

「完全意匠図」では『使用する織機にあわせて綜絖の通し方を考え、踏み木を考え、タイアップを考える。』という独自(?)日本式(?)のやり方が詳しく説明されています。この章の最初の織機別になっている書き方順の説明を読むと、手順はわかっても、足踏み式織機は、複雑で難しいように思えてきます。

この「完全意匠図」の書き方を学ぶことで、この本で使っている3種類の織機によってそれぞれ異なる「1本の踏み木に1枚の綜絖を結ぶ か 1本の踏み木に数枚の綜絖を結ぶ」 ことと 「踏み木を踏むと結んだ綜絖が上がる/下がる」という特性を、一度に解決するというやり方です。

米国のように、自分の使用している織機に合せて組織図を理解する/読むというやりかたとは根本的に違います。ですから、この本は、海外の手織りの本を理解したり、パターンブックを使いこなすための参考にはなりません。

さて、この本では、織りの技法や織り組織の制作技法を学び、作品を制作するというページ順になっていて・・絣や着物、帯まであります。
つづれ織り、ノッティング、からみ織りなどの手織りの技法拡大法、変化組織や混合法などの織り組織の作り方・・・手織りをするにはこの2つを確実に覚える必要があるということのようです。そして・・・絣と糸染め。

本来、柄や組織を織るのに適した天秤式やジャック式織機を使い、蓄えられた数多くの組織を使ったり応用して楽しむことが多い欧米の手織りとは、基盤もセオリーも異なるようです。 


巻頭には、「自由に思いどおりに布を織るには、それなりの技術や努力、絶対に守らなければならない約束ごとをふまえる。」「たのしく手織りを続けるこつは、あせらずゆっくりとおこなう。」とあります。
この本には、織機も4種類、数多くある周辺の道具の名称を覚え、加えて、作業や机上で手順として覚えなければならないこと、約束ごとなど、数多く書かれていることに気がつきます。覚えただけでも、かなりの達成感が得られそうです。

「入門編」から始まっていますが、全体をみると手引き書というより、手織り技法の集大成の本のように思えます。著者による前書きも後書きもないので、わかりません。