2014年8月29日金曜日

色彩を楽しみに 華麗なるジャポニズム展へ

せっかくボストンへ来たのだから美術館へとすすめられ、遠いこの地で 日本の美術工芸 と少々複雑な思いになりました。ニューヨークへ直行便が飛びはじめた頃です。

手織以外は趣味を拡げない・・・と心に決めているのですが、なつかしさもあり、1500円の入場料を払うことにしました。
でも、私の目的は、「並置加法配色」の代表例にもあげられるポール・シニャックの作品が出展されているから・・・・。色は実際に見ないとわからない・・・とか。言い訳をしながら。


今回は、ボストン美術館の所蔵品からの企画展。
モネ、ゴッホ、ロートレック、ルノワール、カサット、北斎、広重、国定、歌麿・・・
誰でも一度は見たり聞いたりしたことのある有名な画家や作品ばかりですから、つまらないはずがありません。

『ボストン美術館 華麗なるジャポニズム展』 2014年6月28日→9月15日 世田谷美術館

「印象派を魅了した日本の美」という副題から、日本人の「印象派好き」の理由がわかるような気がします。 

今回メインの<ラ・ジャポネーズ>。修復後の初公開で、鮮やかな色が楽しめます。まとっている着物は、歌舞伎の衣装というのが最近の説だそうです。うつくしい赤ですが、日本の「朱」とは若干異なるようで、そこがまた何とも魅力的。

江戸百景などの版画は、美人画のような多色の華やかさはなく、モノクロのような印象がありましたが、よく見れば使われている色には透明感があり、染料のようにも見えます。濃く鮮やかな藍色と赤は・・茜?
北米のコロニアル時代の人々が織って使ったベットカバー地もインディゴブルーと茜の類が使われることが多かったようですから、実は、親しみやすい配色だったのかもしれません。

最後の展示は、モネ《睡 蓮》。 少し離れてみると白いスイレンは輝き始めます。

色は、やはり 「本物」 を見ないと。

2014年8月27日水曜日

サマー&ウインター#3;Lover's Knotの布 織りあがり

せっかく組織図を描きおこしたので、織ってみようかと思ってから2カ月半。
前回のスノーボールと同様に、よく聞くパターン名です。Lover's Knot。何と訳せばよいのでしょうか・・・愛する人の絆?愛の誓い?

色は、パターン名のイメージからピンク系と決めたのですが、2色配色は単純ゆえに微妙。
なので、色彩の本を出してきて、織はちがうのだなぁ と読み始めてしまい・・・これも、織り進まなかった原因。
そして、この夏の連日の暑さ。

4ブロックパターン。踏み木10本でタイアップできるのに気付かず、スケルトンタイアップのままで織りあげたのですから時間がかかるはずです。

踏み木順を変えて、バースアイのような柄組織にしてみました。

今回の柄糸は、販売店さんお勧めの紡毛にしてみたのですが、マフラー向きだったようで、綿と合わせるならもう少しゴツくてもよさそうです。





サマー&ウインターはしっかりとした組織なので、クッションカバーにして実際に使ってみたいと思います。





参考組織;The Shuttle-Craft Book of American Hand-Weaving
6枚綜絖 8本ぺダル 筬;100本/10cm
使用糸;経糸 綿16/2 緯糸 地糸 綿20/2 柄糸 ウール2/10//綿20/2
サイズ;140×92cm

2014年8月19日火曜日

書籍;色の歴史手帖

平成五年の「東大寺盧舎那大仏発願慶賛法要」に多色夾纈を再現したニュースをきっかけに、この本を読まれた方も少なくないと思います。著者は、京都で古代染を生業とするまさに「その方」です。

『色の歴史手帖』 日本の伝統色十二カ月 付-伝統色百色辞典 王朝・襲の色目 
著者;吉岡幸雄  第一版;平成七年一二月

あとがきには、 
「この仕事は、冬は紅花、春から夏にかけては藍、秋は刈安や茜というように、日本の四季の移り変わりとともに、歳時記のように一年を巡っている。」とあり、古都の行事風物を一冊にまとめてみないかというお勧めがあり、筆をとったと書かれています。

一月の伏見稲荷大社の鳥居の「朱」から始まり、色の持つ意味。染に使う草や実のこと。染めのこと。伝わってきた中国本土やシルクロード。縄文から平安、江戸とその時代時代の染めや色、衣のことなど。

「日本伝統色百色の再現にあたって」では、
「日本人は、詫、寂と言った言葉で表現されるようなくすんだ色ではなく、いつの時代も透き通った色鮮やかなものを欲していたことがおわかりいただけると思う」とあります。


目に見える色鮮やかなものは、木々の葉、花や実しかなかった時代。この自然の色ををそのままに、衣に映したいという思いが、「染める」ということのはじまりで、その鮮やかな色を映した布は人々には「驚き」であり、「畏敬の念」さえ感じさせたのではないか・・・という思いがめぐります。


十二月 春日のおん祭りでは、「神にささげる純白無垢な布は・・・(中略)・・・。人間は華やかな色を染める前に白を発見しなければならなかったのである。」と。

染を生業とする方は、白の大切さを存分にご承知なのでした。


最近のビジネスマンの黒いスーツ姿を見るたびに、日本の四季の移り変わる色を目にしたことがあるのか・・・と問われているように感じます。



2014年8月12日火曜日

書籍;カラーコーディネーター入門 色彩

確か・・・カラーコーディネーターの資格認定制度が始まった時にいただいた本です。

色彩に関する本は、科学や物理の学術書からアートやファッション、日常の占い?まで、本当にさまざまで頭の中をどのように整理すればよいのかと途惑うことが、しばしば。

この本は、「入門」とあるように、資格試験用のテキストだったように記憶しています。読む人を楽しませるような話題や趣向は、もちろん、ありませんので、「テキスト」と思うべきなのかもしれません。

著者;大井義雄、川崎秀昭 監修;財団法人日本色彩研究所  初版;平成8年5月


内容は、「なぜ色が見えるか」に始まり、マンセルや日本色研配色体系(PCCS)、オストワルトなどいろいろなシステムの説明、混合、照明、調和論、プランニング、年表、色彩用語集など。

NCS(Natural Color System) スウエーデン工業規格(SIS)についてもこの本にありました。

監修が財団法人日本色彩研究所ですので、PCCS、トーン配色や調和については、比較的詳しく説明されています。また、色彩からの連想やイメージする語、色が象徴する意味性などの調査結果は、あまり目にする機会がないので興味深いです。外出時の洋服を選ぶときなどにも役立ちそうです。

色彩調査や記録のための資料用具の紹介。色名118色が色票、値、解説つきで載っています。

カラーコーディネーターの資格取得をめざす方の入門書ですから、基本事項が集約されています。受験勉強用だけではなく、基本を確認したくなった時やちょっと調べたくなった時に、役立つ本として使えます。

2014年8月8日金曜日

糸色はマンセルかオストワルトか

あまりに暑いので、冷房の効いた部屋でぼんやりしていると、色についても思い出すことが多い。

確か中学校の美術の授業でしたから、色の常識程度の話だったかもしれません。が、純色(混じりけのない色)では、黄色は最も明るく、青や紫は暗いと知り・・・なるほどと思った記憶があります。

たぶん、マンセル・システムかPCCS(日本色研配色体系)だったのだろうと思います。
先日のアメリカの色彩の本にも、絵を描くには、まずは明暗が大切とありましたが、マンセル自身も画家だったそうです。日本人も明暗の墨画を愛で、墨の色に色彩を感じたりしています。

ですから、この色相の次に明暗を軸とするのは、日本人にはなじみやすいためか、教材として使われ、絵画やポスター、標識などの配色を考えたり分析したりするのに一般的に使われているように思えます。


さて当時の記憶で、名前だけ覚えていたオストワルト・システム。あまり日本では使われていない気がします。

改めて、『書籍;カラーコーディネーター入門 色彩』から「オストワルトシステム」の項を読んでみると、このシステムは、色相のつぎに、色を白と黒の含有量でとらえます。言いかえれば、どの程度白や黒が混ざっている「くすんだ色/鈍い色」か?「明るくきれいに感じる色」でも、どの程度の白や微量の黒が混ざっているか?・・・と見極めることになります。おもしろいことに、スウェーデン工業規格(SIS)も、基本はこれと同じ。

私たちが「薄い黄色」と感じる色は、オスワルト・システムに慣れている方やスウエーデンの人たちならば「白が多く混ざった黄色」と感じるのではないだろうか?と思ってみたりします。そう言えば、スウエーデンの織り糸の白は、純白から生成りまで、色数も豊富で微妙です。

明るくきれいな色が揃っている国産糸。でも北欧の糸とは何か違う・・・・・同じ会社の染料を使って同じやり方で染めても違うのは、「水と空気が違うから」という説明を聞いたことがあります。

色の「みかた と 見えかた」の違いでしょうか。水と空気の違いは「文化の違い」ということになるのかもしれませんね。

2014年8月5日火曜日

織物は並置混色

先日の美術大学の本によると、「織物は並置混色」だそうです。ただそう書いてあるだけで、説明は何もありませんでした。
例えば、赤い経糸に黄色の緯糸で、同じ密度の平織を織った時、よく見れば、赤と黄色の点々ですが、目の中で混ざってオレンジ色に見える・・・・チェックや緯糸に2色を引き揃えて織ったりしたことがあれば、このことではないか?とすぐに思いあたります。


『カラーコーディネーター入門 色彩』 監修;財団法人 日本色彩研究所 の本には、「並置加法混色」とあります。
「絵画の点描画法やモザイク壁画を遠くから眺めると、混色して別の色に見える。織物の色違いの縦糸と横糸で織った織物の色などは代表的なものである。」と説明があります。混色では、この「加法」の部分が大切なようで、「混色した結果は、ほぼ中間の明度となる。補色関係では、灰色になる。」


身近な絵具は、同量の補色を混ぜると黒っぽく、土や泥のような濁った色になるので減法混色。舞台の照明など色光は、光の三原色や補色を重ねると白になるので加法混色と習いました。


同じ加法混色なのに、織物は光と同じように補色―シアン×赤、マゼンダ×緑、イエロー×青 を縦糸と緯糸にして織っても白色にはなりませんよね・・・・経験からしてもあたりまえのことなのですが。

でも、シャンブレーのオーガンジーとか、タイシルクや和装の玉虫のコート地とか・・・一見した色が地味でも、時々まぶしいように感じるのは、気のせい?ばかりではないように思えてきます。

先染の魅力の秘密のひとつは、確かに「並置加法混色」。忘れないように。