2014年8月19日火曜日

書籍;色の歴史手帖

平成五年の「東大寺盧舎那大仏発願慶賛法要」に多色夾纈を再現したニュースをきっかけに、この本を読まれた方も少なくないと思います。著者は、京都で古代染を生業とするまさに「その方」です。

『色の歴史手帖』 日本の伝統色十二カ月 付-伝統色百色辞典 王朝・襲の色目 
著者;吉岡幸雄  第一版;平成七年一二月

あとがきには、 
「この仕事は、冬は紅花、春から夏にかけては藍、秋は刈安や茜というように、日本の四季の移り変わりとともに、歳時記のように一年を巡っている。」とあり、古都の行事風物を一冊にまとめてみないかというお勧めがあり、筆をとったと書かれています。

一月の伏見稲荷大社の鳥居の「朱」から始まり、色の持つ意味。染に使う草や実のこと。染めのこと。伝わってきた中国本土やシルクロード。縄文から平安、江戸とその時代時代の染めや色、衣のことなど。

「日本伝統色百色の再現にあたって」では、
「日本人は、詫、寂と言った言葉で表現されるようなくすんだ色ではなく、いつの時代も透き通った色鮮やかなものを欲していたことがおわかりいただけると思う」とあります。


目に見える色鮮やかなものは、木々の葉、花や実しかなかった時代。この自然の色ををそのままに、衣に映したいという思いが、「染める」ということのはじまりで、その鮮やかな色を映した布は人々には「驚き」であり、「畏敬の念」さえ感じさせたのではないか・・・という思いがめぐります。


十二月 春日のおん祭りでは、「神にささげる純白無垢な布は・・・(中略)・・・。人間は華やかな色を染める前に白を発見しなければならなかったのである。」と。

染を生業とする方は、白の大切さを存分にご承知なのでした。


最近のビジネスマンの黒いスーツ姿を見るたびに、日本の四季の移り変わる色を目にしたことがあるのか・・・と問われているように感じます。



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