2016年9月27日火曜日

梅で染める

30年物の梅の木が移植されて、そろそろ10年。

盆栽をうっかり庭に降ろしたら、すくすくと大きくなり、伐採しようとした時期が、移植に最適な時期だったということで、命永らえた木。

以前、新芽で染めた時は、淡い黄緑。でも、梅は本来は赤い色に染まるというのですが。

不思議に思い、草木染の本や手織りの本、専門家の著書、TVなど、染め方を調べたのですが。

媒染剤の使い方だけでも、「染液に入れる。」「染液の前に浸ける。」「後に浸ける。」「何回も繰り返す。」・・・・など、記述は、まちまち。草木との相性か?染める素材との相性か?やり方は人によって違うものだし、染まれば、こだわることはないのでしょう。

が、すぐに色あせたり、薬品が劇薬だったりするのは、遠慮したいと思うし、屋外で煮焚きするような本格的なやり方は無理。何回も試してみるとしても、織や編物のようにほどいてのやり直しはできない・・・。

ということで、結局、信用のおける染色材料の生産販売店に問い合わせ、専門の先生から教えを乞うことになりました。

で、何とか染め上がったのが、この色。色の違いは、枝と葉、媒染剤と抽出法の違いです。

化学染料なら、糸と染料と助剤と水を鍋にいれて、1時間もすれば染め上がるのに、葉や枝を煮て、媒染剤を使い・・・・手間は3~4倍ほどかかるように感じられます。

この木が来なかったら、枝や葉で糸を染めてみようなどと思わなかったに違いない。
色をいただくだけでなく、この木を手にした人たちの思い出もいただいて、糸に閉じ込めているような気がします。

2016年9月20日火曜日

書籍:誰にでもできる”織りもの” 現代の織り

なぜ今も手織りをするのか・・・という個人的な疑問から、先生方の本はできるだけ読みたいと思っています。

この本に限らず、「手織りをする「織りとは」」という書籍では、手織りの手順と技法だけでなく、織の歴史、組織、織機の種類、糸染め、糸紡ぎ、繊維の種類・・・・織りに関係するさまざまな技法と知識が満載されています。

どの本もすべてが網羅されていると思いたくなるのですが、よく見ると、とても詳しい説明と、それほどでもない部分があることに気が付きます。

表紙の写真の有機物のようなオブジェで、編者の名を記憶していました。

誰にでもできる”織りもの” 現代の織り 小名木洋一編 
平成8年3月25日発行

京都を本拠地として、芸術の学校で教鞭をとっている(いた?)著者と、7名の講師が分野別に執筆しています。

織物前史に始まり、手作りの道具、織機の種類、手織りの手順、技法、糸染め、化学染料、植物染料、原毛の洗毛から糸紡ぎ、糸紡ぎの道具、繊維の種類と歴史と幅広い内容です。

「はじめに」では、「他者との差別化が服飾の本質であり、世界に一点しかないもの、つまり自分自身で織ったり染めたりしたものを身につけることは、最高の贅沢といえるでしょう。」とありますが、服地の制作については記述がなく、「着物を織る」という章があります。

やはり、特筆すべきは、最初に登場する著者が発案し命名したと思われる板釘機、木枠機、手足機3種類と腰機の作り方と織り方。後半には、同じく著者が発案し命名したと思われる「立体織」。

この3種類の手作りの機と腰機では、それぞれ必要な材料、縦糸のための釘を板に打つ方法、枠の作り方、縦糸の張り方、綜絖、整経などが詳しく書いてあります。この説明を読めば、織り機を購入しなくても「織りもの」ができるということになります。「立体織」では、発想の元となった技法から織り方まで丁寧な説明があります。

既存の織機や道具にとらわれずに自由に発想して、織りたいものを工夫して織る/制作することが、編者の作家としての原点なのだろうと感じられます。市販の織機や手作りの織機、改造機も数多く紹介されていますが、これらも編者にとっては、求める布や効率的な生産のために織機は改造されてきたという実例にすぎないように見えてきます。

技法は主につづれ織りと絣、着物の織り方。多くの写真とともに丁寧な説明があります。一方、組織や組織図については、たった4ページ程度。

さて、さまざまな本を読むたびに気にしている「天秤式織機」の説明は、
「唐碓式ともいって、(中略)踏木の操作で各々の綜絖が単独で上がりますから、緯浮きの多い組織を織るのに便利です。ただ、上口開口なので(中略)このタイプは北欧やカナダ製などに多く、毛織物に適しています。」中国の紋織機と北米のジャックルームを合わせたような説明となっています。掲載されているイラストは、北欧のカウンターマーチ、つまり水平天秤式織機ですが、綜絖1枚に天秤1組と上下ラムだけなので、説明文の矛盾に気付くことはできません。

「むすび―なぜ織るか」では、「織ることを通じて、創造の過程で得た孤独に耐えうる力、自己に打ち克つ力によって、堅固な人格を確立してほしいのです。」とあります。やはり、これから織りをする人、学び続ける人への本です。

この本の出版から20年を経た現在。手を動かし、知恵を使い、時間をかけて丁寧にモノをつくることが、遠い昔のことのように感じられるのはどうしてでしょうか。私が齢を取ったということでしょうか。

2016年9月13日火曜日

インド藍、インディゴ、藍

粉末のインド藍を使った染め方を習ったりしていました。
絞り染をしたら「お手軽な廉価な染」のような違和感があります。

藍染は、日本のお家芸のような思い込みがあるのだろうと思います。化学薬品を使わずに甕で染めるのが、本式・・・のような。

一方、「ディープブルーといえば、デニムの染料でおなじみのインディゴが一番身近だった。」と、民藝の教科書②「染と織」の著者は書いています。日本人でも「藍」より「インディゴ」?でも、「藍」と「インディゴ」の違いは?


同じ色素を持つインディゴと藍。「Dyer's garden」Rita Buchaman著 を見ると、青を染める植物が3種類のっています。

インディゴは、マメ科コマツナ属で、メキシコ、カリブに自生する茂みになる低木。数百種あり。ジーンズがアメリカの労働着だったのが、うなずけます。

藍は、Japanese indigo もしくは、Dyer's knotweed。蓼/タデ科タデ属の草本で、色素があるタデのこと。日本や東南アジアに自生し、こちらも数百種類。海外品はすべて「インディゴ」などと言いたくなるのですが、「インディゴ」と「藍」は、植物の種類が異なることを無視するわけにはいきません。インディゴも藍も、厚い地域の植物。

英国や北ヨーロッパなど寒い地域では、Woad。タイセイ属アブラナ科の植物を使って染めるのだそうです。本の写真では、タンポポ?に似ていて、藍色よりもグリーンがかった色。藍のように、淡色から濃色まで染まるのでしょうか?染めた糸の束を見てみたい・・・。


インド藍と東北藍の生葉染。染めてみると、次々といくらでも染められるので、ほかに染めるものはないかと身の回りを探すほど。庶民の色となったのがわかる気がします。そんな藍も、インド更紗や東南アジアのバティックでは、豊かな色彩一色。

日本では、藍染の着物を着て、藍染の座布団に座り、藍染の手ぬぐいで身体を拭き、藍染の夜具にくるまって眠り、藍染ののれんをくぐって出かける・・・・。なるほど、民芸の本を見ると、日本中のいたるところに藍染の布。

東京オリンピックのエンブレムも藍色。藍へのこだわりがさらに増して、気軽には使えない「崇高な色」にならないことを願うばかり。