2014年6月27日金曜日

海外のテキスタイルデザイン現場のことば?

先日、綾の方向を調べていて、組織図で使うことばも気になりました。

私の手元にある海外の織機を使用している先生方の本は古い。図書館でテキスタイルについての本(2007年初版)を見つけました。この本の内容は新しいはずだと期待。

まえがきもあとがきもないので、出版された意図はわかりませんが、美術大学の染織のカリキュラムをもとに書かれた本のようです。布地への発想や展開、染色や織など様々な技術や授業風景なども載っています。


私が知りたかったことは、「織」と「織物理論」の章にありそうでした。

織についての説明は、力織機の五大主要運動から始まります。動力機や自動織機ではなく、力織機というのはちょっと古い感じがします。でも、内容は、生産機ではなく手織機の準備の手順が簡単に紹介されていました。

この本の監修をした方は、ニューヨークの有名なテキスタイルデザイン事務所で研修されています。この訳なら確実と思ったのですが・・・・織物理論の章で添えられている英単語や説明は、私が覚えた手織の場合とは違うものがいくつかありました。

組織、組織図⇒design
designで経糸が上になるのを「浮く」⇒up、経糸が下になるのを「沈む」⇒down
レピートするための最小単位⇒完全組織⇒Key組織(英語ではKey design?)
Key組織を上下左右にレピートを繰り返した組織図⇒完全意匠図
二重織り⇒double cloth
風通織り⇒figured double weave with color effect
綜絖の通し方⇒Drawing in Draft
順通し⇒Straight Draft
山道通し⇒Pointed Draft
破れ通し⇒Broken Draft
順飛び通し⇒Intermittent Straight Draft

アメリカで布をデザインする現場の用語なのかもしれません。英語から日本語への訳し戻しがむつかしいと感じるものもあります。巻末に参考文献リストがないので、調べようがありません。
手織りに必要な踏み木順やタイアップについての詳しい説明は書かれていませんし、8枚綜絖斜文の読み方は、手織で言うところの、タイアップが使われていますので、たぶん、デザイナーやファイバーアーティストをめざす人が対象なのだろうと思います。


残念ながら、アメリカの手織の本を読む参考にはならないように思います。たぶん一般的・・・と私が思うのは、
組織は、Structure。
綜絖通し、踏み木順、タイアップと組織図の4点がそろったものがDraft/ドラフト。これを完全意匠図、または完全組織図と呼ぶ方もいると思います。
綜絖通しはthreading。組織図は、Draw downまたは、Draw up。海外の本で、載っていないことが多いのは、他の3点があれば簡単に描き起こせるから。


アメリカでもデザインの現場と手織は異なるようで・・・。日本でもお教室やグループによりいろいろ。和訳名も様々。
自分なりに言葉を整理するにはあまりにも時間がかかりそうなので、・・・・・久しぶりに織りに集中しようかと思います。




2014年6月24日火曜日

仮筬・粗筬通し・粗筬・ラドル どれがなに?

ブログなどを書いていると、言葉の問題で止まってしまうことが多いのです。全くの想定外。
気になったことを書いておけば・・・・いつか方向性を見つけてくれる人がいるかもしれませんから。


今回は、織リ始めるまでの機の準備で、一番最初にする・・・・仮筬、粗筬通しと呼ぶことに関連する事がら。

本などの説明では、「ワープビーム(男まき)に巻き取るのに、整経して束状になった経糸を織幅に拡げるためにする。」とあります。巻き取ったら、経糸をはずしてしまいますので、「pre] とか「仮」、「粗」とか名称につくのでしょう。


織るときに使う筬を使用して、縦糸を何本かまとめて入れ、次は空けて・・・と本番の手間を少し省いて通すのが、仮筬/かりおさ

始めた頃にならった先生は、「粗く筬に通すから・・粗筬通し」と言っていました。その後、私は参考にした本の影響で、「仮筬」と言う言葉を使っています。

アメリカの本にはPre-Sleyと書かれています。Sleyの意味は、筬。Preが付きますので、事前-筬 という語感です。
海外の織をする方は、「仮筬」という言葉を使うことが多いように思います。「仮筬通し」とは、言わないような気がするのですが、どうでしょうか?


1cmとか1インチ間隔などに棒が埋め込んであり、上部が開いていて、経糸を何本かづつまとめて、上から入れる道具が、Raddle/ラドル/粗筬。

Raddleには、柵というような意味があるようです。輸入や洋式の織機と道具を販売しているメーカーのカタログには、ラドルは、粗筬、もしくは、荒筬と表示されています。うっかりしているとラドルに経糸の入った状態を「粗筬通し」と呼びそうになります。

この道具、日本でも地域によっては昔から使われていたような・・・気もするのですが・・・ご存知の方はいらっしゃいませんか?

Learning to Weave に使い方と作り方が書いてあったので、角材に釘を打って自作しました。(写真;右)

さて、この道具を使用するとき、英語では、どのように言うのでしょうか?
古くからあるスウェーデン織の英訳本「Manual of Swadish Weaving」では、Pre-sleying with a raddle。Sleyには織機の筬に経糸を通す/準備する という意味もあります;WEBSTER'S DICTIONARY 。つまり、ラドルを使って事前の筬通しする/粗筬を使って仮筬通しをすると訳すこともできます。

実際は、間を通すのではなく上から入れるので、その後の英語の初心者向けの本では、「ラドルに経糸を拡げる」という表現が使われています。「Learning to Warp your Loom」では、using a Raddle/ラドルを使う となっています。


「粗筬通し」を略して「粗筬」。ラドルに縦糸を入れた状態を直訳して「仮筬」という場合もあるようです。

この2タイプのやり方は、経糸の素材や形状、密度で使い分けるのが良さそうです。

さて、手織の経歴、出身グループや学校で使う言葉が異なるようです。まだまだ他の名前があるのかもしれません。あなたは、どのように呼んでいますか?

参考文献:Manual of Swedish weaving ;Ulla Cyrus-Zetterstom
Learning to Weave ;  Deborah Chandler
Learning to Warp your Loom ; Joanne Hal


※意見のある方は、理由や参考文献などを必ず書いてください。また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのか等の経歴やプロフィールを書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2014年6月21日土曜日

綾は右上がり?左上がり?

洋裁をする人なら誰でも知っている・・・・綾織の生地は綾目、つまり、組織が切りかわることでできる凹凸線が右上がりに見えるのが普通は表。表裏を間違えると、生地のつやなどがちがうので台無し。ですから、布を断つ前に毎回注意して何度も見ます。最近、綾織の服地はあまり見かけませんが、ストライプのネクタイ・・レジメンタルは右上がりばかり。

右上がりだと精神的に落ち着くとか、右利きの人が多いので、線は右上から左下へ/////が書きやすくて多いとか。時計の針は右回りなどなど。いろいろな所で見なれているからということらしい。


さて、本題は、綾織と綜絖通しの順通しの方向。ミミ糸の綜絖通しの順番を考えていたら、突然、突き当たりました。
手織り布の綾目の方向は?綜絖の番号は奥から1234か手前から1234か・・・・これも綜絖通しが右奥から左手前へ進むか?右手前から左奥へ進むかに関係しているような・・・?

このところ、かたい話ばかり。


昔、初めて習った日本の・・・と当時の本を見てみました。

主に着尺から学ばれたと思われる方の著書と同じように習いました。右上の図のように、綜絖通しも綾も左上がり。
布を横方向にして体に巻く帯に使われた組織と思えば、着た時に右上がりになりますので、さほど不自然とは思えませんが・・・それとも日本のスタンダードは左上がり?

さて、同じ1980年頃に参考にした、海外の書籍も参考にして現代的な作品を発表されている方々の著書でも、綾も綜絖通しも左上がり。服地の基本とはことなりますが、やはりこれが日本のスタンダード?
偶然かもしれませんが、綜絖番号は手前から1234で、アメリカと同じ。

織機の前に座って、右端から番号順に1234通すと右下の図のように綜絖通しの部分は左上がりになってしまいます。
何でも基本は右上がりと頭に入っていてこの図を見ると、何とも心地の悪い感じ。

「手織は裏を上にして織るのが本当なのかな?」と当時は疑問に思いました。最近の新しい本ではどうなのでしょうか・・と、もう少し調べてみたいのですが、次々と本を買うのもそろそろ限界なので残念。


さて、海外の場合。

右上の図の古いスウェーデンの本では、奥から1234。
最近は右下の図のように、番号が書いてある事はほとんどありません。
右端から通す場合は1234と唱えればいいので、確かにやりやすい。織りあがりを示す組織図も右上がり。

左図のように、アメリカでは、手前から1234。同じように右端から通す場合、4321と唱えながら通すことになります。
アメリカでは織機の後ろに座って通す、フロントtoバックのやり方が流行り、奥から4321へとかわったという説もあります。

この図は、選んだのがタイアップの説明の前段階のものでしたので、組織図を描きやすいように踏み木番号を優先したのか?織りあがりの図(□■の表示部分)は左上がりでちょっと珍しい例。
レジメンタル-タイの向きもアメリカは左上がりだから・・・あまり気にしないのか?

私の手元にある横文字の本は、1冊を除いて、綜絖通しの順通しは「右上がり⇒右奥から手前へ」。


綜絖番号のつけ方の疑問は、「奥から1234・・つまり、組織図の綜絖通しを見たときに 右上がり?」 「手前から1234・・・つまり、少々古い日本の本のように左上がり?」ということも含んでいるのかもしれません。

「どちらが正しいか?」という質問には、「踏み木順を変えればどちらももできるので、やりやすいほうで・・・」というお話になりそうです。
西欧まで拡げると右上がりが多くて、左上がりが少ない・・・ちょうど、利き手が右利きの人が多くて、左利きの人が少ないのに似ています。

私の場合は、本や資料を見たり、織ったりしているうちに、気が付いたら「右利き」・・・綜絖通しも織り上がりも「右上がり」になったようです。

図は、下の参考書籍よりピックアップしました。
手織りの基礎 ;土肥悦子 織物と用具の使い方 ;水町真砂子 手織り ;藤岡蕙子 佐久間美智子
Festremsor och gilledukar ;Lisa Melen THE BIG BOOK OF WEAVING ;Laila Lundel Learning to Weave ;Deborah Chandler


※意見のある方は、自分の考えとその理由を必ず書いてください。掲載分が間違いだとして書き直しや書き足してのコメントは本来の主旨と異なってしまう場合がありますのでやめてください。また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールを書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2014年6月17日火曜日

アメリカの手織の基本がわかる3冊

英語なら何とかわかるだろうと少しずつ買い貯めた・・というより、貯まってしまった本の山。買っても買っても内容が理解できなかったのは、英語力の不足だけではなく、考え方の違いがわかっていなかったようです。ということで・・・

これさえわかれば、最近のアメリカの手織の本も理解しやすくなるはず。
3冊とも、かなり以前に出版された洋書ですが、和訳は出ていない?ようです。ご存知の方は教えてください。

『A HANDWEAVER'S PATTERN BOOK』 Marguerite Porter Davison 1944

気づいたら手元にあり。日本に最初に上陸した手織りの本ではないかとさえ思います。最近は、カラー印刷でわかりやすいパターン集がいろいろありますが、いまだに手織教室で販売されるなど、お使いの方も多いようです。
平織、綾織から始まり、M's&O's、ハニコムなど、国内でもよく知られた組織がのっているためか、「いろいろな組織が英語名で書いてあるある本」と思いがちです。よく見れば後半は、アメリカの代表的な手織のオーバーショットのパターンばかり。開拓時代の手織が家事だった頃を感じることができるような気がします。

古いアメリカ式のタイアップなので、そのままろくろ機で使えて裏織にならないことが、ロングセラーの理由の一つかもしれません。


『Learning to Weave』 Deborah Chandler 1994 Revised

「手織の基本とやり方は知っているので、買う必要はない。」と思いながら・・・・15年ほど前に買いました。今思えば、無知で、身の程知らずで、お恥ずかしい限り。
使用している織機はジャッキ式(ジャックルーム)。機掛けの仕方、タイアップの○印、ダイレクトタイアップ、ブロンソンレースとサマー&ウインターとオーバーショット、ブロック柄やプロフィールドラフトの説明があり・・・・アメリカの手織りの基本となる初歩の初歩を実技を通して学べる本。

日本の手織の最近のやり方はこの部分を取り入れたのでは・・・?と感じる箇所もあります。
織機、組織、考え方など、日本や西欧の手織りとアメリカの「違い」に気がつきます。


そして、THE SHUTTLE-CRAFT BOOK of American Hand-Weaving』 Mary Meigs Atwater 1951(たぶん)

歴史的なパターンが豊富に載っていますが、この本の前文にもあるように、アメリカの手織が独自の文化になったという考えをベースに書かれています。
当時の手織の状況、やり方、どこで織られていたか、どこの古い資料から見つかったか等々・・・。基礎からアメリカの特徴的な組織やパターンなど話題は幅広い。説明書というより手織に関連する様々なことが書き残されています。現在のアメリカの手織りに少なからぬ影響を与えた本と言えそうです。


スウェーデン語ができれば、すんなりとスウェーデンの織を学ぶことができたのでしょうが、できなかったので、まずは、英語の書籍でアメリカの手織を学ぶということになり、おもしろいめぐり合わせになりました。本棚には、よくわからないままになっている本が、もう少し・・・あります。

2014年6月6日金曜日

洋書;Summer & Winter PLUS

日本で言われるサマー&ウインター・・・・つまり、「昼夜織」を期待して購入したのではないのですが、この本を見た時、予想と異なり、アメリカのサマー&ウインターは、組織も技法も豊富で戸惑いました。

The best of Weaver'sのシリーズです。
サマー&ウインター織りとその他のタイユニット織りによる40以上の作品が掲載されています。MADELYN VAN DER HOOGT編 2010年


前文に、「手織りをする人に、『サマー&ウインターは、どんな織り方?』と質問をすれば、ほとんどの人が『1-3-2-3、1-4-2-4』と綜絖通しの順番を唱える。」とあります。つまり、日本での「よし野織り」や「蜂巣織り」のように、ポピュラーな織り方ということになります。

しかし、購入した当時は、サマー&ウインターについて、歴史も、組織の特徴も・・・全くと言えるほど知識がなかったので、組織図の綜絖の枚数の多さと作品の多様さに、ただ、おどろくばかり。

このシリーズは、毎回、イラストを用いて、組織の詳しい説明があります。今回は、伝統的なサマー&ウインターの組織の2タイユニット(和訳すると「ひと粒に止めふたつ」でしょうか?)の特徴から、さまざまに発展した組織についてです。
組織と綜絖通し、ブロックウィーブ、タイユニットなど、アメリカの手織りの基本がわかれば、考え方も作品も楽しめます。

作品は、バラや天使などモチーフの織り出したり、緯糸表現のマット、多色使い、ピックアップの技法によるものなど用途も豊富です。

もちろん、理論はさて置いておいて、作品を選んで説明どおりに技法や多綜絖を試しながら織るのも楽しいと思います。


多綜絖は、間違いなく、アメリカの手織・・・・・組織の種類も、枚数も豊富です。

余談ですが、「北欧ならダマスク用の織機を使うだろう」と、他の本で読みました。確かにそう思える作品もいくつか掲載されています。

2014年6月3日火曜日

サマー&ウインター#2 Snow-ball with Pine-Tree Border 織りあがり

無理やりカウンターマーチをのせたから?綜絖が自家製だから・・・・多少開口にバラつきもあり、経糸を巻き取る最後のほうにムラもあったようで、織初めは少々手間取りました。
新しい織機や綜絖に買い替えるほど・・・この先上達するとも思えず・・・・。


このSnow-ball with Pine-Tree Borderは、4ブロックパターン。
あこがれる方が多いパターンと聞きますが、踏み木順は比較的簡単に覚えられました。

スノーボールが中央に3つ入れたかったのですが、織幅と密度の関係から1つ。左右の四角を増やして、総本数約1000本で、約1m幅にしました。

このパターンは、柄も織り方も伝統的なサマー&ウインター。当時の本の著者はカウンターマーチ(北欧の天秤式)で織っていたようです。


最近、気になっているのですが、スウェーデンで手織を学ばれた方や本などをみると、滑車とホースのカウンターバランスを使っているケースがほとんど。

このカウンターマーチという織機・・・海外からコメントをくださった方によると、生まれはドイツあたりの中央欧州らしい。あえて言うなら、育ちは北欧。活躍の場は・・・パターン集など見ていると、実は、アメリカだったのではないかと思ったりします。

現在のようなジャックルームがなかった時代・・・・この柄を織れたのは、たぶんカウンターマーチだけ。
スケルトンタイアップで織ると、「2タイユニットウィーブ」だと実感できます。



参考組織;The Shuttle-Craft Book of American Hand-Weaving
6枚綜絖 8本ぺダル 筬;100本/10cm
使用糸;経糸 綿16/2 緯糸 地糸 綿20/2 柄糸 ウール2/10
サイズ;164×100cm