2019年1月2日水曜日

しばらくお休みします

平成最後の新年 おめでとうございます。

久しぶりに、タテ二層ヨコ一層の組織を織ってみようとして、眼の異常に気が付きました。
どうやら再発です。治療や状態が安定するまでお休みします。

8や10枚綜絖の織機でしかできない織柄
天秤式(カウンターマーチ)とろくろ式織機の発達と発想の違い
世界各地の布の色彩と草木染の色
そして、海外の文献からの引用や訳文がわかりにくいことなど

若いころに感じたさまざまな疑問が解け、
織物の神様が「もう織らなくてもいいよ」とつぶやいているような気もします。

では、また。
福島県西会津の張り子

2018年10月30日火曜日

タテ2重組織(相補組織;仮称)から1本抜くと

「2本が対になり補い合っている柄布がある。1本が抜けると布は崩れてしまう。」ちょっと文学的な表現で、心惹かれるのですが、現実は。
でも、もしかすると、勘違い?と思い、サンプルを作って試しました。前回の続きです。


『もようを織る』には、相補組織は、
「2本中の1本を抜くと布として組織しない。」(p.258)
とあります。単様、複様の両方に通用するのでしょうか?

まずは、相補組織・複様です。


上から順番に 写真;① 
まずは、この本(p.259)にあるサンダー方式のサンプルをつくりました。著者が「相補組織・複様」と仮称をつけた組織です。
タテ糸は、こげ茶色と薄茶色。薄茶(ベージュ)が、ちょっと見えにくくて、すみません。ヨコ糸は、濃ピンク色です。

『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』のコンプリメンタリ―セットの分類(p.150)の最初にある写真の織サンプルと同じ組織です。

日本の手織り教室などでは、「昼夜織り」と呼ばれている組織です。「サマー&ウインター」などと素敵な名前で紹介している先生もいます。(注;米国では違う組織の名前です。)


写真;②
タテ糸の隣り合うこげ茶色と薄茶色、この2本が、対になり役割を分担していますから、タテのこげ茶色を抜いていきます。

写真;③
すると、ヨコ糸の濃ピンク色が1本おきに外れてしまいます。

写真;④
粗い平織が残りました。


薄茶のタテ糸を抜いても、平織、つまり、平組織が残りました。「組織している」ことになると思うのですが、「組織しない」は何か他の意味があるのでしょうか?

平織がこの織物の原組織で、残った平織と、抜いたタテ糸&外れたヨコ糸 で二重組織(二層構造)と思うのですが、いかがでしょうか。


『もようを織る」には、『布の主要構造』のコンプリメンタリ―セット(p.152)の「fig.252-255 は、タテ糸を抜いても組織が残るので、相補組織ではない」と説明があります。
この fig.252-255 の番号が付いた4枚の写真の織サンプルは、もちろん二層構造で、3/1と5飛びの2種類の綾組織(完全組織が 3×3以上)ですから、タテ糸の対になった2本中の1本を抜いても組織は残ることになります。


次は、相補組織・単様です。
p.258のサンデー方式のサンプルを組織図に書き直しました。南米アンデスに多い組織だそうです。(レピート 16本×8段;ついでに、綜絖通し、踏み木とタイアップ付)

1本を抜いた組織図を作成すると、綾組織を引き返した(山道通し)ダイヤ柄の組織が残ります。どちらを抜いても、ダイヤ柄の布として組織が残りました。原組織は綾組織でした。
右の組織は、タテ糸を混ませて織れば、はっきりとした2重のダイヤ柄になると思うのですが、織った布の写真はありません。普通の密度では、不安定そうな組織ですね。非対称/アンシンメトリーも気になります。


相補組織(仮称)の概念に、組織図で確認した個人的な解釈も加えて、 
本来は経糸は1本(1色)の一層の組織だが、色糸を使って柄を織りだすためには、この1本に 柄になる糸とならない糸 というような 役割 が生まれてくる。このため、この1本のタテ糸が便宜上、違う色が1本づつで計2本で対になって、本来1本で担う役割を分担する。
ということのようですから、一層の織物の例外組織かな?(ヨコ糸が対になる場合もある) でも、残った組織をみると二層の織物のような気もするのですが・・。

『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』のコンプリメンタリ―セットに分類した布は、タテかヨコどちらかだけが二層またはそれ以上で、組織の限定はありませんから、異なりますね。まあ、この組織が関係する部分だけ比較しても意味があるとは思えませんが。

相補組織の発想はおもしろいのです。が、コンプリメンタリ―セットのセットは組織論とするとウィーブと同じで、海外では、コンプリメンタリーウィーブと言葉は普通に使うのだそうで、コンプリメンタリ―ウィーブを相補組織と仮称して、説明の内容が違うとしても、代表する組織は同じで、分類した組織は違っても、50年も過ぎれば、概念も違ってくるということで、それでも評価に値する業績なので、いつもでもわからないと思っていないで先に進むことが・・・・・・。
これから海外をめざすテキスタイルデザイン関係の学生さんは、大変です。

2018年10月24日水曜日

組が本になって相補組織(仮称)に

聞いたことがない組織や織り方の名前は気になります。
「日本の織物用語として概念がない相補組織」という紹介文に興味を感じて購入した書籍『もようを織る』

「相補組織(仮称)」があるという『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』を前回まで見てきました。https://thistleweave.blogspot.com/2018/10/the-primary-structures-of-fabrics.html

相補組織は、上記のレポートでは「2組かそれ以上」という織物の分類でタテやヨコのどちらかだけが多層になるという「コンプリメンタリ―セット(分類項目名)」にありました。説明の横にあるサンプル写真は「昼夜織」。何やらむつかしく感じるのは、和訳時の単なる言葉のニュアンスの違いかと思ったのですが。

・・・・・相補組織・・・・・complementary sets・・・・・相補組織・・・・・complementary sets・・・・・相補組織・・・・・

『もようを織る』p.258には、相補組織(仮称)のきっかけになったと思われる「エモリ―の定義」が載っています。
以上の要素が同方向にあり、それらの糸は布の構造上同等である。」

著者によると、「経糸や緯糸の2以上を1単位として、補い合う組織があることを定義づけたはじめての組織論だが、抽象的な説明で、複式(色糸による紋織り組織)から説明されているため、単式(原組織;平・綾・繻子組織)との違いが理解しにくい。」のだそうです。

よく見ると、説明し直した文では、定義の「2組以上の要素」が「2本以上を1単位」に変わっています。組を本に訳し間違えたか?「2本以上の糸で1組⇒1単位」と思ったのか?でも、定義は「2組以上の」と1組ではなくと2組から説明が始まっていますが・・・。自分の考えに合うように意訳したのか?

相補組織の章の始め(P.254)にも、ほぼ同じ内容で「アイリーンエモリ―がその著書『布の主要構造』で、2以上の経糸が一筋や2以上の緯糸が一越を担う組織について、それらが互いに補い合うという意味でコンプリメンタルウィーブ:相補組織として…(後略)」とあります。

著者小林桂子氏は、「古代からの道具を使わない もじり技法 でも同じように2の色糸のうちのどちらかを表に出す模様作りを経験しているため、(経験した人なら誰もが)自然に考えつく(組織?定義?)」と記述しています。
エモリ―の定義の「2組以上の要素」が変わった理由は、「手を動かしてやってみればわかる」という持論(日本では一般的?)が影響しているようにも思えるのですが。


組織論という記述も気になりますので、原文を見ることにします。記してあるページ数から、原書を確認すると、コンプリメンタリ―セット; complementary sets の文頭に、「エモリ―の定義」と同じ原文がありました。下のWhenから始まるアンダーライン部です。

p.150-154.fig244-257 When two or more sets of elements have the same direction in the fabric and are co-equal in the fabric structurethey can be described as being complementary to each other. The structure itself is compound and can be either double-faced or two-faced.

訳してみたのですが、
  
構成する要素は同じ方向に2組かそれ以上あり、(それは布のタテまたはヨコ方向で、2層またはそれ以上の層になり)、布の裏表の組織は同じになるとき、裏と表が具合よくバランスが取れている状態(補い合う組織?)になっている布と評価できる。組織自体は組み合わさり、両面使いの布地やリバーシブル地になる。

前回まで見てきたように、「要素」とは、糸とか紐状のもの。「組」とは、織物でタテまたはヨコになる糸などの長さと順番を揃えて並べた状態のことでした。「同じ方向に2組以上」は「交差しないで2組…」ということですから、多層の織物の説明だとわかります。

さて、文頭のアンダーライン部の「エモリ―の定義」を組織論としてを読むと(文章の後半部はわかりにくくなるので、いらないのだそうです)・・・なるほど、著者が指摘しているように抽象的ですね。「補い合って」と訳してみても、著者の説明の重要な要点である「2本が1本のように組織する、とか、対になる、一筋や一越を担う」という記述はみつかりません。
やはり、布の分類を目的としたレポートのコンプリメンタリ―セットに分類した布の特徴についての説明文としか、個人的な意見ですが、思えないのですが。

コンプリメンタリ―で思いつくのは、色彩学の「補色」と数学の「補角」。「相互に補い合う云々」は、学術用語のような先入観があります。でも、英英辞典には、「異なるけれど一緒になにかすると役立つ、うまくいく」「異なる技の魅力的な組み合わせ」とか、軽い感じの説明もあります。このレポートではどのような感じなのか…関係したネイティブさんに訊いてみたいですね。


ミルトン サンデー氏(Milton Sonday)が著者小林氏のために 相補組織の概念 を説明した文章も載っています。

エモリ―の定義では「2組以上;sets」だった部分は変更されて「2本以上;threads」とはっきりと記されています。見つからなかった「一緒になり1本のように」も書き加えてあり、著者が自らの経験から自然に思いつくとして、訳文にした内容に合致しています。
そして、相補組織は、「一対である2本の糸が役割を分担している」ので、「2本中の1本を抜くと布として組織しない。」と書き加えてあります。

前回、作成した「昼夜織」の組織図は、この本のサンダー方式(細い紙を使って織った見本)の相補組織・経複様と同じでした。
この組織図では、隣り合うタテ糸の黒と青が一対になり役割を分担していることに、なります。綜絖の1番と2番で一対、3番と4番で一対です。

布として組織しないとありますが、黒を1本づつ抜いていくと・・・平織り、つまり、平組織が残ります。が。

※意見やコメントのある方は、冷静に、簡潔に、お願いします。

2018年10月16日火曜日

『The Primary Structures of Fabrics』を読み解く 2

前回からの続きで、今回は、多層の織です。この本を取り上げるきっかけになった「相補組織(仮称)」。書籍『もようを織る』小林桂子著によると「日本の織物用語として、概念がない組織」が登場します。

b.コンパウンドウィーブ;Compound weaves は、「要素の組合せ」の分岐まで戻ると、シンプルウィーブが「構成要素が2組」の分類です。したがって、コンパウンドウィーブは、「構成要素が3組以上」の分類であることがわかります。コンパウンドウィーブはシンプルウィーブに「組」を加えたと考えればよさそうです。分類の基本は「組」ですから、布になった状態とは限定してません。

この分類は大きく2つに分かれ、構成要素2組からなるシンプルウィーブに「タテ方向かヨコ方向のどちらかを1組を加える」と、「2組からできる布になった状態で加えて多層になる」です。つまり、「組で多層」と「布で多層」という2つの分類です。

★日本の織物の組織を勉強した人の話では、層になる織物は、同時に布を重ねて織る「重ね織」や「二重織」の「布で多層」しかないということ。すると1組だけを加えた場合のタテ糸またはヨコ糸だけが二層になるという構造は、未知の組織や新しい概念の発見(?)です。定義を探して、相補組織と仮称を付けたようです。
※二層より二重という表現が一般的ですが、「二重」には二重織のイメージがあるので「二層」にしました。


1). 「組で多層」;組を加えてコンパウンドにした;Compounded by adding sets of elements 
組数の加え方は、タテ方向が二層または多層でヨコ方向は一層。これを、90度回転して、タテ方向が一層でヨコ方向が二層または多層の構造になります。この分類は、さらにa).とb).に枝分かれします。

a).サプリメンタリ―セット;Supplementary setsでは、タテ方向かヨコ方向に「太さなどの違う組」を加えて多層になるという解釈になります。表裏の柄の出かたは違いますから、裏の組織は異なりますね。さらに(1)柄を入れる場合と(2)無地で保温や補強などの場合で分類してあります。

★日本では、この織り方は、一重の布を織りながら太いヨコ糸などを「柄になる別の糸を織り入れる」とか「はさみいれる」という感覚のようです。この技法名の「補緯」という用語を使い、分類項目名にすると「基本は一重の布(一層)」という印象です。すると、b.コンパウンドウィーブの分類には、一重の布(一層)と二重の布(二層・二重織)が混在すると思いたくなりますね。


b).コンプリメンタリ―セット;Complementary sets が、前分類 a).と異なるのは、加える組の糸の「太さなどが基本の布と同じ」という点です。 a).と同様に、タテ方向が二層や多層でヨコ方向が一層と、タテ方向が一層でヨコ方向が二層や多層があります。しかし、表裏の組織は同じでどちらも表として使える布(リバーシブル)になるという説明です。平織と綾織があります。

★『もようを織る』では、平織のみに相補組織の仮称を付け、日本の織物用語として概念がないとしています。でも、サンダー方式の組織見本をよく見ると手織り教室などで教わるという「昼夜織」。手織りの本やブログでよく見かける特徴的な組織図(右図)です。


2).「布で多層」;布の構造を追加して組み合わせてコンパウンドにした;Compounded by combing complete weave structures 
シンプルウィーブに構成要素を2組以上を布にして加えたとする分類。いわゆる重ね織や多重織はこの分類に含まれます。「a;重なった布が入れ替わり、各層の間が空いている;Interconnected」と「b;各層が綴じ合わせてある;Integrated」の2つに区分しています。


★『もようを織る』(P.255)では、相補組織を説明するために分類した織物組織の項目名の箇条書きがあります。「組織を分類するのが組織論」だからでしょうか。

あくまでの個人的な意見ですが、布の分類が、組織論とか組織を説明するためにあるというのは、「織ること」に執着しすぎているのような気がします。他に役立つことはないのでしょうか?

博物館や美術館の膨大な布の資料の保管、整理ため。自分の持っている布について詳しく知りたい。一般的な名称を知りたい。似たような布を探したい。産地や時代を調べる手がかりにしたい。論理的にわかりやすく分類することで役立つことはいろいろありそうです。

古くから緞子、金蘭、ダマスク・・・。色や柄が美しく織り出された布に憧れ続けた私たち日本人には、海外の布の知識といえば「組織」しか眼中にないのかもしれません。

日本に存在しなかった概念は、「相補組織(仮称);コンプリメンタリ―」ではなく、「布の分類学」のようです。50年以上も前に発表されたこのレポートの理論と概念が、理解されぬままに、日本の年月は過ぎたとは思いたくないのですが。