2015年6月26日金曜日

番手、Count、毛番手、メートル番手

誰と手織の話をするでもなく、実に個人的なブログを書いているだけなので、ああ、そう呼ぶ人もいるのかと・・・頭の中に加えておけばいい事なのですが、いつものように記しておきます。

先日、「番手は糸の太さを表す。」と書いたら、

「番手自体は長さと重さの割合を表す数字。番手が具体的に意味を成すのは、糸の使用量を計算する時。何本よりかというぐらいは分かるけれど、それ以外の糸の特徴を特に表してくれるわけではないので、最終的には糸自体を見ないと、経糸の密度も決められない気がする。」というご意見がありました。

では、番手を使えば、ある程度の精度で糸量の計算ができるのかといえば・・・・実際も、撚り回数や本数などを考えてみても、誤差があります。程度問題なのかもしれませんが。
しかし、糸メーカーや問屋が計測して、手織糸に「100gあたりのおよそのm」を記載すれば、番手から計算するよりも少ない誤差で使用する糸を準備することができるはずです。

すると、「番手」の「糸の使用量を計算のための数字」としての役目はさほど重要ではないような気がします。もし、使用量の計算のためなら、手織りの場合は、さまざまな素材を使うので、全ての素材に共通して使える「テック番手」が便利ということになると思います。

結論は、経験や発想から考えるよりも、番手が必要となった 『一番目の理由は何?』なのだろうと思います。そして、なぜ素材別?
状況や理屈があっているからと、本来の解釈を変更や応用して使うよりも目的にあうように新しく作り直したほうが、たとえ時間がかかっても、誰にでもわかりやすい。利便性からも、この件の答えは、「テックス番手を使う」ということになりますね。

私の頭の中には、番手は天然素材別の糸の太さとして記憶されています。「綿は綿番手/メンバンテ、麻は麻番手/アサバンテ、毛は毛番手/ケバンテ。天然繊維の中で、絹だけは長繊維なのでデニール。」

先日の書籍 『ホームスパンテクニック』 では、「繊維の太さの表示には’S/カウンツ という繊度をあわわす表示が使われ、’Sは毛番手(Count、または、Finess,または、Quality)という。」という説明があります。

辞書を引くと、Count は、「番手。繊維の太さや糸の太さ」。確かにヒツジの毛は「繊維」ですから、Countを「番手」と 訳す/言う のは、間違いではありません。

でも、「織る」が基本の立ち位置になっている場合には・・・・多分ちょっと聞き慣れない表現。
毛番手からイメージするのは、紡績した毛の糸の太さと撚り本数のこと。身勝手かもしれませんが、ヒツジの毛の1本1本の太さは、「毛番手」という言葉ではなく「カウンツ」を使うようにお願いしたくなります。(最近は直径ミクロンで表示するように変わってきているようです。) 

では、この場合、紡いだ毛の糸の太さも毛番手? この本では、「毛番手」ではなく、「メートル番手」とあります。
さまざまな会社や協会などの換算表などには、毛番手のあとに(メートル番手)とある書かれていることがあります。綿や麻は、「ヤード番手」と呼ばないのに、「何故、毛番手だけ?」と疑問に思っていた答えのようです。

『図解 染織技術事典』柚木沙弥郎 監修 では、「毛番手」という言葉はなく、「ウール番手。もしくはメートル番手」とあります。「ウール番手」あまり聞きませんが、特定の産地でのみ使われているのでしょうか?手織りだけに使われる用語でしょうか?


内外のいろいろな書籍や文献を読み比べると、日本のろくろ式の手織りとなじまないように感じる「組織図」と「番手」。どちらも、動力機をつかって布を工場生産する時のノウハウとして、近代になり、西欧から入って来たのではないかと思います。そして、手織が着尺から洋風へと変容し始めた時に、生産現場の基本を忠実に取り入れた・・・・・?原因は、翻訳の適/不適だけではないようです。

※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。掲載文の訂正は私の主旨と違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。
また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィール、を書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年6月23日火曜日

書籍;ホームスパンテクニック

「手織をしています。」「糸もつむいでいます。」と一言くわえると、本格的に手織をしているという評価になるようです。

これは、伝統的な「紬ぎ」のイメージと「ホームスパン」がよく知られているからでしょうか?「いつかは、本格的に糸つむぎから・・・」と、思っていた時期もありました。

2-3冊購入した海外の「Spining/紡ぎ」の本では、「紡いで→編む」。なるほど、「紡いだ糸は、織る」というのは、思い込みだったようで、本格的な手織りをめざすなら「紡ぎから・・」と決めつけることもなさそうと思い直し、手織に勤しむことにしました。

ですから、復刻版が昨年(2014年7月)販売されなければ、この本を手に取ることも、開くことも、なかっただろうと思います。

「ホームスパンテクニック」 森 由美子著 2002年初版 発行;染織と生活者
復刻版 発行;株式会社復刻ドットコム 一部改定


著者は、学生時代を過ごした京都で織物に興味をもち、その土地に根ざした織物をと思っていたところに、生まれ育った岩手のホームスパンと出会ったのが学び始めたきっかけだと書いています。

総153ページで、手に取ると少し分厚く、盛りだくさんの印象がありますが、この本には、手織の本にありがちな・・・今昔の知識を書き連ねたり、工芸作家にありがちな自分の作品や制作過程へのこだわりの文章のようなものはありません。

紡ぎと手織りをするために、学び、自分の目と手で確かめ納得したこと。そして、必要なリストと資料です。
「酸性媒染染料(クロム)染料については削除する。」手織りに使う「基本的な組織は本に紹介されていているので、読み取れれば良い。」などからも、著者自身が慎重に吟味し、現在の時に即した内容に絞り込まれていることが感じられます。

「ホームスパンテクニック」という題名から、羊毛と糸紡ぎに重点がおかれている本という印象を持ちましたが、「材料となる羊毛と染」、「紡ぎ」と「織り」は、ほぼ1/3づつ同量。どれもないがしろにできないという著者からメッセージが込められているようにも感じられます。

毛織は、滑車式やろくろ式織機で織るのが適していると思っていましたが、やはり、著者はろくろ式の和機を主に使用しているようで、この織機での経糸の準備の仕方や使い方、組織図が説明されています。床上での縦巻きや織り初めにススキの軸をいれるなど、海外からもたらされたホームスパンが日本の手織の技法と融和した様子がうかがえます。

ホームスパンはベーシックな組織使いが多いためか、組織図の踏み木順の読み方などは若干疑問な点もありますが、一般的に使われている織機の種類と特色の説明もあり、手織りをするのに、必要な基本的な説明も揃っています。

「基本知識」と「経験から得た安定感のある技法」がバランスよく丁寧に説明されていることが、わかりやすく、頼れる本として、評価されているのだろうと思います。復刻が歓迎されているのは、間違いなさそうです。

2015年6月19日金曜日

バックの持ち手とマチを手織りで

「裂き織に」と、頂いたはぎれ布のなかに「印花布」らしき布を見つけました。

半端な糸があったので、持ち手とマチを織ってみることに。
経糸は、マットにしか使えそうもないと思っていたジュートのような麻糸。緯糸は、藍染風?の綿糸。これも残り糸。

単純なウネ織のつもりだったので、経糸も大ざっぱに、4本揃えたり、6本にしたり・・・。織キズも味わいと、気楽に。


それでも、もう少し変化が欲しくなり、ヨコ浮きを入れました。

組織は、4枚綜絖3本踏み木の最も単純な「緯糸が浮くハック織」になりました。
裏面のほうが凹凸の変化がはっきりして魅力的。

織幅120cmの織機で、6cmのテープを織るのは、おかしな風情のような気もするのですが、こんなに硬い麻の経糸をしっかり織れるのは、やはり織機の実力なのでしょうか?

同じく、長い付き合いの 力自慢のミシンで縫製して、できあがり。

悪くはないと思うのですが、手織をしているのに、いわゆる「民芸調」は、苦手なようで・・・・持って出歩く自信なし。
どなたかにさし上げることになるのでしょう。残りのテープは、本体を白の帆布にして、持ち手としてつけてみる・・・・?














4枚綜絖3本踏み木
筬;50本/10cm 丸羽 
経糸;麻生成 番手不明 綜絖に4~6本入れ
緯糸;綿 10/2 2本引き揃え
織幅;6cm
バック参考書籍;ハンドメイドバック 下田直子のNEEDLWORK TIME


2015年6月12日金曜日

紐を織る綜絖

どこかにあったはず・・・と探したら、ありました。3枚も。

スウェーデンの織物道具。これで平織の紐を織るのだそうです。

やっと購入した『図解 染織技術事典』の「1章 手織」の竪機の説明P.4-2では、「日本の むしろ機 も筬綜絖の竪機の原理で制作される。」という説明と写真があり、むしろ織の写真の隣に、この道具と杼の写真が載っています。(私の手元の本は、1995年発行の第4版ですから、改訂されているかもしれません。)

竪機に使われる筬綜絖の紹介として載せたと思うのですが、卓上のリジット機がよく知られるようになった今では、この 筬綜絖というもの がむしろ機など竪機にだけ使われる部品だと思う人はいないでしょう。

本の写真と同じこのものは、この一枚で、れっきとした「紐を織る道具」。大きさは、ハガキより少々小さめ。穴は、裁縫に使う「針の糸通し」を使わないと通らない程、小さい。タペストリーの経糸に使う太い麻糸や漁網糸は この筬綜絖 には通りません。

経糸を柱などに結び、織前は、腰にまわした紐などに結び付けて織っていくので、あえて分類すれば、この1枚だけで、「腰機」。せっかくですから、残り糸で少し織ってみました。


本文に「古代スウェーデンで、錘をつけた経糸を横木から吊り下げ・・・・」ともあるので、ためしに、竪機風に、吊り下げてもみました。開口や打込みの時の経糸の引き加減の調整は、うまくできません。

卓上のリジットルームが開発されて一般的になり、織幅を保ち打ち込みをする筬 と 経糸を上下する綜絖 の両方の役目を、一枚でするのが「筬綜絖」で、英語名は「リジットへドル/Rigid heddle」だと思い込んでいたのですが・・・。

「リジット/Rigid」・・・・「硬くて曲がらない。剛体の。」という意味。
なるほど、このところ大流行の卓上の「リジットへドル・ルーム」は「硬くて曲がらない頑丈な綜絖がある織機」という訳になり、納得です。

「筬綜絖」は、まずは、「筬のように硬い綜絖」と思ったほうがよさそうです。で、筬として使えることもある。

竪機や紐を織るのに使うのは、見た目は同じでも、筬としての役目はしませんから、「板綜絖」とか「穴あき板綜絖」と呼ぶとわかりやすいように思えてきます。

糸綜絖、金綜絖・・・・筬綜絖?板綜絖?いろいろある綜絖の1種と考えたいですね。まぎらわしいことに、金綜絖には metal/金属の細い板状 もあるのですが・・・・。

同じ形だとか、使い方がちがうとか・・・・言葉や理屈、呼び名などにこだわったりするのは、取るに足らぬことのようですが、初心者にはわかりにくいことばかり。専門用語だからといわれても意味もわからず覚えるのは、やっぱり苦手。

「作品制作も道具の使い方も、アイディアややってみることが大切。理屈は後。」と若い頃に諭された記憶は残ってはいるのですが。

※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。
掲載分の訂正は私の主旨と違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。
また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィール、を書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。



2015年6月9日火曜日

ツイル;ボーダー柄でProgressing twill

リネンの経糸がもう少しあります。スカーフにするには、足りなさそう。

でも、最初のサンプル織のイメージが気に入ったので、同じ組織でボーダーにしてみました。織っているときの透け感は、悪くありません。



8枚綜絖のツイルの部分はシルクリネンの白の緯糸。平織の部分は経糸と同じリネンの生成です。






今年は、ボーダー柄が流行っているのですが、光に透かすと・・・・・やはりカーテンのほうが似合いそう。ランナーとしても涼しげで、悪くはありません。


リネンでスカーフを織る場合、密度は・・・、糸は・・・、表情はすこし・・・・と、コツがつかめてきたような気もするのですが、イメージする糸を探したり、サンプル織りを始めたりしたらキリがなさそうなので、先へ進みます。



参考書籍;Manual of Swedish Handweaving
8+2枚綜絖 10本踏み木
筬;35/10cm 4本入れ
経糸;リネン生成 60/2
緯糸;シルクリネン  リネン生成60/2
サイズ;125×25cm

2015年6月6日土曜日

ツイル;レース織のような Progressing twill

以前にアメリカの手織をした時にも織ってみたかった「プログレスイング・ツイル/Progressing Twill」。綜絖通しは、オーバーショットに似ています。きっと関係があるように思えます。

レース織として扱われる場合もあると書いてあったので、リネンの糸で織ってみることにしました。

組織図を描きおこしてみると、左右対称ではありません。確か同じパターンが、『ウィーヴィング・ノート』著;岸田幸吉 にもあったとはずと見たら、やはり左右非対称でした。

アメリカの本によると、古い組織図ではときどき非対称があるので、さほど問題ではないのですが、書き直したほうが良いとあるで、直しました。




使用したリネン糸は「織り試しに」と一綛買っただけなので、幅も長さもちいさめ。

緯糸は、柄がわかりやすいように白のシルクリネンなど試したのですが、経糸と同じにしました。柄がよく見えず・・・少々織りにくい。

できればスカーフにと、ゆるく、几帳面すぎないように心がけたのですが、仕上がりは、レースのカーテン風。結局、大きめのサンプル織?



原因は、組織か?素材か?・・・それとも、織手の性か?















参考書籍;Manual of Swedish Hand weaving
8+2枚綜絖 10本踏み木
筬 35本/10cm 4本入れ
経糸;リネン生成 60/2 2本
緯糸;リネン生成 60/2 
サイズ;140×26cm