2015年6月23日火曜日

書籍;ホームスパンテクニック

「手織をしています。」「糸もつむいでいます。」と一言くわえると、本格的に手織をしているという評価になるようです。

これは、伝統的な「紬ぎ」のイメージと「ホームスパン」がよく知られているからでしょうか?「いつかは、本格的に糸つむぎから・・・」と、思っていた時期もありました。

2-3冊購入した海外の「Spining/紡ぎ」の本では、「紡いで→編む」。なるほど、「紡いだ糸は、織る」というのは、思い込みだったようで、本格的な手織りをめざすなら「紡ぎから・・」と決めつけることもなさそうと思い直し、手織に勤しむことにしました。

ですから、復刻版が昨年(2014年7月)販売されなければ、この本を手に取ることも、開くことも、なかっただろうと思います。

「ホームスパンテクニック」 森 由美子著 2002年初版 発行;染織と生活者
復刻版 発行;株式会社復刻ドットコム 一部改定


著者は、学生時代を過ごした京都で織物に興味をもち、その土地に根ざした織物をと思っていたところに、生まれ育った岩手のホームスパンと出会ったのが学び始めたきっかけだと書いています。

総153ページで、手に取ると少し分厚く、盛りだくさんの印象がありますが、この本には、手織の本にありがちな・・・今昔の知識を書き連ねたり、工芸作家にありがちな自分の作品や制作過程へのこだわりの文章のようなものはありません。

紡ぎと手織りをするために、学び、自分の目と手で確かめ納得したこと。そして、必要なリストと資料です。
「酸性媒染染料(クロム)染料については削除する。」手織りに使う「基本的な組織は本に紹介されていているので、読み取れれば良い。」などからも、著者自身が慎重に吟味し、現在の時に即した内容に絞り込まれていることが感じられます。

「ホームスパンテクニック」という題名から、羊毛と糸紡ぎに重点がおかれている本という印象を持ちましたが、「材料となる羊毛と染」、「紡ぎ」と「織り」は、ほぼ1/3づつ同量。どれもないがしろにできないという著者からメッセージが込められているようにも感じられます。

毛織は、滑車式やろくろ式織機で織るのが適していると思っていましたが、やはり、著者はろくろ式の和機を主に使用しているようで、この織機での経糸の準備の仕方や使い方、組織図が説明されています。床上での縦巻きや織り初めにススキの軸をいれるなど、海外からもたらされたホームスパンが日本の手織の技法と融和した様子がうかがえます。

ホームスパンはベーシックな組織使いが多いためか、組織図の踏み木順の読み方などは若干疑問な点もありますが、一般的に使われている織機の種類と特色の説明もあり、手織りをするのに、必要な基本的な説明も揃っています。

「基本知識」と「経験から得た安定感のある技法」がバランスよく丁寧に説明されていることが、わかりやすく、頼れる本として、評価されているのだろうと思います。復刻が歓迎されているのは、間違いなさそうです。

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