2015年3月27日金曜日

真似ると真似される

「真似されるようなデザインや商品を開発できたら、一人前。」商品企画とデザインをしていた人の言葉。

確かに、真似してモノを作り商売する人は、どれが魅力的か?何が売れるか?よく見ている。感心するほどよく観察している。でも、オリジナルは作らないようですし、もしかすると作れない・・・・なぜ?

真似をしたいと思うデザインよりもすてきなデザインができない。時間がない。やり方がわからない。開発研究費が足りない。能力がない。やる気がない。理由はともあれ、自分では、上手にできないことを自覚している・・・・・だから、真似をする。真似が良い/悪いとかではなく、できないのだからしょうがない・・・・・ということらしい。哀しいかな。
で、そっくりに真似なぞして作って大量に販売する。真似された会社側の売上や仕事が明らかに減ると「イショウケン」とかが登場することになる。


プロでもアマでも、色や柄をアレンジして、同等かそれ以上の、オリジナルの作品を作れる「実力」があれば、本に書いてあるとおりに作ったり、そのまま真似して作ったりしない。つまらないから。

でも、真似でも、書いてあるとおりでも・・・・作るって大変なこと。特に手織りは。ですから、気に入ったとか、好きな作品でないと作れないし、作りたいとは思わないはず。真似だと言われても、素敵な作品ができれば、うれしい気持ちはわかります。だって、自分で織りあげて布にしたのですから。
で、夢中になって、展示販売したり・・・?でも、生業としてやっていくなら周囲への気遣いも大切なのでしょうね。

より良い物にしたいと何回もやり直しをして、時間をかけて、「物作り」をしたことがあるのなら・・・・・真似した人の気持ちも実力もお見通しのはず。

つまり、デザインが魅力的だから・・・・材料を買って作りたいと思う。真似する人もでる。ということになりそうです。

商品として販売すれば、オリジナルの一点ものの工芸品などと違い、どんなに素晴らしくても、必ずいつか飽きらる。ですから、プロのデザイナーは、完成度のあるオリジナルデザインを次々と生み出せる 能力と実力と持久力 が求められるのだろうと思います。

「創作の労をねぎらい、限られた人だけに大切に扱ってほしいのか」、「真似してでも身近におきたいと感じるほど、好きになってほしいのか」 もし、モノづくりを生業とするのなら、自分のオリジナル作品やデザインに対する考え方をどちらにするのか・・・・・結局、心の中で決めておけばよいだけのことなのだろうと思います。

2015年3月24日火曜日

Repのマットの縦糸の残りから思うこと

60cm幅のマットを織った経糸の残り・・・・・65g。これに織初めの結び分を加えた長さを「織り捨て分」とか、「機ロス」とか呼びます。

ワープビームからのコードを綜絖のところまでくるように長くしても、筬と綜絖の厚さ分と綜絖が上下に動くための長さが必要。今回は約40cm。計ってみると65g。
10gあたり100円の糸だとすると、これだけで約650円+織初めの結び分=約800円ぐらい?マットに使ったのが約110cmですから、ロス率36%・・・決して少ないとは言えません。

織機が、長く、早く、安定して織れるようにと改良され続けてきた結果だという方もいますが・・・。


この「織り捨て分」を使って、フサのラグを織ったり、ウールの場合は、ほぐしてワタに戻してフェルトにしたりする方もいるそうです。これを使って何かを作れそう・・・・・・と捨てずにため込んで、思案するのは、残糸病というのだそうです。

「織り捨て分」がもったいないから、手織はやめて編物にしたとか、大型機はやめて卓上機にしたとか・・・聞きます。

織機は、長く、早く、安定して織れるようにと改良され続けてきた機械なのですから、この道具を使って、マットを1枚しか織らなかったり、マフラーを1本だけ織ったりするのが、おかしい のかもしれません。綜絖通しや筬通し、大型機の場合は、経糸を掛る時の筬や框の上げ下ろしなどの力仕事など、長さ1mと10mを準備する手間はあまりかわりませんから。

日本では、大型の手織機で平織や綾織で、「大判のストールやマフラーを軽くて肌触りのよい綿やカシミアで心を込めて1本1本織っています。」という方が多いようです。
高級な素材+時間と手間+安くはない道具(織機)をつかって・・・・手作りの憧れがすべて詰まっている。絵画やアクセサリーのように「手をかけた装飾品」と思えばわかりやすい。

ロスとかもったいないとか、織機は手早く布を織るための道具だとか言いながら手織をするのはたぶん、「野暮」とか「変わり者」。身近な実用品を織りたいと思うのも少数派かもしれません。
北欧の織機も、「ズウタイばかりがデカいヤツ!」と嫌われもの。でも、よく働くし、能力もあるのに、ちょっとかわいそうな言い方ですよね。よく食べる絶滅危惧種を飼っているような・・・・・気がするときがあります。

2015年3月17日火曜日

Repのマット

ますは、平織から。

北欧の手織りといえばマットはかかせません。平織のレップのマット。レップとは、「うね」のこと。

経糸の規格は、綿の16/2、密度は、1cmあたり36本。紹介されている2冊の本とも同じ規格なので、これがスタンダードなのでしょう。

60cmの織幅なのに、約2000本。ひたすら整経をして、ひたすら綜絖通しをして、織り始めれば、緯糸は太いので、もったいないほど早く織りあがってしまいます。ですから、めずらしく、ゆっくり、ゆっくりと。

 この本数と密度・・・・きっちりと糸が並んでいてますから、全ての綜絖が上下に動いて、経糸を引き分けないと、開口しない密度です。

いつもなら、光が下から入らないように紙を入れて撮影するのですが、今回は必要なし。

糸と糸が擦れあって上下が入れ替わっていく感じです。踏み木を踏んだら、すぐさま開口するいつもの動きとは、ちょっと違う。

天秤式(カウンターマーチ)やホース(天秤)を吊るすカウンターバランスなど中口開口の北欧の織機の有能性を見せつけるかのような・・・・織です。


踏み木を踏んでも動かない綜絖がある上口開口や下口開口のジャックルームでも織れるように経糸の密度を粗くしたニューレップという織りかたもあるようです。緯糸が見えてしまうことも利用して柄を織りだすなど新しい発想が加えられているようです。

さて、綜絖通しは、ブロックの考え方と順番を入れ替える2タイプがあるようですが、昔ながらの糸綜絖を使っているので、無理がないように後者の方法にしました。

筬打ちにもコツがあり・・・・やはり、受け継がれてきた織物には、先人の知恵がつまっているようです。

機からおろして約3日。だんだんと丈が短くなってきました。太い糸が膨らんできたようです。少しタテ長に織った四角も扁平に・・・・。予想以上の織ちぢみ。織物は織ってみないとわかりませんね。


参考書籍;THE BIG BOOK OF WEAVING、Favorite Scandinavian PROJECTS TO WEAVE
使用組織;平織 4枚綜絖 2本踏み木
使用糸;経糸;綿100% 16/2
緯糸;綿麻混紡糸 番手不明 
経糸密度;36本/1cm
仕上りサイズ;100×60cm ヘム6cm

2015年3月10日火曜日

番手の使い方

先週、糸のことを書きました。日本の手織は西洋化しているようで、欧米の一般的な手織の基本と違うと感じることがことが少なくなく、番手についても、たぶん日本の手織を詳しく勉強した方には異論があるテーマだと思います。

手織のおけいこやお教室などに通ったことがないので、日本の手織の一般と、例えば、タイアップ、下開口やカウンターマーチなどの解釈が違うことがありました。習ったことと違うと、間違いを公開していると不快に思う方もいるようなので、糸の番手についても遠慮してきました。が、原稿が残っていたので。

・・・糸・・・イト・・・意図・・・イト・・・糸・・・イト・・・意図・・・イト・・・糸・・・イト・・・意図・・・イト・・・糸・・・イト・・・意図・・・イト・・・糸・・・

洋裁を習った時に、ミシン糸と針は番号で太さを表すが、番号と太さは逆。つまり、糸は番号の数が多きくなれば細くなり、針は太くなると覚えました。そして、縫う布地と針の太さ、糸の太さの関係の一覧表がありました。つまり、番号は太さ。番号があると縫う布と使う針や糸の太さの関係がわかりやすくなります。

シーツ地も糸の太さと密度を聞けば、丈夫で厚いか、薄くてもしっかりとしているか、肌触りなどはほぼイメージできますし、ストッキングの化粧台紙に書かれているデニール」をみれば、薄いか厚いか・・・慣れてくれば・・・わかります。ナイロンは長繊維なので糸の太さは番手ではなくデニールです。

こんなことから、糸の「太さを表す」ことは、「充分に役に立つ」と思うのです。番手の定義などは知らなくても、あれば便利。で、必要な数字。でも、手織りの本を見ると「重さと長さを換算するときに使用する数字」のような説明がされているように感じるのは・・・・私だけ?

手織によく使う糸の太さは、たぶん、ほとんど綿番手と毛番手。ときどき、麻番手。この3種類で表示されています。
番手の基本的な定義のしかたは同じで・・・決まった重さ(1kg、1ポンド)のワタなどから決められた長さ(1000m、840ヤードなど)の糸を作る。これでできあがる糸の太さが基準となる1番手。

この定義を使って逆算すれば、重さや長さを換算できると「ひらめいた!」方がいたようです。でも、ちょっと手紡ぎをしたことのある方なら、お気づきの通り、撚りがかかると糸は短くなる。撚りが多くなれば、さらに短くなる・・・。そんなに正確なものではない。ですから、それぞれの糸に、重さと標準的な長さが書かれていれば、わかりやすいし、より誤差が少ないし、親切ですよね。

それでも、換算しようとすると、素材によって使う番手表示が違い、基本のポンドとかヤードとか度量衡が違い計量器もない。となると、gとmの日本では、毛番手が身近で使いやすいことになります。これを応用?して、換算のための「共通番手」という番手表示?換算方法?を提案した方もいらっしゃる・・・・この影響なのでしょうか、最近は、「毛番手」とは言わず、かわりに「共通番手」と言うようです。
日本の手織ではますます、「番手は長さや重さを換算のための数字」になりつつあるようです。


さて、ここで、私の素朴な疑問。長さと重さが知りたいなら、サンプルをとってはかればよい。綿は植物繊維、毛は動物繊維。性格も風合いも、さわった時の柔らかさや握って離したときふっくら感も違う。同じ大きさの布なら感じる厚みも重さも違う。太さをあらわす表示を共通にすると違和感があるように思うのは、古い感覚なのでしょうか?

混紡糸など中間の性質を持ち、番手表示がさまざまな場合は、綿をよく使う人は綿番手に換算し、毛をよく使う人は、毛番手に換算するのが、わかりやすいように思います。
綿番手から毛番手へ、毛番手から綿番手へ、換算して置き換えるのはかなり面倒と思いがちですが、「番手換算表」があります。プロの方も使っていたりします。ポンドやヤードになじみがなくても、使い慣れている番手に置き換えられれば、太さはイメージしやすいはずです。

大切なことは、糸の太さと何羽の筬を使うかという関係。 そして、たとえば、縦緯同じ密度で織った場合にどの程度の厚さの生地になるか?・・・ということだと思うのです。

正絹を使って本格的に着尺を織る場合はさておき、よく使われる綿と毛は、「番手という太さ」と「撚りあわせた本数」で表示されます。欧米の本でも同じ表示が使われています。

手織に限らず、使われる/作られる糸の太さはほぼ決まっています。よく使う番手と太さがイメージでき、数が多いほど細い、数字が倍になれば、太さは半分になるという基本さえわかれば、知識として、充分だと思うのですが・・・・。毛の紡績は比較的自由がきくので、端番手もよく見かけます。

綿は、60,40,30,20,16、10,8   毛は、20,10,8,7,6,5,3,1

撚りは、2本、3本撚りが一般的。表示は、2、3という数字から撚り本数と想像できます。
それ以上の撚り本数は、機械の都合から撚糸を繰り返すようで、2×3×2・・・と×で追加表示されています。綿糸と毛糸では、番手と撚り本数の表示の分子と分母が逆になります。


最後に共通番手。いわゆるテックス番手のことです。何番手ではなく、TEXで表示したと思います。繊維の種類に関係なく使われる番手ですが、さまざまな国や産地の糸を使う工場などで太さを換算する必要があるときなどで使われていたように記憶しています。手芸糸のショップの「共通番手」という言葉と混乱しやすいですね。


※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。掲載文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年3月6日金曜日

綿のジュウロクバンソウシ

スウェーデンの手織りの洋書には、コットンリンと綿の16/2がよく使われています。

綿糸の16/2・・・・16番の太さの2本撚りの糸。「ジュウロクバンソウシ」と私は言っていますが、手織りの世界では、「ジュウロクのニ」と言うらしいのです。手織の糸を買う時にいつも聞き返されます。

この16/2 販売していた新日本橋の糸店では、廃番になり、自社製の織機や糸、洋書を販売していた所でも扱っていない。関西方面で販売している染糸は、編物用のようなやさしい色が多い。つまり、洋書を見ながら手織りをする人は ほとんどいない ということなのでしょうか?それとも、輸入で対応?2本引き揃えれば、コットンリンとほぼ同じ太さ・・・・16/2は、優れもの。

番手は、糸の太さ。ですから、どちらの糸がどの程度太いかなど太さを比較する時にも役立ちますが、日本の手織りの本では、重さと長さを換算するために使う数字のような説明になっていると感じるのは・・・・・私だけ?


さて、16番双糸が廃番なら、30番4本撚りを使えば、ほぼ同じと思っていましたが、大変なことになりました・・・・撚り方向がちがう。

よく見ると30/2×2。追撚をかけて撚合せたためか、ふっくら感も少ない。よく見ないで、双糸と一緒に経糸に使ったのは、迂闊でした。

あげく、レップ織の経糸。1cmあたり36本。
話には聞いたことがあるように思いますが、絡んで、絡んで、仮筬から抜くのに一苦労。綜絖通しの最中も絡む。綾棒も滑らない。単に密度があるのが原因とは思えません。

別に呼び方はどうでもよいと思っていたのですが、「○○の二」とかではなく、2本撚りの糸であることを確認するためにも、どうやら「ソウシ」と呼ぶことは大切。3本撚りは「ミコ」とかいいますが、これはあまり使われない呼び方。そして、それ以上の撚り本数の呼び方に愛称がないのは、やっぱり あまり一般的に使わない糸・・・撚糸機もないのでは?と思ったりします。 



2015年3月3日火曜日

北欧の手織りへ

海外の手織りを本を見ながら勉強してみようと4冊の本を選んだのは、2012年8月。

「平織、綾織(紗紋織)、朱子織、変化と組合せ・・・・・欧米の手織は、名前が違うだけ。手織機を使う手順は同じ。」と思って、手織りの基礎から書いてあるアメリカとスウェーデンの本を同時に選んだのは、あまりにも 考えなし でした。同じだったのは、最初の織物の定義と基本組織の章だけ。

日本から手織の勉強で留学する先といえば、真っ先にイメージするのはスウェーデン。最近はスウェーデンで勉強した後に渡米してさらに手織を勉強する方も少なくないと聞きましたが、日本から、アメリカへ留学する人は多いのでしょうか?著作などご存知の方は教えていただきたいです。


安易な私は、北欧とアメリカ(正確には、北米)の手織の具体的な違いは、組織図の記号・・○×数字■□・・が書きやすい/書きにくいなどの理由で違うのかと思っていました。私が手織をしていなかった30年の間に、アメリカの組織図は多くの人に使われている織機の特性や多綜絖にあうように検討されて、みごとに進化していました。
スウェーデンへ留学したり、来日されたりした先生方は、アメリカの手織機や組織を北欧式に置き換えて説明していることがあります。北欧との見わけもしやすいように改良されたアメリカ式の組織図に慣れてしまうと、北欧式に置き換えるのは、スウェーデンの滑車式で織り始めた私ですが・・・・容易ではありません。
アメリカの本の時は北米式、スウェーデンの時は北欧式(スウェーデンとフィンランドは踏木番号の順番が違うようですが)と頭のスイッチを切り替えるのが一番簡単と気付きました。

国立ヘルシンキ手工芸大学を卒業した方が日本で出版された本には、「組織図において黒は下のラムに結び、白は上のラムに結ぶ。」と書いてあります。著者が四角を塗りつぶす北欧式のタイアップの書き方はそのままで、結び方はアメリカ式に置き換えたのでしょうか?それともスウェーデンとフィンランドのタイアップが結び方が反対なのでしょうか?スウェーデンのあとにフィンランドも・・・興味があります。

さて、独学の最大の難関は、自分で織りあげるまで、「実際の布を見ることもさわることもできない。」
頼りになるのは写真や組織図だけ。これだけで、「アメリカのこれとスウェーデンのこの部分は似ているから同じ」と一括りにすることは、似た点を見つけ出して、つなぎ合わせて・・・・一度に両方の勉強を終える?どう考えても無理があります。いきなり、オリジナルの作品を完成させることはできそうですが。
スウェーデンや日本のように織物の伝統があると、組織だけでなく素材や柄の傾向も慣習のようなものがあると感じていますから、そのニュアンスは大切。組織が同じだから・・・という区分はちょっと乱暴に思えます。


北欧の手織りの本も何冊かありますが、スウェーデン語はわからないので、写真右の英語の本がたよりです。多少、アメリカ向けを配慮した内容になっているような気もします。

そして、また、いつの間にか 書籍 は増えていく・・・・のでしょう。