2015年7月31日金曜日

ふりかえればカウンターマーチのことばかり

アメリカを経て、やっとスウェーデンの本に到達して、これから本格的に織り始めようというのに、織機の前にすわる気がしない。夏バテか・・・?

英国のウールの織糸の購入量をケチってみたり、もらった糸や余り糸を組み合わせたりしていたら、どうも気持ちが 内向き になってしまったらしい。

打開策は、輸入の真っ白なリネン糸など購入して、1m余の幅のテーブルクロスかカーテンなど延々と織ること。いきなり生活が活気づいて、夕食の献立までが充実するのがわかっていても・・・先立つものがおぼつかない。余裕のない趣味ほど情けないものはない。

「多綜絖」とかいうものを本気で織ってみようかと、織機の部品を追加購入して織り始めて、気がついたら3年。
もしかすると、カウンターマーチ狂で、4枚綜絖だと気持ちがアップしないのかもしれない・・・・・。いや、やはり原因は この暑さ。 
で、3年間で、何がわかったか書きだしてみました。欧米の手織りをするなら、知識として、たぶん最低限必要なことばかり。日本語の適切な書籍が出版されていないとしても、天秤式(カウンターマーチ)織機は有名ですから、教えているお教室は、気づかないだけで、あちこちにあるのだろうと思います。

1.カウンターマーチ式の常識的な経糸の掛け方とタイアップをそのままで経糸をかける方法など基本的な織機の使いかたと準備のしかた。

2.多綜絖の場合の踏み木の調整法。

3.カウンターマーチの意味と天秤式の呼び方、西欧と東洋の概念の違い。

4.現代の手織で使われている3機種。カウンターマーチ式とジャックルームとろくろ式の関連性と共通点と違う点。

5.日本で洋織機を使用してよく勉強した人ほど、カウンターマーチとは、唯一の中口開口で、ろくろ式は下口開口と間違った知識を持っている場合があるということ。

6.国によりメインの織機は違い、それぞれに対応して組織図が変化、発展しているということ。

7.カウンターマーチ式の特性とこの織機でしか織れない組織があるということ。

8.カウンターマーチ式で織る多綜絖は、単に綾織などで綜絖枚数を増やした・・とかではなく、ブロック柄のセオリーで、地綜絖と柄綜絖を使ってデザインできるということ。

9.織はその土地土地でとれる植物や動物の繊維を糸にして織る・・・・そして、織機もその繊維が織りやすいように変化してきたということ。

10.カウンターマーチ式とろくろ式は、織機の構造の違いというよりも明らかに文化が違うということ。世界地図に時間軸、つまり歴史を重ねないと、織機も織物も理解しにくい。ここでも織は、三次元の世界。


織と織機は、どうも料理に似ているような気がしてなりません。どちらもその土地の畜農産物を加工する行為で、その土地の生活に密接にかかわっています。そして、どちらも人が人となる前から人と共にあった・・・という先生もいらっしゃるようです。

料理の基本は、世界中同じ・・・焼く、煮る、炒める、蒸す、揚げる・・・とか聞いたことがあります。基本は同じだからといっても、和食の先生にフランス料理を教えていただくと、それなり。ろくろ式の織を得意とする先生に・・・・・教えを乞うていませんか?


※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。掲載文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年7月28日火曜日

ジャカードは手織り機ではないはず

実際の工場で、生地を生産している「ジャカード機」を見たことがあります。900口、1800口、二連、紋紙、ハツリ・・・・普通の二階家屋の屋根裏まで届きそうな機械の大きさはさておくとしても、紋紙を作らなければならないし、織機に紋紙を乗せるのも一仕事。あげく、紋紙を作る機械も必要。個人用に数m織るくらいでは、あきらかに、織るまでの手間や費用がかかりすぎ。今は、コンピューター化されたといっても、個人の趣味で購入して楽しむような価格とは思えず・・・。

手織教室のツアーとか、インテリアコーディネーターの講習会とかの工場見学会・・・・以前は、あったようですが、今も続いているのかはわかりません。どのような商品を、どのような状態で織っているかは、確かに、企業秘密。繊維産業の環境も変化して、秘密度は一段とアップしているように思えます。

個人相手の手織り教室でも、入会したいと見学を希望したら断られたこともあります。新しい織機の実物を見たいと希望したら、無料では対応できないと金額を提示されたこともあります。お行儀の悪い「ひやかし客」が多いから?氏素性のわからない人には代価の支払いを求めるのが、手織りの世界の常識?それとも、企業秘密?


さて、学校では、手織を専攻しスウェーデン製のカウンターマーチを持っているという方に、この2枚の写真をお見せしたとき、

「大きなパターンの柄は、ジャカードの織機でしか織れないと思っていた。」

確かに、国内で織りの組織の専門家といえば、ジャカードの工場で、意匠とか開発を担当している方になるのでしょう。たぶん、この写真や海外の手織りの本にある同じような作品の写真を見せれば、「ジャカードで織れるよ。」と返事が返ってくると思います。


ジャカード機でも織れるだろうし、手織り機のカウンターマーチ式ならば織れる。


1970代には国内でも参考書籍として読まれていたらしい英訳本『Manual of Swedsh Handweaving』。最後の「織と織の道具」の章にジャカード機の写真が載っていますから、手織機だと思いたくもなります。でも、日本で手織り機といえば、普通は、家庭でも使える織機のはず。

国内の手織りの本の「織機の分類」に ジャカード機 が入ってしまったのは、少なくともこの二つの偶然とHand Weavingの解釈の違いのように思えます。
それとも、本当に、個人の家で普通に使えるようなジャカード機があるのでしょうか?

たぶん、スウェーデンの織物学校では、組織を手織りで一から学んで、工場で生産をするような布地関係のスペシャリストになる方もいるので、最後にジャカード機の説明があるように思えます。もう一度、じっくり読んでみますが。

機械化、コンピューター化されたといっても、組織や地厚感、しなやかさなどがイメージできなければ、仕上がりの布のイメージもできないはずですが、日本は考え方が違うのかな?

さて、アメリカの本では、手織りとは・・・という定義について書いてあったりします。個人用の多綜絖の電動の織機(これは機械の特性からするとドビー機の一種?)もありますから、手動/電動では、区分できないようです。シャトルを手で投げれば手織りという考えもあるようですが、では、フライシャトル/バッタンを使った場合は、機械織りになるとかならないとか。結論はともかくとして、いろいろ考えていることに驚くことばかり。

国内で手織をする人は、文章を読むのも書くのも嫌いという方が多いのだそうです。集まって手織りをしながら、日々の暮らしの話をする・・・・織るものや場所は変わっても、昔ながらの日常の風景が手織り機と共に残っているようです。


※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。自分の知識や考えと違うからと直接に掲載文の訂正や書き直しをすると、違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィールを書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年7月21日火曜日

書籍;マリン セランデルのスウェーデン織

豪華本だと思います。Malin Selander/マリン セランデルとその作品に出会うきっかけになったと思うにはあまりに贅沢な本です。彼女の本は、他にも何冊か日本で出版されているようで、スウェーデンの手織りをするほとんどの方が、「色彩の魔術師」とよばれるこの手織り作家をご存知のようです。

作品の作者である著者は、「織物のデザインをすることは、製法と材料と色との三つ巴の葛藤をともなって意図した目的にかなった布に調和させる仕事」と書いています。タペストリーやアート作品ではなく、日常生活に使える「織り布」にこだわり、伝統的な技法をふまえて生まれた魅力的な布ばかりです。

この本は、たぶん英語版の「SWEDISH SWATCH」のYELLOW、BLUE、RED、GREENの4冊で発表された本と掲載されている作品は同じだと思うのですが、読み比べていないので詳しいことはわかりません。
最初のイエローシリーズを1962年に発表し、最後のグリーンシリーズは、1978年。この仕事に20年ちかくを費やしたと書いています。

日本向けに、特別に編集して発売された本で、書籍「スウェーデン織 技法と作品」の著者が監修と翻訳をしています。

「マリン・セランデルのスウェーデン織」 マリン セランデル著、山梨幹子;監修・翻訳 婦人画報社 昭和55年11月;発行

マリン・セランデルは、巻頭で、ほんの気まぐれからスワッチ(織見本)の付けることを思いついたと書いています。印刷されたページに布を貼り付けたら、ニュアンスが伝わる・・・・。

掲載されている写真は、原寸より大きくしたとありますが、実際の布地が貼られているような印象さえあります。また、色は大切な要素という考えから、シリーズは色相別に4つにわけられ、それぞれ19~21点程。合計81点。ほとんどが4枚綜絖以内の作品で、6枚綜絖以上は、ダブル織やドレルなどの技法を用いた20点ほどです。この日本語版には、各カラーのグループから2点づつ選んだ実際の布地が合計8枚ついています。

このほか、原書では、作者が伏せていた作品の題名が記されている・・・・花、鳥、女性の名前、音楽とスウェーデンの自然や空気感などが感じられるような配慮がされています。各作品には、用途、織法、材料、おさ目、打ち込み、綜絖通しと踏み木順と簡単な説明がついています。訳者によるMEMOもあり、作品の理解や使い方などの発想の手助けとなります。織機の使い方や経糸の掛け方などの初歩的、基本的な説明はありません。

スウェーデンで手織の勉強をし、生活や文化などへの理解もある優れた監修者であり訳者の存在があって、日本でスウェーデン織と、作家マリン セランデルの多くのファンが生まれたと感じる1冊です。

2015年7月14日火曜日

書籍;スウェーデン織 技法と作品

1970年の半ば過ぎ、六本木の交差点から麻布十番へ通じる坂を下った右手にスウェーデン・センターがありました。この中にあったショップで『へムスロイド』ということばを初めて知りました。

この本によると、『へムスロイド』とは、「家庭の手工芸、すなわち、ホーム・ハンディクラフトを意味するスウェーデン語」と説明されています。

日本では、女が家で家族の着物を織った時代はとっくにおわり、手織りは職人かタペストリーやオブジェを創作する芸術家のものになっていて、普通の生活とはかけ離れた行為のような印象さえ生まれ始めていたように思います。

スウェーデンで織物を学んだ著者は、スウェーデンの手織の技法や色彩の美しさだけでなく、手織した布を家庭で使うということの大切さを熟知していたようです。作家というよりも、伝統を受け継いできたスウェーデンの家庭での手工芸の紹介者としての魅力を感じます。
活動は、日本におけるスウェーデン織の基楚となったように思えます。

この本では、床置きの大型の手織り機を使用た作品が主ですが、著者にとっては、大型機をよる織もフレミッシュ織や紐織も・・・・・・織というよりも、『ヘムスロイド』、つまり、家庭の手工芸のひとつにすぎないようです。

スウェーデン織 技法と作品 昭和54年5月初版
著;山梨幹子 発行;婦人画報社

まず、スウェーデンに伝わる基本織法から代表的な28種を選び、「ローゼンゴン」「ハーフドレル」「ムンテカルベ」など聞いたことのある組織の由来や特徴が写真とともに説明されています。

次の作品・パターン集では、パーテーションやカーテン、クッション、テーブルクロス、服地など107点。作品の写真と作り方や使用糸、組織図などがあります。

手織の計画とプロセスも紹介されています。使われている道具や織機は、もちろんすべて北欧のものです。使われている織機は、カウンターバランスで、ニッケピン(ホース/天秤)を吊り下げるスタイル。4枚綜絖の織機ですから、極端に複雑な組織はありません。素材の良さを感じ、色彩の美しさを楽しめる作品ばかりです。

初版から約45年が過ぎていますので、たった4点ほどの洋服となった作品見て、古くさいと感じる方もいるようですが、伝統に根ざした技法と手織地としての魅力は色あせることはないように思われます。

技法と作品の写真にばかり目を奪われてしまいますが、スウェーデンの暮らしと織物についても3パージほどの紹介文があります。前書きには、「スウェーデンの織物は、人々の生活の中に生き、歴史の中に、風土の中に生きてきたものです。(中略)わたしたちがスウェーデンの織物から学び得る究極のものは、そのパターンや技法だけにとどまらず、実生活の中に生き、豊かにする織物は何かということです。」とあります。

家族や家庭が問い直される今・・・・へムスロイドに何かを見つけられるような気がします。

2015年7月7日火曜日

ローズパス織り?ローズパス通し?

経糸と緯糸でダイヤ柄を織り出したマフラーの技法名に「ローズパス」と書いてあると、ローズパスは、織り方だと思いたくなります。模紗織り、風通織り、オーバーショット織り、サマー&ウインター織り・・・・そして、ローズパス織り?

先日の多色を使ったマットもローズパス。でも、ダイヤ柄のマフラーとは違う緯糸の柄。スウェーデン織りでよく見かける「人形を織り出した小さなタペストリー」もローズパスの一種で、バウンド・ローズパス/ブンデン・ローゼンコンと書いてあることもあります。

織りの組織を経糸緯糸の交差の仕方から分類したり、方眼紙を白黒で塗りわけた組織図からの綜絖通しと踏み木順を書き出したり・・・・『織あがった布を基本に考える』いわゆる日本式では、どうしてこんなに違う3種類の織物に共通してローズパスという名前がついているのか?不可解です。ローゼンゴン地方に伝わる織り物?なんて、思ったりして・・・・。この話の先は、スウェーデン語を学ばないとわかりませんね。
綜絖の通し方で分類される海外の本などでは、ローズパスは、綾織の綜絖通しのしかたの一種。
これなら、3種類のそれぞれ違うように見える織物にローズパスという名前がつく理由が説明できます。日本でも、順通し、山道通し、破れ通しなどの通し方と名前がありますが、通しやすいとか、通しにくいとか、作業性の話が主。でも、ここにローズパスを綜絖の通し方として追加しておけば良さそうです。

さて、山道通し/ポイントツイル の「5ポイントツイル」と何が違う?
4枚綜絖で5ポイントツイルがよく見かけるローズパス。でも、本には6枚、7枚・・・・ローズパスは4枚綜絖と決まっていないようです。考えられる唯一の違いは、上のポイントと下のポイントが同じ綜絖にあること。たったこれだけのことで、ポイントツイルでは思いもよらない変化のある織物が生まれるなんて・・・・。先人の知恵に感心するばかり。

綜絖通しの書き方は、ポイントが重なるシャフト/綜絖を内側に置く場合と、手前か奥に置く場合の2種類があります。綜絖のバランスを重視するか、通しやすさを優先するかで、織機や使う人により好みがある訳です。
同じ綜絖通し順なのに、国内では、異なる通し順とする場合があるようです。レピートの基礎を理解していれば気づいているはずです。が、作業のやりかたを教える/習うことが大切だからでしょうか?古いコレクションを集めたパターン集からほぼそのまま写したからでしょうか?

バウンド・ローズパス/ブンデン・ローゼンコンは、「基礎技術から応用まで 手織り」土肥悦子著 昭和51年初版 に、「細かい連続模様」という題で紹介されています。ローズパス通しだけではなく、山道通しを使った織り柄も紹介されています。お人形や動物をヨコに並べていく愛らしい図案なら、山道通しのほうが適しているかもしれません。技法名をつけるなら、「バウンド・ポイントツイル」??

いままで、ローズパスのパス/ pass は「小道」と思っていましたが、「通過する。通す。」つまり、綜絖を通すという意味も含まれているのかもしれません。古くから伝わる名前の意味や由縁は、一つとは限りませんから。
それに、この上下のポイントのあるシャフトを内側に入れた通し図、最近はあまり使わないようですが・・・・バラの花が連なるパターンのようにも見えませんか?


※意見のある方は、自分の考えとその理由を必ず書いてください。掲載文が間違いだとして一方的な書き直しや書き足しをされると本来の主旨と異なってしまう場合がありますのでご遠慮ください。手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールを書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年7月3日金曜日

ローズパスのサンプル織のランナー

ローズパス/rosepath、スウェーデン語で、ローゼンゴン/rosengang(aの上に○○がつく)

このスウェーデン織の本によると、ローズパスには2種類あり、普通(?)のローズパスは、スウェーデンでは、最もよく知られている「art weaves/芸術的な織り方」だと書いてあります。

ローズパスは、バーズアイ/bird's eyeやグースアイ/ goose eyeとは、大きさが違うダイア(ひし形)の柄・・・と思っていたのは、アメリカの本の影響のようです。「組織織りの本」とか「古くからある英語の組織の本」とか呼ばれているあの本。

綜絖通しの本数の違いだけではないらしいと、イラストと組織図を参考に、まずは、サンプル織をすることにしました。

経糸は、漁網糸。若い頃に、マットの経糸に使った残り糸。綿や麻の経糸に慣れてしまったためか、よく伸びるので、織初めの経糸のテンションを調整するのも、結ぶのも、一苦労。

経糸の密度と緯糸のバランスもわからないまま、残り糸の綿糸を適当に引き揃えて織り始めました。

踏み木の組合せは、あっているはず。裂き織のマットを織ると楽しそうな組織。

色は同系色。キカシはホワイトとイエローで、それなりにバランスよく配色したつもりなのですが・・・・・変形してもわかるはずのダイヤ柄の見わけがつきません。基本的な柄組織の構成を理解せずに、色の濃淡を決めたのが原因のようです。

「新しくて、モダン」という評価もできるのかもしれません。が、ローズパスの特徴がほとんどありませんから、ローズパスの組織を使う必然性はあまり感じられず・・・・なんだか、無駄使いした気分。
 参考書籍;Manual of Swedish Handweaving
4枚綜絖 6本踏み木  筬 30本/10cm
経糸;漁網糸 6号 緯糸;綿 20/2、16/2など 
サイズ;75×18cm