2015年7月21日火曜日

書籍;マリン セランデルのスウェーデン織

豪華本だと思います。Malin Selander/マリン セランデルとその作品に出会うきっかけになったと思うにはあまりに贅沢な本です。彼女の本は、他にも何冊か日本で出版されているようで、スウェーデンの手織りをするほとんどの方が、「色彩の魔術師」とよばれるこの手織り作家をご存知のようです。

作品の作者である著者は、「織物のデザインをすることは、製法と材料と色との三つ巴の葛藤をともなって意図した目的にかなった布に調和させる仕事」と書いています。タペストリーやアート作品ではなく、日常生活に使える「織り布」にこだわり、伝統的な技法をふまえて生まれた魅力的な布ばかりです。

この本は、たぶん英語版の「SWEDISH SWATCH」のYELLOW、BLUE、RED、GREENの4冊で発表された本と掲載されている作品は同じだと思うのですが、読み比べていないので詳しいことはわかりません。
最初のイエローシリーズを1962年に発表し、最後のグリーンシリーズは、1978年。この仕事に20年ちかくを費やしたと書いています。

日本向けに、特別に編集して発売された本で、書籍「スウェーデン織 技法と作品」の著者が監修と翻訳をしています。

「マリン・セランデルのスウェーデン織」 マリン セランデル著、山梨幹子;監修・翻訳 婦人画報社 昭和55年11月;発行

マリン・セランデルは、巻頭で、ほんの気まぐれからスワッチ(織見本)の付けることを思いついたと書いています。印刷されたページに布を貼り付けたら、ニュアンスが伝わる・・・・。

掲載されている写真は、原寸より大きくしたとありますが、実際の布地が貼られているような印象さえあります。また、色は大切な要素という考えから、シリーズは色相別に4つにわけられ、それぞれ19~21点程。合計81点。ほとんどが4枚綜絖以内の作品で、6枚綜絖以上は、ダブル織やドレルなどの技法を用いた20点ほどです。この日本語版には、各カラーのグループから2点づつ選んだ実際の布地が合計8枚ついています。

このほか、原書では、作者が伏せていた作品の題名が記されている・・・・花、鳥、女性の名前、音楽とスウェーデンの自然や空気感などが感じられるような配慮がされています。各作品には、用途、織法、材料、おさ目、打ち込み、綜絖通しと踏み木順と簡単な説明がついています。訳者によるMEMOもあり、作品の理解や使い方などの発想の手助けとなります。織機の使い方や経糸の掛け方などの初歩的、基本的な説明はありません。

スウェーデンで手織の勉強をし、生活や文化などへの理解もある優れた監修者であり訳者の存在があって、日本でスウェーデン織と、作家マリン セランデルの多くのファンが生まれたと感じる1冊です。

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