2014年12月29日月曜日

良い新年をお迎えください

よく本を読んだ一年でした。

英語の洋書を読むなら、英語で何が書いてあるのかわかればよいのですが、日本語にするには、日本語を知らないと的確には訳せない・・・・・そんなことを実感した一年でした。

織物に関する日本語訳は、説明や言葉が長くなることを嫌い、身近な単語で代用して、そのまま使い続けている場合があるようです。

日本の織物の言葉が、それぞれの地域や集団の中で簡単に伝えあう「符号」のような使われかたをしてきたためかもしれません。来年は、もう少し日本の書籍を読むことができるとよいのですが。


このブログの毎回の長い文章を読んでくださった方々に、感謝をこめて。

どうぞ良い年をお迎えください。


2014年12月25日木曜日

クリスマスカラーでColor and Weave


この季節に使いたくなる色は・・・赤と緑、そして、ホワイト。
ダークを赤と緑にわけて、クリスマスカラーのカラー&ウィーブです。

少し深みを出そうかと、緑は濃淡の2色使い。
素朴な印象が欲しかったので、平織にしました。

ストライプも魅力的だったのですが、これでは、カラー&ウィーブにはなりませんね。

緯糸の4丁使いは、予想以上に手間取りました。

小さなポーチにするつもりでしたが・・・やっぱり、間に合わず。
なんとも忙しい年末。

でも、せっかくですから・・・
Merry Christmas!

参考書籍;COLOR~AND~WEAVE DESIGN Ann Sutton著
使用組織;平織
使用糸;ラムウール100% 2/11.3
ホワイトW-001 レッドW-040 他 手織り工房タリフ 
使用筬;50本/10cm

2014年12月19日金曜日

洋書;COLOR-AND-WEAVE DESIGN

50色もある英国のウール糸見本が届くと、色と色を組合わせて織ってみたくなります。

COLOR~AND~WEAVE DESIGN A PRACTICAL REFERENCE BOOK
著;ANN SUTTON 1984年

この本の著者 Ann Suttonの作品は、アルバート美術館におさめれれていて、BBCテレビの番組にもかかわったと紹介されてます。
英国ではよく知られているテキスタイルデザイナーのようです。タータンの美と歴史についての著作にも参加しています。

タータンチェックのような大柄から地紋のようなカラーウィーブまで・・・・格子のウールの布地といえば、英国 となるのでしょう。


著者は、「Color and Weaveという言葉から、色(カラー)と織(ウィーブ)の両方が使われているすべての布地について、論じることはできる。しかし、カラー&ウィーブという言葉は、テキスタイルデザイナーの分野では、すでに特定の意味がある。」と書いています。

カラー&ウィーブは、特定の技法を示す言葉。
平織や綾織など基本的な組織で、濃色と淡色の糸を経糸と緯糸に規則的に配列して組み合わせで柄が出てくる技法。よく知られているのは、千鳥格子や網代格子(あじろ織)。
カラー&ウィーブで織柄の名前があるのは少ないようです。自分が発見したかのように変な名前を付ける方がいないことを願うばかり。この本の表紙の布もすてきですが、織柄の名前はありません。

さて、この本では、カラー&ウィーブを組織図で描く方法、オリジナルのデザインを作る方法などが丁寧に説明されています。そして、シェパードチェック、グレンチェック、プリンスオブウェールズなど、伝統的な布地についても簡単な説明。テキスタイルデザイナーである著者の話は、目付、糸の太さ、組織、色の配列本数の違いなど具体的で、文化や歴史からの見かたとは一味違います。

そして、この本の大半を占める512点の実際に織られた実物大カラーのパターン写真。
1本づつ規則的に順番に増やしたマス見本です。平織と綾織があります。

コンピューターソフトが発達したので、誰でもパターンを作ったり変更したりできるようになりました。もっと多くのパターンが簡単に作れるのですからこの本のパターン写真の価値は失われたようにも思えます。

でも、著者はこのサンプルの中から選び、色や素材を変化させて、すてきな布地を織りあげています。
的確に選び出せるセンス・・・・・すぐれたデザイナートと凡人との違いなのだろうとつくづく感じます。

2014年12月16日火曜日

Color and Weave と色糸効果

色糸効果の課題として、千鳥格子を織っているのを見かけました。
「百聞は一見に如かず」といいますが、写真で見ただけでは、人によって解釈がいろいろになる場合もありえる・・・・・。さてさて、目的が制作中の作品の紹介ならば、技法の説明だと思ってはいけない。よく見れば、濃色は数色使い。うっかり、海外の手織の考え方を持ち出してはいけない。


Color and Weave や Color and Weave effect と書いてあると、色糸効果 と訳したくなります。色糸効果は聞きなれた言葉なので使いたくなる・・・・・。でも、sinking shedを下口開口と訳して混乱した例もあるので要注意。
以前から疑問に思っていたのですが、Color and Weaveと色糸効果・・・どうやらこれは、別物。


私が手織りを習った時、「色糸効果」とは、たとえば、経糸に黄色、緯糸に緑色を使うと、黄緑色に見える・・・確かそんな技法だったように思います。つまり、混色効果。

違う色の原毛を混ぜ合わせて糸にするのと区別して、違う色の糸を縦緯にして織るのを「色糸効果」と言ったように思います。

もう、30年以上も前の話ですから、記憶違いかもしれません。

「緯糸に違う色を引き揃えて使うと、混ざった色に見える。」も、色糸効果とする場合もあるようです。

当時の課題で、縦糸と緯糸に8色程を使って平織のサンプルを織ったはずですが見あたらず・・・箱の底から出てきたのは、3本1本の変則の平織のサンプルでした。
当時から、色彩にはよほど興味があったらしい・・・・。 


さて、Color and Weave。カタカナのカラーアンドウィーブという言葉で習ったり、見かけたりした覚えはありません。

英国のテキスタイルデザイナーの本によると、 
「Color and Weaveという言葉から、色(カラー)と織(ウィーブ)の両方が使われているすべての布地について、論じることはできる。しかし、カラー&ウィーブという言葉は、テキスタイルデザイナーの分野では、すでに特定の意味がある。」

平織や綾織など基本的な組織を使い、濃色と淡色の糸を経糸と緯糸に規則的に配列して組み合わせで柄が出てくる技法と書かれています。

つまり、千鳥格子やログキャビン(あじろ織)など。これ以外に知られている柄は少なく、チェック(格子)になってしまうようです。


「千鳥格子」という呼び方には、格子を織るときのように、経糸は色糸を並べている という理屈が感じられますが、「あじろ織」というと、まるで織り方で柄を出しているような呼び方です。

日本では、千鳥格子は千鳥格子。あじろ織はあじろ織。組織や技法を理論つけて分類したり、名前を付ける時に考慮するのは、苦手のようですから、カラーアンドウィーブという分類はないのかもしれません。
それで、写真のダイヤ柄のような細かな地紋の柄などはあまり見かけないのでしょうか・・・・ちょっと残念。

2014年12月12日金曜日

羊飼いのチェックのマフラー

スコットランド製工業用紡績糸を織ってみたいと思っていました。
スコットランドといえば、タータンチェック。伝統的なチェックをさかのぼっていくと、Shepherd Check  シェパード・チェック/羊飼いのチェック に行きつくと書かれています。

縦糸緯糸共に、6本の黒い糸と6本の白い糸から織り上がるチェックで、組織は、2/2の綾織。
色は、羊そのままののホワイトとブラック。正確には、濃いブラウン。
スコットランドやハイランドの羊飼いによって、さまざまな使い方ができるブランケットタイプの衣服で大きさは・・・・・・と、説明が続きます。

シックな色彩のタータンチェックを織るつもりでしたが、まずは、シェパードチェック。

初めて使うウール糸は、特徴そのままの色を使いたいと選んでいた色も、ホワイト、グレィッシュなブラウン、そして英国ですから、敬意を表して・・・ロイヤルブルー。



ただし、ブラウンとブルーを交互に配置するとガンクラブチェック(アメリカ式の呼び方)になってしまう。
わたしが織りたいのは、ブラウンは薄いけれど、シンプルなシェパード・チェック。

説明書のとおりの密度で織ると、ざっくりとした感じ。とてもラムウールとは思えませんでしたが、仕上げしたらなめらかな風合いに。

「線を一本引いたら、デザインになる。一色増えただけでも、生産工程はびっくりするほど変わる。」と、話していたテキスタイルデザイナーは誰だったでしょうか。

首に巻いたとき、ロイヤルブルーの交差は・・・・・あなたのハートのうえに。
参考書籍;COLOR~AND~WEAVE DESIGN Ann Sutton著
使用組織;2/2綾織 4枚綜絖 4本踏み木
使用糸;ラムウール100% 2/11.3
ホワイトW-001 グレイッシュブラウンW-068 ブルーW-026 手織り工房タリフ 
使用筬;60本/10cm
仕上りサイズ;130×29cm フサ8cm

2014年12月5日金曜日

手織の初級でであった洋書

「むつかしいことや理屈はいらないから、やり方だけ教えて・・・・」という方がいます。合理的なのかもしれませんが、そんな方にはお勧めできない本ばかり。

最もおもしろかったのは、既に理解していて読む必要がないと思っていた欧米の「手織の初級」や「組織の基本」についての本。料理に例えれば、和食料理の基礎を習って終了しても、満足なフランス料理は作れない・・・・手織も同じでした。

ほとんどが、内容に納得した本に紹介が書かれていたり、巻末の参考文献から興味をもった本。ですから、織物の常識や基本に忠実な本ばかりになりました。

当初は、海外の手織り・・・ということで4冊ほど選び、平織から順番に気に入った作品を織りましょうと思っていましたが、綾織を過ぎたあたりから、北欧と北米の違い、つまり、考え方というよりも文化の違いなのだろうと思いますが・・・はっきりとしてきました。そして、載っている作品を 順番に織れば習得完了 というような単純な事ではないと気付きました。ですので、まずは、アメリカ関連に絞って20余冊。

技法やパターン、作品の作り方など内容はさまざまですが、必ず著者の前書きがありました。どのような人に向けて・・・なぜこの本を出版したのか・・・など。
本文でも「これらの組織/作品を、このような理由で、こう呼ぶ/選んだ」という定義と理由がはっきりと書かれています。ですので、自分の作品と制作のしかたと一般知識と技法と・・・あれもこれもと参考にした本の一部を写して組み入れたような内容や説明は見あたりません。

大学で教えデザイナーとしても活躍している方々や編集関係の方の著作が多く、織り方だけでなく言葉や論理面も整理され、丁寧に順を追って説明されています。

伝統として手織りが続いている国では、熟練者や親から直接に子供や孫へ伝えていきますから、定義や分類をして教えたり、学んだりするのは馴染まないのかもしれません。「風通織」といえば「風通織」、「昼夜織」と言われれば「昼夜織」がムラなくきれいに織れる技術を習うことが大切なことになります。もしかすると、織物の名前さえ必要ない・・・・。

とはいえ、昔からのやり方では・・・人それぞれだから・・・という説明に満足できず、もう少し論理的に順序立てて織機を操って織ってみたいと思うかたには、アメリカの手織の書籍は面白いと思います。それと、テキスタイルデザイナーをめざす人。

アメリカで手織りを復活させたといわれる人の著書には、布を織ることができても、組織とタイアップを理解していない人は、『Weaver/手織りをする人』とは呼ばない・・・とあります。やはり、文化が違うということなのでしょう。

2014年12月2日火曜日

北米の手織初級編を終了します


そろそろ先へ進みたくなってきました。

ちょっとした偶然から購入した『Learning to Weave』 Deborah Chandler著
アメリカでは、手織りの初心者はどのようなことを学ぶのだろうか・・・と読み始めて、意外なことばかり。

若いときに購入した日本で出版されている何冊かの「海外の織機を使った手織の本」とはあまりにも違いました。アート作品を作るのが「海外の手織り」で、他は日本の手織と大差はないと思い込んでいました。でも、やり方も記号も考え方も・・・説明のしかたも・・・違いました。

このアメリカの本にでてくる織機は、ジャッキ式、つまりジャックルーム。ろくろも天秤式も紹介程度でイラストも具体的な使い方もありません。
組織図や踏み木順も一見は同じなのですが、詳しく見ると違う点があります。この本とジャックルームで手織を勉強したらどんなにか楽しかろうと・・・しばし憧れました。が、ジャックルームが一般普及機になる前は、カウンターマーチでも織っていたことに気付きました。つまり、目の前にあるこの織機で織れるはず。

平織のハンドタオル、ランチョンマット。
綾織のひざ掛け、マフラー、ランチョンマット。ワッフル織のタオル。
ハニコムのカバー地。
ブロンソンレースのランチョンマット。スウェディシュレース、モクレノのサマーストール。ハックレースのテーブルクロス。
組織を理解したくて織ったオーバーショット、サマー&ウインター。
ブロックパターンのダブルウィーブ。
作品に使った組織数は約50点。

後半のオーバーショット、サマー&ウインター、ダブルウィーブは、タイアップをカウンターマーチ用に置き換える方法を調べて織りました。織機を買う余裕がないのも時として 好し です。

手にしたアメリカの本は、どれも織り方だけではなく、平織で学ぶべき基礎、綾織で学ぶこと・・・・論理的に系統だてて一歩一歩と複雑な織り方の構造へと理解を深めていく内容でした。

日本では、北欧と米国の区別がはっきりしないケースもあるようで、オーバーショットは、スウエーデンのハーフドレルの英訳名だという話も聞きます。でも、オーバーショットに織りこまれている数々のパターンは、まさにアメリカの風景。

始めに4冊の本を選んで、スウエーデンの手織りと北米の手織りを同時に学んで終えよう・・・は不可能でした。当然のことでした。

アメリカの一般的な織機について、組織について、パターンについて、歴史と文化の違いまで・・・大いに楽しみました。