2015年12月31日木曜日

ヒツジ年もあとわずか

このブログを始めて4回目の年末。

おせちを作りながら、手織は、料理に似ている・・・・ふと、思いました。

料理も、それぞれの国の料理があり、郷土の料理があり、
家庭料理もあれば、レストランのシェフ(職人)もいますし、工場で大量生産もしています。
手早く簡単な家庭料理もはやっていますしね。

どこのどんな料理を、どの程度まで、習いたいのか?学びたいのか?
料理で考えると簡単なのに、不思議ですね。

料理も、ひとつひとつ楽しみながら作ると、おいしく出来あがる・・・・のだそうで。

よい年をお迎えください。

干支の申(Counter March Juliaのラムと)

2015年12月29日火曜日

LIISAの取扱い説明書

預かってほしいと届いたLIISAと一緒に届いた説明書は、3種類。

写真右は、織機に限らず、「組み立て式」の何かを買えば、必ずついてくる「いつものよくある書面」。
織機の組み立て方や各部の名称(英語と日本語)、ヒモの結び方やタイアップ(ヒモのつけ方)のイラストなのコピー4枚。

写真中央は、Introduction of Finland Weaving  -1-は、糸綜絖で天秤式という北欧の織機を使うための一般的な内容。
天秤と各部とのタイアップのしかた、ドラフト(意匠図)との関係、経糸の巻きかた(機掛け)などA4版8枚程度。左の小冊子の和訳版ではありませんでした。

写真左は、この織機についての英文書。よく見ると、取扱い説明書・・・・トリセツ!
TOIKA社作成の小冊子 『THE FINNISH COUNTERMARCH LOOM』 
著作デザイン;CATHRINE KVARACEUS

まず、トイカの手織機の所有者のために、特別にフィンランド式のタイアップと経糸の巻きかたやカウンターマーチの特徴、知っておくと役立つことを説明したと書いてあります。

共通一般的な天秤式織機の使い方ではなくて、トイカ社のLIISAの使い方。ですから、今風に言えば、『織機LIISAのトリセツ』。台所家電とかには買えば必ず付いてくる・・・・・このように使うと、このように使いやすいです。ここが新しくなっています。この順番で使ってください・・・・とか書いてあるあのタイプのもう少し詳しい説明書。

本文は、織機の基本的なメカニズムの説明から始まり、カウンターバランスとジャックルームの織機の特徴から、カウンターマーチ式の織機の優れた点の解説。

次に、写真入りで組み立て方の説明。天秤からのYコードを下げるのは、綜絖の前か後ろか?経糸をつけるワープビームのバーは、どの程度の緩みが必要か?など戸惑いがちなことも書いてあります。

タイアップでは、『TRADITIONALTIE-UP』と『MAXIMUM POSSIBILITY TIE-UP(なんでも織れるタイアップ)』という名前の8本踏み木で4枚綜絖で綜絖を2枚ずつのセットで使うというやりかたが載っていました。さすが、天秤式とつぶやきたくなる・・・今まで見たことも聞いたこともないやりかた。毎回の吊替えが大変と感じる人には、お薦めのタイアップとあります。

経糸を織機に巻き取る方法は、「まず、ブレストビーム(胸木)をはずし・・・・・」と細かく順序立てて続きます。ラドルとキャッスルを上手に利用して、綜絖通しから筬通しまでしています。

知っていると思っていることでも、説明書を読むと、設計した人/会社は「こう使えば、このように使いやすい」と、考えたのかと合点がいくことが多々あり、楽しめます。


国内でTOIKAを使っているお教室を見学したことがありますが、この「トリセツ」のやりかたは採用されておらず・・・・日本人にはなじまなかったのでしょうか?

とにもかくにも、こんなにきれいな状態で、30年余り大切に保管していた持ち主に、敬服するばかり。


2015年12月25日金曜日

LIISAがやって来た

預かってほしいと言われ、突然、織機がやってきました。

30余年ほど前に購入したという、フィンランド TOIKA社の「LIISA/リサ」。
組み立てるには、たたみ2畳程の広さが必要なのだそうです。

織幅は120cm。奥行は、120cm。今使っているスタンダード型の織機よりも30cmほど短いので、脇から織機の中に入れるアキ部分はありません。

届いたときの状態は、左右のサイドはそのままで、はずされたヨコ木やビームなど・・・・・そのまま運び込まれて、角材の山。
天秤、綜絖バー、綜絖、ラム、踏み木は、コードでつながったまま。
即、使っても構わないとの心使いらしい。


勝手ながら、汚れが目立つので、コードや綜絖は外して洗うことに。
で、よく見ると、いろいろと手を加えたいことに気がつきました。たとえば、

・ナイロン綜絖は、つながったままなので、このままでは、順通し以外の綜絖通しは、やりにくそう。バーの端を結ぶ はずれ止め のコードもつけたい。

・システムコードを止めているのは、ほとんどがアローピン。踏み木のアンカーピンも差し込んでいないのですが、穴の大きさが合わなかった?製織中に外れたのでは?

・綜絖バー、筬、かまち・・・・どれにもセンター印をつけたい。

・8枚綜絖なのに、汚れている天秤は、半分だけ。使わないので残りは取り付けなかったのだろうと思いますが、安定して上下するのでしょうか?

・ワープクロスのバーは、2本を1cmほどの隙間で、何か所も抜けないように、しっかりと結んであります。どうやって経糸をつければいいのやら。

・前後のビームクロスは、巻をほどいてみるとそれなりの汚れ。ガンタッカーで止めてあるのですが、悩んだあげくに、クロスを外して洗濯。気の済むまで、大洗濯。

ここまですると、「預かっている」とは、言い難い。申し訳ない。

せっかくの8枚綜絖8本踏み木の織機・・・。
北欧の織機は、織幅が広いのと躯体がしっかりしているので、タピストリー制作機として平織だけという話は、よく聞きますが・・・・もったいないの感。

まあ、道具をどう使うかは個人の自由。よくわかってはいるのですが。


Well Come & Merry Christmas !



2015年12月22日火曜日

5枚朱子を織ってみる

やりかたを本で読んで想像するのも、組織図を書き方を考えるのも・・・手織りの楽しみ方はいろいろ。

そういえば、織機を組み立てないで、部屋の隅に置きっぱなしにしていたときも、織物の本は、見ていたし、読んでいました。が、やっぱり織ってみないと、「わからない・・・」「モノを作る楽しさはない・・・」と織機を組み立てて、座ったはずでした。

前置きはともかく、ローゼンコンまで読み進んだスウエーデンの手織りのマニュアルをあきらめて、『5枚朱子』を織ってみることにしました。ろくろ式でも工夫すると織れるのだそうですが、綜絖が奇数枚数の組織は、カウンターマーチの得意技。
糸は、すっかり大きくなっておじさんを通り越しそうな「いとこ」が子供のころに着ていたセーターの残り糸。叔母たちは、「色変わりの糸」と呼んでいたような気がします。

試織なので、とりあえず色はお許しをいただくことにして、残り糸と合わせて、広幅のストライプに。もちろん、ストライプが表面です。

「朱子は、裏織にする。」ことは、織物に少し詳しい方ならご存知のこと。ホコリがつかないようにとか、ジャカードやほとんどの力織機は上口開口だからとか・・・・諸説あるようで。

ためしに、朱子表を上にして、つまり、いつもどおり、表を見て織り始めました。

緯糸をたった5本ほど織ったところで、当惑。

・下がる経糸が少ないので、しっかりまっすく投げないと杼が落ちる・・・・これは、想定内。
・緯糸の打ち込みが均一に揃っているのかどうか・・・・緯糸は所々しか見えないので、打込みは手加減だけがたより。
・組織はあっているのか?踏み間違いはしていないか・・・・緯糸の1段1段がわからないから、わからない。ミミを持ち上げて裏側をのぞいては見るけれど。
・開口しても、密度があるので、どの経糸が下がったかは確認できず・・・・開きの悪い経糸を拾ったり、ひっかけてもわからない。

やっぱり、「朱子は、裏織するべし」です。工場でも、手織でも。

経糸は■と決まっているので、朱子(表朱子のこと)は、裏織りにするので、組織図は「裏返し」なのだと思っていました。だから、□に■の点々。
表朱子の組織はほとんどが経糸なので、「方眼紙を黒く塗るのが大変だから、黒と白を入れかえて書く」という説もあるようですが、裏朱子とどうやって判別するのでしょうか・・・・?

組織図は、設計図。生産現場の人に間違いなく伝えるための指図図面。だから、裏織りにするときの組織図は、裏返しで書く・・・・・。

組織図を書くことが楽しい人と、使うのが好きな人は、根本的な考え方が違うようです。
もしかすると、テキスタイルデザインを学んで手織りをする人と、現場を見た後に手織りに戻った人の違いかもしれません。

2015年11月11日水曜日

朱子織と日本の手織りと組織と

もう一度手織りをしてみようと思ったのは、アメリカの手織りの独習書にであったから。

日本の書籍では、手織りの組織について納得のいく説明が見つからず、投げ出したのは30年ほど前。毎回、日本式での話になると・・・組織のことも、織機のことも、停滞してしまうので注意はしていたのですが。

「朱子とサテン」を書いたのが、きっかけ。欧と米の手織りの書籍では、説明も図も同じ。一方、日本の本には1冊に3種類もの朱子点のとり方がのっていたりします。読んでいたスウエーデンの本にあった説明は簡潔でわかりやい。

日本の場合「途中をはしょっている(省略している)」では、どうしても説明がつかないと思うケースもあり、『飛び数』は「組織を書くときに使うことば」という人もいれば、名称につけて「何飛何枚朱子」という人もいます。
「たて飛び」と書いてあるか、「よこ飛び」と書いてあるかかで表朱子か裏朱子かの判断ができるらしい・・・・と思ったら、たて朱子とたて飛びの「たて」は、話が違うのが超基本というから、できるらしいと感じたのはまちがいのようで、わかったように思ったけれど・・・やっぱり混乱したまま。説明を聞き過ぎたということかもしれません。

結局、多種多様に感じるのは、勉強不足で、日本には日本の手織りの「正統」があるようです。

日本には「正則朱子」と「変則朱子」があるというから、欧米には、「変則朱子」がないのかと思ったら、「イレギュラーサテン/irregular effect」があるではありませんか。


さて、織るのに、最低でも5枚の綜絖が必要な朱子組織。組織が本当に好きな人は、自分の織機で実際に織れるか?織っていて楽しいか?は気にならないようで・・・。

朱子組織を学ぶのに、ご紹介いただいた日本の書籍は 『織物構造』太田 勤治著、『織物常識』(『織物知識』は誤記?) 津田 次作著 1925・1.1も 繊維工業大学の教科書。
予想していたとおり、近年の日本の手織りの組織の知識は、繊維工業から学んでいることにまちがいなさそうです。動力機用の知識を手織り用として、スライドして使っているので、海外の手織とは基本として学ぶ組織や説明などが違うのだろうと思いたいのですが。

朱子組織もダマスクに代表される柄織よりも、量産される服地用の「トロミ」とか「オチ」に関係する地紋組織の開発のしかたが教育のメインになるのかもしれませんね。

アメリカからスウェーデンへと海外の手織りの初歩を学びながら・・・日本の朱子組織も同時に学ぼうとして・・・・・フリーズです。しばらくお休みします。

2015年11月3日火曜日

コード通しが届きました

システムコードを通す時、何を使っていますか?

編物に使う『かぎ針(写真左)』は、中央の指に馴染むように平らになっている部分がつっかえて長さが足りないことがあります。

金綜絖に使う『綜絖通し(写真中央)』は、先がとがっているので、コードを傷つけてしまうこともしばしば。それに、長いので踏み木にコードを通す時は床につっかえてしまう・・・・で、歪んでます。


『コード通し』が欲しいと織物の道具を扱っている数軒のショップで聞いてみたのですが、「専用の道具が必要なのですか?」とけげんな様子。

どうやら、タイアップを頻繁に変更する人は少ないらしい。ろくろ式で開口が安定しないから4枚綜絖の天秤式のを使う・・・という場合、「平織と綾織のタイアップ」で、一般的な組織のほとんどが織れてしまう。

ですから、購入した時から、一度も吊り直したことがないという人もめづらしくないらしい。それなら、専用の道具など必要ありませんね。


で、海外から取り寄せることになりました。『コード通し/Cord needle』

届いたのは、写真右。洋裁に使う『糸通し』の大型サイズという感じ。簡単な構造ですが、やはり道具は道具。使い心地も、『糸通し』の大きい感じ・・・・・。

頻繁に吊り替えをする方は、お試しを。


2015年10月20日火曜日

組織図の書き方 欧米とろくろ式

ついでですから、『綜絖通し、踏み木、タイアップから組織図を書くやりかた』の欧米と日本のろくろ式の違いを書いてみます。

アメリカやスウエーデンの書籍では、踏む踏木を上のタイアップへとたどり、印がついている綜絖を見つけ、綜絖の通し順で印がついている所は下へおろして組織図を、■に塗る

踏木を踏むと経糸を通した綜絖が上がるジャック式の織機では、そのままで経糸を示す「■(クロ)」になります。踏木を踏むと綜絖さがる滑車の織機を使用するスウェーデンやスコットランドの組織図やイラストでは、経糸が「□(シロ)」で、緯糸が■」

米国の書籍『THE COMPLETE BOOK OF DRAFTING』の「経糸と緯糸のどちらを描くか?」という章があります。つまり、黒で描くのは経糸か?緯糸か?

著者;Madelyn van der Hoogtは、「綜絖通しとタイアップ、踏み木順から組織図を描きおこす場合、綜絖に通っている経糸を書いていくのが描きやすいから、クロになる。」と言っています。つまり、普通、白い紙に黒いペンで書くからという単純な理由をあげています。

そして、「組織図のどちらを塗るかはそんなに大切なことではない。どちらが縦糸か緯糸か自分でイメージできて、その通りに織機を使えればいい。」と結論を述べています。

たしかに、「どのような柄が織れるのか?」「この部分だけを繰り返したい」「組織が飛んでいないか」などなど・・・確認をするなら、どちらが■でも□でもかまわない訳です。


さて、わたしの頭の中は、始めに覚えた・・あまり■□にこだわらない・・欧米の描き方。やっと自分が日本では『超少数派』ということに気がつきました。
日本のろくろ式の綜絖は、スウエーデンの織機の滑車式と同じ動きをしますが、意匠図(組織図)では、経糸が『黒』という決まりを守っています。わたしが見つけた描き方は、2種類。

『ホームスパンテクニック』では、
「・・・・ろくろ式やスプリング式の機は、踏むと綜絖が下がるので、結ばれていない□の部分の綜絖通しを組織図上に■で描きます。」とあります。<その1>

「■部分の綜絖通しを組織図上に□で描く」という方法もあります。<その2>

ろくろ式組織図の描き方』名まえをつけるとわかりやすくなると思うのですが・・・・・・どちらも同じ名称でよいのでしょうか?

「手織り手紡ぎ工房』の完全意匠図(P47)のろくろ式では、「・・・・組織図の□点の番号と踏み木の番号×印で示します。・・・・・・(中略)・・・・組織図の□点の経糸が通っている・・・・」
組織図の緯糸□を基本基準として考えていきます。本には説明がないのですが、<その2>のやり方が基本になっているようです。『ろくろ式完全意匠図の書き方』と名付けたくなるのですが、次ページのある天秤式でも同じやりかたです。

欧米式のわたしの頭は、「天秤式にも『ろくろ式組織図の書き方』を使用して完全意匠図を作成している。」という理解になりました。ですから、『天秤式〈踏み木と綜絖の結び方〉』P56では、綜絖⇒補助木上段(上ラム)⇒踏木と結ぶのは×印。天秤⇒補助木下段⇒踏木と結ぶのは印なし というスウェーデンスタイルです。

「『手織り手紡ぎ工房』の天秤式織機の完全意匠図は、ろくろ式(の描き方)で考え、スウェーデンスタイルのタイアップをする。」 この一行でお互いのやり方がすぐに理解しあえるといいのですが・・・・。

※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年10月16日金曜日

国内の完全意匠図と海外の組織図の違い

「天秤式(たぶん、天秤式の完全意匠図の書き方)は、女子美の先生とアメリカ人の先生から習いましたが、女子美の方がわかりやすかったので、本はそちらにしています。」 ちょっと意外でした。
この本とは、『手織り手紡ぎ工房』 監修;馬場きみ 著者;彦根愛 平成25年発行 

 
完全意匠図とは、『綜絖の通し方、踏み木の踏み方、タイアップが、まとめて1つの図として表されたもの』(P47)とあります。この本では、具体的に使用する織機にあわせて組織図から綜絖通し方を考え、踏み木を考え、タイアップを考える。』というやり方が詳しく説明されています。
つまり、織機の種類によって異なる・・・・「1本の踏み木に1枚の綜絖を結ぶ とか 1本の踏み木に数枚の綜絖を結ぶ」 や 「踏み木を踏むと結んだ綜絖が上がる/下がる」という問題を、完全意匠図を作るときに同時に解決しています。これがたぶん女子美で習った方法なのだろうと・・・・本には書いてないのですが。

組織図から綜絖通し方、踏み木、タイアップを求めて完全意匠図にするやりかたは、スウエーデンの組織の本では、綜絖通しとタイアップを一度に考えますから、確かに違います。米国では?と組織について初歩から詳しく書いてある米書『THE COMPLETE BOOK OF DRAFTING』を見ると完全意匠図の読み方と組織図の書き方の説明しかありません。
アメリカでは、手織のための基本的な組織やバリエーションが集められた「パターンブック」が数多く販売されていていますので、組織図を完全意匠図にするやり方は、手織をするだけなら、特に知らなくてもよいことなのかもしれません。

アメリカのパターンブックやスウェーデンの作品集などでは、綜絖通し、踏み木、タイアップしか書かれていないことがほとんどです。柄の出方や細かな確認のために組織図が必要なときに自分で描けるように・・・ということで、一般的な手織りの本の説明にあるのは、綜絖通し、踏み木、タイアップから組織図を描く方法』です。

膨大な数の組織が昔から伝わる欧米と海外からの貴重な織り柄の布を分解して意匠図を書いてきた日本の違いなのだろうと思います。このあたりに意匠図と組織図の呼び方やニュアンスの違いの原因もありそうなのですが・・・・。

さまざまな織機があり、新しい織機も生まれたアメリカでは、織機の種類によって異なる・・・・『踏み木を踏むと踏み木と結んだ綜絖が上がる/下がる。』という問題は、タイアップ図の記号のあり/なしを入れ替える、つまり、反転させるというのが一般的な説明です。

米書では『1本の踏み木に何枚かの綜絖を結ぶ』のは、マルチフルタイアップ、最近はレギュラータイアップ。『1本の踏み木に1枚の綜絖を結ぶ』のは、ダイレクトタイアップ。レギュラーは天秤式用で、ダイレクトは綜絖のある卓上機用という決めつけはありません。

女子美で習ったことを踏襲するこの本では、タイアップの名称を書くよりも使用する織機名を書いた方がわかりやすいから・・・、ろくろ式でレギュラータイアップにすると開口しにくい場合があるから・・・・と、誰にでも使いやすい配慮をしていると思えます。

欧米の書籍が入手しやすくなったがために、どのような考え方か、やり方かを整理しないと混乱するばかり。とくに日本の欧米風の手織りがむつかしい・・・・女子美式とか京都式とか名称をつけたい気がします。

※文中に誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への直接の訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年10月14日水曜日

書籍;Tartan&Tweed 手織りのためのスコットランドチェック

やっとこのレベルの手織りの本が日本でも発売された・・・・と思いました。


手織りをやり方から勉強する本・・・ではなくて、こんな綺麗な布を織ってみたいと思う本。いつか手織りをしてみたいと思う本。


タータンチェックというと、有名デパートの包装紙、福岡出身の音楽グループや大勢の大勢の女子の歌グループの衣装の印象が強烈で、元気な若者を思い浮かべてしまうのですが、千鳥格子とガンクラブチェックに始まり、ゲレンチェック~タータンへと続くこの本は、そんなイメージを一掃してくれます。


まずは、巻頭に著者のことばがあるのがいい。対向のページに、著者をよく知るガーニー氏からのことばがあるのもいい。著者が今まで手織りとどのような時間を過ごし、この本を出版することで誰に何を伝えたいのかを感じ取れます。

スコットランドの風景、ヒツジ、ツイードやタータンを着た人々、布地の写真、歴史と文化の話。豊富な写真から、チェックやタータンにある本来の魅力と伝統がもたらす力強さを改めて感じます。

日本式のような海外風のような手織りの解説本が気になることがしばしばあるのですが、以前、参考にした英国の手織り作家の本と比較しても、この本がタータンとツイードについて基本に忠実な内容だと改めて思います。

『Tartan&Tweed 手織りのためのスコットランドチェック』 明石惠子著 2015.9 誠文堂新光社

さて、普通、格子や縞の柄をデザインするとき、何もない紙に向って描きはじめます。単純なデザインになりがちで、できあがった柄の良し悪しは「個人のセンス」や「個人の頑張りかた」のような話になりがちです。
どうしたら、あんなに規則的で複雑なチェックができるのだろう・・・・。

この本の興味深い点は、チェックを加える、組み合わせる。色を変える、加える。という柄をデザインするためのやりかたが豊富な写真と共にわかりやすく説明されていることです。
オリジナルな柄はもちろん、よく見かける柄をアレンジして、自分にあうようにすることも容易にできるようになれそうです。応用すれば、スコットランドチェック以外の縞や格子をデザインするときにも役に立つと思います。

手織りのノートの作り方や織りやすい本数、糸の太さとデザインの関係についても紹介されています。手織りをするための基本的な情報・・・・色の選び方、糸の密度、手織りの工程などは本の最後にまとめてあることも見やすく、使いやすいですね。

巻末の『織の工程』での経糸の巻き方は、アメリカなどでよく見かける「オーバーキャッスル」のやりかたです。あまり日本では紹介されていないようですので、ジャックルームなど背の低い織機を持っている人は是非参考に。

余談ですが、『知っておきたい手織りの基本と本書のルール(P.018)の織』のイラストでは、経糸が白、緯糸が黒になっています。スコットランドは、やっぱり「カウンターバランス(ろくろ・滑車)式の文化圏」だったに違いないと、大爆笑。ろくろ式なのに、経糸を黒と決めている日本のやり方には、やっぱり無理があるようです。

著者は、スコットランドで、つまり英語で手織りを学んだためか、「粗筬/粗筬(写真上)」を「仮筬」としています。人により学校によりさまざまなで、「ラドル」という人や表記もありますから、そのままRaddle=ラドルでよかったのでは・・・と思います。

著者のブログは、時々拝見しています。作品を真似されることに神経を使い、確か文章は読むのも書くのもお嫌いということだったと思いましたが、なぜ、突然、このように充実した内容の書籍を出版されたのか?今後の著者の活躍に注目です。

2015年10月9日金曜日

京都のスクールのスタンダード

京都といえば、有名な手織りのスクールがあります。
卒業生は、延べ一万人以上というのですから、ここで教えていることが、ジャパンスタンダード(日本標準)になっても何も不思議はありません。

1年で基礎を終了するコース、さらに専門的に学べるコースや基礎のカリキュラムにある演習を自由に選べるワークショップ形式の講座は全部で32もあります。寮もあります。

ワークショップの講座から「初めての織り」10日間を受講すれば、持っている織機を使えるようになるというお話です。
使用する織機は、ジャッキ式織機(ジャックルーム)。カナダのメーカーの織機です。
組織を勉強する上級のクラスでは、天秤式織機を使用。フィンランド製の水平天秤式織機です。

手織りをしている方とお話をすると、ジャックルームは、織の基本組織を学ぶ「初心者用の織機」で、天秤式(カウンターマーチ)は、「中上級者用の織機」というので、不思議に思っていましたが、このスクールのカリキュラムの影響が大のようです。

ジャッキ式で組織を学びますから、「綜絖は上がる」を基本としたタイアップ。上のクラスで天秤式を使うときも「上がる」で考えることになるのだろうと思います。
さて、ジャッキ式(ジャックルーム)は、北米の織機。
アメリカでは、現在、書籍がほとんどがジャックルームユーザー向けです。ですから、この織機に興味がありました。米書『The best of Weaver's シリーズ』には16枚も綜絖を使う複雑な織り柄もあります。初心者用に限定した織機ではないと思っていました。(このあたりから・・わたしの認識は国内の一般と食い違っていた・・・。)

一方、天秤式(カウンターマーチ)は、北欧の織機です。
ろくろ式より開口は安定し、素材や密度を選びませんが、さらに複雑な組織を織りたくても綜絖は8~10枚が一般的。アメリカでは、ジャックルームから買いかえる人は、北欧の織がしたいからという理由がほとんどのようです。(わたしの個人的な意見ですが、上級者用と思えるのは、タイアップに手間がかかることと、細い糸使いで密度のある布が織れること・・・。)

着物など日本の伝統的な手織りを除くと、パンフレットのカリキュラムを見ただけでは、天秤式が上級者用の織機で、プレステージ?の印象になるのだろうと思います。実際に受講してみないと、詳しいことはわかりませんが、10日間の寮生をしないと・・・。
理解を深めるためにも書籍やテキストなどを一般にも販売してほしいとつくづく思います。

なるほど、ジャッキ式を実際に使って初歩を学ばないで、いきなり天秤式、それもスウェーデンスタイルでブログに書けば・・・・信用できないと感じた人もいたのだろうと思います。謎が解けました。

その織機の出身国とは織り上がる布、使い方や組織図が違うとしても、国内に広く浸透した使い方や評価は、現在のジャパンスタンダード。

両方を理解しないと、アメリカの書籍を見てもよくわからない・・・・混乱することになるのだろうと思います。

2015年10月6日火曜日

つづれを織る櫛

気分転換に京都へ行ってきました。この眺めは、清水寺からではなく、伏見稲荷神社から。



清水寺へ向かう茶わん坂で、なつかしい名前のお店・・・・つげの櫛の「十三屋」を見つけました。

お店にあるさまざまな形の櫛は、日本髪を結うときに使い分けるらしいのです。

そのひとつで、持ち手のところに細長い柄がついている櫛は、譲り受けた「つづれを織るとき(写真右)」に使うのに、そっくり。

お店に入ると、奥の棚の一番下に・・・・もしやとたずねてみると、やっぱり「つづれを織る櫛」。ありました。

髪を結う櫛と、形は同じですが厚みがあり、しっかりしているというお話です。
櫛の歯の本数も経糸の密度にあわせていろいろあるようです。

つづれを織ることは、ないと思いつつ、気になったのは、1cmに4本歯の粗い櫛(写真左)。
つづれというよりも、小さなタペストリーを織るときに使いやすそうで・・・・つげの木の何とも言えない滑らかな手触りも魅力。で、さんざん迷ったあげくに購入。

経糸を1本1本ひろいながら、織り入れていく穏やかな日々も訪れますように。

2015年10月2日金曜日

日本のこの数十年の手織りを整理してみる-6.現実

現実は・・・と質問されたら、「ことばの曖昧さ と 国内外の情報不足」

布の織り方、教え方や説明が違うのは、著者や先生によってスタイルの違いだとしても・・・・名称や表現はさまざまで、分類して書き出してみると、まるで、禅問答。

・カウンターマーチの和訳は天秤式。ですから、天秤がなくても天秤式。でも、天秤があれば、腰機でも天秤式。

・ろくろ式は両口開口だけど下開口で、開口の仕方は同時に綜絖が上下する中口開口。下方向へしか綜絖が動かないのが下口開口。

・あら筬で仮筬をする。普通の筬を使って織幅に経糸を拡げるのが仮筬。普通の筬を使っても粗筬通しをするという。

・組織図を意匠図と呼ぶ人もいて、完全組織を見つけて綜絖う通し順や踏み木順を書き、できあがったのが完全意匠図で、組織図やドラフトと呼ぶ人もいる。

・綜絖枠がある場合は、綜絖枠と綜絖。綜絖は、枚数といえば、綜絖子が入った綜絖のことで、本数といえば綜絖子のこと。

今まで使い続けてきた言葉ですから統一する必要はないと思うのです。が、この言葉や言い方の説明は聞いてみたいですね。わかりやすく教えることができれば、ことば本来の意味は「関係ない」というようなことをおっしゃる先生もいらっしゃるので・・・・まさに、百花乱舞。これほど、言い方や名称がさまざまだと・・・・和訳本が出版されないのも納得です。
手織りと使う織機は、地域と文化の違い。
フィンランドはカウンターマーチ。北米はジャックルームとその特性を生かした組織が発達し・・・・・・と国によってメインで使われる織機のタイプは決まっているようです。そして、日本は、ろくろ式で、着物以外も織るようになり、欧米の織機を使用して教えるようになったと思われます。

日本では、欧米の織機は、あくまでも「道具」。ろくろ式では織れない/織りにくい「凝った組織」が登場したから使い始めたのだろうと思います。

このため、初級から中級、上級へと織機へと変えてステップアップするのが一般的のようです。たとえば、卓上機からはじめて、ろくろ機、天秤式。もしくは、ジャックルーム(ジャッキ式)⇒天秤式。西欧の織りの組織や意匠図の使い方、織機の使い方も先生や学校がそれぞれに工夫したので、いろいろなやり方ができあがったのだろうと思います。

日本の手織は、欧米の織機を使っていても、欧米の手織とは違い、組織図の使い方も違うようです。

国内では、、何々式という名称すらないので「やりかたに何種類かある」ことすら・・・気づけない。メインは2-3種類だと思うのですが、書籍もテキストもない学校がほとんどないので、実際に何タイプに分類できるかもわかりません。

もっと執筆してほしいと思うのですが、何冊か出版されている先生のお話では、
日本は本を出しても全然儲からないし、購入者が少ないので、本が少なく浅い内容の本が多いのが誤解を招く原因だと思います。ちゃんとした基礎の本を書くには、数年かかったりするので、それだけの仕事をおこずかい程度の金額で書くのはボランティア状態。それでもかくという先生がいないのが現状。なのだそうです。

昔、手織りの上手な嫁は、家を富ませたと言います。上手な織り方は秘密にして、「儲けるために手織をする」という意識は変わらずに残っているのでしょうか?

世界中のどこでも誰とでも、瞬時に話ができる時代が到来しているのに。

2015年9月22日火曜日

日本のこの数十年の手織りを整理してみる―5.織機は輸入するけれど

年を経て3年ほど前から再び始めた手織り。多綜絖を織ってみたいと織機や部品を検索しました。

日本でも、海外の織機メーカーと代理店契約を結び、織機を輸入販売している会社は数社あると思います.。HPに織機や部品の写真と価格があっても、手織りについての基本的な説明や相談窓口はみあたりません。ショップなどで展示して販売している所は、あるのでしょうか? 

結局、購入する必要があったのは、部品だけで、スウエーデン製の織機のアメリカの代理店から。中途半端な英語の人が、相談する場合には、英語が母国語の人のほうが安心でした。そして、HPもわかりやすく、必要な基本的な事々は書いてあり、アドバイスも適切でした。

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日本で織機を輸入販売している会社は、先生方の注文に応じて、海外から輸入し、学校やお教室に納入するまでが主な仕事のようです。ですから、輸入販売というより輸入業。

注文主あてに納入されてしまいますから、欧米の手作り感覚のしゃれた品があたり前のように街にあふれているのに、「こんな織機で、こんな布が織りたい」と、実際に目で見て憧れる場所もチャンスもないようです。床置きの織機は場所をとるから・・・・売れないから・・・・手織は簡単にはできないから・・・ということらしいのです。

ですから、織機を使って手織りをしたかったら、まず学校や教室を探して入会し、生徒になり手織りを勉強し、その後、先生に相談して織機を選定してもらうのが慣習のようです。販売という点から見ればお教室や学校がショップやショールームの役目をしていると思うこともできそうなのですが・・・。

お教室では、平織、綾織、M''s&O'sは吉野織、オーバーショットはよこ刺し子・・・・初歩的でどこでもある組織を教えているところがほとんどのようです。伸縮性があるウールでこの組織を織るのなら、ろくろ式、天秤式(カウンターマーチ)、ジャックルーム・・・どの織機でもそれなりに織れますから機種にこだわる必要もありません。
織り方を学べても、それぞれの特徴や使い方を的確に説明するショップやショールームの役目を期待できるとは思えません。そして、お教室は簡単には見学させてもらえない所。

普通の人が、動いている織機が見れて試せるのは、観光地の「体験お土産づくりコーナー」ばかり。日本の昔ながらのトンパタリです。手織りのイメージは、変わるはずもありません。
織機は、その土地の風土や文化に関連して発達した歴史があるといつも思います。知識を整理するときも、織りたいもの、学びたい方向を決めるときも軸になります。
織機と使い方⇔組織図の論理⇔さまざまな組織・・・この3つは当然、密接に関連しています。

国内では、使われる組織は大体決まっていて、組織図から綜絖通しやタイアップを書きおこすことが「織機の使い方の説明」のようになり、使う織機はろくろ式かな?天秤式と書いておけば、どんな組織も織れるだろう・・・・と割り当てたような印象さえあります。

ですから、天秤式(カウンターマーチ)は、最も優れた織機だと思って購入しても、基本的な組織を織る人には、準備に手間ばかりがかかり、イラついたり、がっかりしたり・・・。
でも、輸入業者は、織機だけを輸入。スウエーデンへ織物留学をした方も多いようですから、海外の手織に関するソフト面/知識はこの方々からと期待したのでしょう。でも、基本は家庭での手織ですから、構造が簡易な4枚綜絖のカウンターバランスをメインに学ぶようです。

しかし、日本ではなぜか海外の織機といえば、まずは北欧のカウンターマーチ(天秤式)。この織機の特徴である多綜絖の織を北欧で学んだ方はどの程度いらっしゃるのでしょうか?また、多綜絖に関しては、書籍を見るとジャックルームが主流の米国のほうが研究がすすんでいるようで、直接に習ったかたもいるようなのですが・・・。

たぶん、織り柄の布を織る機械の原型と思われるカウンターマーチ式織機。この織機で組織図と組織を学び、使い方も学べば、欧米の標準が理解でき、国内の手織りは、選択肢が増え、愛好家も増えて、これほど停滞することはなかったでしょう。

織物や柄、織るため道具の歴史は、世界中にあり、紀元前から。歴史も発想もさまざまに積み重ねられてきたはずです。個人が思いつくのは、残念ながら、裏ワザとか、知恵袋程度。人ひとりが一生かけて懸命に考えても、たどり着けるようなものではありません。欧米の織機の改良や使い方を思案するより、基本を学び、魅力的な織物を考え、織ることに時間と頭を使いたいのです。


※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年9月15日火曜日

日本のこの数十年の手織りを整理してみる―4.輸入した織機で織ったもの

1970~80年代の海外の抽象的なタぺストリーやファイバーアートの影響をうけて、芸術や美術という名のつく学校での手織は、オリジナリティーの表現や芸術作品を作るための技法になったようです。彫刻や絵画の抽象芸術の仲間入りをしたように見えました。

広幅で躯体がしっかりとした北欧のカウンターマーチ式(天秤式)織機は、専門の大学などでペストリーやアート作品などを制作するために、こぞって購入したと聞きます。欧米に倣ったのかもしれませんが、タペストリーしか制作できない竪機と異なり、綾織や変化組織も織れる「多用途の織機」ということも理由だったようです。もしかすると、欧米では、身近にあった織機だったからという理由でアート作品の制作に使われたようにも思えます。ちょうど、日本人が身近にあるろくろ式で海外の織り柄を織れないかと試したように・・・。

中世のタペストリーは、装飾だけでなく、城の石壁から伝わる冷気を和らげる役目があったという話ですが、エアコンの効いた現代空間では、ウールを使う必然性もなく・・・案の定、より自由な芸術的な創作活動には、平行に規則正しく張られた経糸すら制約となったようで、オフルーム/織機を使わない創作へと移っていったように見えます。

一方で、織機が動いて布が織れるのがおもしろいから、手織りが好きだという方もいるようです。織機のしくみや分類に熱中して、いろいろな織機を次々と購入する人もいるようです。

織機で何か織りたい・・・・ではなく、こんな布が欲しいから、欲しい布をうまく織れる織機が必要というのが、本来の順番だろうと思います。織機は「道具」ですから。
その土地で収穫できる素材を使い、その土地の生活に使うための布を織る。ぐあいよく織れるようにと織機もそれにあわせて改良される・・・織機や織物の本を読むと、環境に適応して変化し、進化していくありさまは、遺伝子の進化の歴史のようにも感じられます。これに気付かずに、織物を教えたり、習ったりは混乱するばかりのようで・・・。

日本では、。絹や麻、綿で着物にする生地を織ってきました。
北欧では、麻を使い、キッチンやダイニング、家庭で使うハンドタオルやテーブルクロスなどを主に織り、娘が結婚するするときに持たせたとか。
北米では、移民した人たちは、寒さを防ぐために、ベットカバーを織り、毛布の上掛けにも使った。ですから、綿や麻の経糸にウールを織りこみ、大きな柄を競って織ったとか。

サテンのテーブルリネンもベットカバーも、柄があると素敵な一枚になります。組織で柄を織りだすために、8枚ほどの綜絖が制約なしに自由に動く「カウンターマーチ式」の織機が最適だったと思います。

柄を織りだすために、糸が飛び組織がゆるくなってもハンドタオルは柔らかくなり、ベットカバーは厚みをまして暖かくなる・・・・・。しっかりとした平織が適している着物地とは、求める生地の意匠性も性質も全くことなります。当然、織機に求める性能も全く異なります。生活のしかたの違いということになるのでしょう。

家庭で受け継がれてきた手織と文化をそのまま紹介したのが、山梨幹子著に代表される「スウエーデン織り」。色彩も柄も美しいのですが、織物の組織をもっと専門的に学びたいと思う人には、もの足りません。

しかし、国内で欧米式の組織の解説書を見かけたことがありません。
芸術や美術という名のつく学校でよく使われているというカウンターマーチ式の織機。『1本の踏み木に綜絖を何枚つないでも開口がスムース』という説明はよくありますが、柄を作り織るために・・・というこの織機の特性は、どの程度まで認識されていたのでしょうか?
教えている学校はあるのでしょうか?使用しているテキストは外部秘?ろくろ式よりもわかりにくいからと執筆する人がいない?読みたいと思う人がいないから出版されない?海外の本からは組織図だけを見れば同じ布が織れれば満足だから?

欧米の作品も装丁も美しく、説明もわかりやすい書籍の著者の経歴を見ると、ほとんどがテキスタイルデザイナーと教師を兼務している方です。論理と時代にあわせたセンスの両面を磨いているのだろうと思います。

この日本で、もし、手織りは「経糸と緯糸の交差を楽しむだけのノスタルジックな高齢者の趣味になった。」という評価があるのなら・・・・・この数十年は、大きな空白の部分が残されたままだったのかもしれないという疑問が残ります。

※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への訂正、添削はご遠慮ください。

2015年9月8日火曜日

日本のこの数十年の手織りを整理してみる-3.組織図は工場から

組織図は、「織の設計図」と言われています。,では、誰がこれから織る布のイメージを具体的な組織図として描くのかという疑問もあるのですが・・・・。

白黒に塗られた方眼を「組織図」と呼び、周囲に、綜絖通し順とタイアップ、踏み木順がついているのを「完全組織図」というらしいのですが、本や人により呼び方が違うようです。「方眼の組織図」・・・・海外の組織の解説書には、必ずありますが、普通の手織の本で見ることはあまりみかけません。

「増補 織物意匠法」昭和56年たぶん再版 を見ると、白黒の方眼でいろいろな組織と名称、組織図の経糸は黒、朱子は裏織にする理由や組織図を描くための布地の分解のしかたなどがかかれています。たぶんこれがジャカード工場の意匠関係の基礎知識。国内の手織りの本で、なぜここまでむつかしいことを・・・と感じる用語や組織がほぼすべて書いてあります。

日本にも導入された柄織の動力による機械化、大量生産の基礎はヨーロッパの手織機と組織のノウハウだったと考えるのが自然です。欧米の滑車式も日本のろくろ式も庶民が生活に使う布が簡単に織れる構造の織機ですから、複雑な織り柄や詳しい組織図など なかった/いらなかった と思えるのです。

しかし、2段吊り3本ろくろ式織り機の登場で、4枚綜絖でいろいろな組織が織れ、海外からも目新しい布が入ってくるようになれば、組織図の知識や説明も必要になる・・・日本で使われていたたろくろ式の手織りに、海外から生産機と共に入ってきた組織のノウハウ を接ぎ合わせたと考えると、疑問や矛盾にほぼ説明がつきます。

2段吊り3本ろくろ式織り機は、柄を織るにもそれなりに優れて、それなりに柄も織れたので、わざわざ欧米の織機に買いかえて改めて欧米の知識を学ぶなど思い付かなかった・・・・使い慣れた道具をかえることは、勇気がいります。ただ、やってみると、無理や矛盾がなく非常に自然です。

ろくろ式の織機では、踏み木と結んだ綜絖は下がり、緯糸が表面に出るのですが、組織図の経糸は「黒」という 生産現場の決まり にしたがったために、欧米とは異なる、「それ以外の部分を黒く塗る」という生理的には描きにくい書き方になったのだろうと思います。この書きかたは、欧米の手織の標準とは異なります。柄の出かたや糸飛びの確認に使うのなら、どちらが白か黒かにはあまりこだわる必要はない訳です。

日本の手織の入門書には、一般的なろくろ式4枚綜絖の織機では織れない8枚綜絖や16枚綜絖の組織図が基本組織として数多くのっていたりします。工場の資料集から抜粋したような組織図です。生産現場の都合からくる「朱子組織は裏でかく」という説明まであったりします。

組織図の使い方では、最初に組織図から綜絖通しと踏み木順を書きだす方法が説明されます。この組織を織るために、まず必要な手順ということだと思いますが、欧米では、綜絖通し順だけで柄を伝えあうこともあったようですから、綜絖通し順から組織図を描きおこすことが重視されます。

また、せっかく描いた組織図(意匠図)とは、上下が逆になるのに、踏み木順は上から順番に踏むという説明もあります。さすがに、織りにくいので、「組織図に上下がない場合」と書き足してある場合もあります。でしたら、どのような柄でもいつも下から順番に踏めばよいだけのこと。たぶん、動力機のビームからはずして検反するときに柄の上下が正しいと見やすいからではないかと思います。

織機の開口の説明に使われる「上口・中口・下口」も生産現場の動力機の性能を表すに使われる用語です。和訳をするときに流用して誤訳を生んでいます。

二重織の組織図はわかりにくいので、海外では手織の場合、組織図を使わない説明が多いのですが、日本では、やはり組織図の説明が必ずあります。さまざまな朱子の組織点の割り出し方など、組織図の読み書きを専門的に理解することが必要とされているようです。

専門性に価値があるのかもしれませんが、ジャカードの部分組織に使うわけでもないのに、一見ほとんど同じとも思える微妙な違いの組織から1つを選んで、多綜絖の織機で手織りするとなると、かなりストイックなことになりそうです。

日本の海外風の手織りは、直接欧米の手織りには学ばず、工場に意匠に学び、織機の構造の用語までも参考にしたため、いまだにより高度な知識はさらに生産の現場から学ぶという意識が抜けないのではないかと思ったりします。

手織で学びたいのは、用途(マフラー、ランチョン、ひざかけ・・・)にあった素材や組織や色の組合わせかた。手織だから・・・複雑だから・・・といわなくても、ちょっとすてきだなと思えるものが織りたいと思いませんか。


手織で柄や組織をメインにシンプルに織ってみたかったら・・・・。
柄を織るために、生まれ、進化してきた「綜絖の1枚1枚が制約なく動く織機」を使って、一緒に進化してきた組織の考え方を学んでみるがよいと思います。ろくろ式で学んできた人は一度リセットして見る・・・。学校やお教室、日本語の解説書とか、あるとは思うのですが。

織と織機は、人間よりも長い進化の歴史があるといいます。ろくろ式とカウンターマーチ式、着物と洋服、下駄と靴、和食と洋食、日本語とゲルマン系の言語・・・・東洋と西洋の文化の違いなのだろうと思います。


※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への訂正、添削はご遠慮ください。

2015年9月4日金曜日

日本のこの数十年の手織を整理してみる―2.洋風の始まり

洋装が一時の気まぐれではなく、洋服や洋間での生活が日常であり、普通になった頃かと思います。

手織りのやりかたと洋風の作品も加えた著者の集大成という印象さえする本 土肥悦子著「基礎技術から応用まで 手織り」.昭和51年 が出版されています。 ショール、上着、ロングドレス、カーテン、壁掛け、敷物、ノッティング、オーバーショットやローゼンゴンの技法もあり、当時の 新しい手織り を感じる本です。家に着物を織っていた織機があり、「新しいテクニック」を覚えば、「新しいものがつくれる」は、誰もがやってみたいと思うでしょうから、多くの支持を得たと想像できます。

この本のように、3本ろくろ2段吊りの4枚綜絖織機を使用すると、綜絖の3枚対1枚の動きが可能になり、「洋風の織物が織れる」ことを紹介し広めたのだろうと思います。しかし、この2段吊りは、どうやら日本独自のスタイルで、いわばガラパゴス的(否定でも肯定でもありません。)
「この組織を織るためにどのようにろくろを吊ればよいのか」・・・という工夫から始まっているようで、西欧の「柄や組織を自由に織りだすために、1枚1枚の綜絖を制約なく動かしたい。」とは、織り上がる布は同じでも、発想には大きな違いがあります。本には、組織と織り方の説明は詳しく書いてありますが、欧米の入門書のような系統立てた説明はありません。

このブログを見て、ろくろ式で組織を少し学んだ人は、「すごく組織のことを勉強している。」と思うかもしれませんが、欧米の基本的な手織を初歩から順番に織っているだけです。欧米風の手織りをするにはもっと組織を学ばなければ・・・と組織ばかりを気にしたり、組織と覚えた名前の数が多ければ、それだけで「海外の手織りに詳しい」とか「今風の手織り」と思ったりするのは、おかしなことです。色彩や素材、何を作るかも大切ですから。

さて、組織図の綜絖通し、踏み木順、結び(タイアップ)の3要素は、たしかに世界共通といわれています。組織の使いかた、書きかた、使う記号・・・すべて世界共通。で、手織の場合と工場の場合も、同じく共通と思ったようです。日本の手織は、組織の基本や使い方は工場から学んだようで、国や年代によりあきらかに違うという記号も個人的な好みや先生から習ったからという理由で取り混ぜて使い続けているようです。

次に、使用する糸は着尺1反分で購入することがたぶん一般的だったと思われるのですが、織りたいものにあわせて必要な糸量の計算しかたを考えなければならず、そのためには、主に工場生産で使われていた番手の知識も必要になっただろうと想像できます。

新しい手織をしたいと思った人は、工場での組織図の基礎と使い方をまなび、準備のしかたを参考にし、ろくろの本数を増やし・・・欧米のような布を再現するために、それぞれの人がそれぞれに多くの時間を費やし、試行錯誤と挑戦を繰り返したのだろうと想像できます。ジャカード機で織ったのだろうとあきらめもしたのでしょう。

ろくろ式とは綜絖を上下させる構造が全く異なるカウンターマーチ式の織機なら簡単に織れるということに気づいていたのでしょうか?

「天秤式」の名称で、北欧と同じ構造のカウンターマーチの国産品も登場しました。岸田幸吉著「ウィーヴ・ノート」1978年だけを参考にして、どこまで欧米のような発想で使いこなせたのかは、わかりません。

欧米の織機の使い方や織の基本の違いに気づき、そのまま学べば、柄や組織を作り、純粋に織ることが楽しめたはずです。道具、組織に加えて、多様な素材使い・・・独自の工夫や試行錯誤を大切にしたことで、着物を織らない手織りは必要以上に「高度」で「複雑」になってしまった面もあり、和風のような洋風のような・・・「とらえどころのないもの」に映ることさえあります。
洋服は、ミシンも、布地も、型紙も、海外から取り入れ、日本人の体型にあうように工夫し、日常にとけこんだのですが、手織は、身近な着物の丈を短くし、ボタンやポケットをつけるような工夫をしていたのかもしれません。時代が違いますから、「良い/悪い」と簡単に言うべきことではありません。どのように認識して、どのように受け継いできたのか・・・。

それから約37~39年がすぎ、手織に限らず日常の手仕事は少なくなっていますが、ファッションのように、多様な発展と新しい支持を得られたのか・・・。今の生活にふさわしい「実用的で美しい布」を織るために大切なことは、空白のままのようにも思えます。

※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。掲載文への訂正、添削はご遠慮ください。

2015年9月1日火曜日

日本のこの数十年の手織を整理してみる-1.はじめに

たいそうな「題」になりました。題名負けする気がしますが、書きはじめてみました。

手織りや織機のことを書くと、勝手なことを、いい加減なを・・・・と不愉快に感じる方が少なくないと聞きます。たぶん他の考えを書いた本や文章がすくないので、イエスかノーの判断をするしかないためだろうと思います。

手織に詳しいという方々からさまざまなコメントをいただいたことがきっかけで、「今の手織のあたりまえ・・・」に感じた疑問をつなげあわせて、整理しようと試みました。全6編です。

文中に誤解や間違いなどお気づきの箇所があれば、ご指摘やご教授は頂戴したいと思いますが、訂正や添削はご遠慮ください。
・・・・捧ぐ・・・・811・・・・20・・・・15・・・・811・・・・20・・・・15・・・・811・・・・20・・・・15・・・・811・・・明日へ・・・・

織の歴史は古い。織物が始まったのは、石器時代からとか、人が人間になる前からとか・・・・よく書いてあります。神代に錦(にしき)を織ったとか、虫も織っていたとか(蜘蛛の巣のことか?)は、あまりにロマンチック。

前田亮著『手織機の研究』平成4年5月発行 よると、織は農閑期の仕事だったという。稲作地域では、冬の仕事。麦栽培地域では、夏の仕事。羊を飼う土地では、男の仕事なのだそうです。

日本は農耕文化ですから、稲作と共に織と織機は伝わったということになります。庶民の着物の「縞」も「島」から変化したという説がありますし、「絣」も東南アジアに数多くある技法。稲作と共に伝来したのは、間違いないと思います。

戦後になり洋装や洋服が入ってくるまで、農家では、一家に一台・・・・織機はあったらしいのです。女が家事の一つとして、家族の着物を織っていた・・・・これが、今の「趣味の手織」のルーツと考えたほうがよさそうです。

日本の手織の基本は、「着尺」。正座をしたりするので、当然、しっかりとした「平織」が基本。ですから、踏み木のある織機では、ろくろ式が最も無駄がなく使いやすく、適していることになります。
組織を変化させて柄を織ると糸が飛び、しっかりとつまった布地ではなくなりますから、日常の着物には適さない。めがね織や吉野織は、羽織や帯に使われていたような記憶があります。

柄織・・・・錦、金襴、緞子・・・権力者のためのきらびやかな布地は、大陸から職人ともに伝来し、専門家の手によって織られています。庶民のあこがれだったろうと思いますが、ちょっと「見せてください」ちょっと「教えてください」など、昔も今も、どう考えてもできそうにありません。稲作と共に伝わった庶民の手織とは、織る人も、着る人も、ルーツからも、明らかに別の世界です。
おおざっぱですが、手で織機を使って織るという流れを大きく3つに想定してみました。

南方から伝わり、農民や庶民の着物をろくろ式織機で織るという現在の手織のルーツ。2番目は、大陸から伝わった身分の高い人のため錦などの柄織。これらの意匠や組織は動力機を使用して生産を始めたときに参考にしたと考えられます。最後は、欧州に伝わる手織。これが本来の機械化や工業化のソフトのベースのように思います。(この他にも、工場で生産される布地には、シーツ地やプリントに使う無地、裏地、資材などがありますが、特に大量生産に価値があると思われるこれらは、別にします。)

さて、「手織りを楽しみたい」「手織りの職人や工芸家をめざす」「手織りで基礎を学んでテキスタイルデザイナーになる」・・・したいことや目的はさまざまです。

わたしは、すでに引退して、「若いときに習った日本の手織は、なぜわかりにくかったのか?」という疑問の答えをさがして、一から見直しをしているのですが・・・・留学経験者も多くなり、インターネットの普及も影響して断片的な知識が増えているようです。国内の手織りはいろいろ入り乱れて、さらにわかりにくくなっているような気がします。

2015年8月16日日曜日

朱子織と数え方とか公約数とかむつかしい話

暑い夏にすっかりやられて秋までお休み宣言をしていたところに、3か月前に書いた「朱子織とSatin/サテン」にコメントをいただきました。

ブログに、「これがわからない」と書いたことに対する具体的な説明ではありませんでした。基礎的な説明なので、「わからない」とかいたことの答えは、これをヒントに自分でまた考えることになる・・・・。日本と欧米の手織での朱子/サテンの発想や作り方は違うという私の結論もどうやら見直しの必要があるということらしい。
休みだからと受け取ったままにしておいてもよいのですが、時間がたつと、もっと深い迷宮へと迷い込むことになりそうです。


日本では、5の2飛びたて飛びと5の2飛びよこ飛びのように両方で言います。
本がはしょった説明の場合たてだけが多いです。

基本的に、正則朱子は、公約数を持たないものになりますので、
8枚だと3飛びと5飛びになります。たてとびよことびで全部で4種
変則朱子場合は、組織が循環したときに滑らかに組織点が分散されるように
適当に組織点を移動させるので、綺麗に規則で片づけることができません。

(中略)
普通の正則の場合は、飛び数が一つの組織の中で1種類の飛び方になっていますが、
変則の場合は、2つ以上の飛び数を使います。

すべてをここでお話しすると、ながーーーーくなってしまいそうなので、
別の機会にお話ししますね。



この文面からすると

一つの朱子組織について、たてとよこの両方の飛び数をいうのが正式か? 
たての飛び数を言う場合と・よこのとび数を言う場合の2種類の言い方があるということか? 
それとも、たて飛びは表朱子で、よこ朱子(裏朱子)は、よこ飛びで書くということか?

『朱子組織は、裏面を書く』という日本独自の約束事もあるようで、まるで障害物競争を走り抜けているような気分。


⇒本を確認しました。(追記;2015/09/15)
『8枚』の説明はなく、「5枚朱子」でした。
説明と図から・・・・5枚朱子には、「3飛び」と「2飛び」の2種類の組織があり、それぞれ「たてとび」で呼ぶ場合と「よことび」呼ぶ場合の2つ呼び名(または、数え方)があるということになります。
同様に、このコメントの8枚(朱子)には、「3飛び」と「5飛び」の場合があるので、(組織は2種類。呼び名が、それぞれ2つずつあるので合計すると)『4種』あるということだと思います。


本ではしょるのは、よこ朱子は一般的でないためか、呼び名の部分だけなのか、説明自体なのか、よくわかりませんが、結局、「たて飛び」を使うのが主流という結論になるようです。朱子の組織はどちらの面を表として書くのかも諸説あるようですから、前提から整理すると、当然長い説明になりますね。


5月のブログ「朱子とSatin」で、わたしが疑問に思った「『右に3飛びで左に2飛び』と数える朱子組織は、『何の何飛びたて飛び』」になるのか?・・・・つまり、この左へ右へと飛び数をいう言い方は、一般的でない?ということのようです。 図を見ないと「たて飛び」の数え方に置き換えもできないということなのでしょうか?いろいろな呼び方があって、互換性がないとすれば扱いにくいですね。


さて、朱子織の基本説明のコメントをいただいて申し訳ないのですが、『飛び数』はしかたないとしても、『公約数』、『正則』『変則』『循環』『2つ以上』・・・・・普段はあまりつかわないし、昔風の聞き慣れないむつかしい言葉ばかり。同じような説明は他の本でも見かけますが、正直なところ、「はぁ、すごいですね。」と何もわからないのに感心したふりをして、後ずさりしたくなります。

『正則』は「基本となる、基本的な」。『変則』は、「変化した、変形した」。『循環』は、「レピート」。『2つ以上』は「いくつかの、1つとは限らない」と、アバウトな感じですがとりあえず言いかえるとしても、『公約数』は、確か中学校時代に学んだ「素数」とか「因数」とか?を覚えてないと理解したと言えそうにありません。

専門家が使うような聞き慣れない言葉やむつかしい言葉の多い説明には、「この程度の話や数学を理解できない人は、織物の組織を考える意匠師はやっていけないよ。」という欧米から導入された力織機をあやつった技術者の古き良き時代のメッセージがそのままに隠されているような気さえします。


日本の朱子組織を理解しようとすると前提や解釈はさまざまなようですから、何冊も本を購入したり、講習会に出たりと、時間とお金が必要で、あげく、日本のろくろ式織機では織れないとなると・・・・手織をしたいだけだったのに、なぜにこんなに努力をしなければならないのかと、織まで嫌いになりそうです。

多綜絖の海外の織機を使って朱子/サテンを織るなら、考え方も欧米の手織の説明にすると明快。組織図は、表だ裏だと迷うこともなく、たて飛びとよこ飛びの2つを学ぶ必要もありませんし、応用発展まで楽しめそうです。

秋までゆっくり休んで、ローズパスから再開して、そのうちじっくりと。

2015年7月31日金曜日

ふりかえればカウンターマーチのことばかり

アメリカを経て、やっとスウェーデンの本に到達して、これから本格的に織り始めようというのに、織機の前にすわる気がしない。夏バテか・・・?

英国のウールの織糸の購入量をケチってみたり、もらった糸や余り糸を組み合わせたりしていたら、どうも気持ちが 内向き になってしまったらしい。

打開策は、輸入の真っ白なリネン糸など購入して、1m余の幅のテーブルクロスかカーテンなど延々と織ること。いきなり生活が活気づいて、夕食の献立までが充実するのがわかっていても・・・先立つものがおぼつかない。余裕のない趣味ほど情けないものはない。

「多綜絖」とかいうものを本気で織ってみようかと、織機の部品を追加購入して織り始めて、気がついたら3年。
もしかすると、カウンターマーチ狂で、4枚綜絖だと気持ちがアップしないのかもしれない・・・・・。いや、やはり原因は この暑さ。 
で、3年間で、何がわかったか書きだしてみました。欧米の手織りをするなら、知識として、たぶん最低限必要なことばかり。日本語の適切な書籍が出版されていないとしても、天秤式(カウンターマーチ)織機は有名ですから、教えているお教室は、気づかないだけで、あちこちにあるのだろうと思います。

1.カウンターマーチ式の常識的な経糸の掛け方とタイアップをそのままで経糸をかける方法など基本的な織機の使いかたと準備のしかた。

2.多綜絖の場合の踏み木の調整法。

3.カウンターマーチの意味と天秤式の呼び方、西欧と東洋の概念の違い。

4.現代の手織で使われている3機種。カウンターマーチ式とジャックルームとろくろ式の関連性と共通点と違う点。

5.日本で洋織機を使用してよく勉強した人ほど、カウンターマーチとは、唯一の中口開口で、ろくろ式は下口開口と間違った知識を持っている場合があるということ。

6.国によりメインの織機は違い、それぞれに対応して組織図が変化、発展しているということ。

7.カウンターマーチ式の特性とこの織機でしか織れない組織があるということ。

8.カウンターマーチ式で織る多綜絖は、単に綾織などで綜絖枚数を増やした・・とかではなく、ブロック柄のセオリーで、地綜絖と柄綜絖を使ってデザインできるということ。

9.織はその土地土地でとれる植物や動物の繊維を糸にして織る・・・・そして、織機もその繊維が織りやすいように変化してきたということ。

10.カウンターマーチ式とろくろ式は、織機の構造の違いというよりも明らかに文化が違うということ。世界地図に時間軸、つまり歴史を重ねないと、織機も織物も理解しにくい。ここでも織は、三次元の世界。


織と織機は、どうも料理に似ているような気がしてなりません。どちらもその土地の畜農産物を加工する行為で、その土地の生活に密接にかかわっています。そして、どちらも人が人となる前から人と共にあった・・・という先生もいらっしゃるようです。

料理の基本は、世界中同じ・・・焼く、煮る、炒める、蒸す、揚げる・・・とか聞いたことがあります。基本は同じだからといっても、和食の先生にフランス料理を教えていただくと、それなり。ろくろ式の織を得意とする先生に・・・・・教えを乞うていませんか?


※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。掲載文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年7月28日火曜日

ジャカードは手織り機ではないはず

実際の工場で、生地を生産している「ジャカード機」を見たことがあります。900口、1800口、二連、紋紙、ハツリ・・・・普通の二階家屋の屋根裏まで届きそうな機械の大きさはさておくとしても、紋紙を作らなければならないし、織機に紋紙を乗せるのも一仕事。あげく、紋紙を作る機械も必要。個人用に数m織るくらいでは、あきらかに、織るまでの手間や費用がかかりすぎ。今は、コンピューター化されたといっても、個人の趣味で購入して楽しむような価格とは思えず・・・。

手織教室のツアーとか、インテリアコーディネーターの講習会とかの工場見学会・・・・以前は、あったようですが、今も続いているのかはわかりません。どのような商品を、どのような状態で織っているかは、確かに、企業秘密。繊維産業の環境も変化して、秘密度は一段とアップしているように思えます。

個人相手の手織り教室でも、入会したいと見学を希望したら断られたこともあります。新しい織機の実物を見たいと希望したら、無料では対応できないと金額を提示されたこともあります。お行儀の悪い「ひやかし客」が多いから?氏素性のわからない人には代価の支払いを求めるのが、手織りの世界の常識?それとも、企業秘密?


さて、学校では、手織を専攻しスウェーデン製のカウンターマーチを持っているという方に、この2枚の写真をお見せしたとき、

「大きなパターンの柄は、ジャカードの織機でしか織れないと思っていた。」

確かに、国内で織りの組織の専門家といえば、ジャカードの工場で、意匠とか開発を担当している方になるのでしょう。たぶん、この写真や海外の手織りの本にある同じような作品の写真を見せれば、「ジャカードで織れるよ。」と返事が返ってくると思います。


ジャカード機でも織れるだろうし、手織り機のカウンターマーチ式ならば織れる。


1970代には国内でも参考書籍として読まれていたらしい英訳本『Manual of Swedsh Handweaving』。最後の「織と織の道具」の章にジャカード機の写真が載っていますから、手織機だと思いたくもなります。でも、日本で手織り機といえば、普通は、家庭でも使える織機のはず。

国内の手織りの本の「織機の分類」に ジャカード機 が入ってしまったのは、少なくともこの二つの偶然とHand Weavingの解釈の違いのように思えます。
それとも、本当に、個人の家で普通に使えるようなジャカード機があるのでしょうか?

たぶん、スウェーデンの織物学校では、組織を手織りで一から学んで、工場で生産をするような布地関係のスペシャリストになる方もいるので、最後にジャカード機の説明があるように思えます。もう一度、じっくり読んでみますが。

機械化、コンピューター化されたといっても、組織や地厚感、しなやかさなどがイメージできなければ、仕上がりの布のイメージもできないはずですが、日本は考え方が違うのかな?

さて、アメリカの本では、手織りとは・・・という定義について書いてあったりします。個人用の多綜絖の電動の織機(これは機械の特性からするとドビー機の一種?)もありますから、手動/電動では、区分できないようです。シャトルを手で投げれば手織りという考えもあるようですが、では、フライシャトル/バッタンを使った場合は、機械織りになるとかならないとか。結論はともかくとして、いろいろ考えていることに驚くことばかり。

国内で手織をする人は、文章を読むのも書くのも嫌いという方が多いのだそうです。集まって手織りをしながら、日々の暮らしの話をする・・・・織るものや場所は変わっても、昔ながらの日常の風景が手織り機と共に残っているようです。


※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。自分の知識や考えと違うからと直接に掲載文の訂正や書き直しをすると、違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィールを書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年7月21日火曜日

書籍;マリン セランデルのスウェーデン織

豪華本だと思います。Malin Selander/マリン セランデルとその作品に出会うきっかけになったと思うにはあまりに贅沢な本です。彼女の本は、他にも何冊か日本で出版されているようで、スウェーデンの手織りをするほとんどの方が、「色彩の魔術師」とよばれるこの手織り作家をご存知のようです。

作品の作者である著者は、「織物のデザインをすることは、製法と材料と色との三つ巴の葛藤をともなって意図した目的にかなった布に調和させる仕事」と書いています。タペストリーやアート作品ではなく、日常生活に使える「織り布」にこだわり、伝統的な技法をふまえて生まれた魅力的な布ばかりです。

この本は、たぶん英語版の「SWEDISH SWATCH」のYELLOW、BLUE、RED、GREENの4冊で発表された本と掲載されている作品は同じだと思うのですが、読み比べていないので詳しいことはわかりません。
最初のイエローシリーズを1962年に発表し、最後のグリーンシリーズは、1978年。この仕事に20年ちかくを費やしたと書いています。

日本向けに、特別に編集して発売された本で、書籍「スウェーデン織 技法と作品」の著者が監修と翻訳をしています。

「マリン・セランデルのスウェーデン織」 マリン セランデル著、山梨幹子;監修・翻訳 婦人画報社 昭和55年11月;発行

マリン・セランデルは、巻頭で、ほんの気まぐれからスワッチ(織見本)の付けることを思いついたと書いています。印刷されたページに布を貼り付けたら、ニュアンスが伝わる・・・・。

掲載されている写真は、原寸より大きくしたとありますが、実際の布地が貼られているような印象さえあります。また、色は大切な要素という考えから、シリーズは色相別に4つにわけられ、それぞれ19~21点程。合計81点。ほとんどが4枚綜絖以内の作品で、6枚綜絖以上は、ダブル織やドレルなどの技法を用いた20点ほどです。この日本語版には、各カラーのグループから2点づつ選んだ実際の布地が合計8枚ついています。

このほか、原書では、作者が伏せていた作品の題名が記されている・・・・花、鳥、女性の名前、音楽とスウェーデンの自然や空気感などが感じられるような配慮がされています。各作品には、用途、織法、材料、おさ目、打ち込み、綜絖通しと踏み木順と簡単な説明がついています。訳者によるMEMOもあり、作品の理解や使い方などの発想の手助けとなります。織機の使い方や経糸の掛け方などの初歩的、基本的な説明はありません。

スウェーデンで手織の勉強をし、生活や文化などへの理解もある優れた監修者であり訳者の存在があって、日本でスウェーデン織と、作家マリン セランデルの多くのファンが生まれたと感じる1冊です。

2015年7月14日火曜日

書籍;スウェーデン織 技法と作品

1970年の半ば過ぎ、六本木の交差点から麻布十番へ通じる坂を下った右手にスウェーデン・センターがありました。この中にあったショップで『へムスロイド』ということばを初めて知りました。

この本によると、『へムスロイド』とは、「家庭の手工芸、すなわち、ホーム・ハンディクラフトを意味するスウェーデン語」と説明されています。

日本では、女が家で家族の着物を織った時代はとっくにおわり、手織りは職人かタペストリーやオブジェを創作する芸術家のものになっていて、普通の生活とはかけ離れた行為のような印象さえ生まれ始めていたように思います。

スウェーデンで織物を学んだ著者は、スウェーデンの手織の技法や色彩の美しさだけでなく、手織した布を家庭で使うということの大切さを熟知していたようです。作家というよりも、伝統を受け継いできたスウェーデンの家庭での手工芸の紹介者としての魅力を感じます。
活動は、日本におけるスウェーデン織の基楚となったように思えます。

この本では、床置きの大型の手織り機を使用た作品が主ですが、著者にとっては、大型機をよる織もフレミッシュ織や紐織も・・・・・・織というよりも、『ヘムスロイド』、つまり、家庭の手工芸のひとつにすぎないようです。

スウェーデン織 技法と作品 昭和54年5月初版
著;山梨幹子 発行;婦人画報社

まず、スウェーデンに伝わる基本織法から代表的な28種を選び、「ローゼンゴン」「ハーフドレル」「ムンテカルベ」など聞いたことのある組織の由来や特徴が写真とともに説明されています。

次の作品・パターン集では、パーテーションやカーテン、クッション、テーブルクロス、服地など107点。作品の写真と作り方や使用糸、組織図などがあります。

手織の計画とプロセスも紹介されています。使われている道具や織機は、もちろんすべて北欧のものです。使われている織機は、カウンターバランスで、ニッケピン(ホース/天秤)を吊り下げるスタイル。4枚綜絖の織機ですから、極端に複雑な組織はありません。素材の良さを感じ、色彩の美しさを楽しめる作品ばかりです。

初版から約45年が過ぎていますので、たった4点ほどの洋服となった作品見て、古くさいと感じる方もいるようですが、伝統に根ざした技法と手織地としての魅力は色あせることはないように思われます。

技法と作品の写真にばかり目を奪われてしまいますが、スウェーデンの暮らしと織物についても3パージほどの紹介文があります。前書きには、「スウェーデンの織物は、人々の生活の中に生き、歴史の中に、風土の中に生きてきたものです。(中略)わたしたちがスウェーデンの織物から学び得る究極のものは、そのパターンや技法だけにとどまらず、実生活の中に生き、豊かにする織物は何かということです。」とあります。

家族や家庭が問い直される今・・・・へムスロイドに何かを見つけられるような気がします。

2015年7月7日火曜日

ローズパス織り?ローズパス通し?

経糸と緯糸でダイヤ柄を織り出したマフラーの技法名に「ローズパス」と書いてあると、ローズパスは、織り方だと思いたくなります。模紗織り、風通織り、オーバーショット織り、サマー&ウインター織り・・・・そして、ローズパス織り?

先日の多色を使ったマットもローズパス。でも、ダイヤ柄のマフラーとは違う緯糸の柄。スウェーデン織りでよく見かける「人形を織り出した小さなタペストリー」もローズパスの一種で、バウンド・ローズパス/ブンデン・ローゼンコンと書いてあることもあります。

織りの組織を経糸緯糸の交差の仕方から分類したり、方眼紙を白黒で塗りわけた組織図からの綜絖通しと踏み木順を書き出したり・・・・『織あがった布を基本に考える』いわゆる日本式では、どうしてこんなに違う3種類の織物に共通してローズパスという名前がついているのか?不可解です。ローゼンゴン地方に伝わる織り物?なんて、思ったりして・・・・。この話の先は、スウェーデン語を学ばないとわかりませんね。
綜絖の通し方で分類される海外の本などでは、ローズパスは、綾織の綜絖通しのしかたの一種。
これなら、3種類のそれぞれ違うように見える織物にローズパスという名前がつく理由が説明できます。日本でも、順通し、山道通し、破れ通しなどの通し方と名前がありますが、通しやすいとか、通しにくいとか、作業性の話が主。でも、ここにローズパスを綜絖の通し方として追加しておけば良さそうです。

さて、山道通し/ポイントツイル の「5ポイントツイル」と何が違う?
4枚綜絖で5ポイントツイルがよく見かけるローズパス。でも、本には6枚、7枚・・・・ローズパスは4枚綜絖と決まっていないようです。考えられる唯一の違いは、上のポイントと下のポイントが同じ綜絖にあること。たったこれだけのことで、ポイントツイルでは思いもよらない変化のある織物が生まれるなんて・・・・。先人の知恵に感心するばかり。

綜絖通しの書き方は、ポイントが重なるシャフト/綜絖を内側に置く場合と、手前か奥に置く場合の2種類があります。綜絖のバランスを重視するか、通しやすさを優先するかで、織機や使う人により好みがある訳です。
同じ綜絖通し順なのに、国内では、異なる通し順とする場合があるようです。レピートの基礎を理解していれば気づいているはずです。が、作業のやりかたを教える/習うことが大切だからでしょうか?古いコレクションを集めたパターン集からほぼそのまま写したからでしょうか?

バウンド・ローズパス/ブンデン・ローゼンコンは、「基礎技術から応用まで 手織り」土肥悦子著 昭和51年初版 に、「細かい連続模様」という題で紹介されています。ローズパス通しだけではなく、山道通しを使った織り柄も紹介されています。お人形や動物をヨコに並べていく愛らしい図案なら、山道通しのほうが適しているかもしれません。技法名をつけるなら、「バウンド・ポイントツイル」??

いままで、ローズパスのパス/ pass は「小道」と思っていましたが、「通過する。通す。」つまり、綜絖を通すという意味も含まれているのかもしれません。古くから伝わる名前の意味や由縁は、一つとは限りませんから。
それに、この上下のポイントのあるシャフトを内側に入れた通し図、最近はあまり使わないようですが・・・・バラの花が連なるパターンのようにも見えませんか?


※意見のある方は、自分の考えとその理由を必ず書いてください。掲載文が間違いだとして一方的な書き直しや書き足しをされると本来の主旨と異なってしまう場合がありますのでご遠慮ください。手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールを書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年7月3日金曜日

ローズパスのサンプル織のランナー

ローズパス/rosepath、スウェーデン語で、ローゼンゴン/rosengang(aの上に○○がつく)

このスウェーデン織の本によると、ローズパスには2種類あり、普通(?)のローズパスは、スウェーデンでは、最もよく知られている「art weaves/芸術的な織り方」だと書いてあります。

ローズパスは、バーズアイ/bird's eyeやグースアイ/ goose eyeとは、大きさが違うダイア(ひし形)の柄・・・と思っていたのは、アメリカの本の影響のようです。「組織織りの本」とか「古くからある英語の組織の本」とか呼ばれているあの本。

綜絖通しの本数の違いだけではないらしいと、イラストと組織図を参考に、まずは、サンプル織をすることにしました。

経糸は、漁網糸。若い頃に、マットの経糸に使った残り糸。綿や麻の経糸に慣れてしまったためか、よく伸びるので、織初めの経糸のテンションを調整するのも、結ぶのも、一苦労。

経糸の密度と緯糸のバランスもわからないまま、残り糸の綿糸を適当に引き揃えて織り始めました。

踏み木の組合せは、あっているはず。裂き織のマットを織ると楽しそうな組織。

色は同系色。キカシはホワイトとイエローで、それなりにバランスよく配色したつもりなのですが・・・・・変形してもわかるはずのダイヤ柄の見わけがつきません。基本的な柄組織の構成を理解せずに、色の濃淡を決めたのが原因のようです。

「新しくて、モダン」という評価もできるのかもしれません。が、ローズパスの特徴がほとんどありませんから、ローズパスの組織を使う必然性はあまり感じられず・・・・なんだか、無駄使いした気分。
 参考書籍;Manual of Swedish Handweaving
4枚綜絖 6本踏み木  筬 30本/10cm
経糸;漁網糸 6号 緯糸;綿 20/2、16/2など 
サイズ;75×18cm

2015年6月26日金曜日

番手、Count、毛番手、メートル番手

誰と手織の話をするでもなく、実に個人的なブログを書いているだけなので、ああ、そう呼ぶ人もいるのかと・・・頭の中に加えておけばいい事なのですが、いつものように記しておきます。

先日、「番手は糸の太さを表す。」と書いたら、

「番手自体は長さと重さの割合を表す数字。番手が具体的に意味を成すのは、糸の使用量を計算する時。何本よりかというぐらいは分かるけれど、それ以外の糸の特徴を特に表してくれるわけではないので、最終的には糸自体を見ないと、経糸の密度も決められない気がする。」というご意見がありました。

では、番手を使えば、ある程度の精度で糸量の計算ができるのかといえば・・・・実際も、撚り回数や本数などを考えてみても、誤差があります。程度問題なのかもしれませんが。
しかし、糸メーカーや問屋が計測して、手織糸に「100gあたりのおよそのm」を記載すれば、番手から計算するよりも少ない誤差で使用する糸を準備することができるはずです。

すると、「番手」の「糸の使用量を計算のための数字」としての役目はさほど重要ではないような気がします。もし、使用量の計算のためなら、手織りの場合は、さまざまな素材を使うので、全ての素材に共通して使える「テック番手」が便利ということになると思います。

結論は、経験や発想から考えるよりも、番手が必要となった 『一番目の理由は何?』なのだろうと思います。そして、なぜ素材別?
状況や理屈があっているからと、本来の解釈を変更や応用して使うよりも目的にあうように新しく作り直したほうが、たとえ時間がかかっても、誰にでもわかりやすい。利便性からも、この件の答えは、「テックス番手を使う」ということになりますね。

私の頭の中には、番手は天然素材別の糸の太さとして記憶されています。「綿は綿番手/メンバンテ、麻は麻番手/アサバンテ、毛は毛番手/ケバンテ。天然繊維の中で、絹だけは長繊維なのでデニール。」

先日の書籍 『ホームスパンテクニック』 では、「繊維の太さの表示には’S/カウンツ という繊度をあわわす表示が使われ、’Sは毛番手(Count、または、Finess,または、Quality)という。」という説明があります。

辞書を引くと、Count は、「番手。繊維の太さや糸の太さ」。確かにヒツジの毛は「繊維」ですから、Countを「番手」と 訳す/言う のは、間違いではありません。

でも、「織る」が基本の立ち位置になっている場合には・・・・多分ちょっと聞き慣れない表現。
毛番手からイメージするのは、紡績した毛の糸の太さと撚り本数のこと。身勝手かもしれませんが、ヒツジの毛の1本1本の太さは、「毛番手」という言葉ではなく「カウンツ」を使うようにお願いしたくなります。(最近は直径ミクロンで表示するように変わってきているようです。) 

では、この場合、紡いだ毛の糸の太さも毛番手? この本では、「毛番手」ではなく、「メートル番手」とあります。
さまざまな会社や協会などの換算表などには、毛番手のあとに(メートル番手)とある書かれていることがあります。綿や麻は、「ヤード番手」と呼ばないのに、「何故、毛番手だけ?」と疑問に思っていた答えのようです。

『図解 染織技術事典』柚木沙弥郎 監修 では、「毛番手」という言葉はなく、「ウール番手。もしくはメートル番手」とあります。「ウール番手」あまり聞きませんが、特定の産地でのみ使われているのでしょうか?手織りだけに使われる用語でしょうか?


内外のいろいろな書籍や文献を読み比べると、日本のろくろ式の手織りとなじまないように感じる「組織図」と「番手」。どちらも、動力機をつかって布を工場生産する時のノウハウとして、近代になり、西欧から入って来たのではないかと思います。そして、手織が着尺から洋風へと変容し始めた時に、生産現場の基本を忠実に取り入れた・・・・・?原因は、翻訳の適/不適だけではないようです。

※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。掲載文の訂正は私の主旨と違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。
また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィール、を書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年6月23日火曜日

書籍;ホームスパンテクニック

「手織をしています。」「糸もつむいでいます。」と一言くわえると、本格的に手織をしているという評価になるようです。

これは、伝統的な「紬ぎ」のイメージと「ホームスパン」がよく知られているからでしょうか?「いつかは、本格的に糸つむぎから・・・」と、思っていた時期もありました。

2-3冊購入した海外の「Spining/紡ぎ」の本では、「紡いで→編む」。なるほど、「紡いだ糸は、織る」というのは、思い込みだったようで、本格的な手織りをめざすなら「紡ぎから・・」と決めつけることもなさそうと思い直し、手織に勤しむことにしました。

ですから、復刻版が昨年(2014年7月)販売されなければ、この本を手に取ることも、開くことも、なかっただろうと思います。

「ホームスパンテクニック」 森 由美子著 2002年初版 発行;染織と生活者
復刻版 発行;株式会社復刻ドットコム 一部改定


著者は、学生時代を過ごした京都で織物に興味をもち、その土地に根ざした織物をと思っていたところに、生まれ育った岩手のホームスパンと出会ったのが学び始めたきっかけだと書いています。

総153ページで、手に取ると少し分厚く、盛りだくさんの印象がありますが、この本には、手織の本にありがちな・・・今昔の知識を書き連ねたり、工芸作家にありがちな自分の作品や制作過程へのこだわりの文章のようなものはありません。

紡ぎと手織りをするために、学び、自分の目と手で確かめ納得したこと。そして、必要なリストと資料です。
「酸性媒染染料(クロム)染料については削除する。」手織りに使う「基本的な組織は本に紹介されていているので、読み取れれば良い。」などからも、著者自身が慎重に吟味し、現在の時に即した内容に絞り込まれていることが感じられます。

「ホームスパンテクニック」という題名から、羊毛と糸紡ぎに重点がおかれている本という印象を持ちましたが、「材料となる羊毛と染」、「紡ぎ」と「織り」は、ほぼ1/3づつ同量。どれもないがしろにできないという著者からメッセージが込められているようにも感じられます。

毛織は、滑車式やろくろ式織機で織るのが適していると思っていましたが、やはり、著者はろくろ式の和機を主に使用しているようで、この織機での経糸の準備の仕方や使い方、組織図が説明されています。床上での縦巻きや織り初めにススキの軸をいれるなど、海外からもたらされたホームスパンが日本の手織の技法と融和した様子がうかがえます。

ホームスパンはベーシックな組織使いが多いためか、組織図の踏み木順の読み方などは若干疑問な点もありますが、一般的に使われている織機の種類と特色の説明もあり、手織りをするのに、必要な基本的な説明も揃っています。

「基本知識」と「経験から得た安定感のある技法」がバランスよく丁寧に説明されていることが、わかりやすく、頼れる本として、評価されているのだろうと思います。復刻が歓迎されているのは、間違いなさそうです。

2015年6月19日金曜日

バックの持ち手とマチを手織りで

「裂き織に」と、頂いたはぎれ布のなかに「印花布」らしき布を見つけました。

半端な糸があったので、持ち手とマチを織ってみることに。
経糸は、マットにしか使えそうもないと思っていたジュートのような麻糸。緯糸は、藍染風?の綿糸。これも残り糸。

単純なウネ織のつもりだったので、経糸も大ざっぱに、4本揃えたり、6本にしたり・・・。織キズも味わいと、気楽に。


それでも、もう少し変化が欲しくなり、ヨコ浮きを入れました。

組織は、4枚綜絖3本踏み木の最も単純な「緯糸が浮くハック織」になりました。
裏面のほうが凹凸の変化がはっきりして魅力的。

織幅120cmの織機で、6cmのテープを織るのは、おかしな風情のような気もするのですが、こんなに硬い麻の経糸をしっかり織れるのは、やはり織機の実力なのでしょうか?

同じく、長い付き合いの 力自慢のミシンで縫製して、できあがり。

悪くはないと思うのですが、手織をしているのに、いわゆる「民芸調」は、苦手なようで・・・・持って出歩く自信なし。
どなたかにさし上げることになるのでしょう。残りのテープは、本体を白の帆布にして、持ち手としてつけてみる・・・・?














4枚綜絖3本踏み木
筬;50本/10cm 丸羽 
経糸;麻生成 番手不明 綜絖に4~6本入れ
緯糸;綿 10/2 2本引き揃え
織幅;6cm
バック参考書籍;ハンドメイドバック 下田直子のNEEDLWORK TIME