2015年7月14日火曜日

書籍;スウェーデン織 技法と作品

1970年の半ば過ぎ、六本木の交差点から麻布十番へ通じる坂を下った右手にスウェーデン・センターがありました。この中にあったショップで『へムスロイド』ということばを初めて知りました。

この本によると、『へムスロイド』とは、「家庭の手工芸、すなわち、ホーム・ハンディクラフトを意味するスウェーデン語」と説明されています。

日本では、女が家で家族の着物を織った時代はとっくにおわり、手織りは職人かタペストリーやオブジェを創作する芸術家のものになっていて、普通の生活とはかけ離れた行為のような印象さえ生まれ始めていたように思います。

スウェーデンで織物を学んだ著者は、スウェーデンの手織の技法や色彩の美しさだけでなく、手織した布を家庭で使うということの大切さを熟知していたようです。作家というよりも、伝統を受け継いできたスウェーデンの家庭での手工芸の紹介者としての魅力を感じます。
活動は、日本におけるスウェーデン織の基楚となったように思えます。

この本では、床置きの大型の手織り機を使用た作品が主ですが、著者にとっては、大型機をよる織もフレミッシュ織や紐織も・・・・・・織というよりも、『ヘムスロイド』、つまり、家庭の手工芸のひとつにすぎないようです。

スウェーデン織 技法と作品 昭和54年5月初版
著;山梨幹子 発行;婦人画報社

まず、スウェーデンに伝わる基本織法から代表的な28種を選び、「ローゼンゴン」「ハーフドレル」「ムンテカルベ」など聞いたことのある組織の由来や特徴が写真とともに説明されています。

次の作品・パターン集では、パーテーションやカーテン、クッション、テーブルクロス、服地など107点。作品の写真と作り方や使用糸、組織図などがあります。

手織の計画とプロセスも紹介されています。使われている道具や織機は、もちろんすべて北欧のものです。使われている織機は、カウンターバランスで、ニッケピン(ホース/天秤)を吊り下げるスタイル。4枚綜絖の織機ですから、極端に複雑な組織はありません。素材の良さを感じ、色彩の美しさを楽しめる作品ばかりです。

初版から約45年が過ぎていますので、たった4点ほどの洋服となった作品見て、古くさいと感じる方もいるようですが、伝統に根ざした技法と手織地としての魅力は色あせることはないように思われます。

技法と作品の写真にばかり目を奪われてしまいますが、スウェーデンの暮らしと織物についても3パージほどの紹介文があります。前書きには、「スウェーデンの織物は、人々の生活の中に生き、歴史の中に、風土の中に生きてきたものです。(中略)わたしたちがスウェーデンの織物から学び得る究極のものは、そのパターンや技法だけにとどまらず、実生活の中に生き、豊かにする織物は何かということです。」とあります。

家族や家庭が問い直される今・・・・へムスロイドに何かを見つけられるような気がします。

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