2013年11月29日金曜日

ラベンダーと藤色

日本の楽器には、自然の音色が入っているという。

「今さら聞けない」と題した連載で、楽器の音色の話が新聞に載っていました。(朝日新聞;2013年9月28日から要約)

楽器により、同じ「ド」の音でも印象が違う。1つの音と思って聴いている音は、実は複数の音が重なって1つの音色に聞こえている。つまり、倍音や雑音の配合で 音の風合い が変わる。例えば、ピアノの鍵盤の中央にあるの「ド」の音は1オクターブ上(倍音)のドやソなどが含まれる。楽器によって、この倍音の組合わせが違っていることが、暗い/明るいなど音色の違いに効いてくる。

人間の声にも倍音が含まれるが、自然界の音は、「雑音」と呼べるような音も多く、風の音は雑音だらけ。西洋楽器にくらべ、琵琶や三味線、尺八などの和楽器は雑音が多くなる傾向が強いようだという。まるで、自然の音を模して楽器を作ったようだと。

 
雑音と自然・・・・この夏に織ったブロンソンレースの色を思い出しました。

国産の染糸。ラベンダーのつもりで織始めたら・・・藤色?なんとも日本的な印象でした。
「織ると色は濃くなる」と教わりましたが、色味が薄くなり、ベージュ味が出てくる感じでした。明度の変化はほとんどなく、彩度が下がり黄色にふれた印象です。

同じような色で、ほぼ同じ太さの海外糸と比べてみました。左はスウェーデンのコットリン。右は国産の綿糸。(写真上)
国産の糸色は、少し薄いだけと思ったのですが、よくよく見ると素地色が見えてきます。織って出てきたのは、たぶんこの色。素地色---素材の色---自然の色。

「 color guide 日本の伝統色 第2版大日本インキ化学;編 では、藤色とラベンダー(海外の花のはずですが)の両方がありました。よく似た色味ですが、ラベンダーが若干薄め。
手元のカラーガイドは年月がたち紙色が少し黄変しているようで、微妙なことはわからない状態です。最新版と海外の色票を確かめたい気もするのです。

2013年11月22日金曜日

オーバーショット#1 Wandering Vine

太く細く、曲線が波打つ万華鏡のような・・・よく見かけるゴージャスな柄も素晴らしいのですが、クラシックのパターンはローズのモチーフから。「Wandering Vine」 伸びていく蔓・・・・・つるバラのパターンです。

 
あの有名な「眠れる森の美女」のお話の原作そのままのような海外の絵本では、
姫が眠る城。花は咲き、季節は繰り返し、いつしかその姿が見えない程イバラにおおわれる。王子はそのつるを伐り、傷だらけになりながら、かきわけて進み、城をみつけて眠っている姫と出あう。
ちいさなバラの花が咲き乱れている挿絵をみて、イバラは大きなトゲのある「つるバラ」の原種ことだと気が付きました。
 
このパターン名には、バラとはありませんが、十字が中央にあり8個の四角が囲むモチーフは、「Rose/バラの花」です。よく使われていますが、今回のは緯糸が9本ほど浮くのである程度の縦密度が必要でした。
額縁(フレーム)は、つるで囲まずバラにしました。柄糸が薄めのインディゴなので、レピートしたつるのパターンは川の流れと浮かぶ花にも思えます。
   


庭につるバラがあります。
トゲは硬くて大きく、太いつるを勢いよく伸ばすので、最近は扱いにくいと敬遠されがちの品種です。やわらかいピンク色の花でひかえめな香り。散りぎわも潔し。父が好きだったバラです。
 
 「New Dorn/ニュードーン 新しい夜明け」 1930年アメリカ生まれ
 
 
 
 
使用組織;A HANDWEAVER'S PATTERN BOOK P.166
4枚綜絖 6本ペダル
筬;100本/10cm
使用糸;地糸 綿16/2 柄糸 ウール2/10
 サイズ;100×140cm

2013年11月12日火曜日

オーバーショットの仕掛り

あれから1年余。やっとオーバーショットまでたどり着きました。
机に向かって、書籍をよく読んでから取り掛かる場合もあるのですが、綜絖を通しながら考えることにします。サンプル程度の大きさは何回か織った事があるので、大きめを計画です。

柄も大柄。1レピートが124本。織り幅は100cm。総本数1010本。総長は8m。
巻取りは、糸切れもなく終了しました。織ってみて問題がなければ、機がけの基礎編は終了にします。

柄の入れ方を間違えると綜絖通しは、最初からのやり直しになるので、組織図を書き起こして綿密に確認。フレームのレピートと本体のレピート数・・・・計算間違いをしないように、と。

さて、綜絖を通しながら、
オーバーショットは綾織というお考えの先生もいらっしゃるようです。
この柄の綜絖の通し順にはM&Wツイル、タイアップには綾の遺伝子が残っているようです。本の説明からも、綾織の1種というより、ご先祖様は綾織 という感じです。

分類に興味のある方も多いようですが、織は三原組織の基本、変化、発展に大別しておけば良さそうです。専門的にデザインやモノ創りをするのなら分類(正確には分類よりも分解)からアレンジやモディファイを学ぶ場合もあると思いますが、方向を間違えると何も生まれない。手織を楽しむなら、タビーという経緯が均等な平織の地組織に柄という見かたから始めたほうがわかりやすそうです。
 
 
経糸は綿糸の生成。柄糸はウール。柄糸はウールのインディゴのライトカラー。
当初、米国で織られていたのは白と紺の織物がほとんどだったと言われています。地糸は綿か麻の生成か白。柄糸は紺。たぶんジーンズと同じインディゴ色。
復刻版を目標にするのなら、ごつごつとしたウールで、ずしりと作るのでしょうが、クラフトマンの仕事は苦手です。気配は感じさせながら、しなやかで繊細な印象を狙います。


織出し見本はローズ系のレンガ色・・・少しクラシックな匂いの色彩で捨てがたいのですが、糸量が足りません。





実際にオーバーショットを織るには・・・ですか?ここまで読めば既におわかりかと思いますので、要点のみ。
1.経糸は、平織となる地の経糸です。緯糸と同じ細糸を使用します。
2.緯糸は、太い柄糸と経糸と同じ細い地糸の2種類。それぞれシャトルを用意します。
3.左足は、左側の2本の平開口のペダル。右足は、右側の4本の綾開口のペダルを担当します。常に、左足で踏んだ時は細糸。右足で踏んだ時は柄の太糸。
4.組織図の踏み順には、柄糸しか書いていない場合がありますが、柄糸を1本織るごとに左足で平開口のペダルを踏み、細糸で平織を1本織りいれます。平開口の2本のペダルは、柄糸を織り入れながら、交互に踏めば平織になります。つまり、地組織が織れます。
5.「平開口のペダルを交互に」を間違えないように、例えば、左を踏んだ時はシャトルは→、右は←とペダルとシャトルを投げる方向を関連付けるやり方もあります。でも、必ず目で確かめて。
※平開口のペダルを2本とも右端にしたり、両端に1本づつのタイアップにしても良い。各人のお好みで。

2013年11月5日火曜日

オーバーショットとフレーム

オーバーショットは、楽しい。4枚綜絖でこんなにいろいろな柄ができるのは、たぶん、オーバーショットだけ。その理由は、時間をかけて読むとして。
アメリカの織物の入門書や手織りのやり方を書いた本では、必ず最後に登場する織り方。北欧ならドレル。日本は絣ですか?・・・・その国その国でよく知られていて、愛されていて、初心者の最終にふさわしい織り方に間違いないようです。大柄で複雑な柄を織りたいからと苦労して多綜絖にするなんて・・・・と感じさせてくれる織り方です。

たくさんの柄にさまざまな名前がついていますが、柄よりも魅力を感じるのは、フレーム・・・・私は、額縁と呼んでいます。あの油絵などを壁に飾るときに使う額縁。絵の周囲を飾る額縁。オーバーショット以外の織でも付けられますが、マフラーやショールなら、柄の変化は両端に付ければ充分に効果的。四辺の柄を変えるなら、平らに拡げて使うものに付けたい。

A HAND WEAVER'S PATTERN BOOKの巻末に近い章では、大きな柄が増え、額縁を付けたパターンが載っています。ベットスプレット(カバー)に使われた柄ではないかと思います。そういえば、パッチワークやキルトのベットスプレッドも額縁があります。
ボストン、フィラデルフィア、ニューファンドランド・・・移住したのは寒い場所が多い。日本では、ベットカバーとも呼んでいますが、寒ければ外さずに布団のようにかけたままでベットにもぐりこむこともあるようです。日本の東北の刺し子でウールを大切に縫いこんでいるのを見てふと思いました・・・・たぶんウールを織り入れたベットスプレットは、どの家庭でも必需品だったろうと。

とすれば、オーバーショットで大きな柄を織るときには、額縁を付けたくなります。ベットカバー、ひざ掛け、テーブルセンターなど、周囲を違う織り方で囲むと本格的な印象に仕上がりそうです。

中央の柄を先に決めてから、額縁の組織を考える・・・タイアップは決まっていて、綜絖通しかペダルの踏み順には制約があるわけですから、綜絖通し+タイアップ+踏み順+組織図 とにらめっこをして、バランスの良さそうな場所を選びます。選び方で柄の印象は大きく違ってきそうです。

組織図は、本に書いてある組織を織る場合はもちろんですが、大柄が増えてきたので、レピートの入り方と経糸の本数計算、そしてアレンジをする場合の必需品。オリジナル柄の作成や生地から組織を書きおこすなどのレベルに達するのは、まだまだ先・・・行きつかないかもしれませんね。

織り地の技法はサマー&ウインター。
使用組織は、A HANDWEAVER’S PATTERN BOOKから