2014年5月30日金曜日

洋書;Summer & winter A Weave for All Seasons

サマー&ウインター織りの説明書です。基本の2ブロック柄の説明と応用した織り方、そして最後に多綜絖とユニット織が載っています。

サマー&ウインターはアメリカの伝統的な組織の1つですが、古くから伝わるパターンや織り方の詳しい説明書ではありません。数多くある伝統的なパターンも掲載されていません。

著者は、Donna Sullivan。組織について勉強を積み重ね、とても詳しいと紹介されています。1991年発行

この本を読むには、「平織、綾織の基本的な組織図が読めて、理解できること。機に経糸をかけて基本的な織りができること。」と書かれていますので、手織りの基礎は必要です。

もっとも単純な4枚綜絖の2ブロックパターンを用いてPattern shafts/柄綜絖とtie-down shafts/地綜絖の関係、プロファイルドラフト、踏み木順によるテクスチャの変化などのサマー&ウインターの基本説明から始まります。

読み進むと、たぶん、著者のオリジナルであろうと思われるサマー&ウインターの応用の組織や織り方について詳しく書かれています。
4枚綜絖を使用してピックアップや柄の追加、カラー&ウィーブなどいろいろな技法の組み合わせた多様な内容です。副題の『A Weave for All Seasons』は、2色で2要素の伝統的な「夏と冬」の織り方ではないという意味が込められているようです。

4枚綜絖で挑戦できる内容が多いので初心者向きで簡単にできそうに思えますが、布を拡大して経糸と緯糸の交差をわかりやすく描いたイラストや手順の写真などは、ありません。組織図と実物布の写真と説明・・・ですので、理解するには、英文を読み解く必要があります。

日本の手織りでは、「サマー&ウインター」が「昼夜織」と同じと誤解され、一般的ではないようです。多少でも伝統的なサマー&ウインターの基礎知識が事前にあったほうが、この本に取り組みやすいのではないかと思います。

2014年5月27日火曜日

書籍;染と織の歴史手帖

すでに、この本を読まれた方は多いのではないかと思います。発売されたとき、確か、本の帯に「和服がぐっと身近になる。」とありました。和服は着ないから・・・とその時は、敬遠しました。


染と織の歴史手帖-「きもの」と「きれ」をもっと深く知るために
吉岡幸雄 著 1998年初版 PHP研究所版

著者は、「染司よしおか」の5代目当主。

著者のプロフィールは文中に「私の生まれ育った家が染谷だったので、家の中には色とりどりの裂が散乱していた。また、父は染織の研究者でもあったから、日本はもとより、世界の伝統的な染織品の収集もかなりの数にのぼっていた。」とあるように、いわば、生まれながらの「きれ」のスペシャリスト。

そして、「若い頃、美術工芸の出版に携わり、書物を読み文献を調べ美しく佳いものをさず多く見、それを求めて旅をした。」と紹介されています。

なるほど、伝えられる数多い「きもの」と「きれ」からの選択眼も確かで、そしてこの文書が生まれるわけです。

「着るもの」と「きれ」が気になり、日本で生まれ育ち、この歴史と文化のなかで暮らしているのなら・・・読んでおきたい本です。できれば手元に置き、事あるごとに開きたい本。

あとがきには、
「染織史や服飾史を書くつもりは毛頭なかった。(中略)日本の衣の先達たちを見るとき、人が生きてくのに大切な三要素「衣食住」の筆頭に置かれる「衣」に、思いを込め、個性を表現しようとしてきた情熱が分って頂けると思う。それは、着る側にも作る側にもあったのだ。」とあります。


「きれ」を見つめ続けてきた視線は、「きれ」の向こう側をも読み取ることができ、この先の明日も透し見ているようです。「きれ」には、国境がない。着物も洋服も 「同じ衣/ころも」。そんな想いが湧き上がります。
テキスタイルデザイナーをめざす方には、必読の一冊。

2014年5月26日月曜日

麻と書籍;日本の自然布 

綿木が伝来する前、普通の人々は何を着ていたのでしょうか?そんな疑問から図書館で見つけた1冊。

日本の自然布 別冊太陽 2004年1月5日初版

自然布は、原始布と呼ぶこともあるようです。取材時から相当の年月が過ぎている項もあると書かれていますが、この十数年前までは、確かにあった糸つくりと織りです。
大手紡績メーカーがさまざま機能を研究開発し、医療分野にまで通用する高度な技術をもつこの国で、原始から続く糸つくりが続いている/続いていた のは不思議で、魅力的な国です。

自然布に使われている木や草は、聞いたことがある名前がほとんどで、近くの公園や空き地にも自生しているものもあります。が、水につけたり、囲炉裏の灰を入れて煮たり、川にさらしたり・・・・山々の自然と生活と根気よく体と手を動かす人がいなければつくれません。

紹介されている自然布と場所

オヒョウ/おひょう 北海道浦河郡
藤布/ふじふ   京都府宮津市
科布/しなふ   新潟県岩沼郡
葛布/くずふ   静岡県掛川市
太布/たふ   徳島県那賀郡 
紙布/しふ   紙漉き 宮城県白石市 紙衣づくり 奈良市雑司町
大麻布/たいまふ  栃木県上都賀群
苧麻布/ちょまふ  苧麻つくり 福島県大沼郡 越後上布 新潟県南魚沼郡 
芭蕉布/ばしょうふ  沖縄県国頭郡 西表島


この中に、身近な「麻」がありました。
エジプトのミイラを包んでいたという話は有名ですが、この本で、大麻のもつ幻覚性から神事に使われたとあります。太古の昔から着物や洋服の今へと続く 「麻」 だから、何か少し違う・・・と感じる魅力があるのかもしれません。

量産化され、紡績段階で異なる麻の種類をまぜて混紡にすること合が多いようです。でも「麻100%」と表示されるので、それぞれの違いがわかりにくいように感じます。
亜麻、苧麻、リネン、ラミー、ジュート・・・種類も呼び名もいろいろ。服地以外にロープ、運搬保存用の袋など使われかたも多い素材。本の最後に自然布の世界地図がありますが、麻は種類が多く、育つところも世界中。


生きるために不可欠な「衣食住」・・・衣も時間と手間をかけなければ、手にできなかった時代。
自分で作らなくでも豊富にある時代・・・この時間を何に使いますか?


2014年5月20日火曜日

書籍;きものという農業

首都圏の住宅地なのに、道端に桑らしきものが芽吹いていました。土や気候があっているらしい。

アメリカの書籍に、「手織りは農業だ。その土地の気候や土地で育つ作物や動物から繊維や毛を取り、糸にして織る。」という記述があったのを思い出しました。

海外の手織は、西欧の生活に必要なベットカバー、ランチョンマット、テーブルクロス、カーテン、マットなど。日本では、今も着尺が主流。今まで着物を着ることはほとんどなかった私にも、「手織は農業」と同じ考えを見つけたことで、日本の織を身近に感じることができるかもしれない・・・と。


着物という農業 台地からきものを作る人たち 2007年5月30日 初版
著者;中谷比佐子 発行所;株式会社三五館

著者は、女性誌の編集記者を経て、きものが私をどう変えるか」というきっかけからきものを着続けてて40年。きものを切り口に日本の文化、考え方の基本を学び、伝承を進めている”きものジャーナリスト”と紹介されています。


書き出しには、「初夏には天皇陛下が稲をお手植えし、皇后陛下が・・・蚕に直接桑の葉を与え・・・」で日本は農業国家という思いを強くもつとあります。
仏教の影響があるのかもしれませんが、確かに日本では昔から動物の毛を刈ったり、皮や毛皮を普通の生活でまとったという話は聞きません。

実践と体験から生まれた視点ですが、きものの本にありがちな・・・着方、季節や帯とのあわせかたなどとは異なる内容で展開していきます。

養蚕農家のこと。文様、紋様や模様と呼ばれる柄は自然や農耕道具から。季節を見つめる衣替え・・・自然との深いかかわりが書かれています。日本人は、勤勉で、自然を大切にした農耕民族の遺伝子を受け継いでいるはず・・・。

畑の桑を食べて絹を吐き、綿、麻は、畑から収穫され、糸になり、織られ、きものになる。
つむいだ糸が風合いよく織りあがる織機がからだに負担がかかっても大切にされてきた。

「石油を知らなかった19世紀中頃までの日本人は、食糧、衣類、建材、肥料のすべてを『植物』でまかない、依存し、愛し、いろいろなことを学んでもきた。」と書かれています。

現代の日本は、原材料は輸入に頼る自動車とテクノロジーの国。石油の枯渇や温暖化から原発へ。そして、なお止められないという。著者のいう「蚕と稲に込められた日本人の価値観」を思い出すこととで、エネルギーについて新しい道を模索する拠り所や自信にはならないのでしょうか。

いろいろなことを考えさせてくれる1冊です。

そして、なぜ今、手織りをするのか・・・その答えは意外と近くにあるように感じます。

2014年5月9日金曜日

サマー&ウインター#2 Snow-ball with Pine-Tree Border の準備

Snow-ball with Pine-Tree Border/雪玉に松の木のフチ飾り ; The Shuttle-Craft Book of American Hand-Weaving から

この柄にあこがれて、
本と織機を購入して本格的に織初めて、手織の本や雑誌の編集者になった人もいる。
4枚綜絖の織機なので1本1本経糸をスティックでひろって織ったという人もいる。

サマー&ウインターを織り始めたら、必ず織ってみたい柄。
スノーボールの個数やローズのモチーフ入りなどバリエーションは豊富なのですが、何しろレピートが大きい。つまり、本数が多い。できれば、テーブルランナー用として、60cm幅くらいで・・・と思い、組織図を書いてみました。が。

織初めの左端。ショートドラフトで書いて、ノートを継ぎ足しても、入りきりません。左端から最初のスノーボール中心のまで約470本。ここでセンターにしても60cm幅にはとても収まりそうもない・・・。また、膝掛か。

海外の120cm幅の織機は、タペストリーを制作する作家の方が使うものとずっと思っていました。でも、レピートの本数が多いから・・・という場合もありえる訳ですね。

密度を上げて、経糸を細くすればよいことになりますが、すると糸は30/2程度?素敵な薄手のショールができそうですが、気軽に織れるレベルではなさそうです。

今回は、経糸はブルー、緯糸を白に。
経済面を考えて染めてみましたが、普通の家庭の台所では、一度に500gは思ったよりも気を使う大仕事。廃液の処理も手間取りました。手織りはやっぱり大変。ぜいたくな趣味。

さて、どの色で、どの組織にするか?
織り始めるまでの時間がかかります。織っている時間よりも長いかもしれない・・・。

2014年5月2日金曜日

梅の新芽から色をもらう

狭くて風通しの悪い庭の梅の木。花が終わり、窮屈だと訴えているようにたくさんの新芽が吹く。

木にとってこの時期が適しているかはわからないけれど、梅雨になる前に少し摘み取ります。さもないと、蒸れて病気や虫がつく・・・・。


せっかくの新芽。毎年申し訳ない気持ちがあるので、今年は色にして、残してみようかと。




勢いあまって、つまり、衝動買いした「染色用のオーガージ―のショール」があったはず・・・。
台所のシンクの下には、何に使ったのかわからないのですが焼きミョウバンも残っています。今年は、これで試してみることに。

煮だす事、30分。少し赤みの花の色がでてきたような気もします。濾した液に浸したオーガンジーもほんのりと赤く、梅の香り。

ミョウバンの液に浸けると・・・・何やら、緑色。期待していた色とは全くちがう。

仕上がったのは、薄いグリーン味を含んだイエロー。


かなりの数の色を見てきたつもりでしたが、これがあの若芽色?今まで見たこともない色。
あまりに繊細で、何色と合わせたらよいのか、皆目見当がつきません。でもよく見ると、混じり気がなく強さを秘めてもいるようです。

繊細で力強い色・・・新芽からの頂きもの。