2014年5月27日火曜日

書籍;染と織の歴史手帖

すでに、この本を読まれた方は多いのではないかと思います。発売されたとき、確か、本の帯に「和服がぐっと身近になる。」とありました。和服は着ないから・・・とその時は、敬遠しました。


染と織の歴史手帖-「きもの」と「きれ」をもっと深く知るために
吉岡幸雄 著 1998年初版 PHP研究所版

著者は、「染司よしおか」の5代目当主。

著者のプロフィールは文中に「私の生まれ育った家が染谷だったので、家の中には色とりどりの裂が散乱していた。また、父は染織の研究者でもあったから、日本はもとより、世界の伝統的な染織品の収集もかなりの数にのぼっていた。」とあるように、いわば、生まれながらの「きれ」のスペシャリスト。

そして、「若い頃、美術工芸の出版に携わり、書物を読み文献を調べ美しく佳いものをさず多く見、それを求めて旅をした。」と紹介されています。

なるほど、伝えられる数多い「きもの」と「きれ」からの選択眼も確かで、そしてこの文書が生まれるわけです。

「着るもの」と「きれ」が気になり、日本で生まれ育ち、この歴史と文化のなかで暮らしているのなら・・・読んでおきたい本です。できれば手元に置き、事あるごとに開きたい本。

あとがきには、
「染織史や服飾史を書くつもりは毛頭なかった。(中略)日本の衣の先達たちを見るとき、人が生きてくのに大切な三要素「衣食住」の筆頭に置かれる「衣」に、思いを込め、個性を表現しようとしてきた情熱が分って頂けると思う。それは、着る側にも作る側にもあったのだ。」とあります。


「きれ」を見つめ続けてきた視線は、「きれ」の向こう側をも読み取ることができ、この先の明日も透し見ているようです。「きれ」には、国境がない。着物も洋服も 「同じ衣/ころも」。そんな想いが湧き上がります。
テキスタイルデザイナーをめざす方には、必読の一冊。

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