2015年2月24日火曜日

スコットランド製工業用ラムウールの試織 ひとまず終了

購入した糸は、約55g。
しあがったサンプル兼マフラーなど5点 と 残り糸少々。

織りあげてから糸についているオイルを洗うとフェルト化するという・・・おもしろさばかりに気を取られてしまいます。
でも、本来は、オイルコーティングがないと織りにくいほど柔らかなラムウールのはず・・・・。ですから、この糸の風合いやテクスチャーは大切にしたい。そして、色彩の美しさを生かすなら、組織はシンプルな方がいい。

ということで、今回試したのは、平織、2/2綾織、ホップサック、ヘリンボーンの変形。
私の偏見かもしれませんが、色をたくさん使い、複雑な組織で・・・・とあれもこれも入れ込むと、素材の良さが見えにくくなって、もったいないような気がします。結局は、組織と色と質感のバランスをどのようにとるのかに尽きるようです。

「外国の手織」という話になると、海外の糸を使って、組織柄(?)とか呼ばれる凝った綾織や緯糸が浮いたり、タビ―が入ったりの柄織をイメージする人が多いようです。
滑車式やろくろ式の4枚綜絖の織機でも、基本的で単純な組織柄は織れるのですが、本格的に織柄を織りたい/勉強したいのなら、やはり多綜絖を視野に入れて米国や北欧の天秤式を基礎から学んだ方がおもしろいと思います。

同じ組織が織れても、滑車式と天秤式の織機では、そもそもの織や布の文化が異なる・・・ということです。ふと、英国は、滑車式の文化圏ではないかと思ったのですが、どうなのでしょうか?


さて、この糸を使うなら、「配色を楽しんで、組織はシンプルな布」が織りたい。
1~2年は楽しめそうですが、今までとアプローチの仕方は変えたほうがよさそうです。

1.糸見本をトーン分析して糸色の分布を確認する。
2.参考になりそうなストライプやチェックの見本を収集する。
3.大判の方眼紙と多色の色鉛筆を購入する。
そして、スケッチ。配色案。スペック設定。マス見本作成。などなど。

かなりの糸量を購入する必要もありそうで・・・・実は、以前に何度もしたことがあるので・・・・・
先に、北欧へと進みます。

2015年2月20日金曜日

モノカラーのタータンのマフラー

タータンのデザインについて正式に学んではいませんが、
タータンといえば、シンメトリーの縞割。そして、アンダーチェックとオーバーチェックの組合せ。
忠実に再現すると、普段使いには正統派な印象になりすぎるような気もします。

さて、気ままに少しずつ色を選んで、買った糸も残りは、わずか。
バイカラー(2色使い)にしたかったのですが、ブルーと残ったのがホワイトでしたので、モノカラーになりました。ちょっと残念。

色数がないので、ヘリンボーン組織を使って、手織らしい変化を加えてみました。

踏み木も4本、シャトルも2丁ですから簡単なはずですが、ヘリンボーンをよこにも使うと踏み替えのところで綾が飛んで、そして、右上がりまたは左上がり・・・確認する場所によっても向きが違うので、混乱しやすい。中央で綾を折り返したら、バーズアイ?

予算の関係から、今回は購入量が少なかったので、サンプル織ともいうべき小さなマフラーばかり。これで、3本め。
ファブリックの魅力は、「パターンがレピートして無限につながっていくこと。」と、よく聞きますが、やはり左右につながっていかないと織る面白味は半減のようです。服に仕立てて着る楽しみはレピートなどないほうが面白いとわかってはいるのですが・・・・。
使用組織;2/2綾織 4枚綜絖 4本踏み木
使用糸;ラムウール100% 2/11.3
ブルーW-026 ホワイトW-001 手織り工房タリフ 
使用筬;60本/10cm
仕上りサイズ;100×20cm フサ10cm

2015年2月13日金曜日

タータンチェックの本と思い出と

繁華街として有名な東京の六本木の溜池方面へのバス停の前に、タータンチェックの店がありました。1970年始めごろだったと思います。
店内には、上品に半折にして巻かれたタータンの反物が中央と壁一面にずらりと並んでいて、その上の棚には、バグパイプとかスコットランドらしい調度品があったようなのですが、小学生のわたしには背伸びをしても見えませんでした。

その棚においてあった本。 「ROBERT BAIN'S  CLANS &TARTAN OF SCOTLAND 日本語版」 下写真;右
昭和50年出版 定価弐千六百圓 発売元 チェック商会
オリジナルの英語版は、中古品で販売されていますが、表紙だけでは見分けがむつかしいので要注意。

カラー印刷が少ない時代に、掲載されているタータン133柄の全ての図柄に色彩がついています。当時の言葉で・・・オールカラー。懐かしい言葉!これだけで価値があった時代ですから、ページをめくると次々と現れる鮮やかなチェック柄は驚きでした。
柄の名前は日本語と英語で表示され、紋章やモットーなど一族の紹介とタータンの柄がカラーであります。歴史や正式にタータンを着た姿のイラストも載っています。

この本は、「タータンチェックの文化史」奥田実紀著によると、1975年に日本語で出た初めてのタータンの専門書。チェック商会の会長がタータンの専門書が日本で出ていないことを残念に思い、自ら自費出版したという話です。この本のおかげで、より多くの人々にタータンが理解されるようになったとあります。

そう言えば、一時期大流行した「キルトスタイルのスカート」をはく女性は見かけなくなりました。
「大事にするなら」という約束で買ってもらった?ようですが、表紙は申し訳ないような状態。
いくら歴史的な価値がある本でも、デザインを考えならばと比較的最近入手したのが、大判の本。
「James Grant SCOTTISH TARTANS in Full Color」 上写真;左 

73柄が25.5×17.5cmのサイズでのっています。テキスタイルデザイナーなども使うパターン集のようですので、柄のレピートや配色の明度彩度の特徴も捉えやすく、アレンジもしやすいと思われます。細い線が数多く使われているタータンもあります。縞の太さを確実にみることができます。


パターン集を見ているとタータンは魅力たっぷりなのですが、街で見かけるタータンは、極端にヤングファッションだったり、チープな服のアクセントに使われている場合も少なくないようです。
真正面から取り組むと、私の場合は、メンズの印象が強くなるようで・・・・・優しい年配の印象にアレンジにするには、どうしたら良いのやら。今までどおり、見て楽しむのがいいのかも。

2015年2月10日火曜日

カラー&ウィーブ#3 ちょっとブランド風かも

ヨーロッパのブランド風かも・・・・・と、本人がいい気になっていると、周囲の人は首をかしげる場合がほとんど。

もう手織りをやめたからといただいた糸から選びました。
ですので、使用糸の番手も素材は不明。ウールの混紡のようです。濃色に見えるのはブルーや赤が混ざったトップミックスの糸。淡色はグレーではなくベージュ色で細い糸なので4本引き揃え。

お使いになっていた織機は?と聞けば、ご近所の手織りをなさる方が欲しいとおっしゃるのでさし上げたら、使いにくかったので寄付したということ。どうも天秤式の織機だったようです。

経糸は、ダブルウィーブのやり方で機にかけたので、素材や本数が違っても簡単でした。ただし、2mの織終わりごろには、糸それぞれの収縮の差が若干出てきました。この程度を1~2枚織る程度なら、ダブルビームは必要ないようです。

よく本で見かける四角を重ねた柄にしたかったのですが、あれは、8枚綜絖。仕掛けをのせかえるのも面倒なので、見つけたのがこの柄。4枚綜絖の破れ通しで、ブロウクンツイルです。

軽く、柔らかく仕上げたいので、密度はあらめに設定。筬打ちは、やさしく、やさしく。

えーと、グレーに写っていて残念なのですが・・・ブランドのバック地に似ているようで、ありそうで・・・どうでしょうか?
参考書籍;Color-and-WeaveⅡ M..B.Windeknecht著
使用組織;ブロウクンツイル 4枚綜絖 4本踏木
使用糸;不明
使用筬;55本/10cm
仕上りサイズ;200×46cm フサ10cm

2015年2月6日金曜日

書籍;手織機の研究

先日の「天秤式をたどってみると」で参考にした本です。が、内容は「天秤式織機について」という狭い範囲の内容ではありません。参考にさせていただいたのは、本当に少し・・・先史時代から始まる研究です。

 「図説 手織機の研究」 前田亮著 平成4年5月発行 京都書院

今は廃刊や休刊になってしまった染織雑誌にも多岐にわたる内容を記述されていたようですので、長年染織に携わっている方ならばよくご存知なのだろうと思います。

『古代に、今見てもすごい織物が織られている。(中略)棒だけみたいな簡単な仕掛けで織れた織物が、どうして今の技術で簡単にできないのであろうか。なにかおかしい。』『機織りの技術の古代と現代の関係は、現代技術の直面している問題を解明するために役立つかもしれない。機織りがいつ頃どのように創り出されて、古代にどのようであったか、調べることにした。』とあります。自ら機械屋と称する著者の考え方やモノの見かたは、論理的で明快です。
手織を楽しむ人は自分の織機の使い方がわかればよいのだろうと思います。そして、何よりも気になるのは、目の前の縦糸に緯糸が入って布に・・・・。私も、その気になってばかりいる一人なのですが。
でも、今、海外からは趣味で使われているというさまざまな織機や書籍が入ってくるし、アジアの織や織機を見る機会も増えてきた・・・。
私の持っている手織の本では、織機の分類と今使われている一般的な手織り機の構造(時として、部分の名称)と使い勝手の感想のような説明などがあるだけ。手織りを楽しむのに、そこまでの知識は必要ないということだと思いますが、大昔から生活に必要不可欠な道具として使われ、改良され発達したことは、現在の国内や海外のような手織機や手織りにも影響しているはず・・・・漠然と疑問に感じていることに説明をしてくれるようです。

・日本は、ほとんどがろくろ式織機なのに、海外の織機はなぜ滑車や天秤があるのか?
・布を作るのに、編物と織物があり、なぜ織だけが整経や筬通しなど手間がかかる機械化--手織機として発達したのか?
・本当に織機は世界の各地で発生し、発達したのか?
・東南アジア~日本までいろいろな織機がいろいろあるけど、関連性などで分類整理はできず、すべて原始機とかになるのか?
・最古の織のやり方から今の手織機へとどのように発達したのか?

人類最初の機械の一つですから、人類学、言語学、民俗学、考古学・・・さまざまな分野を横断して話は進みます。織は、生活に欠かすことのできない『衣食住』の衣にあたり、農耕と共に農閑期の仕事として広がったという説を色々な資料をもとに裏付け、展開しています。

本や展示会などでは、現存する織機を列記して構造で分類して説明・・・・このやり方ですと、「いろいろあっておもしろい」と思うだけ。この本は、通常は「技術史」の分野になるようですが、時系列的に分類し研究されたと受け止めて読み進むことができます。織機の場合、次へ次へと発展し、古くなったすべてが衰退して消滅しているわけではありません。現在でも民族衣装などを織るために、目立った改良や進化せずに、使われ続けているケースを実際に見ることができますから、どの程度古くから伝わっているのかと新しいかは分類軸として欠かせないことになります。

原始から現在までの織機が同時に存在している状況を体系づけて整理するには、この本のように時代と地域を重ねあわせて推移を見るのが最もわかりやすく、現在の手織機と織物へと自然な流れとしてつながってきます。

手織りの楽しみは、地球上のいたるところに存在する織と、先史時代からの膨大な時間のほんの片隅に・・・・・ちょっとだけですが、加わることができる。そんな気がします。

2015年2月3日火曜日

天秤式をさかのぼると

今までずっと、「天秤があるから天秤式」だと思っていました。でも、「綜絖・招木・ペダルの重さの釣り合いをとるから天秤式」という説明があるようです。カウンターマーチと呼ばれるこの織機の欧米での説明の和訳が関係しているように思えます。が、肝心な後半部分がない・・・・これは、日本人がカウンターマーチを理解するときに必要な部分なのですが、欧米で手織りをする人にはあまりに、あたりまえのことなので、特に説明する必要がないのかもしれません。つまり、天秤の説明の方が大切なようです。

そんな時に図書館で見つけた本 「図説 手織機の研究」 前田亮著 平成4年5月発行
内容は、改めて紹介するとして、先史時代の織る道具から始まり、写真や資料の図版など数多くの織機が登場します。

天秤式の名称をもつ織機の図版も数多く登場します。中筒浮動型天秤腰機、中筒スライド型天秤腰機、明代中国の天秤腰機、タイ北部メオ族とヤオ族の天秤腰機、朝鮮半島の天秤腰機、出雲の天秤腰機・・・・・。実際に現地でも天秤式と呼んでいるかどうかは、定かではありません。が、腰機、つまり、地機ですから、踏み木はありません。綜絖との釣り合いをとるべき踏木はありません。自ら機械屋と称する専門分野にたけた著者が天秤式という名称を使っているのですから、余談をはさむ余地はなさそうです。

この本によると、荷物を運ぶ道具として「天秤 棒」を使うのは、アジアだけ。そう言えば、アメリカ大陸横断鉄道の建設工事の写真では、アジア系は天秤棒を担ぎ、西欧人は手押し車で土砂を運んでいました。

織機の天秤は、綜絖を上げ下げするという荷役に使う道具・・・つまり、アジアの発想。天秤式織機は、欧米ではなくアジアで生まれたらしいという話になります。

「11章 多綜織機へ」では、高機でろくろや天秤のあるが登場し、次章の「紋織機」では、中国の天工開物の花機や四川省成都の丁橋織機の図版があり、天秤の後方に紋織用の装置も見られます。この織機が欧州に伝わり、ジャカード機の発明の元になったという事ですから、北欧で使われ続けたカウンターマーチとも関連がありそうです。

ろくろ式は東南アジアに多い滑車の派生したタイプ、滑車式は西アジアを中心に分布しており、天秤式は中国の方式で、ろくろのように反対側に綜絖を吊るす形もあるが本来は綜絖は引き合げのみの形と書かれています。

伝播した西欧では、天秤棒の歴史や習慣がないために、カウンターマーチという呼び名になったのかもしれません。米国の本によると 『カウンターマーチは、ぞれの綜絖と踏み木が釣り合って動く織機ですので、制約なしに動かしたい綜絖を上下し、自由に織り柄をデザインして織ることができる織機』 と説明されています。

『天秤式織機は、上部の天秤で、綜絖・招木・ペダルの釣り合をとって経糸の開閉を行う。だから、踏木が軽い』と、織機の歴史を知らずに、天秤の一般知識だけで容易に カウンターマーチ/北欧から輸入された天秤式織機 を説明をしてしてしまうと、中国で発達した紋織物のDNAを引き継いでいる天秤式織機の決定的な特徴が抜け落ちてします。

どこで、上がる綜絖と下がる綜絖の両方を踏み木に結ぶという「改良」がなされたのかは、わかりませんが、どうやら、カウンターマーチのご先祖さまは、中国で発達した綴織などの柄を織る天秤式織機。

さらに、「織機のは改良や発達につれて、経糸のかけ方も違っていく。」という記述も興味深いです。なるほど、アジアで使われているろくろ式のやり方で、西欧でさらに進化をしたと思われる 北欧の天秤式/カウンターマーチ を使うと、中央のコードや糸綜絖の滑りの悪さなど・・・・使い難くて、うんざりするわけです。

大小さまざまな織り柄を多綜絖で織るために発達した天秤式。使いこなしていますか?天秤式織機。

余談かもしれませんが、フィンランドでは、カウンターマーチは「vipu/てこ」という言葉を用いた名前だということです。北欧では、フィンランドだけがアジア系というお話と関係しているような気もします。

※意見のある方は、掲載文の部分的な訂正や書足しをするのではなく、自分の考えとその理由を必ず書いてください。
また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと参考としている書籍、経歴などのプロフィール、を書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。