2015年2月6日金曜日

書籍;手織機の研究

先日の「天秤式をたどってみると」で参考にした本です。が、内容は「天秤式織機について」という狭い範囲の内容ではありません。参考にさせていただいたのは、本当に少し・・・先史時代から始まる研究です。

 「図説 手織機の研究」 前田亮著 平成4年5月発行 京都書院

今は廃刊や休刊になってしまった染織雑誌にも多岐にわたる内容を記述されていたようですので、長年染織に携わっている方ならばよくご存知なのだろうと思います。

『古代に、今見てもすごい織物が織られている。(中略)棒だけみたいな簡単な仕掛けで織れた織物が、どうして今の技術で簡単にできないのであろうか。なにかおかしい。』『機織りの技術の古代と現代の関係は、現代技術の直面している問題を解明するために役立つかもしれない。機織りがいつ頃どのように創り出されて、古代にどのようであったか、調べることにした。』とあります。自ら機械屋と称する著者の考え方やモノの見かたは、論理的で明快です。
手織を楽しむ人は自分の織機の使い方がわかればよいのだろうと思います。そして、何よりも気になるのは、目の前の縦糸に緯糸が入って布に・・・・。私も、その気になってばかりいる一人なのですが。
でも、今、海外からは趣味で使われているというさまざまな織機や書籍が入ってくるし、アジアの織や織機を見る機会も増えてきた・・・。
私の持っている手織の本では、織機の分類と今使われている一般的な手織り機の構造(時として、部分の名称)と使い勝手の感想のような説明などがあるだけ。手織りを楽しむのに、そこまでの知識は必要ないということだと思いますが、大昔から生活に必要不可欠な道具として使われ、改良され発達したことは、現在の国内や海外のような手織機や手織りにも影響しているはず・・・・漠然と疑問に感じていることに説明をしてくれるようです。

・日本は、ほとんどがろくろ式織機なのに、海外の織機はなぜ滑車や天秤があるのか?
・布を作るのに、編物と織物があり、なぜ織だけが整経や筬通しなど手間がかかる機械化--手織機として発達したのか?
・本当に織機は世界の各地で発生し、発達したのか?
・東南アジア~日本までいろいろな織機がいろいろあるけど、関連性などで分類整理はできず、すべて原始機とかになるのか?
・最古の織のやり方から今の手織機へとどのように発達したのか?

人類最初の機械の一つですから、人類学、言語学、民俗学、考古学・・・さまざまな分野を横断して話は進みます。織は、生活に欠かすことのできない『衣食住』の衣にあたり、農耕と共に農閑期の仕事として広がったという説を色々な資料をもとに裏付け、展開しています。

本や展示会などでは、現存する織機を列記して構造で分類して説明・・・・このやり方ですと、「いろいろあっておもしろい」と思うだけ。この本は、通常は「技術史」の分野になるようですが、時系列的に分類し研究されたと受け止めて読み進むことができます。織機の場合、次へ次へと発展し、古くなったすべてが衰退して消滅しているわけではありません。現在でも民族衣装などを織るために、目立った改良や進化せずに、使われ続けているケースを実際に見ることができますから、どの程度古くから伝わっているのかと新しいかは分類軸として欠かせないことになります。

原始から現在までの織機が同時に存在している状況を体系づけて整理するには、この本のように時代と地域を重ねあわせて推移を見るのが最もわかりやすく、現在の手織機と織物へと自然な流れとしてつながってきます。

手織りの楽しみは、地球上のいたるところに存在する織と、先史時代からの膨大な時間のほんの片隅に・・・・・ちょっとだけですが、加わることができる。そんな気がします。

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