2014年9月16日火曜日

洋書;DOUBLE WEAVE on Four to Eight Shafts

『二重織』を組織図で理解するのは、難しすぎるように感じていました。
方眼が白と黒に塗りわけられて、あげく、赤と黄色も入っていたりする あの組織図。表と裏、つまり上の布と下の布を見わけるだけで一苦労。慣れればすぐにわかるのかもしれませんが、何回挑戦しても???で、織リ始めるに至らず。


この本の著者、Ursina Arn-Grischottは、スイス在住。主に欧州で活躍するテキスタイルデザイナーで教師。若いときにアメリカで手織と出会い、二重や多重織に魅了されたと書いています。

二重織については、生産の現場ではすぐれた本が多くあるのに組織図や専門の言葉など手織りをする人には理解しにくい。このことから、この本では、著者が生徒に教えた20年の経験も加え、『組織図』の部分をイラストにするなど、「手織りをする人にとって、わかりやすく」という考えで執筆されています。このことだけでも、充分満足してしまいます。

さらに、手織りの説明が書かれた本であることを忘れそうになるほど、美しい写真とレイアウトです。

書籍でも見る機会が少ない美術館所蔵の布や著名な作家の作品、学校が保管している布などの写真が120余点。伝説ともいえる「デイビッド・アンダーソンがジョージⅣ王に献上したシャツ」の写真もあります。手織り本のコレクターにもお勧めです。


さて、Double Weave/二重織は「同時に2枚の布を織る」ことと定義しています。つまり、オーバーショットや昼夜織などの二重組織は含まれません。上下の布を入れ替える場合や端をつなげて織る2倍幅、チューブ織、ステッチ入り、多重織が、この本では説明されています。
スティックを使用する織り方やアメリカのように数多くの綜絖でパターンを織り出すなどのパズルのような二重織はありません。また、写真作品の具体的な作り方もありません。

歴史や各国や地域の二重織の紹介から始まり、「上下で別々の布を同時に織る」という基本構造の説明、織るまでの準備のしかた、デザインの発想法、多様な上下の縦緯の糸の組み合わせ、柄の考え方なども段階を踏んでていねいに説明してあります。二重織の構造と可能性を学ぶことができます。

布の構造を従来の組織図にこだわらないスタイルで説明するなど、著者の作品は基本と論理の確実な裏付けの上に展開されていることがわかります。


著者は、手織や工芸の教育活動の発展を支える協会にも熱心に参加していると紹介されています。この本でかいま見る事しかできませんが、歴史に始まり、明確な定義、さまざまな事例、技法、論理、展開・・・・・・デザイナーや手織りのプロをめざす人たちが、しっかりとした織の基礎をベースとした思考や発想、組み立て方を学べる環境に恵まれているのは、何ともうらやましい限りです。

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