2015年10月16日金曜日

国内の完全意匠図と海外の組織図の違い

「天秤式(たぶん、天秤式の完全意匠図の書き方)は、女子美の先生とアメリカ人の先生から習いましたが、女子美の方がわかりやすかったので、本はそちらにしています。」 ちょっと意外でした。
この本とは、『手織り手紡ぎ工房』 監修;馬場きみ 著者;彦根愛 平成25年発行 

 
完全意匠図とは、『綜絖の通し方、踏み木の踏み方、タイアップが、まとめて1つの図として表されたもの』(P47)とあります。この本では、具体的に使用する織機にあわせて組織図から綜絖通し方を考え、踏み木を考え、タイアップを考える。』というやり方が詳しく説明されています。
つまり、織機の種類によって異なる・・・・「1本の踏み木に1枚の綜絖を結ぶ とか 1本の踏み木に数枚の綜絖を結ぶ」 や 「踏み木を踏むと結んだ綜絖が上がる/下がる」という問題を、完全意匠図を作るときに同時に解決しています。これがたぶん女子美で習った方法なのだろうと・・・・本には書いてないのですが。

組織図から綜絖通し方、踏み木、タイアップを求めて完全意匠図にするやりかたは、スウエーデンの組織の本では、綜絖通しとタイアップを一度に考えますから、確かに違います。米国では?と組織について初歩から詳しく書いてある米書『THE COMPLETE BOOK OF DRAFTING』を見ると完全意匠図の読み方と組織図の書き方の説明しかありません。
アメリカでは、手織のための基本的な組織やバリエーションが集められた「パターンブック」が数多く販売されていていますので、組織図を完全意匠図にするやり方は、手織をするだけなら、特に知らなくてもよいことなのかもしれません。

アメリカのパターンブックやスウェーデンの作品集などでは、綜絖通し、踏み木、タイアップしか書かれていないことがほとんどです。柄の出方や細かな確認のために組織図が必要なときに自分で描けるように・・・ということで、一般的な手織りの本の説明にあるのは、綜絖通し、踏み木、タイアップから組織図を描く方法』です。

膨大な数の組織が昔から伝わる欧米と海外からの貴重な織り柄の布を分解して意匠図を書いてきた日本の違いなのだろうと思います。このあたりに意匠図と組織図の呼び方やニュアンスの違いの原因もありそうなのですが・・・・。

さまざまな織機があり、新しい織機も生まれたアメリカでは、織機の種類によって異なる・・・・『踏み木を踏むと踏み木と結んだ綜絖が上がる/下がる。』という問題は、タイアップ図の記号のあり/なしを入れ替える、つまり、反転させるというのが一般的な説明です。

米書では『1本の踏み木に何枚かの綜絖を結ぶ』のは、マルチフルタイアップ、最近はレギュラータイアップ。『1本の踏み木に1枚の綜絖を結ぶ』のは、ダイレクトタイアップ。レギュラーは天秤式用で、ダイレクトは綜絖のある卓上機用という決めつけはありません。

女子美で習ったことを踏襲するこの本では、タイアップの名称を書くよりも使用する織機名を書いた方がわかりやすいから・・・、ろくろ式でレギュラータイアップにすると開口しにくい場合があるから・・・・と、誰にでも使いやすい配慮をしていると思えます。

欧米の書籍が入手しやすくなったがために、どのような考え方か、やり方かを整理しないと混乱するばかり。とくに日本の欧米風の手織りがむつかしい・・・・女子美式とか京都式とか名称をつけたい気がします。

※文中に誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への直接の訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

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