2015年10月14日水曜日

書籍;Tartan&Tweed 手織りのためのスコットランドチェック

やっとこのレベルの手織りの本が日本でも発売された・・・・と思いました。


手織りをやり方から勉強する本・・・ではなくて、こんな綺麗な布を織ってみたいと思う本。いつか手織りをしてみたいと思う本。


タータンチェックというと、有名デパートの包装紙、福岡出身の音楽グループや大勢の大勢の女子の歌グループの衣装の印象が強烈で、元気な若者を思い浮かべてしまうのですが、千鳥格子とガンクラブチェックに始まり、ゲレンチェック~タータンへと続くこの本は、そんなイメージを一掃してくれます。


まずは、巻頭に著者のことばがあるのがいい。対向のページに、著者をよく知るガーニー氏からのことばがあるのもいい。著者が今まで手織りとどのような時間を過ごし、この本を出版することで誰に何を伝えたいのかを感じ取れます。

スコットランドの風景、ヒツジ、ツイードやタータンを着た人々、布地の写真、歴史と文化の話。豊富な写真から、チェックやタータンにある本来の魅力と伝統がもたらす力強さを改めて感じます。

日本式のような海外風のような手織りの解説本が気になることがしばしばあるのですが、以前、参考にした英国の手織り作家の本と比較しても、この本がタータンとツイードについて基本に忠実な内容だと改めて思います。

『Tartan&Tweed 手織りのためのスコットランドチェック』 明石惠子著 2015.9 誠文堂新光社

さて、普通、格子や縞の柄をデザインするとき、何もない紙に向って描きはじめます。単純なデザインになりがちで、できあがった柄の良し悪しは「個人のセンス」や「個人の頑張りかた」のような話になりがちです。
どうしたら、あんなに規則的で複雑なチェックができるのだろう・・・・。

この本の興味深い点は、チェックを加える、組み合わせる。色を変える、加える。という柄をデザインするためのやりかたが豊富な写真と共にわかりやすく説明されていることです。
オリジナルな柄はもちろん、よく見かける柄をアレンジして、自分にあうようにすることも容易にできるようになれそうです。応用すれば、スコットランドチェック以外の縞や格子をデザインするときにも役に立つと思います。

手織りのノートの作り方や織りやすい本数、糸の太さとデザインの関係についても紹介されています。手織りをするための基本的な情報・・・・色の選び方、糸の密度、手織りの工程などは本の最後にまとめてあることも見やすく、使いやすいですね。

巻末の『織の工程』での経糸の巻き方は、アメリカなどでよく見かける「オーバーキャッスル」のやりかたです。あまり日本では紹介されていないようですので、ジャックルームなど背の低い織機を持っている人は是非参考に。

余談ですが、『知っておきたい手織りの基本と本書のルール(P.018)の織』のイラストでは、経糸が白、緯糸が黒になっています。スコットランドは、やっぱり「カウンターバランス(ろくろ・滑車)式の文化圏」だったに違いないと、大爆笑。ろくろ式なのに、経糸を黒と決めている日本のやり方には、やっぱり無理があるようです。

著者は、スコットランドで、つまり英語で手織りを学んだためか、「粗筬/粗筬(写真上)」を「仮筬」としています。人により学校によりさまざまなで、「ラドル」という人や表記もありますから、そのままRaddle=ラドルでよかったのでは・・・と思います。

著者のブログは、時々拝見しています。作品を真似されることに神経を使い、確か文章は読むのも書くのもお嫌いということだったと思いましたが、なぜ、突然、このように充実した内容の書籍を出版されたのか?今後の著者の活躍に注目です。

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