2015年4月8日水曜日

日本の手染と手織の基本;図解 染織技術辞典 

海外の書籍を参考にして、海外の織機を使って、感想をブログに書いています。
悩みは、日本語にしたとき、どの単語になるのか・・・。どのような表現をすればいいのか・・・。たかが、個人のブログなのですが。

洋書を直訳したと思われる「ろくろは下口開口」「粗筬で仮筬通し」など、実際の動作、言葉の意味と使い方が違うのではないかと「?」をつけたくなる表現をよく見かけます。外国語力とは別の問題があるようで・・・・。

海外では、あまり使われない「ろくろ式手織機」。特に米国の書籍では多少説明が曖昧でも、影響もなく、あまり問題にもならないだろうという状況さえわかれば・・・・おかしい場合もありえると気付くはず。

日本では、ろくろが主流。ろくろ機とろくろ機を使う人、ろくろ機で織られる布についての知識があふれている場所。海外の手織りを学び、海外の織機を使っているから、日本の手織は関係ないと思うのは、あまりにもったいない。

では早速、ろくろ式を基本にして国際的に・・・ということなのでしょうか。日本名に洋書のイラストや写真の下にアルファベットで書かれた単語を書き写したのでは? 英語にいきなり伝統的な言いかたや専門用語をあてはめたのでは?と疑いたくなることもしばしば。

文化も考えかたも違うのですから、日本と海外の両方を一度に説明するのは、しょせん無理。生まれる矛盾は、どうするつもりなのでしょう。まして、この国でプロとして、生業として、著作や指導をしているのなら、責任があるはず。

前置きばかり長くなりましたが、日本の手織の基礎と基本をしっかりと確認できる書籍。以前から、海外の織をしていても参考になるとお薦めをいただいてました。

図説 染織技術辞典 監修;柚木沙弥郎 共著;田中清香 土肥悦子 1990年4月 第1版発行

女子美術大学で指導、研究をしてきた二人の著者が染織の技術についての基礎知識を整理しまとめたものと前書きにあります。

その名の通り辞典ですから、必要な用語、用具の名前と説明、使用法、技法の特色や作業工程、伝統的な染織品の技法的特色や産地など、項目も多く、内容も充実しています。

繊維や糸などの共通する編を除くと、染については、158ページ、織については、117ページ。ほぼ半々の構成です。手元に置きやすい辞書サイズともいえるA5版。

この本の魅力的は、立ち位置ともいうべき点がしっかりとしていること。基本におかれているのは、個人の手仕事であり、日本の染織です。そして、真摯で丁寧な記述。

たとえば、高機の構造の説明では、一般的なろくろ型式を例にするとあり、他機種は部分的な説明と明記されています。ベルト織機を竪機に、ろくろ機をカウンターバランスとは別分類とするなど欧米の解釈とは異なりますが、ろくろ機が主流である日本の考え方が貫かれていると感じられます。
また、海外品の名前はカタカナ表示のみです。部品や用具についても、いたずらに海外名の併記や英語表示を入れていません。日本の手織のための辞典というスタンスが徹底されています。

留学した方や専門学校やお教室で海外の織機を使い手織を学んだ方はかなりの数ではないかと思われます。この染織技術辞典のような「海外版」が出版され、共通の知識や用語の矛盾がなくなると・・・・手織を楽しむ方がふえるのではと思います。

追;P.4-10 ろくろ式高機の開口側面(中口開口) 
P.4-24 あら筬 「織り密度に見合った本数の経糸を掛け入れて・・・」 筬と違い上部の開いている「あら筬」には「通す」という表現より、やはり「入れる」が適切。
  

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