2015年4月21日火曜日

続 ■と□の記号のタイアップと組織図

北欧や日本の組織図で使われている 黒く塗りつぶした■と空欄の□。

フィンランドで手織をしている方からコメントをいただき、ラム(招木)が上下に2本あるカウンターマーチ(天秤式)のタイアップは、北欧でも異なることがわかりました。それぞれに理由があるようです。日本で西欧式の手織をする人なら誰もが知っていること?

「フィンランド・スタイル」は、 ■印の箇所はラムと、□印は、ラムと踏み木を結ぶ。組織図の■は経糸。
「スウェーデン・スタイル」は、■印の箇所はラムと、□印は、ラムと踏み木を結ぶ。組織図の□が経糸。

さて、日本。学校や先生により様々なようです。カウンターマーチの説明で■と□印が使われている本(かなり以前に購入した本ばかりですが)。改めて確認した結果は,末表のとおり。

フィンランド・スタイルの理由は、全て、「組織図の通りに織る(■=経糸にする)」ため。スウェーデンへ留学経験があり、参考文献のほとんどが米国書という水町真砂子氏のみが、当然のことながらスウェーデン・スタイル。

彦根愛氏は、スウェーデン・スタイルですが、組織図(織り上がり図)の□印の緯糸を基本に綜絖通しや踏み木順を考えるというやりかたのため、ネガポジが反転して、織った時には■が経糸となるように工夫されています。オリジナルの書き方のようですので、名称があるとわかりやすいと思うのですが。
さて、素朴な疑問なのですが、なぜ、組織図の■が経糸なのでしょうか?

「このようにタイアップすれば、組織図とおりになる」という手織の本の表現からも・・・組織図(織り上がりの図)は既に存在していて、日本の手織のために作られたものではなさそうです。アメリカでは、綜絖通し図しか残っていなかったり・・・。実は、手織にはさほど重要ではなかったのかも・・・と私も思ったりします。

でも、国内の手織の本では、組織図の説明は、布の組織から、綜絖通し、踏み木順、タイアップの4点そろった組織図(完全組織図)をどうやって作るから始まります。でも、分解して手織しようと思うほどの魅力的な布に出会ったこと・・・ありますか?まして、手織機の綜絖枚数は多くても8枚。書いてみたら綜絖が足りなくてがっかりとか・・・・。かなり高度な技術で勘も必要です。

この高度な技術(私にとって?)も、海外からの、いわゆる「舶来の布」を分解して意匠図(組織図)を描きおこすという繊維産業の幕開けの時代の慣習を色濃く残しているように感じます。
「織物組織意匠法」には、経糸が黒、緯糸が白の平織のイラストがありますが、「汚れを防ぐためにも裏織にする。」と隣に白黒を反転させた裏織の組織図が載っています。表織、裏織など様々なケースがある作業の間違いをなくすためにも、経糸を必ず■印で表すことは、とても大切であっただろうと想像ができます。

これがそのまま「組織を変化させた柄を織りたい」という手織に取り入れられ、ろくろ機では踏み木と結んだ綜絖は下がるのにもかかわらず・・・・日本では「経糸は必ず■印」の教えを守ってきたようにも思えてきます。 
さて、中国で発祥した紋織物用の織機を受け継ぐと思われるカウンターマーチの特徴は、どの綜絖も制約なく自由に動かして「柄を織りだせること」ですから、もちろん組織図は必要。一方、平織や綾織など基本は「無地」を織るろくろ機や滑車機では、綜絖通しや踏み木順から組織図までを詳しく書き残す必要はほとんどなかったのではないかと・・・。
4枚綜絖のスウェーデンのホース付滑車式、日本の2段吊り3本ろくろ式は、世界的に見れば、特殊なケースのようです。織柄が織りたくて改良進化した織機・・・・なので、「組織図が必要になった」と思えてくるのです。

では、世界中の柄織の基礎となるのは天秤織機とフィンランド・スタイルのタイアップから生まれた組織図か・・・?

人には、印をしたところを「○○する(ex.数えるとか、計算するとか)」。黒色は重たいイメージから「沈む」・・・などの生理的な感覚があります。写真やカラーペンなど誰もが使っている時代です。手織りをする時、「■=経糸」にこだわりすぎると、わかりにくさと心地の悪さ ばかりが残るようにも感じます。

[ 末  表 ]

※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。掲載文の訂正は私の主旨と違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。
また、手織を学んだのは、米国式、スウェーデン式、フィンランド式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィール、を書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2 件のコメント:

  1. こんにちは。

    組織図を含めた織りの組織の理論は、ドビー機とかジャガード機の世界から、一般の手織機の世界に入ってきたのではないかと思うんです。経糸が一般に黒で表されるのもそのせいじゃないかと。あくまで推測でしかないのですが…

    機の種類とか、どんなものを織るかとか、どんな形がどんなときに分かりやすいか…時と場合、あるいは人にもよることがあると思うので、一つの表記法(例えば■は経糸ととか)にこだわることはないと、私も思います。

    返信削除
  2. いつもお付き合いいただいて、恐縮です。

    昨年9月に参考にした「DOUBLE WEAVE on Four to Eight Shaft」では、組織図を使わないことで、とてもわかりやすく、発想を自在に表現しています。織機も素材も自由に選んで使える手織りならではという印象でした。テキスタイルデザイナーの著者にとって、組織図は、しあがってから書けばいい「仕様書」なのだろうと改めて思いました。組織図は、工場の人など誰にでも「わかりやすいようにと決められた書き方」でしかないと。だから手織りをするときは、細部にまでこだわる必要はない・・私も同じ結論になりました。

    国内の書籍では、タイアップと組織図の見方、書き方が基本形か?オリジナルか?わかりにくく苦労していました。今回、フィンランドはスウェーデンと違うとお話から、私の頭の中では整理ができました。

    本当にありがとうございました。

    返信削除