2015年4月17日金曜日

■と□の記号のタイアップと組織図 

このタイトルのタイアップは、組織図で綜絖通しと踏み木順が交差したところに書かれてあるタイアップ図のこと。綜絖と踏み木をどのように結ぶかという図のことです。

綜絖通し、踏み木順、タイアップで構成される組織図。書き方や記号は違えども、世界中ほぼ同じと読んだことがあります。

本来の日本式は、たぶん、音楽の五線譜のように線の上に×印。でも、方眼紙のマス目を塗りつぶし(■)と空欄(□)にした組織図(イラスト;右)を使った本もあります。■を使うと×印より見やすいし、印刷した時にはマス目だと見栄えが良いから・・・・と、その程度に思っていました。

ところが、アメリカの最近の本では、綜絖通しとタイアップ図の部分は、数字です。
この部分に、■と□を使うのは、「スウェーデン式」。北アメリカの上口開口のジャックルームに対応した組織図と一見して区別ができると説明にあります。×や○の記号が使われることは少なくなったそうです。

北欧は同じだと思っていましたが、スウェーデンとフィンランドは違う・・・タイアップの結び方というより、そもそもの考え方に違いがあるからでは?と思いあたりました。

スウェーデン仕様のカウンターバランス式(滑車とホース)4枚綜絖の織機で織り始め、カウンターマーチへとすすんだ私は、日本では特例?アメリカやスウェーデンでは一般的のようですが・・・。
カウンターバランス式は、あのTHE BIG BOOKでも、スウェーデンの織機メーカーの価格表でも、最初に登場しますし、スウェーデン織のお教室ではよく見かけます。
滑車にホースを吊して綜絖を上下する仕組みを組み合わせてありますが、基本的な動きは、ろくろ式織機と同じ。綜絖と踏み木を結び、踏み木を踏めば結んだ綜絖が下がり、この綜絖とペアになって反対側に吊るしてある綜絖が上がる。ただし、カウンターバランス式の綜絖の下には、綜絖を水平に引き下げるために「ラム(招木)」が必ずありますので、厳密には、「綜絖の下に吊るされた上ラムと踏み木を結ぶ。」となります。

上達したり、多綜絖にしたいなどで、後から開口装置をカウンターマーチにのせかえ、下ラムを取り付けられる機種のあります。もちろん、最初から、カウンターマーチを購入する人もいます。

つまり、スウェーデンでは、上ラムしかないカウンターバランス式と上ラムと下ラムの2種類のラムがあるカウンターマーチ式の両方が使われていることになります。

カウンターバランスでは、上ラムしかありませんから、■印の箇所を結ぶ。結んだ綜絖は、踏み木を踏むと下がる。カウンターマーチへとステップアップした場合は、今まで結ばなかった「上がる綜絖」用に下ラムが追加になるので、□印も結ぶ。使う人は、「結ぶか箇所が追加された」と考えればよく、書籍は、どちらの織機でもそのまま使えることになります。参考図書;「Warp and Weft」 著M.Eriksson他 ;P.11同じタイアップをした両方の織機のイラストが並んでいます。
さて、フィンランドから、カウンターマーチのタイアップ図の□印は上ラムに、■印は下ラムに結ぶというコメントをいただきました。組織の■印は経糸なのでこの結び方をすれば、■の経糸があがるので、組織図と同じに織りあがるということです。来日して教授をなさっている方の本の表示も同じ理由からと思われます。

一方、スウェーデンの場合、カウンターバランスでは、■印は上ラムと結び、カウンターマーチを使ったら、□印を上ラムに・・・と変更になるのは、どう考えても具合が良いとは思えません。したがって、結果的(?)に、組織図やイラストでは、白が経糸、黒が緯糸。

でも、フィンランドの古い手織の教科書の表紙には、カウンターバランスの絵があるということですから、そのj時代は、□と■のどちらを結んでいたのでしょうか?もう、使っている人はいないようですが・・・。


まとめますと、
「スウェーデン・スタイル」は、どちらの織機でもタイアップ図の■印の箇所は上ラムと踏み木を結ぶ。□印は、下ラムがある場合は下ラムと結ぶ。
「フィンランド・スタイル」は、組織図の経糸の■の部分の経糸が上がるようにタイアップする。したがって、カウンターマーチのタイアップは、■印の箇所は下ラムと踏み木を結ぶ。□印は上ラムと結ぶ。

どちらの考え方も、理にかなっていますね。さて、日本は・・・・?


※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。掲載文の訂正は私の主旨と違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。
また、手織を学んだのは、米国式、スウェーデン式、フィンランド式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィール、を書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2 件のコメント:

  1. こんにちは。

    スウェーデンのカウンターバランスのタイアップについてはよく知らなかったので…なるほど、そう考えれば■と□の逆転もわかる気がします。

    カウンターバランスをどうタイアップするようにフィンランドで教えられていたのかは知りません。少なくとも、組織図で黒いのは経糸…これは100年ぐらい前の教科書からずっと一貫しているようですが。でも当時、ドラフト図を見てカウンターバランスの機をタイアップする、ということ自体がどれぐらい一般的だったのか…普通の家では普通に昔からの方法で、組織図なんて知らずに織っていたのかもしれません。

    ついでに、誤解を与えてしまったようなので…
    フィンランドでは学校やウィービングセンターでカウンターバランスの機を見かけることはほとんどありませんし、そのシステムの機を使っている人もまれのようです。でも多分、使っている人もいます。最近、インターネット上の中古の機のオークションで、滑車式の機をいくつか見かけました。2枚綜絖の簡単な作りのものでしたが。

    また、フィンランドには、スウェーデン語が母語の人たちもいますし、その方たちのための専門学校もあります。そんなところでは指導も教本もスウェーデン語です。ですから、手織もスウェーデン式というのは十分にあり得そうです。


    こちらのブログに、スウェーデンのタイアップの話が出てこなかったら、スウェーデンの組織図はフィンランドと考え方が違うのだということに、ずっと気づかなかったと思います。興味深い記事をありがとうございました。

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  2. いつも、フィンランドの手織り事情や貴重なお話を楽しく興味深く拝見しています。

    カウンターマーチがメインのフィンランドで、組織図が100年前の教科書からあると聞くと、手織の近代化の礎がありそうですね。

    いろいろ世界が広がって・・・つながって・・・わからないことが見えてきて、とても満足、充実です。
    こちらこそ本当に感謝しています。

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