2012年9月11日火曜日

A Hand Weaver's Pattern Bookを読み解く

タイトル負けしそうなのですが、「綺麗な本。素敵な本・・・」という紹介文は苦手なので、硬いタイトルにしてみました。
 
「A Handweaver's Pattern Book 」 アメリカの本です。Marguerite Porter Davison著

4枚綜絖の柄のみで、綜絖通し順、タイアップ、踏み順と織の写真が全て白黒で、掲載されています。
綜絖通しとタイアップなどの基本知識があかれば、読まなくても十分利用できる1冊です。

それぞれの章の初めに、由来や特徴などが書いてあります。

綾織の通し順
バーズアイ、ローズパス
綾織、綾織の変化
エムズアンドオーズ
スウェディシュレース
モンクスベルト
オーバーショット
サマー&ウインターなど よく知られている柄がグループ別になっています。

同じ綜絖通しでペダルの踏み順を変えると出来る何通りもの柄写真が掲載されています。

織りあがった白黒の写真に目が行きますが、柄の特徴ではなく、綜絖通し順(threadling ; スレッドリング)の特徴を基本にして組織は区別されているようです。これに、柄の大きさや地組織(tabby ; タビー)の有無などを考慮して分類されています。

日本では、名前のついているのは、順通しと山道通しぐらい?(←私の勉強不足かもしれません)
白黒格子の織組織図を基本に考えがちで、織りあがってから組織に関係なく昼夜柄とか呼ぶ場合もあるようです。あまり、組織や通し順にはこだわらない民族なのかもしれません。


この本の独自の特徴かもしれませんが、織上がりの組織の特徴の説明はあまりなく、このグループの通し順は他のグループのに似ているとか、通し順を2倍にしたとか、欧州の柄では左右が1本ずつ増える、などという説明があまりに多いのに驚かされます。

そういえば、ネットなどの海外の手織りの話では、オーバーショットの通し順を使用したとか、サマー&ウインターの通し順は手織り経験者なら知っているなど・・・通し順についてはよく目にしますね。

一見同じに見える織上りでも、「通し順の特徴が異なれば、柄は異なる」 

どうやら、織上りの組織よりも「綜絖の通し順」をメインに考えるようです。そのあとペダル。基本のタイアップは日本と同じ。

これに慣れると、途中に綾をはさんだり、端に柄を変えたりなど柄の変化や配置を考えやすいようです。この本の後半に掲載されている大柄や額縁柄の構成のしかたも理解しやすくなる気がします。



A Handweaver's Pattern Book からのサンプル織
初版が68年前の1944年5月。この夏、終戦から67年ですから、ちょうどその頃の出版。いまだに市販されているのは、驚きです。

著者 Marguerite Porter Davisonは、1887年生まれ1953年没。巻頭に「この本を父に贈る」とあります。アメリカの開拓時代の匂いがするのも、気のせいではないようです。

開拓時代のアメリカでは、幌馬車に解体した織機を積んで、一年に一度巡ってくる織物職人さんがいたそうです。女主人から、その家の1年分のリネンの注文を受け、離れの建物で織機を組立て、寝泊まりして注文分を織り上げて、次の家へと移っていったそうです。

ページをめくっていると、その当時、注文を受けるのに使った綴り見本も元資料になっているような気もします。凝り性の女主人なら、キッチン用、バス用、来客用と踏み順を変えて柄を変えるようにとオーダーしたかもしれませんね。








3 件のコメント:

  1. こういう解説、好きです、ありがとうございます(^^)

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  2. いつもありがとうございます。

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  3. 洋書;OVERSHOT IS HOT ! (Madelyn van der Hoogt 編)の前文には、手織りをするほとんどの人が最初にオーバーショット(P.107~)に出会うのはこの本だろうと書かれています。
    アメリカでは、多くの人が織り、伝えられている技法だとうかがい知ることができます。

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