2018年10月10日水曜日

『The Primary Structures of Fabrics』を読み解く 1


相補組織/コンプリメンタリ―ウィーブについて云々する前に、書籍『The Primary Structures of Fabrics』の分類をもう少し紹介してみます。


前回、織物部分のみですが分類表を公開しました。参考にしてください。

分類項目の名称について、「こんな言葉はありません」と言う方もいるかと思いますが、研究グループも分類を進めながら決めていったということですから、既存の用語に当てはめる必要はないと思います。既成概念が邪魔をしてかえってわかりにくくなるようです。しかし、もう少し適した名称が見つかるかもしれません。


理解するための、基本的な用語は、どうやら2つ。(正確な内容を知りたい場合は、原書 p.27 を参照してください) 

1.Element;要素とは、糸、ロープ、テープ、コードなど、さまざまな形状や材料が想定されるので、限定を避けるための表現です。糸のような…紐のような…をイメージすれば読みやすくなるようです。

2.Set;組とは、要素を同じ方向に揃えるという布を作るためにグループ化した状態。同じ方向にタテ糸の長さと順番を揃えたら、1組(セット)。
構成要素が1組の分類になる組紐やマクラメなども、長さと順番を揃えてから作り始めます。この布を作る準備の過程にある「組/セット」は、日本の感覚では、手順の1つでしかありませんが、確かに存在します。
ヨコ糸も同様に1組(セット)と考えます。現実では、ヨコ糸は、織り入れないと順番も長さも揃わないのですが、タテをヨコにして織った布もあるので、分類上、タテ糸の組(セット)を90度回転させたと考えます。

原書は、布を形作るもととなる素材と撚糸、布の構造の分類、布の加工や縫い付け(キルト、アップリケ、貝やビーズ)の3部構成です。布の構造の分類がもちろんメインです。

布の構造の大分類は、「フエルト」、「要素の組合せ」の2つです。

「要素の組合せ」は、A.構成要素が1本、B.構成要素が2本、C.構成要素が1組、D.構成要素が2組、3組以上の4項目に分かれます。

★技法や組織の説明書では、「編み、織……」や「基本と応用」などに分類するケースがほとんどです。が、この分類のための発想は、理路整然です。

A.1本は網や編物、B.2本はA.に1本を加えた構造、C.1組は、組紐、マクラメ、スプラングなど。そして、D.構成要素が2組、3組以上。これは、3項目に枝分かれします。
「1.タテ糸とヨコ糸が交差する」は、織物
「2.要素が入替わる」は、もじり織やトワイニング
「3.タテ糸に緯糸を巻きつける」は、タペストリーなどの技法

さて、「1.タテ糸とヨコ糸が交差する」は、まず、a.とb.の2つに分かれます。
a.シンプルウィーブ;Simple weaves と b.コンパウンドウィーブ;Compound weaves です。

a.シンプルウィーブは、エモリ―の考え方では、タテ方向1組とヨコ方向1組が交差した「織物」です。分類を戻ってみると、「構成要素が2組か3組以上」の「2組」に該当することが確認できます。つまり、タテ1組とヨコ1組で「一層の織」。
一層より一重という表現が一般的ですが、後述の「二重」には二重織のイメージがあるので「一層」「二層」にしました。

そして、a.シンプルウィーブは、平織の「1.プレーンウィーブ;Plain weaveと、浮きのある織の「2.フロートウィーブ;Float weaves」の2つに分かれます。フロートウィーブは、綾織、朱子織、平織から派生した織の3種類になります。

★シンプル⇒単純という言葉の意味から、単式や日本従来の考え方の原組織・三原組織とすると、コンパウンド⇒複合⇒複式 と、少しずつ意味が動いて、複雑な としたくなります。エモリ―の 織物の分類 の基本となる「組」という理論から、単純な組織vs複雑な組織 という形式に変容してしまいします。

自分が得意だと思っている部分だけを読むと、今まで学んだ日本従来の知識に当てはめて解釈したくなるのかもしれません。でも、歴史も文化も、受けた教育も違うのですから、考え方や発想も、もちろん、違うはずです。このことに気づかないと、エモリ―のレポートを理解するのは難しいだろうと推察できます。

書籍に限らず、考え方が違う相手を理解する手がかりは、思い込みを捨てて真摯に向き合ってみることしかないと思うのですが。

長くなりましたので、b.コンパウンドウィーブは、次回に。

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