2018年10月30日火曜日

タテ2重組織(相補組織;仮称)から1本抜くと

「2本が対になり補い合っている柄布がある。1本が抜けると布は崩れてしまう。」ちょっと文学的な表現で、心惹かれるのですが、現実は。
でも、もしかすると、勘違い?と思い、サンプルを作って試しました。前回の続きです。


『もようを織る』には、相補組織は、
「2本中の1本を抜くと布として組織しない。」(p.258)
とあります。単様、複様の両方に通用するのでしょうか?

まずは、相補組織・複様です。


上から順番に 写真;① 
まずは、この本(p.259)にあるサンダー方式のサンプルをつくりました。著者が「相補組織・複様」と仮称をつけた組織です。
タテ糸は、こげ茶色と薄茶色。薄茶(ベージュ)が、ちょっと見えにくくて、すみません。ヨコ糸は、濃ピンク色です。

『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』のコンプリメンタリ―セットの分類(p.150)の最初にある写真の織サンプルと同じ組織です。

日本の手織り教室などでは、「昼夜織り」と呼ばれている組織です。「サマー&ウインター」などと素敵な名前で紹介している先生もいます。(注;米国では違う組織の名前です。)


写真;②
タテ糸の隣り合うこげ茶色と薄茶色、この2本が、対になり役割を分担していますから、タテのこげ茶色を抜いていきます。

写真;③
すると、ヨコ糸の濃ピンク色が1本おきに外れてしまいます。

写真;④
粗い平織が残りました。


薄茶のタテ糸を抜いても、平織、つまり、平組織が残りました。「組織している」ことになると思うのですが、「組織しない」は何か他の意味があるのでしょうか?

平織がこの織物の原組織で、残った平織と、抜いたタテ糸&外れたヨコ糸 で二重組織(二層構造)と思うのですが、いかがでしょうか。


『もようを織る」には、『布の主要構造』のコンプリメンタリ―セット(p.152)の「fig.252-255 は、タテ糸を抜いても組織が残るので、相補組織ではない」と説明があります。
この fig.252-255 の番号が付いた4枚の写真の織サンプルは、もちろん二層構造で、3/1と5飛びの2種類の綾組織(完全組織が 3×3以上)ですから、タテ糸の対になった2本中の1本を抜いても組織は残ることになります。


次は、相補組織・単様です。
p.258のサンデー方式のサンプルを組織図に書き直しました。南米アンデスに多い組織だそうです。(レピート 16本×8段;ついでに、綜絖通し、踏み木とタイアップ付)

1本を抜いた組織図を作成すると、綾組織を引き返した(山道通し)ダイヤ柄の組織が残ります。どちらを抜いても、ダイヤ柄の布として組織が残りました。原組織は綾組織でした。
右の組織は、タテ糸を混ませて織れば、はっきりとした2重のダイヤ柄になると思うのですが、織った布の写真はありません。普通の密度では、不安定そうな組織ですね。非対称/アンシンメトリーも気になります。


相補組織(仮称)の概念に、組織図で確認した個人的な解釈も加えて、 
本来は経糸は1本(1色)の一層の組織だが、色糸を使って柄を織りだすためには、この1本に 柄になる糸とならない糸 というような 役割 が生まれてくる。このため、この1本のタテ糸が便宜上、違う色が1本づつで計2本で対になって、本来1本で担う役割を分担する。
ということのようですから、一層の織物の例外組織かな?(ヨコ糸が対になる場合もある) でも、残った組織をみると二層の織物のような気もするのですが・・。

『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』のコンプリメンタリ―セットに分類した布は、タテかヨコどちらかだけが二層またはそれ以上で、組織の限定はありませんから、異なりますね。まあ、この組織が関係する部分だけ比較しても意味があるとは思えませんが。

相補組織の発想はおもしろいのです。が、コンプリメンタリ―セットのセットは組織論とするとウィーブと同じで、海外では、コンプリメンタリーウィーブと言葉は普通に使うのだそうで、コンプリメンタリ―ウィーブを相補組織と仮称して、説明の内容が違うとしても、代表する組織は同じで、分類した組織は違っても、50年も過ぎれば、概念も違ってくるということで、それでも評価に値する業績なので、いつもでもわからないと思っていないで先に進むことが・・・・・・。
これから海外をめざすテキスタイルデザイン関係の学生さんは、大変です。

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