2018年9月19日水曜日

書籍;もようを織るのブロックデザインと A Handweaver's Pattern Book と 

早速『もようを織る」小林桂子著 を購入しました。

この本のp.394に『A Hand Weaver's Pattern Book』の紹介がありました。

『9.リピート模様を作る織機』の章にありました。しかし、欧州から米国に移住と共に伝わった手織機についての説明はありません。

「米国に受け継がれ、描き写された組織をまとめた名著である」と紹介されている『手織のパターンブック; Hand Weaver's Pattern Book』。(正しくは、A Handweaver's Pattern Book)

「代表的な組織デザインを紹介する」として、6柄が載っています。

この本のp.394~396に転載された6柄は、柄、字体、織り方図、写真も、原書そのまま。ブロック数とコメントが付け加えてあります。菱型の変化柄で4枚綜絖で織るクラックル織のMirrored Minaretsも綜絖通しの特徴から4ブロックデザインと書いてあります。

原書は最近になり再販されるほど人気があるのですが、ブロックデザインの実例として使ったようにも見えます。著者に聞いてみたいものです。

この章を読み進むと、「ドイツや北欧から受け継いだブロックデザインがメインの組織の本だったっけ?」と確かめたくなります。しかし、原書の前文には、「掲載されている多くのパターンはオリジナルであり、起源が様々なパターンもある」とあります。

「もようを織る」では、ほとんどのテーマは1ページごとにまとめてあります。そして、順番に続いていくという編集形式ですので、何を意図しているのか測りかねるところがあります。さて、関係する内容を簡単に紹介してみます。

この本の紹介の2ページ前には、「18世紀のドイツの織物業のノートにブロックデザインの下絵が残されている。オーバーショットやダマスクためのだデザインを展開した。右写真の「Wandering Vine」が、このデザイン帳にあり、同じデザインが『手織のパターンブック;Hand Weaver's Pattern Book』にある。」という内容です。

直前ページでは、ブロックデザインに当てはめる多綜絖は、変化綾(オーバーショット)、クラックル、サマー&ウインターなどの織り方で、綜絖の順通しや踏み木を間違えたことで生まれたとして、綜絖通し図があります。そして、これらの組織や織り方が、ドイツや北欧から米の手織りに受け継がれたというのが説明の概要です。

Mary M.Atwater の著書には、「オーバーショットは古いパターンの名前から、ニューイングランドのピューリタンと共にアメリカに来たと思われる」とあり、「スカンジナビアの本には 同じ織り方が載っているが、パターンは少ししかない。多くの柄はアメリカで生まれたに違いない」と記述があります。A Handweaver's Pattern Bookの前文の「多くの柄はオリジナルである」を裏付けています。

また、「ブロックのデザインは、主に二重織ために描かれ、その後、オーバーショットやクラックルなど他の織り方で使われた。」という記述もあります。「もようを織る」の挿図のパターンも、柄の濃淡の配置や陰影がないことからダマスクやオーバーショットのデザインだとするよりも、二重織用だとすると無理がありません。

これらのことから、ブロックデザインと変化綾(オーバーショット)、クラックル、サマー&ウインターは別々にアメリカに渡ったと考えるのが順当です。これらの織り方は、アメリカで発展し、のちに、欧州や国内で描かれた大きなブロックのデザインも織ったというのが、一般的な見方だと思います。

もし、現代に生きる著者が個人的に「美しい」と感じたから、ドイツに下図があるから、「代表的な」として選んだならば、不快に感じる人がいるかもしれません。

米国の歴史の一部となった手織りのパターンを集めた本なのですから、
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私の織った柄が「代表だ」と紹介されていた「ご縁?」で、以前読んだ本の内容と違うところを書いてみました。
意見のある方は、根拠を明確にして(冷静に)コメントしてください。

※この本では、「ブロックデザイン」という言葉を使っていますが、英訳付記では海外では一般的なblock patternになっています。
※欧米では4枚綜絖の織機は標準仕様です。『もようを織る』の多綜絖は、4枚、8枚です。
※明かに訂正が必要な記述がありますので、記しておきます。
    p.395 6行目 誤;織サンプルの裏と表の写真
             正;下の写真は、同じ綜絖通しで織ったハニコム(はちす織)

2018年9月11日火曜日

時が過ぎて

髪が白くなるように、眼も老化する。「老化は、老眼だけではないですよ」と眼科医は言う。
織物などという細かいことは、そろそろ引退か・・・と思っていると、2冊の本を見つけました。


1冊は、「もようを織る」小林桂子著

何の気なく開いてみると、P.394に、M.B.Davison著『A Handweaver's Pattern Book』からの転載がありました。

「米国に受け継がれ、描き写された組織をまとめた名著」と紹介されています。

「代表的な組織デザインを紹介」と前置きがあり、全部で6柄。版権が切れているのでしょうが、字体も、織り方図も、写真も、そっくりそのまま転載されていますので、出版した時代の米国のリアルな感じがします。

そして、代表的な柄や説明にある7柄のうち3柄は私がブログで公開した柄やよく似た柄。このセレクションは偶然でしょうか?

この3柄を織ったのは、2013年。

写真右は、綾織で柄を作ることは綜絖通しで計画できることを試してみました。
http://thistleweave.blogspot.com/2013/03/blog-post.html
(追記;購入してよく見たら、掲載されているのは、よく似たGoose Eye Blocks. 綾のコンビネーション柄が代表柄ということですか・・・。)

写真下は、
オーバーショットらしくない少し変わった柄を・・・と思って選びました。
http://thistleweave.blogspot.com/2013/11/wandering-vine.html

斜め構成の柄は、安定感がないので、嫌う人がいますから、「一般的」とか、「代表的」には、ならないというのが、テキスタイルデザイン界では「常識」なんですが。

代表的な柄だったとは・・・。

「絡まる蔦」と紹介されています。
伝統的なブロックデザインであることを理解するとあります。

下絵が欧州のレップ氏のデザイン帳にあるのと(オーバーショットの特徴であるシャドウが描いてないようですが。)同じ柄がA Handweaver's Pattern Bookにあり、織職人ローズ氏の番号のメモ書きがあること。


つまり、著者の言う伝統的とは、「出何所が由緒正しい」こと・・・らしい。



写真左に似た下絵もレップ家のデザイン帳から紹介されています。
http://thistleweave.blogspot.com/2013/12/johann-specks-design-no33.html

円形がどこまできれいに織れるか・・・試してみただけなのですが。

ブロックデザインなら、ドレルや二重織だと思うのですが。


厚さが25mmもある本です。題名からすると織柄についての著作のようですが、欧米についての記述もあるようです。不思議に思うことも何か所かあり、じっくり拝読することにします。


もう1冊は、1年4か月前に取り上げた本『ちいさな織機でちいさなおしゃれこもの』
近くの大型書店で平置きに積まれていました。

前述の 小林桂子氏 は、「綜絖のないのは織機ではない」と記述していますから、この本の題名には「異議あり」だと思います。

でも、糸と糸が交差して、何かが出来上がる・・・・楽しんでほしいですね。


プロもいれば、芸術家もいる。家庭でも作る。工場で生産する。
世界各地にあり、歴史をたどれば、きりがない。
手織りは、手料理みたいなもの・・・と思うのです。