2014年4月4日金曜日

書籍;世界の織機と織物

国立民族学博物館で2012年9月13日から11月27日まで開催された特別展「世界の織機と織物-織って!みて!織のからくり大発見」の関連書籍です。2013年3月29日初版発行。

編著および研究代表者は、吉本忍氏。国立民族学博物館教授。55の個人と団体が協力し、実行委員は共同研究「手織り機と織物の通文化的研究」の研究メンバー9名です。

この本と特別展では、「織物とは、経糸と緯糸を交差させ、機にかけて織った布。」という従来の一般的な概念ではなく、民俗学的な手仕事と道具の観点から織機と織物を取り上げています。

織物とは「張力をかけたタテ糸にヨコ糸を組み合わせたモノ」と定義し、「すべての織機は、張力をかけたタテ糸にヨコ糸を組み合わせるためにつかわれてきた仕掛け」としています。

織の始まりと考えられる足先に糸をかけたり、足で押えて織るのを「からだ機」や「足機」、背負い袋、背中あて、わらじなどを織る道具やゴザやムシロを織るむしろ機なども「織機」として分類し加え、近代の織機に至るまでを11種類に分類しています。

織機とみなす範囲や使われる素材を拡げた結果、あらたな織物の基本組織として「交叉織組織、からみ織組織、タテもじり織組織、ヨコもじり織組織、巻き織組織」の5種類を設定しています。

織機のからくりとして、タテ糸の張り、整経の方式、タテ糸を開口する道具、タテ糸とヨコ糸を捩り合わせる道具、杼、ヨコ糸を打込む道具など10項目が挙げられています。日常的に織機に向かっている人は、織機のそれぞれの部分の役目を再確認することができます。また、多くの方法や種類があることがわかります。

資料では、世界各地の始まりに近いと思われるものから近代の織機まで154点が掲載されています。それぞれの織機で織られた織物の写真も、モノクロですが、掲載されています。

「人類の文化遺産ともいえる手仕事のモノづくりの多くも放棄しつづけている。(中略)手仕事によるモノづくりを放棄しつづけていることは、人類がモノづくりをすることで日常的に培ってきた創意工夫能力を低下させ、自然災害でライフラインが途絶するというような非常時での生き延びる術をも放棄しつづけていることにほかならない。」として
「われわれは今こそ手仕事への回帰を真摯に実行に移すべきである。」と提言しています。


なぜ人は織を始めたのか?なぜ世界各地で多種多様な織機が発達したのか?
先人たちが工夫し伝えてきたこと。途切れてしまうこと・・・収集分類された多くの資料から学べることは、限りがないようです。

1 件のコメント:

  1. 趣味で手織をするのに使う織機については、具体的な記述はありません。

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