2013年5月23日木曜日

Unusual Occupation /前例のない職業

展示会;カリフォルニア デザイン 1930-1965 ”モダン・リヴィングの起源”

この名称の展示会で期待するのは、開放的な建築、モダンな家具、食器類、印刷物・・・、フランク・ロイド・ライト、イームス、レイモンド・ローウィ・・・・。

際立ってカリフォルニア的:テキスタイルとファッションにおけるモダニズム と、ありました。
テキスタイルとファッションが、これらと同時に展示されることはめずらしいように感じます。確かに人の生活には、欠かせないアイテムなのですが。


ファッションは、水着、カジュアルウェア、そして、ハリウッド。

当時の映画や雑誌類からも目にすることが多かったためでしょうか、実物を見れば懐かしさもあり、なるほど細部に見惚れてしまいます。
一番最初に展示されているのは第2次大戦末~後に発表された2点。使われた布も色彩にも戦争の影響があり地味な印象ですが、女性的なシルエットが丁寧に形造られています。
訪れる開放的な時代へ期待と押しとどめている思いが感じとれます。

水着「魅惑のスーツ」 マーギット・フェレギ 1942
ストライプ地「ツーピース」 ギルバート・エイドリアン 1945~47 


テキスタイルは、時代をそのまま映したフィルムが圧巻でした。

『Unusual Occupation/前例のない職業』 パラマウントピクチャ 1965年 制作

「手織りは手芸。しかし、カリフォルニアには、世界屈指の織物工房がある。
織物のデザインと試織をする新しい織物デザイナー、ドロシー・ライト・リーブル。

彼女が糸の配色、図案を書き、工房にいる優秀な女性の職人が織り上げる。
そして、決定した布は、糸を準備して織り上げられる。大量生産される場合は、修正も加えられる。
試織りと素材の実験も繰り返えされている。合繊、生糸、ガラス繊維、金属、セロファン、木材。
カーテン地にフサを織り込んだり、2重ビームで経糸をたるませたりと発想も自由。
織りあがった布は、豪邸、クラブ、ホテル、客船に使われる。」

 つまり、テキスタイルデザイナーという呼び名が、まだ一般的でなかったと思われます。
彼女は、フランク・ロイド・ライトなど建築家からの依頼も受け、布地のデザインと製作をし、大量生産用にも対応して、起業家としても成功しました。

フィルムに登場する織機は、背の低い滑車を使った単純な構造。
ふたりの職人が経糸と別に整経した金糸を重ね、巻きとっている映像もある。そして、キャッスルの柱の後ろから、糸綜絖が経糸に引っ張られて「>」の形で見えてくる。この時代から、アメリカは「フロントtoバック」で経糸を巻いている!
この太さの合繊糸でサンプル程度の整経長なら問題ない・・・・なんとも合理的。
受け継がれてきた伝統や歴史、技などが無い国のテキスタイル。開放的な力強さと自由な発想。

 
気づけば、カリフォルニアデザインとおぼしき布地は記憶の底にいくつかあります。
パイン柄のダマスクだった応接間のカーテンは、金糸入りのざっくりとした茶色の生地にかわり・・・。
新しい家のリビングは、大きな幾何学柄のプリントのカーテン。
そして、登場したばかりの頃のファミリーレストランの薄い木を織り込んだシェード。

そして、時代は移り、ベトナム戦争も影を落とし、織物もデザイナーからアーティストへと移行していく。
2011年のケイ・セキマチ女史(ファイバーアーティスト)へのインタビュー映像によると、手織は北欧と日本からの影響を受け、折しも、間仕切りが流行。日本の公募展などで見かける壁掛け作品の始まりということでしょうか。


私の幼い頃の「モダンな暮らしがしたい」というカリフォルニアの空気の記憶は続いているようです。

今頃になり、アートとの違いをもう一つ見つけました。デザインはコミニュケートから生まれるようです。相手がいなければ、インテリアの布は呼吸を始めない。ファッションの布も同じ。

夢は次世代に託すことになるのでしょう。日本は伝統織物の宝島。


国立新美術館、ロサンジェルス・カウンティ美術館 主催
東京都港区六本木7-2-22 
6月3日(月)まで

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