2013年4月2日火曜日

カウンターマーチでパラレル式

素人なりに織機のことを書いてみようかと下調べしていたら・・・・・・・・聞いたことのない織機に出会いました。パラレルカウンターマーチ。

カウンターマーチは、北欧をメインに欧州で古くから使われていた織機のスタイルで、ホリゾンタル(水平式)とバーチカル(垂直式)の2種類のはず。でも、パラレルカウンターマーチ??・・・ホントは3種類だったけ・・・・?

この織機のホームページを見ると、伝統的なカウンターマーチの特徴である天秤はありません。カウンターマーチと同じなのは、綜絖1枚に付き2本の招木(ラム)がペダルと綜絖の間にあること。
「上招木と下招木に綜絖をつなげ、上下に開口させる」というシステムから天秤式(?)と表示しているケースもあります。2本の招木が平行(パラレル)に動くため、パラレルカウンターマーチ。
つまり、このオランダの会社独自のシステムの名前でした。

ちなみに、招木(ラム)とは、綜絖(枠)の下に吊下げる棒で、どの位置のペダルを踏んでも綜絖を平行に安定して下げる役目をします。ペダルの本数が増えると必須で日本の機でもついている場合があります。

北欧織機の上部にあるカウンターマーチ(水平天秤)

大切なのは、「織りたいものが、具合い良く織れる。」ということだと思います。
ですから、ここから先は凝り性の余談。一般的な織機の仕様と見比べると・・・・。
特定メーカーの商品についてはできるだけ控えようと思うのですが、カウンターマーチ(天秤式)という一般的な名前なのに何か違う・・・と戸惑ったのでメモ。


北欧とこの独自システムの相違点は、
両方とも招木が2本あり、綜絖は上下に開口する。
伝統的な北欧のカウンターマーチは、実際に天秤がある。綜絖とペダルを天秤(中心に支点のある板)にコードで吊り下げてバランスをとりながら開閉する。
独自システムのパラレルカウンターマーチは、2本の招木(ラム)で開口する。天秤はなく、綜絖は織機内部に張られたコードに取り付ける。(つまり、吊り下げない)。

天秤、プーリー、ろくろ、ジャッキ、スプリング・・・・カウンターマーチを天秤式と訳したように、従来どおりに「綜絖を上げ下げする装置(しかけ)」で織機を区別して呼ぶ場合はどのような表現になるのでしょう?
招木が綜絖を上下させるのは不思議。ペダルを踏むと織機内部の6か所のローラーを巡っているコードが引っぱられ、綜絖と招木が動く。ですから「ローラー式」?

名前は北欧風ですが、本体(躯体)の仕様や使い勝手は北欧のカウンターマーチより北米生まれのジャックルームに近いようです。
ペダルを踏むと下招木が下がり、上招木と綜絖が上がるという説明ですので、タイアップはジャックルームと同じ。(もちろん逆もできるとは思います。が、北欧やろくろ機は踏むと下がる綜絖/上招木を基本にタイアップを読み結ぶ。)

バックtoフロントでの機がけを考えてみると、ポリエステル綜絖で上下バーの北欧仕様ですが、簡単にはずしたり上げたりはできそうにないので仮筬を使う北欧のやり方はたぶん無理。
織機上部に粗筬が取り付けられているので、ジャックユーザーが得意のオバーキャッスルがメーカーお勧めのやり方のようです。仮筬、粗筬を使わないフロントtoバックの愛好者は、綜絖周辺は完全オリジナルの仕様ですから負担の度合いなど事前によく相談を。
なぜか筬柄にシャトルランがあるのもジャックと同じ。

ジャックルームユーザーまたはユーザーになる人を対象とした8枚もしくは12枚綜絖が標準装備のハイエンド機種という印象です。(より複雑な織をしたいというニーズに対応した買い上がり機種という言葉のほうが適切でしょうか?)アメリカンスタイルの8~12枚綜絖をメインに織りたい人は検討すべき機種か。筬柄中央にハンドルがついていています。

北欧のカウンターマーチを使い慣れている方は、名前とコンパクトという理由で購入を決定する前に、使い勝手、綿麻の細番手やラグを織る時のテンションなど確認したほうがよさそうです。
日本では北欧手織りのファンが多く、カウンターマーチの織機が使われているなんて、海外からは想像できるはずもなく・・・・・つまり、ジャックユーザーにはわかりやすい商品だと思います。

よく話題になるペダルの重さは・・・・・・一般的には、綜絖を上げ下げする装置(しかけ)と関係すると言われています。感じ方には個人差がありますのでコメントはできません。

新システムの道具ですから、購入後の調整や織始めてからの相談などのアフターフォローはポイントですね。最近、輸入織機全般に感じていることですが・・・・・。


で、多綜絖のサンプルが織りやすい織機を探している北欧の大型織機のユーザーは、どうするつもりか・・・・ですか?
どう考えても・・・・・・あまりに贅沢。


32 件のコメント:

  1. あー、やっぱり贅沢かなー。ジャッキ式で多綜絖だと踏木が重くなる。北欧型の図体の大きな天秤。現代の住まいの環境の中で、両方のいいとこ取りをするとこんな形になるのかな、なんて思ったりしています。

    返信削除
    返信
    1. すみません。実は小型の2台目の織機として考えたので、贅沢…と。
      8枚以上の多綜絖を織りたい人にとっては「いいとこ取り」ではなく、最善のように思います。
      わかりやすさから、踏み木の重さと本体の大きさだけで見てしまうと、立ち位置によっては「いいとこ取り」ではなくて、ジャッキ式より図体が大きくて、天秤式ほどペダルが軽くないという逆の見方が存在するかもしれませんね。

      この織機についてではなく一般論として、綜絖枚数、織れる経糸密度やテンションの程度、機がけのしやすさなど、「使う人がメインに織りたいものが具合よく織れる能力と条件が適当か」も加えて考えることが大切な気がします。
      見極めは難しいですけれど。

      削除
  2. パラレルカウンターマーチの仕組みについて若干の誤解があるようですので私の知っている範囲で補足いたします。
    まず「ジャックルームに近い」との印象をお持ちのようですが、これは全く全く!違います。ジャックルームは、金属製の綜絖子の重みでもってすべての経糸を下げた状態が基本(閉口)状態で、ペダルを踏むと、ペダルに結ばれた綜絖だけが上がって開口する、つまり上口開口です(タイアップは、上げたい綜絖だけをペダルに結ぶ)。全ての経糸を下げておけるだけの、重たい綜絖子を使用することが大前提なので、必然的にペダルは重く、また、張力を強くすると、綜絖子の重さで経糸を下げておく、ということ自体が難しくなります。
    これに対し、カウンターマーチ式(北欧式・パラレルとも)はすべての経糸が水平になっているのが基本状態で、ペダルを踏むと、ペダルに下招木を結んだ綜絖は上がり、上招木を結んだ綜絖は下がる、というように、全ての綜絖が上または下に必ず動く、両口開口です(タイアップは、上げたい綜絖は下招木、下げたい綜絖は上招木、というように、全ての綜絖を全てのペダルに結ぶ)。綜絖・招木・ペダルの重さの釣り合いによって経糸の開閉を行うため、ジャッキやろくろに比べると踏みは軽いです。
    パラレルカウンターマーチは目に見える「天秤」(はね木)こそ無いものの、間違いなく「天秤」グループに属するもので、ジャッキとは全く異なります。パラレル式の特徴は、招木に支点がないため、北欧式のように左ペダルが重く右ペダルが軽い、ということがなく、全てのペダルの踏み込みが同じなので、タイアップの調節は北欧式より簡単です。
    カウンターマーチ式である以上、タイアップすべき箇所の数は北欧の機と何ら変わらず(8枚10本なら80箇所)、その点でのお手軽さを期待して「サンプル機に?」とお考えなのでしたら、残念ながら期待はずれかと…。ただ、釘にテクソルブコードを引っかける方式ですので、ひとつひとつスニッチノットを結んだり、ペダルの下側を手探りしながらアンカーペグをはめ込んだりするよりは、ラクですが。
    文中で「北欧やろくろ機は踏むと綜絖が下がる」とありますが、北欧でも天秤式は踏むと綜絖は「上がる・または・下がる」のであって、ここは「北欧」ではなく「カウンターバランス式」とすべきところかと思います。(カウンターバランス、ろくろ式は下口開口)
    それから、筬柄中央のハンドルの存在理由は、「中央を持つため」と考えられがちですが、実は全く違うところにあると考えます。このオランダの機の設計思想の中で、ひとつ非常に強く追求されていると思われるのが、「ムダ糸の極少化」であり、機の奥行きが浅いのも、省スペースのためだけではなく、ムダ糸を減らすためでもあるようなのです。このため筬と一番手前の綜絖との距離が極端に短く(下框なのでスタンバイ時の筬柄は後ろ側に寄りかかっている)、ハンドルがなかったとすると、筬柄に手を伸ばすたびに第1綜絖に指がぶつかってしまい、織りのリズムが乱れるため、それを防ぐためにハンドルがついているのです。
    ちょっと陰険みたいですが、オランダの機については情報量が少なく、ブログを読んで「ジャックルームに近いのか」と誤解してしまう人がいるといけないので、敢えて長々と書きました。お許しを。

    返信削除
    返信
    1. 早速にご丁寧な説明をありがとうございました。
      オランダの織機をお使いなのでしょうか?本当に情報が少なく困っておりました。サンプル機にと考えましたのは、綜絖枚数が16枚まであり、釘にかける方式が簡単そうで魅力的、間丁が短くロスが少なそうだからです。

      ジャックルームの簡潔な説明をありがとうございました。知りたい方が多く訳すのも大変で困っていたところでした。助かります。

      さて、ジャックルームに近いと書きましたのは、綜絖の開口についてではなく本文に書きましたようにも本体そのもの(躯体)と機がけの仕方のことです。
      「踏むと綜絖が下がる」という表現は、確かに言葉足らずです。織ばかりしていると開口の仕方も大切ですが、織る時の準備の事が気になります。ジャックルーム用の組織図のタイアップですと×と□のつなぎ方が違い、よく間違うのでこの表現になりました。

      参考までに、カウンターバランスも使用してます。これも、タイアップの観点から綜絖の上下を書いてしまいご指摘をいただきました。文献では下口開口と書かれている場合もあるようですが、実際は場合により若干生じているかな程度で、ほぼ完璧な両口開口で整織には全く問題はありません。

      文章を拝見していると順番として「綜絖が上がる」先なのですね。天秤からのコードを前側にたらす方の考え方がわかりました。ありがとうございます。

      最後に、織機の開口からの比較もさることながら、この織機の機がけのしやすさや得意とする織の種類のことが知りたいです。ラグなどの打込みや粗筬の使い勝手はいかがでしょうか?他の織機に比べて、特に織りやすいと感じられた素材や厚さなどお教えください。

      とてもお詳しいので、簡単なプロフィールを是非お聞かせください。

      削除
    2. その後、1年ほど過ぎたのですが。
      にゃん子さんはアメリカの本を参考にコメントされていたことに、偶然気付きました。読まれた方が間違った知識を得ないように追記いたします。

      カウンターバランスとろくろは下口開口という記述がありますが、どちらも両口開口(正確には中口開口)で誤訳です。
      したがって、両口開口だからカウンターマーチということにはなりません。

      詳しくは、「ろくろ機は下口開口への返信」2014年3月を参照してください。

      削除
  3. にゃん子さんこんにちわ。
    i.asaokaさんと同様、パラレルカンターマーチの機をごく最近知り関心を持っています。分かりやすい説明をいただきましたが、こちらの知識不足でこの機の特徴、理解できてい
    ない部分も多くあります。
    実際に、使っていらっしゃるなら、その使い勝手の良い部分、悪い部分を教えていただけないでしょうか?よろしくお願いします。

    返信削除
  4. にゃん子さん、よろしければもう少し説明してほしいのですが、両口開口がよさそうなのはなんとなくわかりました。
    具体的にはどのようによいのでしょうか?
    教えていただけないでしょうか? よろしくお願いします。

    返信削除
  5. 匿名4月3日17:43様
    一般論として「両口開口が良い」ということではないと思います。
    asaoka様も書いていらしたように、要は「織りたいものが、具合い良く織れる」ことが大切かと。私はウールの太めの番手で、綜絖4枚以内の単純な組織の巻きもの類などを織る時には、4枚綜絖の小型のジャックルーム(これは上口開口)が一番作業しやすく、こればっかりです。小さなスペースで短時間で機仕掛けが出来、タイアップを変える労力もナシ(というか、私のはダイレクト・タイアップなので、変えられない)、開口も非常に明快ですし、何がストレスかと聞かれても思いつかないほど楽チンです。
    ただ、複雑な組織のものを織りたくなれば多綜絖の機が必要だったり、強い張力を要するものを織りたい場合はジャック・ルームは不適だったり、と状況が変わって来るわけです。多綜絖や広幅のものをジャック・ルームで織るのはペダルが重くて体力的にもキツイですよね。
    そういう状況では天秤機がより良い選択肢として浮上してくる、ということで、「両口開口が良い」という意味ではないのです。
    平織りが圧倒的に多い着尺の世界では、ろくろ式(下口開口)の機が主流であるのも、それが一番用途に適しているからそうなったのでしょう。この方面は全く疎いので、説明はできませんが。
    全ての用途に完璧に対応する織り機というのはない以上、自分がいちばん織りたい物は何か、をまず考えて、その目的にあった形式の機を選ぶのが肝心と思います。
    でも、「あれもやりたい、これもやりたい」のが悩みなんですよね。
    皆さん同じでしょう?

    返信削除
    返信
    1. 開口という部分のみで考えると、「両口開口」は優れています。経糸を上下に引分け、かつ、上下が均等なので、片方にたるみが生じるということがないためです。

      ジャックルームには、上口開口と下口開口があります。どちらもペダルを踏んで開口するとき「動かない綜絖がある」のがこの織機のみに見られる特徴です。このため、経糸にモヘヤを用いたり、経糸の密度を混ませたりすると、経糸同士がくっついたり、すれ違えずに開口が悪くなると言われています。しかし、両口開口であればこの問題は発生しません。
      ジャックルームは、この片口開口とペダルの重さの2点が難点と言われてきたようです。

      しかし、「織機は性能が優れているほど良い」とは言えず、ジャックルームを全体で評価すれば、にゃん子さんが書かれているように、気軽に楽しめます。このため北アメリカには愛用者が多くいると思われます。

      削除
  6. 中古の垂直天秤機(北欧タイプですが国産T社製)を所有していますが、織りは長らくお休み状態でした。ごく最近、手軽な巻きもの類から制作を再開しました(主に米国製の4枚綜絖・ダイレクトタイアップの小型ジャックルームを使用)。
    昨年の超円高が「最後のチャンス(?)」と勝手にこじつけて、10年来気になっていたオランダ製パラレル・カウンターマーチ式の機を入手はしたものの、今のところは試運転中。
    北欧タイプの天秤機は大好きですが、これを置ける広さの家に今後も住めるのか、身体にキツいタイアップ作業にいつまで耐えられるのか、など考えてしまい、「老後の天秤機」としてオランダ機に手を出しました。
    織りについては万年初心者、「道具道楽」のほうの人間です…。飽きっぽいので、しばしば他の活動に浮気することもあり、一年中ガンガン織っているタイプではありません。

    (注:パラレル機には目に見える「天秤」(はね木)はありませんが、私は「カウンターマーチ」の訳語として「天秤」という用語を使用していますので、パラレル機も「天秤機」と呼んでいます。)
    いろいろな方からご質問いただいてしまいましたので、簡単に答えられそうな部分から、順不同で、私見を述べさせていただきたいと思います。他人様のブログですので、なるべく手短にと思うのですが、どうも織りの話は説明が長くなりがちで、すみません…。

    返信削除
  7. オランダ機の経糸ロスについて:
    asaoka様の「ロスが少ないからサンプル機にどうか?」という考え方は正解と思います。
    さすがは世界一の倹約人種・オランダ人の設計だけあって、経糸ロスは「お見事!」というくらい少ないです。セクショナルビームを使用していることもありますが、経糸コードが一番後ろの綜絖に触れる直前まで織れれば40cm台のロスで済みます。これは12枚綜絖の機としては画期的に少ないと思います。まだ実験していませんが、織り付け側をエプロン・バーに直接結びつけないで、一束ずつ、こぶ結びにしてから長い紐でレーシングする方法にすれば、もっと節約できるのではないでしょうか。
    巻きもので房を作る場合などは、終盤、気をつけていないと織りすぎてしまって房が足りなくなる危険さえあります。

    返信削除
    返信
    1. 綿のハンドタオル等の場合、北欧機では通常40~46cmと言われています。
      私の場合もこの範囲内です。
      パラレル機の40cm台は妥当な数値と思います。

      束を使う方法は試してみましたが、太いウール糸であればうまくできるかもしれません。

      削除
  8. オランダ機のタイアップ方式について:
    「釘とコード」でのタイアップも非常に良くできていると思います。伝統的な北欧式の機でペダルが後ろ支点のものをタイアップするとき、開口をきれいに揃えるためには、奥側のペダルはコードをピンと張り、手前側のペダルはコードにわずかなゆるみを残して結ぶ必要がありますが、私はこれが大の苦手! 機の下に潜り込んで延々と調整していると身体も痛くなってくるし、年を取ったらこれは辛いだろうな…と思っておりました。
    オランダの機ではペダルに特別な工夫がなされていて、後ろ支点のペダルでありながら、ペダルの「効き」は奥側のほうが大きくなるのです。ペダルを軽く踏めるためには後ろ支点のほうが良い訳ですが、開口を揃えるためには前支点のほうが都合が良い、というジレンマにきちんと取り組んだのは、私の知る範囲ではオランダと、カナダのメーカーだけ?のように思います。多綜絖を使い込んでいる北欧の人々は、従来型のペダルで不便を感じなかったのか、聞いてみたいところです。
    私の場合、織り始めてからでもペダルの運びがイマイチだな、と思えばタイアップをやり直すこともあります。いろいろタイアップをいじって検討したい向きには、「釘とコード」は便利と思います。

    返信削除
    返信
    1. 友人はスゥエーデンO社の垂直天秤を使用しています。コードは結ばずひっかける方式です。織機の伝統を大切にするため、オプション対応のようです。

      特別な工夫をするか/しないかは、価値観の違いがあるように思います。

      削除
  9. オランダ機の欠点について:
    欠点はどうでしょうか…。まだ試運転レベルなので、大きな問題に直面したことはないのですが、機の剛性・安定感という点では明らかに北欧タイプより劣ります。全体に北欧タイプに比べると材木のボリュームが少ない(「細い」というよりは「薄い」感じ)のですから、当然ですね。また、バックビームが斜め後方に張り出している構造ですので、バックビームに上からの力がかかると、テコの原理で、機の手前側が簡単に浮き上がってしまいます。
    私はバックビーム上に手持ちの粗筬を取り付けて機の後ろ側に立って経糸巻きをする手順なので、この「浮き上がり」問題はちょっと不便に感じています。キャッスル上に組み込まれている粗筬を使えば問題は生じないはずですが、機の前後を往ったり来たりするのがイヤで、今のところは従来の手順で作業しています。従って、組み込みの粗筬の試用レポートはナシです。

    それからこの機、天秤機としては省スペースでありますが、それは必ずしも「小さい」ということではありませんので、ここは要説明。私のはペダルが後ろ支点のほうのモデルなのですが、織り前の高さがオランダ人サイズで、かなり高いです(オランダ人は世界でも有数の長身人種)。小柄な方は、この点を考慮しておく必要があるかも知れません。日本人でもチビの部類の私の場合、織り前の高さに合わせて椅子を調整すると、足先をかなり一生懸命のばさないとペダルが踏み込めません。このため椅子はオプション部品を追加して座面を前傾させ、ペダルは高さ調整のための別売ブロックで2.5cmのかさ上げをしていますが、もうちょい上がって欲しいと感じることもあり、自分でもう少し追加のかさ上げ改造することを考えています。

    返信削除
    返信
    1. 織機を自分体形にあわせるため、座面を前傾させたり、ブロックを追加したり等が必要。
      つまり、高さ調整のやり方と安定度については、購入前にしっかりと確認した方がよいというお話ですね。

      削除
  10. 機の種類とタイアップ図の話
    asaoka様のブログ中の「ペダルを踏むと下招木が下がり、上招木と綜絖が上がるという説明ですので、タイアップ図はジャックルームと同じ。(もちろん逆もできるとは思います。が、北欧やろくろ機は踏むと下がる綜絖/上招木を基本にタイアップ図を読み結ぶ。)」というくだり、ここは誤解では?
    パラレル機もカウンターマーチ式ですので、タイアップは、北欧のカウンターマーチ式と同じです。すなわち、○は綜絖を上げるため下招木とペダルを結び、×は綜絖を下げるため上招木とペダルを結びます。
    ジャックルームは「上がる」綜絖だけをペダルと結ぶため、×印のみで書かれた、古いタイプのタイアップ図の場合×印=「上がる」となります。
    ろくろ式・カウンターバランス式の場合は「下がる」綜絖だけをペダルと結ぶため、×印のみで書かれた、古いタイプのタイアップ図の場合×印=「下がる」となります。
    ×印のみで書かれたタイアップ図の場合、このように機の種類によってタイアップ図が変わってしまって不便なため、現在では○(上がる)と×(下がる)を両方書き込むタイアップ図が主流で、雑誌のVÄVもHANDWOVENもそのようになっています。
    覚え方としては、「○は泡、泡だから浮かび上がる」と覚えるのだそうです。

    返信削除
    返信
    1. にゃん子さんによる訂正が最後に入っています。ご確認ください。

      削除
  11. パラレル機と経糸テンションの話
    機の奥行きが浅い場合、そのままですと張力の強い経糸の場合は開口しにくくなってしまいますが、オランダの機はスプリング装置を組み込むことによって、この問題を解決していて、これは国産T社の「フリー・テンション・システム」とほぼ同じ仕組みです。
    経糸を開口すると、ブレスト・ビームがバネの作用でわずかに機の後方側に動き、その結果、経糸の長さに余裕が生じて、糸そのものに負担をかけずに開口できる、というもので、T社の社長のお話では、全く伸びのない金属線でもちゃんと開口する、とのことでした。
    であれば、綿麻の細番手なども問題ないですね。

    返信削除
    返信
    1. 記憶では、T社のシステムは間丁(経糸側)についており、オランダの会社のはブレストビーム/胸木(布側)側です。
      麻やシルクなど滑りやすい糸を粗く織る場合、わずかな動きであれ、こすれて目よりのする恐れはないのでしょうか?
      日本では、ストールやショールを織る方が多いようです。
      綿糸の場合の毛羽たちも不安材料です。

      これらは、実際に織ってみないと問題ないと言い切れないように思いますが、いかがでしょうか。

      織に関することのみ、取り急ぎ。

      削除
  12. オランダ機とラグの相性
    オランダのパラレル機もカウンターマーチ式ですので、得意分野は北欧のカウンターマーチ式とほぼ同じと思われますが、ひとつだけ疑問が残るとすれば、ラグでしょうか。
    強いテンションの経糸については、スプリング装置があるため、オランダ機でも問題ないと思いますが、筬は軽量の下框ですので、強く打ち込みたい場合は、織り手の腕力が頼りです。重たい吊り框の北欧式のように、筬框の重量と加速を利用して強く打ち込むということは出来ませんね。ハンドルがついているため、ハンドルなしのものよりは力は入りやすいと思いますが…。
    また、先に述べましたように、機の躯体の剛性では北欧式に劣りますので、ガンガン打ち込んだときの振動がどの程度になるかとか、筬框そのものの耐久性も気になりますね。私は今のところラグはやっていないので、体験としてお話しすることはできません。
    ジャックルームでラグを織っている方だっているわけですから、オランダ機でラグが「織れない」ということは決してありません。しかし、ラグを自分の仕事の中心に考えている方は、オランダ機の適否は慎重に検討すべきでしょう。輸入総代理店では体験講習も行っていますので、予め相談してラグ用の経糸を用意してもらって試職するなど、自分の身体で見極めてください。

    返信削除
    返信
    1. この織機に限らず、一般論として、「ペダルを踏む→杼を投げる→受取る→筬打ち/踏みかえて筬打ち」という一連の繰り返しがスムーズに安定してできるかは必ず確認したいです。特に、織幅が広くなると、思わぬ所で「やりにくさ」や「バランスがくずれる場合」がでてきたりします。できれば、自分が予定する最大幅で試したい。

      高額の商品ですから、使い勝手は充分に確かめて、納得して。

      熱心な輸入総代理店と聞いていますから、きっと対応してくれると思います。
      この織機が得意でないラグの体験講習?……確認体験?……にゃん子さんの勘違いでは?

      削除
    2. このにゃんこさんによるラグの話でもわかるように、本体の剛性や安定度も織機の性能を決める大切な要素だということになります。

      私のフィンランド製の織機は、元はカウンターバランス(下口開口)で北欧の織を本格的する方が使っていました。今は、カウンターマーチ(両口開口)も使えます。どちらを使用しても織れるアイテムや織上りに極端な違いはありません。

      カウンターマーチは、多綜絖も可能ですが北欧の伝統的織り方で多綜絖を必要とする織り方はさほど多くはないと感じています。
      麻の産地の伝統的な織機なので、経糸のテンションが強くなりすぎると感じることがあります。

      削除
  13. 訂正です!
    すみませ~ん! タイアップ図の話で、間違ったコメントを書いてしまいました。
    織物雑誌のタイアップ図は、「○×両方を書き込むタイプ」ではありませんでしたね。
    Handwovenは「上がる綜絖だけを結ぶ」ことを前提に、結ぶ箇所のマスに綜絖番号の数字を書き込む形式、VÄVは上がる綜絖と下がる綜絖を白マス・黒マスで書き分ける形式でした。(白マス=○=上がる、黒マス=×=下がるに対応)
    ネット上で発言するときは、あやふやな記憶に頼らず、資料に戻って確認すべきでした。申し訳ありません。

    返信削除
    返信
    1. にゃん子さま
      推察するのは失礼かと思いますが、プロフィールをお聞かせいただけないので。

      作品のお話からは作家または手織り教室の先生とは思えず、お一人で趣味でなさっているにしては織機を3台以上お持ちのようですし…?
      「まだ試運転レベル」という言葉を使われることからすると、ご関係の方ですが?

      「他人様のブログですので」と気を使ってくださるのであれば、昨日お願いいたしました「簡単なプロフィール」をお教えください。

      再度お願いいたします。

      削除
    2. どう説明すればいいのかと読み返し、結局この「訂正です!」のコメントに助けられました。お礼が言いたい気分です。

      タイアップの話は、開口の種類の説明と早飲み込みし……実際の手順の話は、○印=「上がる」から始まる……VAVのタイアップ図に〇が入ったと気づく……にゃん子さんは、いわゆるJack Loomerですね。(あまり好きな言葉ではないのですが)

      で、説明の仕方を次のように変えてみました。言いたいことは同じで変わっていません。
      これでわかっていただけることを願います。

      北欧式もパラレル式も、
      どちらのカウンターマーチもタイアップは、綜絖1枚に招木を2本です。
      どちらも、下招木は○=「上がる」で、上招木は×=「下がる」で同じです。
      違いは、北欧の織機は、手前に上招木(×=「下がる」)があり、パラレル式は、手前に下招木(○=「上がる」)がある。←HPの図面確認しました。
      米国では、ジャックを使用していた人がもっと専門的に織りたいと北欧のカウンターマーチ機に買い替えると、手前に下招木(○)奥に上招木(×)と前後を入れ替えて使用することがあると聞きます。これは、伝統的な使い方と異なります。

      つまり、にゃん子さんのように、「○は綜絖を上げるために……」と○から考える人には、手前の招木は○=「上がる」、奥の招木が×=「下がる」が使いやすいと思われます。
      そして、パラレル式の2本の招木はこの考え方の人が使いやすいように「手前が○、奥が×」の順番で設定したと思われます。

      パラレル式で、「もちろん逆(前後の招木を付けかえること)もできるはず」と思います。北欧式で×=「下がる」からタイアップをしたい方は、問い合わせて現物で確認してみるのはいかがでしょうか?






      削除
  14. プロフィール…
    オランダのパラレル機を入手した経緯のところで少し書きましたが、まだ不足でしたでしょうか。織りは純然たる趣味でやっていて、どこの「関係者」でもありません。そもそもどこかに所属するのが居心地悪い、私も「一人仕事」の人間です。
    素人なのに機をいろいろ所有していることを御不審に思われたようですが、これは先にも書きましたように「道具道楽」で、織りが好きなのはもちろんですが、織り機という道具の仕組みに興味があって、実際に使ってみたいという欲求が強いためにそうなったものです。
    ずっと昔から織りに興味はあったものの、仕事(手仕事とは全く無関係の事務系の仕事です)が忙しくて時間がなかったこと、機を置くようなスペースがなかったことなど、諸々の事情で実際に織ることが出来なかった期間が長く、その間、いろいろなメーカーのカタログや、織りに関する文献を読み込んでいたため、いろいろな形式の比較についてはそこそこ詳しくなったかと思います。
    「試運転」という表現は、まだ自分がこの機のことを知悉しているわけではなく、だんだんと「お近づき」になっている過程である、という意味で使いました。どんな機と織り手も、そのようにして慣れ親しんで行くのではないでしょうか。

    一度にたくさんの書き込みをしたことで警戒なさったのかと思いますが、他意はありません。ただ、このブログを読んでいるであろう大勢の「一人仕事」の方々に、情報の少ないオランダ機の正しい情報をご提供できれば、と思っただけです。

    返信削除
    返信
    1. にゃん子さんは、織機が好き。私はどんな人なら使いやすく、何が風合いよく織れるだろうかを考えます。会話が食い違うのは、当然です。

      にゃん子さんのコメント冒頭の「ジャックルームとは全く違う」という意見はあたりまえです。
      米国で主流のジャックルームの2つの難点を改良するため、両口開口を取り入れ12枚の超多綜絖等の大幅な性能アップをした織機という考え方ですから。同じはずがありません。
      なぜ、ジャックルームなのかといえば、織機躯体の性能と仕様、デザイン性、タイアップなどの共通点が明らかなためです。

      カウンターマーチを直訳すると、counter/カウントするもの、人。数えるもの、人。march/行進する。つまり、「数をかぞえて行進する」。原始的な織機と異なり、安定して規則正しく綜絖の上下を繰り返すというこの織機の動きから呼ばれた名前なのではないかと想像できます。天秤式以外の新方式にこの名がついても不思議はありません。

      本格的は織機であることは確かです。日本人やアジア人より大きい体格の人を対象としたことも明らかなこの織機。設計者はどのような意図とイメージを抱いて図面に線を引いたのでしょうか?

      どちらも素人。説明の信憑性も答えも「希薄」というのが結論のようです。


      ---この投稿コメントに関するメッセージは、次ページ4月16日付で公開です---






      削除
  15. このトピックはこれで終了です。------以降のコメントはご遠慮ください-----

    返信削除
  16. 検討の結果;
    「正しい情報をご提供できれば」と思うにゃん子さんの思いを受け止めて、ブログオーナーとして返信を始めています。もうしばらくお待ちください。

    このトピックは終了です。----オーナー以外のコメントはご遠慮ください----

    返信削除
  17. やっと返信を書き終えました。最後になりましたが、

    ブログをお持ちで、折よく、
    「機は全ての織物にオールマイティーではありません。」と書かれた書籍の紹介してくださった先生。
    「日本人の体格に合った織機がお勧めです。」と声を聞かせてくださった先生。
    貴重なご意見をありがとうございました。

    そして、「ふさわしい織機を見つけて、手織りを楽しみましょう」という持論をお持ちで、豊富な知識を分け与えてくださる手織り作家で元大学教授のJ.H.先生に感謝したいと思います。

    Happy Weaving!

    返信削除
  18. ------このトピックは、完全に終了しました。以降のコメントは、ご遠慮ください。------

    返信削除