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2018年10月30日火曜日

タテ2重組織(相補組織;仮称)から1本抜くと

「2本が対になり補い合っている柄布がある。1本が抜けると布は崩れてしまう。」ちょっと文学的な表現で、心惹かれるのですが、現実は。
でも、もしかすると、勘違い?と思い、サンプルを作って試しました。前回の続きです。


『もようを織る』には、相補組織は、
「2本中の1本を抜くと布として組織しない。」(p.258)
とあります。単様、複様の両方に通用するのでしょうか?

まずは、相補組織・複様です。


上から順番に 写真;① 
まずは、この本(p.259)にあるサンダー方式のサンプルをつくりました。著者が「相補組織・複様」と仮称をつけた組織です。
タテ糸は、こげ茶色と薄茶色。薄茶(ベージュ)が、ちょっと見えにくくて、すみません。ヨコ糸は、濃ピンク色です。

『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』のコンプリメンタリ―セットの分類(p.150)の最初にある写真の織サンプルと同じ組織です。

日本の手織り教室などでは、「昼夜織り」と呼ばれている組織です。「サマー&ウインター」などと素敵な名前で紹介している先生もいます。(注;米国では違う組織の名前です。)


写真;②
タテ糸の隣り合うこげ茶色と薄茶色、この2本が、対になり役割を分担していますから、タテのこげ茶色を抜いていきます。

写真;③
すると、ヨコ糸の濃ピンク色が1本おきに外れてしまいます。

写真;④
粗い平織が残りました。


薄茶のタテ糸を抜いても、平織、つまり、平組織が残りました。「組織している」ことになると思うのですが、「組織しない」は何か他の意味があるのでしょうか?

平織がこの織物の原組織で、残った平織と、抜いたタテ糸&外れたヨコ糸 で二重組織(二層構造)と思うのですが、いかがでしょうか。


『もようを織る」には、『布の主要構造』のコンプリメンタリ―セット(p.152)の「fig.252-255 は、タテ糸を抜いても組織が残るので、相補組織ではない」と説明があります。
この fig.252-255 の番号が付いた4枚の写真の織サンプルは、もちろん二層構造で、3/1と5飛びの2種類の綾組織(完全組織が 3×3以上)ですから、タテ糸の対になった2本中の1本を抜いても組織は残ることになります。


次は、相補組織・単様です。
p.258のサンデー方式のサンプルを組織図に書き直しました。南米アンデスに多い組織だそうです。(レピート 16本×8段;ついでに、綜絖通し、踏み木とタイアップ付)

1本を抜いた組織図を作成すると、綾組織を引き返した(山道通し)ダイヤ柄の組織が残ります。どちらを抜いても、ダイヤ柄の布として組織が残りました。原組織は綾組織でした。
右の組織は、タテ糸を混ませて織れば、はっきりとした2重のダイヤ柄になると思うのですが、織った布の写真はありません。普通の密度では、不安定そうな組織ですね。非対称/アンシンメトリーも気になります。


相補組織(仮称)の概念に、組織図で確認した個人的な解釈も加えて、 
本来は経糸は1本(1色)の一層の組織だが、色糸を使って柄を織りだすためには、この1本に 柄になる糸とならない糸 というような 役割 が生まれてくる。このため、この1本のタテ糸が便宜上、違う色が1本づつで計2本で対になって、本来1本で担う役割を分担する。
ということのようですから、一層の織物の例外組織かな?(ヨコ糸が対になる場合もある) でも、残った組織をみると二層の織物のような気もするのですが・・。

『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』のコンプリメンタリ―セットに分類した布は、タテかヨコどちらかだけが二層またはそれ以上で、組織の限定はありませんから、異なりますね。まあ、この組織が関係する部分だけ比較しても意味があるとは思えませんが。

相補組織の発想はおもしろいのです。が、コンプリメンタリ―セットのセットは組織論とするとウィーブと同じで、海外では、コンプリメンタリーウィーブと言葉は普通に使うのだそうで、コンプリメンタリ―ウィーブを相補組織と仮称して、説明の内容が違うとしても、代表する組織は同じで、分類した組織は違っても、50年も過ぎれば、概念も違ってくるということで、それでも評価に値する業績なので、いつもでもわからないと思っていないで先に進むことが・・・・・・。
これから海外をめざすテキスタイルデザイン関係の学生さんは、大変です。

2018年10月24日水曜日

組が本になって相補組織(仮称)に

聞いたことがない組織や織り方の名前は気になります。
「日本の織物用語として概念がない相補組織」という紹介文に興味を感じて購入した書籍『もようを織る』

「相補組織(仮称)」があるという『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』を前回まで見てきました。https://thistleweave.blogspot.com/2018/10/the-primary-structures-of-fabrics.html

相補組織は、上記のレポートでは「2組かそれ以上」という織物の分類でタテやヨコのどちらかだけが多層になるという「コンプリメンタリ―セット(分類項目名)」にありました。説明の横にあるサンプル写真は「昼夜織」。何やらむつかしく感じるのは、和訳時の単なる言葉のニュアンスの違いかと思ったのですが。

・・・・・相補組織・・・・・complementary sets・・・・・相補組織・・・・・complementary sets・・・・・相補組織・・・・・

『もようを織る』p.258には、相補組織(仮称)のきっかけになったと思われる「エモリ―の定義」が載っています。
以上の要素が同方向にあり、それらの糸は布の構造上同等である。」

著者によると、「経糸や緯糸の2以上を1単位として、補い合う組織があることを定義づけたはじめての組織論だが、抽象的な説明で、複式(色糸による紋織り組織)から説明されているため、単式(原組織;平・綾・繻子組織)との違いが理解しにくい。」のだそうです。

よく見ると、説明し直した文では、定義の「2組以上の要素」が「2本以上を1単位」に変わっています。組を本に訳し間違えたか?「2本以上の糸で1組⇒1単位」と思ったのか?でも、定義は「2組以上の」と1組ではなくと2組から説明が始まっていますが・・・。自分の考えに合うように意訳したのか?

相補組織の章の始め(P.254)にも、ほぼ同じ内容で「アイリーンエモリ―がその著書『布の主要構造』で、2以上の経糸が一筋や2以上の緯糸が一越を担う組織について、それらが互いに補い合うという意味でコンプリメンタルウィーブ:相補組織として…(後略)」とあります。

著者小林桂子氏は、「古代からの道具を使わない もじり技法 でも同じように2の色糸のうちのどちらかを表に出す模様作りを経験しているため、(経験した人なら誰もが)自然に考えつく(組織?定義?)」と記述しています。
エモリ―の定義の「2組以上の要素」が変わった理由は、「手を動かしてやってみればわかる」という持論(日本では一般的?)が影響しているようにも思えるのですが。


組織論という記述も気になりますので、原文を見ることにします。記してあるページ数から、原書を確認すると、コンプリメンタリ―セット; complementary sets の文頭に、「エモリ―の定義」と同じ原文がありました。下のWhenから始まるアンダーライン部です。

p.150-154.fig244-257 When two or more sets of elements have the same direction in the fabric and are co-equal in the fabric structurethey can be described as being complementary to each other. The structure itself is compound and can be either double-faced or two-faced.

訳してみたのですが、
  
構成する要素は同じ方向に2組かそれ以上あり、(それは布のタテまたはヨコ方向で、2層またはそれ以上の層になり)、布の裏表の組織は同じになるとき、裏と表が具合よくバランスが取れている状態(補い合う組織?)になっている布と評価できる。組織自体は組み合わさり、両面使いの布地やリバーシブル地になる。

前回まで見てきたように、「要素」とは、糸とか紐状のもの。「組」とは、織物でタテまたはヨコになる糸などの長さと順番を揃えて並べた状態のことでした。「同じ方向に2組以上」は「交差しないで2組…」ということですから、多層の織物の説明だとわかります。

さて、文頭のアンダーライン部の「エモリ―の定義」を組織論としてを読むと(文章の後半部はわかりにくくなるので、いらないのだそうです)・・・なるほど、著者が指摘しているように抽象的ですね。「補い合って」と訳してみても、著者の説明の重要な要点である「2本が1本のように組織する、とか、対になる、一筋や一越を担う」という記述はみつかりません。
やはり、布の分類を目的としたレポートのコンプリメンタリ―セットに分類した布の特徴についての説明文としか、個人的な意見ですが、思えないのですが。

コンプリメンタリ―で思いつくのは、色彩学の「補色」と数学の「補角」。「相互に補い合う云々」は、学術用語のような先入観があります。でも、英英辞典には、「異なるけれど一緒になにかすると役立つ、うまくいく」「異なる技の魅力的な組み合わせ」とか、軽い感じの説明もあります。このレポートではどのような感じなのか…関係したネイティブさんに訊いてみたいですね。


ミルトン サンデー氏(Milton Sonday)が著者小林氏のために 相補組織の概念 を説明した文章も載っています。

エモリ―の定義では「2組以上;sets」だった部分は変更されて「2本以上;threads」とはっきりと記されています。見つからなかった「一緒になり1本のように」も書き加えてあり、著者が自らの経験から自然に思いつくとして、訳文にした内容に合致しています。
そして、相補組織は、「一対である2本の糸が役割を分担している」ので、「2本中の1本を抜くと布として組織しない。」と書き加えてあります。

前回、作成した「昼夜織」の組織図は、この本のサンダー方式(細い紙を使って織った見本)の相補組織・経複様と同じでした。
この組織図では、隣り合うタテ糸の黒と青が一対になり役割を分担していることに、なります。綜絖の1番と2番で一対、3番と4番で一対です。

布として組織しないとありますが、黒を1本づつ抜いていくと・・・平織り、つまり、平組織が残ります。が。

※意見やコメントのある方は、冷静に、簡潔に、お願いします。

2018年10月16日火曜日

『The Primary Structures of Fabrics』を読み解く 2

前回からの続きで、今回は、多層の織です。この本を取り上げるきっかけになった「相補組織(仮称)」。書籍『もようを織る』小林桂子著によると「日本の織物用語として、概念がない組織」が登場します。

b.コンパウンドウィーブ;Compound weaves は、「要素の組合せ」の分岐まで戻ると、シンプルウィーブが「構成要素が2組」の分類です。したがって、コンパウンドウィーブは、「構成要素が3組以上」の分類であることがわかります。コンパウンドウィーブはシンプルウィーブに「組」を加えたと考えればよさそうです。分類の基本は「組」ですから、布になった状態とは限定してません。

この分類は大きく2つに分かれ、構成要素2組からなるシンプルウィーブに「タテ方向かヨコ方向のどちらかを1組を加える」と、「2組からできる布になった状態で加えて多層になる」です。つまり、「組で多層」と「布で多層」という2つの分類です。

★日本の織物の組織を勉強した人の話では、層になる織物は、同時に布を重ねて織る「重ね織」や「二重織」の「布で多層」しかないということ。すると1組だけを加えた場合のタテ糸またはヨコ糸だけが二層になるという構造は、未知の組織や新しい概念の発見(?)です。定義を探して、相補組織と仮称を付けたようです。
※二層より二重という表現が一般的ですが、「二重」には二重織のイメージがあるので「二層」にしました。


1). 「組で多層」;組を加えてコンパウンドにした;Compounded by adding sets of elements 
組数の加え方は、タテ方向が二層または多層でヨコ方向は一層。これを、90度回転して、タテ方向が一層でヨコ方向が二層または多層の構造になります。この分類は、さらにa).とb).に枝分かれします。

a).サプリメンタリ―セット;Supplementary setsでは、タテ方向かヨコ方向に「太さなどの違う組」を加えて多層になるという解釈になります。表裏の柄の出かたは違いますから、裏の組織は異なりますね。さらに(1)柄を入れる場合と(2)無地で保温や補強などの場合で分類してあります。

★日本では、この織り方は、一重の布を織りながら太いヨコ糸などを「柄になる別の糸を織り入れる」とか「はさみいれる」という感覚のようです。この技法名の「補緯」という用語を使い、分類項目名にすると「基本は一重の布(一層)」という印象です。すると、b.コンパウンドウィーブの分類には、一重の布(一層)と二重の布(二層・二重織)が混在すると思いたくなりますね。


b).コンプリメンタリ―セット;Complementary sets が、前分類 a).と異なるのは、加える組の糸の「太さなどが基本の布と同じ」という点です。 a).と同様に、タテ方向が二層や多層でヨコ方向が一層と、タテ方向が一層でヨコ方向が二層や多層があります。しかし、表裏の組織は同じでどちらも表として使える布(リバーシブル)になるという説明です。平織と綾織があります。

★『もようを織る』では、平織のみに相補組織の仮称を付け、日本の織物用語として概念がないとしています。でも、サンダー方式の組織見本をよく見ると手織り教室などで教わるという「昼夜織」。手織りの本やブログでよく見かける特徴的な組織図(右図)です。


2).「布で多層」;布の構造を追加して組み合わせてコンパウンドにした;Compounded by combing complete weave structures 
シンプルウィーブに構成要素を2組以上を布にして加えたとする分類。いわゆる重ね織や多重織はこの分類に含まれます。「a;重なった布が入れ替わり、各層の間が空いている;Interconnected」と「b;各層が綴じ合わせてある;Integrated」の2つに区分しています。


★『もようを織る』(P.255)では、相補組織を説明するために分類した織物組織の項目名の箇条書きがあります。「組織を分類するのが組織論」だからでしょうか。

あくまでの個人的な意見ですが、布の分類が、組織論とか組織を説明するためにあるというのは、「織ること」に執着しすぎているのような気がします。他に役立つことはないのでしょうか?

博物館や美術館の膨大な布の資料の保管、整理ため。自分の持っている布について詳しく知りたい。一般的な名称を知りたい。似たような布を探したい。産地や時代を調べる手がかりにしたい。論理的にわかりやすく分類することで役立つことはいろいろありそうです。

古くから緞子、金蘭、ダマスク・・・。色や柄が美しく織り出された布に憧れ続けた私たち日本人には、海外の布の知識といえば「組織」しか眼中にないのかもしれません。

日本に存在しなかった概念は、「相補組織(仮称);コンプリメンタリ―」ではなく、「布の分類学」のようです。50年以上も前に発表されたこのレポートの理論と概念が、理解されぬままに、日本の年月は過ぎたとは思いたくないのですが。

2018年10月10日水曜日

『The Primary Structures of Fabrics』を読み解く 1


相補組織/コンプリメンタリ―ウィーブについて云々する前に、書籍『The Primary Structures of Fabrics』の分類をもう少し紹介してみます。


前回、織物部分のみですが分類表を公開しました。参考にしてください。

分類項目の名称について、「こんな言葉はありません」と言う方もいるかと思いますが、研究グループも分類を進めながら決めていったということですから、既存の用語に当てはめる必要はないと思います。既成概念が邪魔をしてかえってわかりにくくなるようです。しかし、もう少し適した名称が見つかるかもしれません。


理解するための、基本的な用語は、どうやら2つ。(正確な内容を知りたい場合は、原書 p.27 を参照してください) 

1.Element;要素とは、糸、ロープ、テープ、コードなど、さまざまな形状や材料が想定されるので、限定を避けるための表現です。糸のような…紐のような…をイメージすれば読みやすくなるようです。

2.Set;組とは、要素を同じ方向に揃えるという布を作るためにグループ化した状態。同じ方向にタテ糸の長さと順番を揃えたら、1組(セット)。
構成要素が1組の分類になる組紐やマクラメなども、長さと順番を揃えてから作り始めます。この布を作る準備の過程にある「組/セット」は、日本の感覚では、手順の1つでしかありませんが、確かに存在します。
ヨコ糸も同様に1組(セット)と考えます。現実では、ヨコ糸は、織り入れないと順番も長さも揃わないのですが、タテをヨコにして織った布もあるので、分類上、タテ糸の組(セット)を90度回転させたと考えます。

原書は、布を形作るもととなる素材と撚糸、布の構造の分類、布の加工や縫い付け(キルト、アップリケ、貝やビーズ)の3部構成です。布の構造の分類がもちろんメインです。

布の構造の大分類は、「フエルト」、「要素の組合せ」の2つです。

「要素の組合せ」は、A.構成要素が1本、B.構成要素が2本、C.構成要素が1組、D.構成要素が2組、3組以上の4項目に分かれます。

★技法や組織の説明書では、「編み、織……」や「基本と応用」などに分類するケースがほとんどです。が、この分類のための発想は、理路整然です。

A.1本は網や編物、B.2本はA.に1本を加えた構造、C.1組は、組紐、マクラメ、スプラングなど。そして、D.構成要素が2組、3組以上。これは、3項目に枝分かれします。
「1.タテ糸とヨコ糸が交差する」は、織物
「2.要素が入替わる」は、もじり織やトワイニング
「3.タテ糸に緯糸を巻きつける」は、タペストリーなどの技法

さて、「1.タテ糸とヨコ糸が交差する」は、まず、a.とb.の2つに分かれます。
a.シンプルウィーブ;Simple weaves と b.コンパウンドウィーブ;Compound weaves です。

a.シンプルウィーブは、エモリ―の考え方では、タテ方向1組とヨコ方向1組が交差した「織物」です。分類を戻ってみると、「構成要素が2組か3組以上」の「2組」に該当することが確認できます。つまり、タテ1組とヨコ1組で「一層の織」。
一層より一重という表現が一般的ですが、後述の「二重」には二重織のイメージがあるので「一層」「二層」にしました。

そして、a.シンプルウィーブは、平織の「1.プレーンウィーブ;Plain weaveと、浮きのある織の「2.フロートウィーブ;Float weaves」の2つに分かれます。フロートウィーブは、綾織、朱子織、平織から派生した織の3種類になります。

★シンプル⇒単純という言葉の意味から、単式や日本従来の考え方の原組織・三原組織とすると、コンパウンド⇒複合⇒複式 と、少しずつ意味が動いて、複雑な としたくなります。エモリ―の 織物の分類 の基本となる「組」という理論から、単純な組織vs複雑な組織 という形式に変容してしまいします。

自分が得意だと思っている部分だけを読むと、今まで学んだ日本従来の知識に当てはめて解釈したくなるのかもしれません。でも、歴史も文化も、受けた教育も違うのですから、考え方や発想も、もちろん、違うはずです。このことに気づかないと、エモリ―のレポートを理解するのは難しいだろうと推察できます。

書籍に限らず、考え方が違う相手を理解する手がかりは、思い込みを捨てて真摯に向き合ってみることしかないと思うのですが。

長くなりましたので、b.コンパウンドウィーブは、次回に。

2018年10月2日火曜日

『The Primary Structures of Fabrics』は 何が書いてある本?


『The Primary Structures of Fabrics』は、何が書いてある本なのでしょう
1980年代に活躍した日本の手織作家の先生方の参考書籍一覧で時々見かけますから、日本でも有名な本なのだろうと思います。

書籍『もようを織る』小林桂子著 では、書籍名を布の主要組織と訳して「欧米における布の組織学について基礎を築いた」と紹介しています。
著者は、Irene Emery。米国のワシントンD.C.にあるThe Textile Museum;布の博物館 が関係し、詳細を確認していませんが、この博物館は歴史あるジョージタウン大学と連携しているようです。この大学レベルと思われる本に「抽象的な説明」は本当にあるのでしょうか?

まず、原書の前文を見てみましょう。
THE DESCRIPTIVE CLASSIFICATION of fabric structures presented here is based
on a long and wide-ranging study of representative fabrics from ancient and primitive cultures, and of the methods and terminology employed in analyzing, describing, and classifying them.

「ここに提示する布の structures 記述的分類は、長期で広範囲にわたる・・(中略)・・布の研究を基礎におこなわれた。そして、記述的分類の手法と用語は、分析、記述、比較をすることから見出した。」
……もう少しわかりやすい訳ができそうですが、あまりに簡潔すぎて訳しにくい…。

つまり、「布のStructuresを分類した」とのことです。ワシントンにある「布の博物館の膨大な布の資料をもとに「布の分類学」を確立したレポート(論文)のように、私には思えるのですが。

日本では、「組織を分類するのが、組織論」という解釈があるらしいのです。わざわざ難しくしているように思えるのですが…。すると、「文学を分類するのが、文学論…?」「昆虫を分類すると昆虫論…?」になりかねませんから、完全に混線です。独自解釈が多すぎる。私が若い頃に織物が嫌になった理由の一つですね。

欧米人は、このレポートの記述スタイルで分類だとわかるのですが、日本語は象形文字文化なので、ツリー形式の図表がないとわかり難いのかもしれません。原書には、フェルト、網や編物、トワイニングなど布となるたぶんすべての技法があります。織りの部分だけですが、作成してみたのがこれです。
論理的で無駄ない分類だと見ただけで納得です。次回、もう少し説明してみます。

※図はクリックすると拡大します
                        
さて、このレポートは、構造論でも組織論でもない訳ですが、この場合の structures は、「構造」でしょうか「組織」でしょうか。
「組織」とは、織物のタテ糸とヨコ糸の交差した状態をあらわすと承知していましたので、『構造』だと思っていました。しかし、「組織」は、織物以外にも使うという説があり、編物組織、ループ組織、刺繍のサテンステッチ組織、フエルト組織と言うから、織物以外にも「組織」という言葉は使う(?)使える(?)のだそうです。読んでいるあなたは使いますか?「組織」って何だと思いますか?

「組織を分類するのが組織論」という日本のオリジナル定義(?)が存在すると、分類学と組織論の区別ができにくくなります。今回のように、分類項目についての説明から、組織の説明の部分のみを取り出して、組織論として評価判断することも不自然ではなくなります。しかし、原書は組織論として記述をしていませんから「抽象的でわかりにくい」になりますね。

一説によると、技法や組織を翻訳するのは、誰も可能とは思えないという持論をお持ちのようで、大切部分と感じた「コンプリメンタリ―セットの説明の組織の部分」を相補組織(仮称)の定義として紹介したように思えます。

そして、『The Primary Structures of Fabrics』の著者エモリ―の説明には当初から不充分な点がありるので、この論文にこだわる必要はないということです。
初版から50余年が過ぎ、組織論といえども同じ点にとどまっているはずがない。迷わずに前進するべきということです。

どのような論文でも、例外的な項目が残ることは時々あるようで、『The Primary Structures of Fabrics/布の主要構造』に時代遅れや過去の遺産となるほどの不充分や欠点があるとは、思えないのですが。

意見のある方は、簡潔に、冷静に、お願いします。

2018年9月19日水曜日

書籍;もようを織るのブロックデザインと A Handweaver's Pattern Book と 

早速『もようを織る」小林桂子著 を購入しました。

この本のp.394に『A Hand Weaver's Pattern Book』の紹介がありました。

『9.リピート模様を作る織機』の章にありました。しかし、欧州から米国に移住と共に伝わった手織機についての説明はありません。

「米国に受け継がれ、描き写された組織をまとめた名著である」と紹介されている『手織のパターンブック; Hand Weaver's Pattern Book』。(正しくは、A Handweaver's Pattern Book)

「代表的な組織デザインを紹介する」として、6柄が載っています。

この本のp.394~396に転載された6柄は、柄、字体、織り方図、写真も、原書そのまま。ブロック数とコメントが付け加えてあります。菱型の変化柄で4枚綜絖で織るクラックル織のMirrored Minaretsも綜絖通しの特徴から4ブロックデザインと書いてあります。

原書は最近になり再販されるほど人気があるのですが、ブロックデザインの実例として使ったようにも見えます。著者に聞いてみたいものです。

この章を読み進むと、「ドイツや北欧から受け継いだブロックデザインがメインの組織の本だったっけ?」と確かめたくなります。しかし、原書の前文には、「掲載されている多くのパターンはオリジナルであり、起源が様々なパターンもある」とあります。

「もようを織る」では、ほとんどのテーマは1ページごとにまとめてあります。そして、順番に続いていくという編集形式ですので、何を意図しているのか測りかねるところがあります。さて、関係する内容を簡単に紹介してみます。

この本の紹介の2ページ前には、「18世紀のドイツの織物業のノートにブロックデザインの下絵が残されている。オーバーショットやダマスクためのだデザインを展開した。右写真の「Wandering Vine」が、このデザイン帳にあり、同じデザインが『手織のパターンブック;Hand Weaver's Pattern Book』にある。」という内容です。

直前ページでは、ブロックデザインに当てはめる多綜絖は、変化綾(オーバーショット)、クラックル、サマー&ウインターなどの織り方で、綜絖の順通しや踏み木を間違えたことで生まれたとして、綜絖通し図があります。そして、これらの組織や織り方が、ドイツや北欧から米の手織りに受け継がれたというのが説明の概要です。

Mary M.Atwater の著書には、「オーバーショットは古いパターンの名前から、ニューイングランドのピューリタンと共にアメリカに来たと思われる」とあり、「スカンジナビアの本には 同じ織り方が載っているが、パターンは少ししかない。多くの柄はアメリカで生まれたに違いない」と記述があります。A Handweaver's Pattern Bookの前文の「多くの柄はオリジナルである」を裏付けています。

また、「ブロックのデザインは、主に二重織ために描かれ、その後、オーバーショットやクラックルなど他の織り方で使われた。」という記述もあります。「もようを織る」の挿図のパターンも、柄の濃淡の配置や陰影がないことからダマスクやオーバーショットのデザインだとするよりも、二重織用だとすると無理がありません。

これらのことから、ブロックデザインと変化綾(オーバーショット)、クラックル、サマー&ウインターは別々にアメリカに渡ったと考えるのが順当です。これらの織り方は、アメリカで発展し、のちに、欧州や国内で描かれた大きなブロックのデザインも織ったというのが、一般的な見方だと思います。

もし、現代に生きる著者が個人的に「美しい」と感じたから、ドイツに下図があるから、「代表的な」として選んだならば、不快に感じる人がいるかもしれません。

米国の歴史の一部となった手織りのパターンを集めた本なのですから、
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私の織った柄が「代表だ」と紹介されていた「ご縁?」で、以前読んだ本の内容と違うところを書いてみました。
意見のある方は、根拠を明確にして(冷静に)コメントしてください。

※この本では、「ブロックデザイン」という言葉を使っていますが、英訳付記では海外では一般的なblock patternになっています。
※欧米では4枚綜絖の織機は標準仕様です。『もようを織る』の多綜絖は、4枚、8枚です。
※明かに訂正が必要な記述がありますので、記しておきます。
    p.395 6行目 誤;織サンプルの裏と表の写真
             正;下の写真は、同じ綜絖通しで織ったハニコム(はちす織)

2017年4月28日金曜日

書籍;ちいさな織機でちいさなおしゃれこもの

手織を専門に学んだ先生方は、織りは専門家のすることと思い込んでいるためか・・・?
「手織を始めるなら、まずは、卓上機で織の基本を学び、次にろくろ式織機で、最後に天秤式・・・・」と、織機を替えて、順番に段を登っていくことが手織の学び方のような説明を見ることがあります。織機を購入して、買い替えて・・・?

基礎も中級も上級も関係なく「できたぁ~」という楽しみだけで充分なのに。


この本では、「手織は楽しい」とシンプルに思えます。たて糸の間によこ糸を上下にチクチクと入れると布になる・・・・。手織りではなく、ちょこっと手芸だと言いたい人もいるかもしれませんが、織りができるのですから、良いではないですか。

著者は、布、流木や小枝、ワイヤーなどを身近な材料を使っておしゃれ小物などをハンドメイド・クリエーター。

以前のダンボールを使った織機に続いて、今回は、かまぼこの板、空箱、100円ショップで箱、フレームを利用して、織機(織枠)を作り、織りを楽しむ提案です。

この本で作り方が紹介されている織機は、4種類。ボード、カード、ボックス、フレームを利用して、織枠を作ります。作品は、24種類。マット、プチタペストリー、カードケース、コースター、アクセサリーなどなど。

気軽にカバンに入れて持ち運べるのも楽しい。手織り対する変なこだわりもなく、ひたすら手作りを楽しんでいる様子。


で、さっそく100円ショップでフォトフレームを買って、工具箱にあった金色の釘を打って作ってみました。

釘は、1cmおきの2行にして、交互にすると0.5cm間隔。
たて糸を1本おきにひろっておく そうこう(編み棒)は、チェーンのコーヒー店のミルクをかき混ぜるステックを使いました。板状なので、たてると経糸の間隔が開いてよこ糸が通しやすいはずです。

手織りばかり考えている人(?)がつくるとこんな感じ。

でも、最も大切なことは・・・作るのが楽しい・織りあがって楽しい ですね。

2016年9月20日火曜日

書籍:誰にでもできる”織りもの” 現代の織り

なぜ今も手織りをするのか・・・という個人的な疑問から、先生方の本はできるだけ読みたいと思っています。

この本に限らず、「手織りをする「織りとは」」という書籍では、手織りの手順と技法だけでなく、織の歴史、組織、織機の種類、糸染め、糸紡ぎ、繊維の種類・・・・織りに関係するさまざまな技法と知識が満載されています。

どの本もすべてが網羅されていると思いたくなるのですが、よく見ると、とても詳しい説明と、それほどでもない部分があることに気が付きます。

表紙の写真の有機物のようなオブジェで、編者の名を記憶していました。

誰にでもできる”織りもの” 現代の織り 小名木洋一編 
平成8年3月25日発行

京都を本拠地として、芸術の学校で教鞭をとっている(いた?)著者と、7名の講師が分野別に執筆しています。

織物前史に始まり、手作りの道具、織機の種類、手織りの手順、技法、糸染め、化学染料、植物染料、原毛の洗毛から糸紡ぎ、糸紡ぎの道具、繊維の種類と歴史と幅広い内容です。

「はじめに」では、「他者との差別化が服飾の本質であり、世界に一点しかないもの、つまり自分自身で織ったり染めたりしたものを身につけることは、最高の贅沢といえるでしょう。」とありますが、服地の制作については記述がなく、「着物を織る」という章があります。

やはり、特筆すべきは、最初に登場する著者が発案し命名したと思われる板釘機、木枠機、手足機3種類と腰機の作り方と織り方。後半には、同じく著者が発案し命名したと思われる「立体織」。

この3種類の手作りの機と腰機では、それぞれ必要な材料、縦糸のための釘を板に打つ方法、枠の作り方、縦糸の張り方、綜絖、整経などが詳しく書いてあります。この説明を読めば、織り機を購入しなくても「織りもの」ができるということになります。「立体織」では、発想の元となった技法から織り方まで丁寧な説明があります。

既存の織機や道具にとらわれずに自由に発想して、織りたいものを工夫して織る/制作することが、編者の作家としての原点なのだろうと感じられます。市販の織機や手作りの織機、改造機も数多く紹介されていますが、これらも編者にとっては、求める布や効率的な生産のために織機は改造されてきたという実例にすぎないように見えてきます。

技法は主につづれ織りと絣、着物の織り方。多くの写真とともに丁寧な説明があります。一方、組織や組織図については、たった4ページ程度。

さて、さまざまな本を読むたびに気にしている「天秤式織機」の説明は、
「唐碓式ともいって、(中略)踏木の操作で各々の綜絖が単独で上がりますから、緯浮きの多い組織を織るのに便利です。ただ、上口開口なので(中略)このタイプは北欧やカナダ製などに多く、毛織物に適しています。」中国の紋織機と北米のジャックルームを合わせたような説明となっています。掲載されているイラストは、北欧のカウンターマーチ、つまり水平天秤式織機ですが、綜絖1枚に天秤1組と上下ラムだけなので、説明文の矛盾に気付くことはできません。

「むすび―なぜ織るか」では、「織ることを通じて、創造の過程で得た孤独に耐えうる力、自己に打ち克つ力によって、堅固な人格を確立してほしいのです。」とあります。やはり、これから織りをする人、学び続ける人への本です。

この本の出版から20年を経た現在。手を動かし、知恵を使い、時間をかけて丁寧にモノをつくることが、遠い昔のことのように感じられるのはどうしてでしょうか。私が齢を取ったということでしょうか。

2015年10月14日水曜日

書籍;Tartan&Tweed 手織りのためのスコットランドチェック

やっとこのレベルの手織りの本が日本でも発売された・・・・と思いました。


手織りをやり方から勉強する本・・・ではなくて、こんな綺麗な布を織ってみたいと思う本。いつか手織りをしてみたいと思う本。


タータンチェックというと、有名デパートの包装紙、福岡出身の音楽グループや大勢の大勢の女子の歌グループの衣装の印象が強烈で、元気な若者を思い浮かべてしまうのですが、千鳥格子とガンクラブチェックに始まり、ゲレンチェック~タータンへと続くこの本は、そんなイメージを一掃してくれます。


まずは、巻頭に著者のことばがあるのがいい。対向のページに、著者をよく知るガーニー氏からのことばがあるのもいい。著者が今まで手織りとどのような時間を過ごし、この本を出版することで誰に何を伝えたいのかを感じ取れます。

スコットランドの風景、ヒツジ、ツイードやタータンを着た人々、布地の写真、歴史と文化の話。豊富な写真から、チェックやタータンにある本来の魅力と伝統がもたらす力強さを改めて感じます。

日本式のような海外風のような手織りの解説本が気になることがしばしばあるのですが、以前、参考にした英国の手織り作家の本と比較しても、この本がタータンとツイードについて基本に忠実な内容だと改めて思います。

『Tartan&Tweed 手織りのためのスコットランドチェック』 明石惠子著 2015.9 誠文堂新光社

さて、普通、格子や縞の柄をデザインするとき、何もない紙に向って描きはじめます。単純なデザインになりがちで、できあがった柄の良し悪しは「個人のセンス」や「個人の頑張りかた」のような話になりがちです。
どうしたら、あんなに規則的で複雑なチェックができるのだろう・・・・。

この本の興味深い点は、チェックを加える、組み合わせる。色を変える、加える。という柄をデザインするためのやりかたが豊富な写真と共にわかりやすく説明されていることです。
オリジナルな柄はもちろん、よく見かける柄をアレンジして、自分にあうようにすることも容易にできるようになれそうです。応用すれば、スコットランドチェック以外の縞や格子をデザインするときにも役に立つと思います。

手織りのノートの作り方や織りやすい本数、糸の太さとデザインの関係についても紹介されています。手織りをするための基本的な情報・・・・色の選び方、糸の密度、手織りの工程などは本の最後にまとめてあることも見やすく、使いやすいですね。

巻末の『織の工程』での経糸の巻き方は、アメリカなどでよく見かける「オーバーキャッスル」のやりかたです。あまり日本では紹介されていないようですので、ジャックルームなど背の低い織機を持っている人は是非参考に。

余談ですが、『知っておきたい手織りの基本と本書のルール(P.018)の織』のイラストでは、経糸が白、緯糸が黒になっています。スコットランドは、やっぱり「カウンターバランス(ろくろ・滑車)式の文化圏」だったに違いないと、大爆笑。ろくろ式なのに、経糸を黒と決めている日本のやり方には、やっぱり無理があるようです。

著者は、スコットランドで、つまり英語で手織りを学んだためか、「粗筬/粗筬(写真上)」を「仮筬」としています。人により学校によりさまざまなで、「ラドル」という人や表記もありますから、そのままRaddle=ラドルでよかったのでは・・・と思います。

著者のブログは、時々拝見しています。作品を真似されることに神経を使い、確か文章は読むのも書くのもお嫌いということだったと思いましたが、なぜ、突然、このように充実した内容の書籍を出版されたのか?今後の著者の活躍に注目です。

2015年7月21日火曜日

書籍;マリン セランデルのスウェーデン織

豪華本だと思います。Malin Selander/マリン セランデルとその作品に出会うきっかけになったと思うにはあまりに贅沢な本です。彼女の本は、他にも何冊か日本で出版されているようで、スウェーデンの手織りをするほとんどの方が、「色彩の魔術師」とよばれるこの手織り作家をご存知のようです。

作品の作者である著者は、「織物のデザインをすることは、製法と材料と色との三つ巴の葛藤をともなって意図した目的にかなった布に調和させる仕事」と書いています。タペストリーやアート作品ではなく、日常生活に使える「織り布」にこだわり、伝統的な技法をふまえて生まれた魅力的な布ばかりです。

この本は、たぶん英語版の「SWEDISH SWATCH」のYELLOW、BLUE、RED、GREENの4冊で発表された本と掲載されている作品は同じだと思うのですが、読み比べていないので詳しいことはわかりません。
最初のイエローシリーズを1962年に発表し、最後のグリーンシリーズは、1978年。この仕事に20年ちかくを費やしたと書いています。

日本向けに、特別に編集して発売された本で、書籍「スウェーデン織 技法と作品」の著者が監修と翻訳をしています。

「マリン・セランデルのスウェーデン織」 マリン セランデル著、山梨幹子;監修・翻訳 婦人画報社 昭和55年11月;発行

マリン・セランデルは、巻頭で、ほんの気まぐれからスワッチ(織見本)の付けることを思いついたと書いています。印刷されたページに布を貼り付けたら、ニュアンスが伝わる・・・・。

掲載されている写真は、原寸より大きくしたとありますが、実際の布地が貼られているような印象さえあります。また、色は大切な要素という考えから、シリーズは色相別に4つにわけられ、それぞれ19~21点程。合計81点。ほとんどが4枚綜絖以内の作品で、6枚綜絖以上は、ダブル織やドレルなどの技法を用いた20点ほどです。この日本語版には、各カラーのグループから2点づつ選んだ実際の布地が合計8枚ついています。

このほか、原書では、作者が伏せていた作品の題名が記されている・・・・花、鳥、女性の名前、音楽とスウェーデンの自然や空気感などが感じられるような配慮がされています。各作品には、用途、織法、材料、おさ目、打ち込み、綜絖通しと踏み木順と簡単な説明がついています。訳者によるMEMOもあり、作品の理解や使い方などの発想の手助けとなります。織機の使い方や経糸の掛け方などの初歩的、基本的な説明はありません。

スウェーデンで手織の勉強をし、生活や文化などへの理解もある優れた監修者であり訳者の存在があって、日本でスウェーデン織と、作家マリン セランデルの多くのファンが生まれたと感じる1冊です。

2015年7月14日火曜日

書籍;スウェーデン織 技法と作品

1970年の半ば過ぎ、六本木の交差点から麻布十番へ通じる坂を下った右手にスウェーデン・センターがありました。この中にあったショップで『へムスロイド』ということばを初めて知りました。

この本によると、『へムスロイド』とは、「家庭の手工芸、すなわち、ホーム・ハンディクラフトを意味するスウェーデン語」と説明されています。

日本では、女が家で家族の着物を織った時代はとっくにおわり、手織りは職人かタペストリーやオブジェを創作する芸術家のものになっていて、普通の生活とはかけ離れた行為のような印象さえ生まれ始めていたように思います。

スウェーデンで織物を学んだ著者は、スウェーデンの手織の技法や色彩の美しさだけでなく、手織した布を家庭で使うということの大切さを熟知していたようです。作家というよりも、伝統を受け継いできたスウェーデンの家庭での手工芸の紹介者としての魅力を感じます。
活動は、日本におけるスウェーデン織の基楚となったように思えます。

この本では、床置きの大型の手織り機を使用た作品が主ですが、著者にとっては、大型機をよる織もフレミッシュ織や紐織も・・・・・・織というよりも、『ヘムスロイド』、つまり、家庭の手工芸のひとつにすぎないようです。

スウェーデン織 技法と作品 昭和54年5月初版
著;山梨幹子 発行;婦人画報社

まず、スウェーデンに伝わる基本織法から代表的な28種を選び、「ローゼンゴン」「ハーフドレル」「ムンテカルベ」など聞いたことのある組織の由来や特徴が写真とともに説明されています。

次の作品・パターン集では、パーテーションやカーテン、クッション、テーブルクロス、服地など107点。作品の写真と作り方や使用糸、組織図などがあります。

手織の計画とプロセスも紹介されています。使われている道具や織機は、もちろんすべて北欧のものです。使われている織機は、カウンターバランスで、ニッケピン(ホース/天秤)を吊り下げるスタイル。4枚綜絖の織機ですから、極端に複雑な組織はありません。素材の良さを感じ、色彩の美しさを楽しめる作品ばかりです。

初版から約45年が過ぎていますので、たった4点ほどの洋服となった作品見て、古くさいと感じる方もいるようですが、伝統に根ざした技法と手織地としての魅力は色あせることはないように思われます。

技法と作品の写真にばかり目を奪われてしまいますが、スウェーデンの暮らしと織物についても3パージほどの紹介文があります。前書きには、「スウェーデンの織物は、人々の生活の中に生き、歴史の中に、風土の中に生きてきたものです。(中略)わたしたちがスウェーデンの織物から学び得る究極のものは、そのパターンや技法だけにとどまらず、実生活の中に生き、豊かにする織物は何かということです。」とあります。

家族や家庭が問い直される今・・・・へムスロイドに何かを見つけられるような気がします。

2015年6月23日火曜日

書籍;ホームスパンテクニック

「手織をしています。」「糸もつむいでいます。」と一言くわえると、本格的に手織をしているという評価になるようです。

これは、伝統的な「紬ぎ」のイメージと「ホームスパン」がよく知られているからでしょうか?「いつかは、本格的に糸つむぎから・・・」と、思っていた時期もありました。

2-3冊購入した海外の「Spining/紡ぎ」の本では、「紡いで→編む」。なるほど、「紡いだ糸は、織る」というのは、思い込みだったようで、本格的な手織りをめざすなら「紡ぎから・・」と決めつけることもなさそうと思い直し、手織に勤しむことにしました。

ですから、復刻版が昨年(2014年7月)販売されなければ、この本を手に取ることも、開くことも、なかっただろうと思います。

「ホームスパンテクニック」 森 由美子著 2002年初版 発行;染織と生活者
復刻版 発行;株式会社復刻ドットコム 一部改定


著者は、学生時代を過ごした京都で織物に興味をもち、その土地に根ざした織物をと思っていたところに、生まれ育った岩手のホームスパンと出会ったのが学び始めたきっかけだと書いています。

総153ページで、手に取ると少し分厚く、盛りだくさんの印象がありますが、この本には、手織の本にありがちな・・・今昔の知識を書き連ねたり、工芸作家にありがちな自分の作品や制作過程へのこだわりの文章のようなものはありません。

紡ぎと手織りをするために、学び、自分の目と手で確かめ納得したこと。そして、必要なリストと資料です。
「酸性媒染染料(クロム)染料については削除する。」手織りに使う「基本的な組織は本に紹介されていているので、読み取れれば良い。」などからも、著者自身が慎重に吟味し、現在の時に即した内容に絞り込まれていることが感じられます。

「ホームスパンテクニック」という題名から、羊毛と糸紡ぎに重点がおかれている本という印象を持ちましたが、「材料となる羊毛と染」、「紡ぎ」と「織り」は、ほぼ1/3づつ同量。どれもないがしろにできないという著者からメッセージが込められているようにも感じられます。

毛織は、滑車式やろくろ式織機で織るのが適していると思っていましたが、やはり、著者はろくろ式の和機を主に使用しているようで、この織機での経糸の準備の仕方や使い方、組織図が説明されています。床上での縦巻きや織り初めにススキの軸をいれるなど、海外からもたらされたホームスパンが日本の手織の技法と融和した様子がうかがえます。

ホームスパンはベーシックな組織使いが多いためか、組織図の踏み木順の読み方などは若干疑問な点もありますが、一般的に使われている織機の種類と特色の説明もあり、手織りをするのに、必要な基本的な説明も揃っています。

「基本知識」と「経験から得た安定感のある技法」がバランスよく丁寧に説明されていることが、わかりやすく、頼れる本として、評価されているのだろうと思います。復刻が歓迎されているのは、間違いなさそうです。

2015年4月8日水曜日

日本の手染と手織の基本;図解 染織技術辞典 

海外の書籍を参考にして、海外の織機を使って、感想をブログに書いています。
悩みは、日本語にしたとき、どの単語になるのか・・・。どのような表現をすればいいのか・・・。たかが、個人のブログなのですが。

洋書を直訳したと思われる「ろくろは下口開口」「粗筬で仮筬通し」など、実際の動作、言葉の意味と使い方が違うのではないかと「?」をつけたくなる表現をよく見かけます。外国語力とは別の問題があるようで・・・・。

海外では、あまり使われない「ろくろ式手織機」。特に米国の書籍では多少説明が曖昧でも、影響もなく、あまり問題にもならないだろうという状況さえわかれば・・・・おかしい場合もありえると気付くはず。

日本では、ろくろが主流。ろくろ機とろくろ機を使う人、ろくろ機で織られる布についての知識があふれている場所。海外の手織りを学び、海外の織機を使っているから、日本の手織は関係ないと思うのは、あまりにもったいない。

では早速、ろくろ式を基本にして国際的に・・・ということなのでしょうか。日本名に洋書のイラストや写真の下にアルファベットで書かれた単語を書き写したのでは? 英語にいきなり伝統的な言いかたや専門用語をあてはめたのでは?と疑いたくなることもしばしば。

文化も考えかたも違うのですから、日本と海外の両方を一度に説明するのは、しょせん無理。生まれる矛盾は、どうするつもりなのでしょう。まして、この国でプロとして、生業として、著作や指導をしているのなら、責任があるはず。

前置きばかり長くなりましたが、日本の手織の基礎と基本をしっかりと確認できる書籍。以前から、海外の織をしていても参考になるとお薦めをいただいてました。

図説 染織技術辞典 監修;柚木沙弥郎 共著;田中清香 土肥悦子 1990年4月 第1版発行

女子美術大学で指導、研究をしてきた二人の著者が染織の技術についての基礎知識を整理しまとめたものと前書きにあります。

その名の通り辞典ですから、必要な用語、用具の名前と説明、使用法、技法の特色や作業工程、伝統的な染織品の技法的特色や産地など、項目も多く、内容も充実しています。

繊維や糸などの共通する編を除くと、染については、158ページ、織については、117ページ。ほぼ半々の構成です。手元に置きやすい辞書サイズともいえるA5版。

この本の魅力的は、立ち位置ともいうべき点がしっかりとしていること。基本におかれているのは、個人の手仕事であり、日本の染織です。そして、真摯で丁寧な記述。

たとえば、高機の構造の説明では、一般的なろくろ型式を例にするとあり、他機種は部分的な説明と明記されています。ベルト織機を竪機に、ろくろ機をカウンターバランスとは別分類とするなど欧米の解釈とは異なりますが、ろくろ機が主流である日本の考え方が貫かれていると感じられます。
また、海外品の名前はカタカナ表示のみです。部品や用具についても、いたずらに海外名の併記や英語表示を入れていません。日本の手織のための辞典というスタンスが徹底されています。

留学した方や専門学校やお教室で海外の織機を使い手織を学んだ方はかなりの数ではないかと思われます。この染織技術辞典のような「海外版」が出版され、共通の知識や用語の矛盾がなくなると・・・・手織を楽しむ方がふえるのではと思います。

追;P.4-10 ろくろ式高機の開口側面(中口開口) 
P.4-24 あら筬 「織り密度に見合った本数の経糸を掛け入れて・・・」 筬と違い上部の開いている「あら筬」には「通す」という表現より、やはり「入れる」が適切。
  

2015年2月13日金曜日

タータンチェックの本と思い出と

繁華街として有名な東京の六本木の溜池方面へのバス停の前に、タータンチェックの店がありました。1970年始めごろだったと思います。
店内には、上品に半折にして巻かれたタータンの反物が中央と壁一面にずらりと並んでいて、その上の棚には、バグパイプとかスコットランドらしい調度品があったようなのですが、小学生のわたしには背伸びをしても見えませんでした。

その棚においてあった本。 「ROBERT BAIN'S  CLANS &TARTAN OF SCOTLAND 日本語版」 下写真;右
昭和50年出版 定価弐千六百圓 発売元 チェック商会
オリジナルの英語版は、中古品で販売されていますが、表紙だけでは見分けがむつかしいので要注意。

カラー印刷が少ない時代に、掲載されているタータン133柄の全ての図柄に色彩がついています。当時の言葉で・・・オールカラー。懐かしい言葉!これだけで価値があった時代ですから、ページをめくると次々と現れる鮮やかなチェック柄は驚きでした。
柄の名前は日本語と英語で表示され、紋章やモットーなど一族の紹介とタータンの柄がカラーであります。歴史や正式にタータンを着た姿のイラストも載っています。

この本は、「タータンチェックの文化史」奥田実紀著によると、1975年に日本語で出た初めてのタータンの専門書。チェック商会の会長がタータンの専門書が日本で出ていないことを残念に思い、自ら自費出版したという話です。この本のおかげで、より多くの人々にタータンが理解されるようになったとあります。

そう言えば、一時期大流行した「キルトスタイルのスカート」をはく女性は見かけなくなりました。
「大事にするなら」という約束で買ってもらった?ようですが、表紙は申し訳ないような状態。
いくら歴史的な価値がある本でも、デザインを考えならばと比較的最近入手したのが、大判の本。
「James Grant SCOTTISH TARTANS in Full Color」 上写真;左 

73柄が25.5×17.5cmのサイズでのっています。テキスタイルデザイナーなども使うパターン集のようですので、柄のレピートや配色の明度彩度の特徴も捉えやすく、アレンジもしやすいと思われます。細い線が数多く使われているタータンもあります。縞の太さを確実にみることができます。


パターン集を見ているとタータンは魅力たっぷりなのですが、街で見かけるタータンは、極端にヤングファッションだったり、チープな服のアクセントに使われている場合も少なくないようです。
真正面から取り組むと、私の場合は、メンズの印象が強くなるようで・・・・・優しい年配の印象にアレンジにするには、どうしたら良いのやら。今までどおり、見て楽しむのがいいのかも。

2015年2月6日金曜日

書籍;手織機の研究

先日の「天秤式をたどってみると」で参考にした本です。が、内容は「天秤式織機について」という狭い範囲の内容ではありません。参考にさせていただいたのは、本当に少し・・・先史時代から始まる研究です。

 「図説 手織機の研究」 前田亮著 平成4年5月発行 京都書院

今は廃刊や休刊になってしまった染織雑誌にも多岐にわたる内容を記述されていたようですので、長年染織に携わっている方ならばよくご存知なのだろうと思います。

『古代に、今見てもすごい織物が織られている。(中略)棒だけみたいな簡単な仕掛けで織れた織物が、どうして今の技術で簡単にできないのであろうか。なにかおかしい。』『機織りの技術の古代と現代の関係は、現代技術の直面している問題を解明するために役立つかもしれない。機織りがいつ頃どのように創り出されて、古代にどのようであったか、調べることにした。』とあります。自ら機械屋と称する著者の考え方やモノの見かたは、論理的で明快です。
手織を楽しむ人は自分の織機の使い方がわかればよいのだろうと思います。そして、何よりも気になるのは、目の前の縦糸に緯糸が入って布に・・・・。私も、その気になってばかりいる一人なのですが。
でも、今、海外からは趣味で使われているというさまざまな織機や書籍が入ってくるし、アジアの織や織機を見る機会も増えてきた・・・。
私の持っている手織の本では、織機の分類と今使われている一般的な手織り機の構造(時として、部分の名称)と使い勝手の感想のような説明などがあるだけ。手織りを楽しむのに、そこまでの知識は必要ないということだと思いますが、大昔から生活に必要不可欠な道具として使われ、改良され発達したことは、現在の国内や海外のような手織機や手織りにも影響しているはず・・・・漠然と疑問に感じていることに説明をしてくれるようです。

・日本は、ほとんどがろくろ式織機なのに、海外の織機はなぜ滑車や天秤があるのか?
・布を作るのに、編物と織物があり、なぜ織だけが整経や筬通しなど手間がかかる機械化--手織機として発達したのか?
・本当に織機は世界の各地で発生し、発達したのか?
・東南アジア~日本までいろいろな織機がいろいろあるけど、関連性などで分類整理はできず、すべて原始機とかになるのか?
・最古の織のやり方から今の手織機へとどのように発達したのか?

人類最初の機械の一つですから、人類学、言語学、民俗学、考古学・・・さまざまな分野を横断して話は進みます。織は、生活に欠かすことのできない『衣食住』の衣にあたり、農耕と共に農閑期の仕事として広がったという説を色々な資料をもとに裏付け、展開しています。

本や展示会などでは、現存する織機を列記して構造で分類して説明・・・・このやり方ですと、「いろいろあっておもしろい」と思うだけ。この本は、通常は「技術史」の分野になるようですが、時系列的に分類し研究されたと受け止めて読み進むことができます。織機の場合、次へ次へと発展し、古くなったすべてが衰退して消滅しているわけではありません。現在でも民族衣装などを織るために、目立った改良や進化せずに、使われ続けているケースを実際に見ることができますから、どの程度古くから伝わっているのかと新しいかは分類軸として欠かせないことになります。

原始から現在までの織機が同時に存在している状況を体系づけて整理するには、この本のように時代と地域を重ねあわせて推移を見るのが最もわかりやすく、現在の手織機と織物へと自然な流れとしてつながってきます。

手織りの楽しみは、地球上のいたるところに存在する織と、先史時代からの膨大な時間のほんの片隅に・・・・・ちょっとだけですが、加わることができる。そんな気がします。

2014年12月5日金曜日

手織の初級でであった洋書

「むつかしいことや理屈はいらないから、やり方だけ教えて・・・・」という方がいます。合理的なのかもしれませんが、そんな方にはお勧めできない本ばかり。

最もおもしろかったのは、既に理解していて読む必要がないと思っていた欧米の「手織の初級」や「組織の基本」についての本。料理に例えれば、和食料理の基礎を習って終了しても、満足なフランス料理は作れない・・・・手織も同じでした。

ほとんどが、内容に納得した本に紹介が書かれていたり、巻末の参考文献から興味をもった本。ですから、織物の常識や基本に忠実な本ばかりになりました。

当初は、海外の手織り・・・ということで4冊ほど選び、平織から順番に気に入った作品を織りましょうと思っていましたが、綾織を過ぎたあたりから、北欧と北米の違い、つまり、考え方というよりも文化の違いなのだろうと思いますが・・・はっきりとしてきました。そして、載っている作品を 順番に織れば習得完了 というような単純な事ではないと気付きました。ですので、まずは、アメリカ関連に絞って20余冊。

技法やパターン、作品の作り方など内容はさまざまですが、必ず著者の前書きがありました。どのような人に向けて・・・なぜこの本を出版したのか・・・など。
本文でも「これらの組織/作品を、このような理由で、こう呼ぶ/選んだ」という定義と理由がはっきりと書かれています。ですので、自分の作品と制作のしかたと一般知識と技法と・・・あれもこれもと参考にした本の一部を写して組み入れたような内容や説明は見あたりません。

大学で教えデザイナーとしても活躍している方々や編集関係の方の著作が多く、織り方だけでなく言葉や論理面も整理され、丁寧に順を追って説明されています。

伝統として手織りが続いている国では、熟練者や親から直接に子供や孫へ伝えていきますから、定義や分類をして教えたり、学んだりするのは馴染まないのかもしれません。「風通織」といえば「風通織」、「昼夜織」と言われれば「昼夜織」がムラなくきれいに織れる技術を習うことが大切なことになります。もしかすると、織物の名前さえ必要ない・・・・。

とはいえ、昔からのやり方では・・・人それぞれだから・・・という説明に満足できず、もう少し論理的に順序立てて織機を操って織ってみたいと思うかたには、アメリカの手織の書籍は面白いと思います。それと、テキスタイルデザイナーをめざす人。

アメリカで手織りを復活させたといわれる人の著書には、布を織ることができても、組織とタイアップを理解していない人は、『Weaver/手織りをする人』とは呼ばない・・・とあります。やはり、文化が違うということなのでしょう。

2014年8月19日火曜日

書籍;色の歴史手帖

平成五年の「東大寺盧舎那大仏発願慶賛法要」に多色夾纈を再現したニュースをきっかけに、この本を読まれた方も少なくないと思います。著者は、京都で古代染を生業とするまさに「その方」です。

『色の歴史手帖』 日本の伝統色十二カ月 付-伝統色百色辞典 王朝・襲の色目 
著者;吉岡幸雄  第一版;平成七年一二月

あとがきには、 
「この仕事は、冬は紅花、春から夏にかけては藍、秋は刈安や茜というように、日本の四季の移り変わりとともに、歳時記のように一年を巡っている。」とあり、古都の行事風物を一冊にまとめてみないかというお勧めがあり、筆をとったと書かれています。

一月の伏見稲荷大社の鳥居の「朱」から始まり、色の持つ意味。染に使う草や実のこと。染めのこと。伝わってきた中国本土やシルクロード。縄文から平安、江戸とその時代時代の染めや色、衣のことなど。

「日本伝統色百色の再現にあたって」では、
「日本人は、詫、寂と言った言葉で表現されるようなくすんだ色ではなく、いつの時代も透き通った色鮮やかなものを欲していたことがおわかりいただけると思う」とあります。


目に見える色鮮やかなものは、木々の葉、花や実しかなかった時代。この自然の色ををそのままに、衣に映したいという思いが、「染める」ということのはじまりで、その鮮やかな色を映した布は人々には「驚き」であり、「畏敬の念」さえ感じさせたのではないか・・・という思いがめぐります。


十二月 春日のおん祭りでは、「神にささげる純白無垢な布は・・・(中略)・・・。人間は華やかな色を染める前に白を発見しなければならなかったのである。」と。

染を生業とする方は、白の大切さを存分にご承知なのでした。


最近のビジネスマンの黒いスーツ姿を見るたびに、日本の四季の移り変わる色を目にしたことがあるのか・・・と問われているように感じます。



2014年8月12日火曜日

書籍;カラーコーディネーター入門 色彩

確か・・・カラーコーディネーターの資格認定制度が始まった時にいただいた本です。

色彩に関する本は、科学や物理の学術書からアートやファッション、日常の占い?まで、本当にさまざまで頭の中をどのように整理すればよいのかと途惑うことが、しばしば。

この本は、「入門」とあるように、資格試験用のテキストだったように記憶しています。読む人を楽しませるような話題や趣向は、もちろん、ありませんので、「テキスト」と思うべきなのかもしれません。

著者;大井義雄、川崎秀昭 監修;財団法人日本色彩研究所  初版;平成8年5月


内容は、「なぜ色が見えるか」に始まり、マンセルや日本色研配色体系(PCCS)、オストワルトなどいろいろなシステムの説明、混合、照明、調和論、プランニング、年表、色彩用語集など。

NCS(Natural Color System) スウエーデン工業規格(SIS)についてもこの本にありました。

監修が財団法人日本色彩研究所ですので、PCCS、トーン配色や調和については、比較的詳しく説明されています。また、色彩からの連想やイメージする語、色が象徴する意味性などの調査結果は、あまり目にする機会がないので興味深いです。外出時の洋服を選ぶときなどにも役立ちそうです。

色彩調査や記録のための資料用具の紹介。色名118色が色票、値、解説つきで載っています。

カラーコーディネーターの資格取得をめざす方の入門書ですから、基本事項が集約されています。受験勉強用だけではなく、基本を確認したくなった時やちょっと調べたくなった時に、役立つ本として使えます。

2014年7月26日土曜日

書籍;色彩・配色・混色 美しい配色と混色のテクニックをマスターする

アメリカで300万部以上を売上げたデッサンの指導書「脳の右側で描け」の著者による色彩の入門書の初訳です。

「色彩・配色・混色」 美しい配色と混色のテクニックをマスターする
著者;ベティー・エドワーズ  訳者;高橋早苗

「一般の人にもわかりやすいように書かれた指導書」と紹介にあると、小中学校で習ったような基本的な話と色の名前、お勧めの組合わせ例の説明が書かれているだけでは?と疑いたくなるのですが、アメリカならでは・・・といいたくなるような実践的な解説と指導の本です。

まず、新旧の色彩論と専門用語について学びます。この本では、色彩用語はあくまで色彩を表現する基本の言語として学びます。

絵具を使った基礎的な実習をすることで言語の意味することを 目で 理解します。そして、難易度の高いj実習へと順に進めることで、色彩の基本構造、色彩の見方と組み合わせ方が身につく構成になっています。最後に、絵画での色の使い方と描き方を具体例として説明しています。

プロを対象にした色彩の本のように、さまざまな色彩論や法則、調和論などのむつかしい体系的な解説はありません。

配色の時のヒントとなる「色彩のもつ意味」、「自然界の色彩の美しさ」についても紹介されてます。絵を描くときだけでなく、洋服やインテリアなど身近な色彩を選ぶ時や組合わせる時、美しさを感じる時の支えとして「色彩の基本知識」として役立ててほしいと述べています。

著者によると、なにかとすぐさま『色彩のセンスがない』と考えがちですが、『色の見方、上手な色の組みあわせ方をまだ知らない』と考えたほうが正しい。生まれつきすぐれた色彩センスをもっている人もいますが、色彩を自在に操る能力は、学習することで身につく1つのテクニックなのだと。


織物の糸色を選ぶのは、これとは別のコツがあるように感じる場合もあるのですが、りんごは赤、レモンは黄色・・・と実際の色彩をそのままに見ないで、頭の中で決めていることが、確かに、あります。これでは、美しい色彩や配色にであえるはずがありません。

色彩の基本構造―明度、色相、彩度などの実習を通じて、音楽家が単音や協和音を聞き分けられるように、色を多少でも確実に見分けることができるようになれば、色彩の数も増え、美しい配色を記憶し再現できるようになるのでは・・・と、少し自分に期待できそうな気になります。

2014年3月25日火曜日

書籍;初級技法講座 「織物」用具と使い方

私が、手織を始めた30年前に、『カウンターマーチ』という日本語を始めて目にしたのは、この本だったように思います。

初版 基礎技法講座7 「織物と用具の使い方」 美術出版社 1980年版
著者は、WEB TEXTILE 水町真砂子氏とグループで活躍していた北欧や関東にある美術系大学や学校を卒業された6名。当時は海外の織機を使って作品制作をする人のための基本的な事項が書かれた初めての手引書と聞きました。

現在は、改訂刷新版 初級技法講座 「『織』」用具と使い方」 1996年版 水町真砂子 著
織の変遷、基本組織が詳しくなり、ファイバーアートや海外の組織の布のカラー写真が追加されています。

著者は、Stockholm stadmissin vavskola/ストックホルム・スタードミネホーネン・ベ-ブスコーラ卒とあり、大型の織機の写真からも 「北欧の織機と織の基礎」 の入門書と思い込んでいました。

今回、よく見ると巻末の参考文献には、米国書籍ばかり約40冊がありました。
実は、アメリカの織にお詳しいので、スウェーデン語のコントラマルシ/ Kontra marshではなく、カウンターマーチという言葉を使われたと思われます。各ページのタイトルや部品名も、英語表示が添えてあります。


内容は、織の変遷、基本組織と組織図、織機の組み立て方、国内外各社の織機の紹介といろいろな道具、実際の平織ブランケットの制作を通しての手順の説明、手紡ぎ、素材・・・基礎の知識とやり方が簡潔に書かれています。

脚踏み式の織機の種類では、現在のアメリカの呼び方とは異なり、ろくろ機がローラー式、下ジャック式とあるのは、綜絖の下にジャッキがあるという意味からジャックルームのことと思われます。

北欧と米国の双方の手織り基礎を取り入れた著者グループによる考え方と仕事のしやすさから生まれた説明と手順と思われます。

組織図は、綜絖通しとタイアップ図を図の下に書き、タイアップ図を「白と黒く塗りつぶす」北欧式です。下ジャック式のタイアップはアメリカ式ではなく、北欧式に置き換えて、白と黒を反転して説明してあります。綜絖は番号を付け、手前(下)から1234・・とするアメリカ式です。

カウンターマーチでは、ろくろ機を下口開口としてタイアップが説明されており、下招木を手前にすることからも当時のアメリカ式が取り入れられたようです。

経糸の準備の仕方は、スウェーデンでは入門機ともいえるカウンターバランスを使って書かれています。カウンターマーチの場合は、初めから順を追って書かれていないので、わかりにくいのですが、ノルウェーやアメリカのやり方とは異なるようです。


説明の写真では、経糸を巻く時は2-3人で引いています。また、この本のやり方では、バックビーム近くで経糸を通し終わった筬や綜絖を一人で動かせるのかなぁ・・・・等々。やはり、大型のカウンターマーチ機は、アシスタントのいるアトリエや工房での作品制作に使う織機で、一人では使えないでしょうとあきらめたことを思い出しました。

1980年の出版ですので、その後、各社の織機ややり方などは改良されています。