ラベル 布に関係する一般書 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 布に関係する一般書 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年10月30日火曜日

タテ2重組織(相補組織;仮称)から1本抜くと

「2本が対になり補い合っている柄布がある。1本が抜けると布は崩れてしまう。」ちょっと文学的な表現で、心惹かれるのですが、現実は。
でも、もしかすると、勘違い?と思い、サンプルを作って試しました。前回の続きです。


『もようを織る』には、相補組織は、
「2本中の1本を抜くと布として組織しない。」(p.258)
とあります。単様、複様の両方に通用するのでしょうか?

まずは、相補組織・複様です。


上から順番に 写真;① 
まずは、この本(p.259)にあるサンダー方式のサンプルをつくりました。著者が「相補組織・複様」と仮称をつけた組織です。
タテ糸は、こげ茶色と薄茶色。薄茶(ベージュ)が、ちょっと見えにくくて、すみません。ヨコ糸は、濃ピンク色です。

『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』のコンプリメンタリ―セットの分類(p.150)の最初にある写真の織サンプルと同じ組織です。

日本の手織り教室などでは、「昼夜織り」と呼ばれている組織です。「サマー&ウインター」などと素敵な名前で紹介している先生もいます。(注;米国では違う組織の名前です。)


写真;②
タテ糸の隣り合うこげ茶色と薄茶色、この2本が、対になり役割を分担していますから、タテのこげ茶色を抜いていきます。

写真;③
すると、ヨコ糸の濃ピンク色が1本おきに外れてしまいます。

写真;④
粗い平織が残りました。


薄茶のタテ糸を抜いても、平織、つまり、平組織が残りました。「組織している」ことになると思うのですが、「組織しない」は何か他の意味があるのでしょうか?

平織がこの織物の原組織で、残った平織と、抜いたタテ糸&外れたヨコ糸 で二重組織(二層構造)と思うのですが、いかがでしょうか。


『もようを織る」には、『布の主要構造』のコンプリメンタリ―セット(p.152)の「fig.252-255 は、タテ糸を抜いても組織が残るので、相補組織ではない」と説明があります。
この fig.252-255 の番号が付いた4枚の写真の織サンプルは、もちろん二層構造で、3/1と5飛びの2種類の綾組織(完全組織が 3×3以上)ですから、タテ糸の対になった2本中の1本を抜いても組織は残ることになります。


次は、相補組織・単様です。
p.258のサンデー方式のサンプルを組織図に書き直しました。南米アンデスに多い組織だそうです。(レピート 16本×8段;ついでに、綜絖通し、踏み木とタイアップ付)

1本を抜いた組織図を作成すると、綾組織を引き返した(山道通し)ダイヤ柄の組織が残ります。どちらを抜いても、ダイヤ柄の布として組織が残りました。原組織は綾組織でした。
右の組織は、タテ糸を混ませて織れば、はっきりとした2重のダイヤ柄になると思うのですが、織った布の写真はありません。普通の密度では、不安定そうな組織ですね。非対称/アンシンメトリーも気になります。


相補組織(仮称)の概念に、組織図で確認した個人的な解釈も加えて、 
本来は経糸は1本(1色)の一層の組織だが、色糸を使って柄を織りだすためには、この1本に 柄になる糸とならない糸 というような 役割 が生まれてくる。このため、この1本のタテ糸が便宜上、違う色が1本づつで計2本で対になって、本来1本で担う役割を分担する。
ということのようですから、一層の織物の例外組織かな?(ヨコ糸が対になる場合もある) でも、残った組織をみると二層の織物のような気もするのですが・・。

『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』のコンプリメンタリ―セットに分類した布は、タテかヨコどちらかだけが二層またはそれ以上で、組織の限定はありませんから、異なりますね。まあ、この組織が関係する部分だけ比較しても意味があるとは思えませんが。

相補組織の発想はおもしろいのです。が、コンプリメンタリ―セットのセットは組織論とするとウィーブと同じで、海外では、コンプリメンタリーウィーブと言葉は普通に使うのだそうで、コンプリメンタリ―ウィーブを相補組織と仮称して、説明の内容が違うとしても、代表する組織は同じで、分類した組織は違っても、50年も過ぎれば、概念も違ってくるということで、それでも評価に値する業績なので、いつもでもわからないと思っていないで先に進むことが・・・・・・。
これから海外をめざすテキスタイルデザイン関係の学生さんは、大変です。

2018年10月24日水曜日

組が本になって相補組織(仮称)に

聞いたことがない組織や織り方の名前は気になります。
「日本の織物用語として概念がない相補組織」という紹介文に興味を感じて購入した書籍『もようを織る』

「相補組織(仮称)」があるという『The Primary Structures of  Fabrics/布の主要構造』を前回まで見てきました。https://thistleweave.blogspot.com/2018/10/the-primary-structures-of-fabrics.html

相補組織は、上記のレポートでは「2組かそれ以上」という織物の分類でタテやヨコのどちらかだけが多層になるという「コンプリメンタリ―セット(分類項目名)」にありました。説明の横にあるサンプル写真は「昼夜織」。何やらむつかしく感じるのは、和訳時の単なる言葉のニュアンスの違いかと思ったのですが。

・・・・・相補組織・・・・・complementary sets・・・・・相補組織・・・・・complementary sets・・・・・相補組織・・・・・

『もようを織る』p.258には、相補組織(仮称)のきっかけになったと思われる「エモリ―の定義」が載っています。
以上の要素が同方向にあり、それらの糸は布の構造上同等である。」

著者によると、「経糸や緯糸の2以上を1単位として、補い合う組織があることを定義づけたはじめての組織論だが、抽象的な説明で、複式(色糸による紋織り組織)から説明されているため、単式(原組織;平・綾・繻子組織)との違いが理解しにくい。」のだそうです。

よく見ると、説明し直した文では、定義の「2組以上の要素」が「2本以上を1単位」に変わっています。組を本に訳し間違えたか?「2本以上の糸で1組⇒1単位」と思ったのか?でも、定義は「2組以上の」と1組ではなくと2組から説明が始まっていますが・・・。自分の考えに合うように意訳したのか?

相補組織の章の始め(P.254)にも、ほぼ同じ内容で「アイリーンエモリ―がその著書『布の主要構造』で、2以上の経糸が一筋や2以上の緯糸が一越を担う組織について、それらが互いに補い合うという意味でコンプリメンタルウィーブ:相補組織として…(後略)」とあります。

著者小林桂子氏は、「古代からの道具を使わない もじり技法 でも同じように2の色糸のうちのどちらかを表に出す模様作りを経験しているため、(経験した人なら誰もが)自然に考えつく(組織?定義?)」と記述しています。
エモリ―の定義の「2組以上の要素」が変わった理由は、「手を動かしてやってみればわかる」という持論(日本では一般的?)が影響しているようにも思えるのですが。


組織論という記述も気になりますので、原文を見ることにします。記してあるページ数から、原書を確認すると、コンプリメンタリ―セット; complementary sets の文頭に、「エモリ―の定義」と同じ原文がありました。下のWhenから始まるアンダーライン部です。

p.150-154.fig244-257 When two or more sets of elements have the same direction in the fabric and are co-equal in the fabric structurethey can be described as being complementary to each other. The structure itself is compound and can be either double-faced or two-faced.

訳してみたのですが、
  
構成する要素は同じ方向に2組かそれ以上あり、(それは布のタテまたはヨコ方向で、2層またはそれ以上の層になり)、布の裏表の組織は同じになるとき、裏と表が具合よくバランスが取れている状態(補い合う組織?)になっている布と評価できる。組織自体は組み合わさり、両面使いの布地やリバーシブル地になる。

前回まで見てきたように、「要素」とは、糸とか紐状のもの。「組」とは、織物でタテまたはヨコになる糸などの長さと順番を揃えて並べた状態のことでした。「同じ方向に2組以上」は「交差しないで2組…」ということですから、多層の織物の説明だとわかります。

さて、文頭のアンダーライン部の「エモリ―の定義」を組織論としてを読むと(文章の後半部はわかりにくくなるので、いらないのだそうです)・・・なるほど、著者が指摘しているように抽象的ですね。「補い合って」と訳してみても、著者の説明の重要な要点である「2本が1本のように組織する、とか、対になる、一筋や一越を担う」という記述はみつかりません。
やはり、布の分類を目的としたレポートのコンプリメンタリ―セットに分類した布の特徴についての説明文としか、個人的な意見ですが、思えないのですが。

コンプリメンタリ―で思いつくのは、色彩学の「補色」と数学の「補角」。「相互に補い合う云々」は、学術用語のような先入観があります。でも、英英辞典には、「異なるけれど一緒になにかすると役立つ、うまくいく」「異なる技の魅力的な組み合わせ」とか、軽い感じの説明もあります。このレポートではどのような感じなのか…関係したネイティブさんに訊いてみたいですね。


ミルトン サンデー氏(Milton Sonday)が著者小林氏のために 相補組織の概念 を説明した文章も載っています。

エモリ―の定義では「2組以上;sets」だった部分は変更されて「2本以上;threads」とはっきりと記されています。見つからなかった「一緒になり1本のように」も書き加えてあり、著者が自らの経験から自然に思いつくとして、訳文にした内容に合致しています。
そして、相補組織は、「一対である2本の糸が役割を分担している」ので、「2本中の1本を抜くと布として組織しない。」と書き加えてあります。

前回、作成した「昼夜織」の組織図は、この本のサンダー方式(細い紙を使って織った見本)の相補組織・経複様と同じでした。
この組織図では、隣り合うタテ糸の黒と青が一対になり役割を分担していることに、なります。綜絖の1番と2番で一対、3番と4番で一対です。

布として組織しないとありますが、黒を1本づつ抜いていくと・・・平織り、つまり、平組織が残ります。が。

※意見やコメントのある方は、冷静に、簡潔に、お願いします。

2018年10月16日火曜日

『The Primary Structures of Fabrics』を読み解く 2

前回からの続きで、今回は、多層の織です。この本を取り上げるきっかけになった「相補組織(仮称)」。書籍『もようを織る』小林桂子著によると「日本の織物用語として、概念がない組織」が登場します。

b.コンパウンドウィーブ;Compound weaves は、「要素の組合せ」の分岐まで戻ると、シンプルウィーブが「構成要素が2組」の分類です。したがって、コンパウンドウィーブは、「構成要素が3組以上」の分類であることがわかります。コンパウンドウィーブはシンプルウィーブに「組」を加えたと考えればよさそうです。分類の基本は「組」ですから、布になった状態とは限定してません。

この分類は大きく2つに分かれ、構成要素2組からなるシンプルウィーブに「タテ方向かヨコ方向のどちらかを1組を加える」と、「2組からできる布になった状態で加えて多層になる」です。つまり、「組で多層」と「布で多層」という2つの分類です。

★日本の織物の組織を勉強した人の話では、層になる織物は、同時に布を重ねて織る「重ね織」や「二重織」の「布で多層」しかないということ。すると1組だけを加えた場合のタテ糸またはヨコ糸だけが二層になるという構造は、未知の組織や新しい概念の発見(?)です。定義を探して、相補組織と仮称を付けたようです。
※二層より二重という表現が一般的ですが、「二重」には二重織のイメージがあるので「二層」にしました。


1). 「組で多層」;組を加えてコンパウンドにした;Compounded by adding sets of elements 
組数の加え方は、タテ方向が二層または多層でヨコ方向は一層。これを、90度回転して、タテ方向が一層でヨコ方向が二層または多層の構造になります。この分類は、さらにa).とb).に枝分かれします。

a).サプリメンタリ―セット;Supplementary setsでは、タテ方向かヨコ方向に「太さなどの違う組」を加えて多層になるという解釈になります。表裏の柄の出かたは違いますから、裏の組織は異なりますね。さらに(1)柄を入れる場合と(2)無地で保温や補強などの場合で分類してあります。

★日本では、この織り方は、一重の布を織りながら太いヨコ糸などを「柄になる別の糸を織り入れる」とか「はさみいれる」という感覚のようです。この技法名の「補緯」という用語を使い、分類項目名にすると「基本は一重の布(一層)」という印象です。すると、b.コンパウンドウィーブの分類には、一重の布(一層)と二重の布(二層・二重織)が混在すると思いたくなりますね。


b).コンプリメンタリ―セット;Complementary sets が、前分類 a).と異なるのは、加える組の糸の「太さなどが基本の布と同じ」という点です。 a).と同様に、タテ方向が二層や多層でヨコ方向が一層と、タテ方向が一層でヨコ方向が二層や多層があります。しかし、表裏の組織は同じでどちらも表として使える布(リバーシブル)になるという説明です。平織と綾織があります。

★『もようを織る』では、平織のみに相補組織の仮称を付け、日本の織物用語として概念がないとしています。でも、サンダー方式の組織見本をよく見ると手織り教室などで教わるという「昼夜織」。手織りの本やブログでよく見かける特徴的な組織図(右図)です。


2).「布で多層」;布の構造を追加して組み合わせてコンパウンドにした;Compounded by combing complete weave structures 
シンプルウィーブに構成要素を2組以上を布にして加えたとする分類。いわゆる重ね織や多重織はこの分類に含まれます。「a;重なった布が入れ替わり、各層の間が空いている;Interconnected」と「b;各層が綴じ合わせてある;Integrated」の2つに区分しています。


★『もようを織る』(P.255)では、相補組織を説明するために分類した織物組織の項目名の箇条書きがあります。「組織を分類するのが組織論」だからでしょうか。

あくまでの個人的な意見ですが、布の分類が、組織論とか組織を説明するためにあるというのは、「織ること」に執着しすぎているのような気がします。他に役立つことはないのでしょうか?

博物館や美術館の膨大な布の資料の保管、整理ため。自分の持っている布について詳しく知りたい。一般的な名称を知りたい。似たような布を探したい。産地や時代を調べる手がかりにしたい。論理的にわかりやすく分類することで役立つことはいろいろありそうです。

古くから緞子、金蘭、ダマスク・・・。色や柄が美しく織り出された布に憧れ続けた私たち日本人には、海外の布の知識といえば「組織」しか眼中にないのかもしれません。

日本に存在しなかった概念は、「相補組織(仮称);コンプリメンタリ―」ではなく、「布の分類学」のようです。50年以上も前に発表されたこのレポートの理論と概念が、理解されぬままに、日本の年月は過ぎたとは思いたくないのですが。

2018年10月10日水曜日

『The Primary Structures of Fabrics』を読み解く 1


相補組織/コンプリメンタリ―ウィーブについて云々する前に、書籍『The Primary Structures of Fabrics』の分類をもう少し紹介してみます。


前回、織物部分のみですが分類表を公開しました。参考にしてください。

分類項目の名称について、「こんな言葉はありません」と言う方もいるかと思いますが、研究グループも分類を進めながら決めていったということですから、既存の用語に当てはめる必要はないと思います。既成概念が邪魔をしてかえってわかりにくくなるようです。しかし、もう少し適した名称が見つかるかもしれません。


理解するための、基本的な用語は、どうやら2つ。(正確な内容を知りたい場合は、原書 p.27 を参照してください) 

1.Element;要素とは、糸、ロープ、テープ、コードなど、さまざまな形状や材料が想定されるので、限定を避けるための表現です。糸のような…紐のような…をイメージすれば読みやすくなるようです。

2.Set;組とは、要素を同じ方向に揃えるという布を作るためにグループ化した状態。同じ方向にタテ糸の長さと順番を揃えたら、1組(セット)。
構成要素が1組の分類になる組紐やマクラメなども、長さと順番を揃えてから作り始めます。この布を作る準備の過程にある「組/セット」は、日本の感覚では、手順の1つでしかありませんが、確かに存在します。
ヨコ糸も同様に1組(セット)と考えます。現実では、ヨコ糸は、織り入れないと順番も長さも揃わないのですが、タテをヨコにして織った布もあるので、分類上、タテ糸の組(セット)を90度回転させたと考えます。

原書は、布を形作るもととなる素材と撚糸、布の構造の分類、布の加工や縫い付け(キルト、アップリケ、貝やビーズ)の3部構成です。布の構造の分類がもちろんメインです。

布の構造の大分類は、「フエルト」、「要素の組合せ」の2つです。

「要素の組合せ」は、A.構成要素が1本、B.構成要素が2本、C.構成要素が1組、D.構成要素が2組、3組以上の4項目に分かれます。

★技法や組織の説明書では、「編み、織……」や「基本と応用」などに分類するケースがほとんどです。が、この分類のための発想は、理路整然です。

A.1本は網や編物、B.2本はA.に1本を加えた構造、C.1組は、組紐、マクラメ、スプラングなど。そして、D.構成要素が2組、3組以上。これは、3項目に枝分かれします。
「1.タテ糸とヨコ糸が交差する」は、織物
「2.要素が入替わる」は、もじり織やトワイニング
「3.タテ糸に緯糸を巻きつける」は、タペストリーなどの技法

さて、「1.タテ糸とヨコ糸が交差する」は、まず、a.とb.の2つに分かれます。
a.シンプルウィーブ;Simple weaves と b.コンパウンドウィーブ;Compound weaves です。

a.シンプルウィーブは、エモリ―の考え方では、タテ方向1組とヨコ方向1組が交差した「織物」です。分類を戻ってみると、「構成要素が2組か3組以上」の「2組」に該当することが確認できます。つまり、タテ1組とヨコ1組で「一層の織」。
一層より一重という表現が一般的ですが、後述の「二重」には二重織のイメージがあるので「一層」「二層」にしました。

そして、a.シンプルウィーブは、平織の「1.プレーンウィーブ;Plain weaveと、浮きのある織の「2.フロートウィーブ;Float weaves」の2つに分かれます。フロートウィーブは、綾織、朱子織、平織から派生した織の3種類になります。

★シンプル⇒単純という言葉の意味から、単式や日本従来の考え方の原組織・三原組織とすると、コンパウンド⇒複合⇒複式 と、少しずつ意味が動いて、複雑な としたくなります。エモリ―の 織物の分類 の基本となる「組」という理論から、単純な組織vs複雑な組織 という形式に変容してしまいします。

自分が得意だと思っている部分だけを読むと、今まで学んだ日本従来の知識に当てはめて解釈したくなるのかもしれません。でも、歴史も文化も、受けた教育も違うのですから、考え方や発想も、もちろん、違うはずです。このことに気づかないと、エモリ―のレポートを理解するのは難しいだろうと推察できます。

書籍に限らず、考え方が違う相手を理解する手がかりは、思い込みを捨てて真摯に向き合ってみることしかないと思うのですが。

長くなりましたので、b.コンパウンドウィーブは、次回に。

2018年10月2日火曜日

『The Primary Structures of Fabrics』は 何が書いてある本?


『The Primary Structures of Fabrics』は、何が書いてある本なのでしょう
1980年代に活躍した日本の手織作家の先生方の参考書籍一覧で時々見かけますから、日本でも有名な本なのだろうと思います。

書籍『もようを織る』小林桂子著 では、書籍名を布の主要組織と訳して「欧米における布の組織学について基礎を築いた」と紹介しています。
著者は、Irene Emery。米国のワシントンD.C.にあるThe Textile Museum;布の博物館 が関係し、詳細を確認していませんが、この博物館は歴史あるジョージタウン大学と連携しているようです。この大学レベルと思われる本に「抽象的な説明」は本当にあるのでしょうか?

まず、原書の前文を見てみましょう。
THE DESCRIPTIVE CLASSIFICATION of fabric structures presented here is based
on a long and wide-ranging study of representative fabrics from ancient and primitive cultures, and of the methods and terminology employed in analyzing, describing, and classifying them.

「ここに提示する布の structures 記述的分類は、長期で広範囲にわたる・・(中略)・・布の研究を基礎におこなわれた。そして、記述的分類の手法と用語は、分析、記述、比較をすることから見出した。」
……もう少しわかりやすい訳ができそうですが、あまりに簡潔すぎて訳しにくい…。

つまり、「布のStructuresを分類した」とのことです。ワシントンにある「布の博物館の膨大な布の資料をもとに「布の分類学」を確立したレポート(論文)のように、私には思えるのですが。

日本では、「組織を分類するのが、組織論」という解釈があるらしいのです。わざわざ難しくしているように思えるのですが…。すると、「文学を分類するのが、文学論…?」「昆虫を分類すると昆虫論…?」になりかねませんから、完全に混線です。独自解釈が多すぎる。私が若い頃に織物が嫌になった理由の一つですね。

欧米人は、このレポートの記述スタイルで分類だとわかるのですが、日本語は象形文字文化なので、ツリー形式の図表がないとわかり難いのかもしれません。原書には、フェルト、網や編物、トワイニングなど布となるたぶんすべての技法があります。織りの部分だけですが、作成してみたのがこれです。
論理的で無駄ない分類だと見ただけで納得です。次回、もう少し説明してみます。

※図はクリックすると拡大します
                        
さて、このレポートは、構造論でも組織論でもない訳ですが、この場合の structures は、「構造」でしょうか「組織」でしょうか。
「組織」とは、織物のタテ糸とヨコ糸の交差した状態をあらわすと承知していましたので、『構造』だと思っていました。しかし、「組織」は、織物以外にも使うという説があり、編物組織、ループ組織、刺繍のサテンステッチ組織、フエルト組織と言うから、織物以外にも「組織」という言葉は使う(?)使える(?)のだそうです。読んでいるあなたは使いますか?「組織」って何だと思いますか?

「組織を分類するのが組織論」という日本のオリジナル定義(?)が存在すると、分類学と組織論の区別ができにくくなります。今回のように、分類項目についての説明から、組織の説明の部分のみを取り出して、組織論として評価判断することも不自然ではなくなります。しかし、原書は組織論として記述をしていませんから「抽象的でわかりにくい」になりますね。

一説によると、技法や組織を翻訳するのは、誰も可能とは思えないという持論をお持ちのようで、大切部分と感じた「コンプリメンタリ―セットの説明の組織の部分」を相補組織(仮称)の定義として紹介したように思えます。

そして、『The Primary Structures of Fabrics』の著者エモリ―の説明には当初から不充分な点がありるので、この論文にこだわる必要はないということです。
初版から50余年が過ぎ、組織論といえども同じ点にとどまっているはずがない。迷わずに前進するべきということです。

どのような論文でも、例外的な項目が残ることは時々あるようで、『The Primary Structures of Fabrics/布の主要構造』に時代遅れや過去の遺産となるほどの不充分や欠点があるとは、思えないのですが。

意見のある方は、簡潔に、冷静に、お願いします。

2014年6月27日金曜日

海外のテキスタイルデザイン現場のことば?

先日、綾の方向を調べていて、組織図で使うことばも気になりました。

私の手元にある海外の織機を使用している先生方の本は古い。図書館でテキスタイルについての本(2007年初版)を見つけました。この本の内容は新しいはずだと期待。

まえがきもあとがきもないので、出版された意図はわかりませんが、美術大学の染織のカリキュラムをもとに書かれた本のようです。布地への発想や展開、染色や織など様々な技術や授業風景なども載っています。


私が知りたかったことは、「織」と「織物理論」の章にありそうでした。

織についての説明は、力織機の五大主要運動から始まります。動力機や自動織機ではなく、力織機というのはちょっと古い感じがします。でも、内容は、生産機ではなく手織機の準備の手順が簡単に紹介されていました。

この本の監修をした方は、ニューヨークの有名なテキスタイルデザイン事務所で研修されています。この訳なら確実と思ったのですが・・・・織物理論の章で添えられている英単語や説明は、私が覚えた手織の場合とは違うものがいくつかありました。

組織、組織図⇒design
designで経糸が上になるのを「浮く」⇒up、経糸が下になるのを「沈む」⇒down
レピートするための最小単位⇒完全組織⇒Key組織(英語ではKey design?)
Key組織を上下左右にレピートを繰り返した組織図⇒完全意匠図
二重織り⇒double cloth
風通織り⇒figured double weave with color effect
綜絖の通し方⇒Drawing in Draft
順通し⇒Straight Draft
山道通し⇒Pointed Draft
破れ通し⇒Broken Draft
順飛び通し⇒Intermittent Straight Draft

アメリカで布をデザインする現場の用語なのかもしれません。英語から日本語への訳し戻しがむつかしいと感じるものもあります。巻末に参考文献リストがないので、調べようがありません。
手織りに必要な踏み木順やタイアップについての詳しい説明は書かれていませんし、8枚綜絖斜文の読み方は、手織で言うところの、タイアップが使われていますので、たぶん、デザイナーやファイバーアーティストをめざす人が対象なのだろうと思います。


残念ながら、アメリカの手織の本を読む参考にはならないように思います。たぶん一般的・・・と私が思うのは、
組織は、Structure。
綜絖通し、踏み木順、タイアップと組織図の4点がそろったものがDraft/ドラフト。これを完全意匠図、または完全組織図と呼ぶ方もいると思います。
綜絖通しはthreading。組織図は、Draw downまたは、Draw up。海外の本で、載っていないことが多いのは、他の3点があれば簡単に描き起こせるから。


アメリカでもデザインの現場と手織は異なるようで・・・。日本でもお教室やグループによりいろいろ。和訳名も様々。
自分なりに言葉を整理するにはあまりにも時間がかかりそうなので、・・・・・久しぶりに織りに集中しようかと思います。




2014年5月27日火曜日

書籍;染と織の歴史手帖

すでに、この本を読まれた方は多いのではないかと思います。発売されたとき、確か、本の帯に「和服がぐっと身近になる。」とありました。和服は着ないから・・・とその時は、敬遠しました。


染と織の歴史手帖-「きもの」と「きれ」をもっと深く知るために
吉岡幸雄 著 1998年初版 PHP研究所版

著者は、「染司よしおか」の5代目当主。

著者のプロフィールは文中に「私の生まれ育った家が染谷だったので、家の中には色とりどりの裂が散乱していた。また、父は染織の研究者でもあったから、日本はもとより、世界の伝統的な染織品の収集もかなりの数にのぼっていた。」とあるように、いわば、生まれながらの「きれ」のスペシャリスト。

そして、「若い頃、美術工芸の出版に携わり、書物を読み文献を調べ美しく佳いものをさず多く見、それを求めて旅をした。」と紹介されています。

なるほど、伝えられる数多い「きもの」と「きれ」からの選択眼も確かで、そしてこの文書が生まれるわけです。

「着るもの」と「きれ」が気になり、日本で生まれ育ち、この歴史と文化のなかで暮らしているのなら・・・読んでおきたい本です。できれば手元に置き、事あるごとに開きたい本。

あとがきには、
「染織史や服飾史を書くつもりは毛頭なかった。(中略)日本の衣の先達たちを見るとき、人が生きてくのに大切な三要素「衣食住」の筆頭に置かれる「衣」に、思いを込め、個性を表現しようとしてきた情熱が分って頂けると思う。それは、着る側にも作る側にもあったのだ。」とあります。


「きれ」を見つめ続けてきた視線は、「きれ」の向こう側をも読み取ることができ、この先の明日も透し見ているようです。「きれ」には、国境がない。着物も洋服も 「同じ衣/ころも」。そんな想いが湧き上がります。
テキスタイルデザイナーをめざす方には、必読の一冊。

2014年5月26日月曜日

麻と書籍;日本の自然布 

綿木が伝来する前、普通の人々は何を着ていたのでしょうか?そんな疑問から図書館で見つけた1冊。

日本の自然布 別冊太陽 2004年1月5日初版

自然布は、原始布と呼ぶこともあるようです。取材時から相当の年月が過ぎている項もあると書かれていますが、この十数年前までは、確かにあった糸つくりと織りです。
大手紡績メーカーがさまざま機能を研究開発し、医療分野にまで通用する高度な技術をもつこの国で、原始から続く糸つくりが続いている/続いていた のは不思議で、魅力的な国です。

自然布に使われている木や草は、聞いたことがある名前がほとんどで、近くの公園や空き地にも自生しているものもあります。が、水につけたり、囲炉裏の灰を入れて煮たり、川にさらしたり・・・・山々の自然と生活と根気よく体と手を動かす人がいなければつくれません。

紹介されている自然布と場所

オヒョウ/おひょう 北海道浦河郡
藤布/ふじふ   京都府宮津市
科布/しなふ   新潟県岩沼郡
葛布/くずふ   静岡県掛川市
太布/たふ   徳島県那賀郡 
紙布/しふ   紙漉き 宮城県白石市 紙衣づくり 奈良市雑司町
大麻布/たいまふ  栃木県上都賀群
苧麻布/ちょまふ  苧麻つくり 福島県大沼郡 越後上布 新潟県南魚沼郡 
芭蕉布/ばしょうふ  沖縄県国頭郡 西表島


この中に、身近な「麻」がありました。
エジプトのミイラを包んでいたという話は有名ですが、この本で、大麻のもつ幻覚性から神事に使われたとあります。太古の昔から着物や洋服の今へと続く 「麻」 だから、何か少し違う・・・と感じる魅力があるのかもしれません。

量産化され、紡績段階で異なる麻の種類をまぜて混紡にすること合が多いようです。でも「麻100%」と表示されるので、それぞれの違いがわかりにくいように感じます。
亜麻、苧麻、リネン、ラミー、ジュート・・・種類も呼び名もいろいろ。服地以外にロープ、運搬保存用の袋など使われかたも多い素材。本の最後に自然布の世界地図がありますが、麻は種類が多く、育つところも世界中。


生きるために不可欠な「衣食住」・・・衣も時間と手間をかけなければ、手にできなかった時代。
自分で作らなくでも豊富にある時代・・・この時間を何に使いますか?


2014年5月20日火曜日

書籍;きものという農業

首都圏の住宅地なのに、道端に桑らしきものが芽吹いていました。土や気候があっているらしい。

アメリカの書籍に、「手織りは農業だ。その土地の気候や土地で育つ作物や動物から繊維や毛を取り、糸にして織る。」という記述があったのを思い出しました。

海外の手織は、西欧の生活に必要なベットカバー、ランチョンマット、テーブルクロス、カーテン、マットなど。日本では、今も着尺が主流。今まで着物を着ることはほとんどなかった私にも、「手織は農業」と同じ考えを見つけたことで、日本の織を身近に感じることができるかもしれない・・・と。


着物という農業 台地からきものを作る人たち 2007年5月30日 初版
著者;中谷比佐子 発行所;株式会社三五館

著者は、女性誌の編集記者を経て、きものが私をどう変えるか」というきっかけからきものを着続けてて40年。きものを切り口に日本の文化、考え方の基本を学び、伝承を進めている”きものジャーナリスト”と紹介されています。


書き出しには、「初夏には天皇陛下が稲をお手植えし、皇后陛下が・・・蚕に直接桑の葉を与え・・・」で日本は農業国家という思いを強くもつとあります。
仏教の影響があるのかもしれませんが、確かに日本では昔から動物の毛を刈ったり、皮や毛皮を普通の生活でまとったという話は聞きません。

実践と体験から生まれた視点ですが、きものの本にありがちな・・・着方、季節や帯とのあわせかたなどとは異なる内容で展開していきます。

養蚕農家のこと。文様、紋様や模様と呼ばれる柄は自然や農耕道具から。季節を見つめる衣替え・・・自然との深いかかわりが書かれています。日本人は、勤勉で、自然を大切にした農耕民族の遺伝子を受け継いでいるはず・・・。

畑の桑を食べて絹を吐き、綿、麻は、畑から収穫され、糸になり、織られ、きものになる。
つむいだ糸が風合いよく織りあがる織機がからだに負担がかかっても大切にされてきた。

「石油を知らなかった19世紀中頃までの日本人は、食糧、衣類、建材、肥料のすべてを『植物』でまかない、依存し、愛し、いろいろなことを学んでもきた。」と書かれています。

現代の日本は、原材料は輸入に頼る自動車とテクノロジーの国。石油の枯渇や温暖化から原発へ。そして、なお止められないという。著者のいう「蚕と稲に込められた日本人の価値観」を思い出すこととで、エネルギーについて新しい道を模索する拠り所や自信にはならないのでしょうか。

いろいろなことを考えさせてくれる1冊です。

そして、なぜ今、手織りをするのか・・・その答えは意外と近くにあるように感じます。

2014年4月4日金曜日

書籍;世界の織機と織物

国立民族学博物館で2012年9月13日から11月27日まで開催された特別展「世界の織機と織物-織って!みて!織のからくり大発見」の関連書籍です。2013年3月29日初版発行。

編著および研究代表者は、吉本忍氏。国立民族学博物館教授。55の個人と団体が協力し、実行委員は共同研究「手織り機と織物の通文化的研究」の研究メンバー9名です。

この本と特別展では、「織物とは、経糸と緯糸を交差させ、機にかけて織った布。」という従来の一般的な概念ではなく、民俗学的な手仕事と道具の観点から織機と織物を取り上げています。

織物とは「張力をかけたタテ糸にヨコ糸を組み合わせたモノ」と定義し、「すべての織機は、張力をかけたタテ糸にヨコ糸を組み合わせるためにつかわれてきた仕掛け」としています。

織の始まりと考えられる足先に糸をかけたり、足で押えて織るのを「からだ機」や「足機」、背負い袋、背中あて、わらじなどを織る道具やゴザやムシロを織るむしろ機なども「織機」として分類し加え、近代の織機に至るまでを11種類に分類しています。

織機とみなす範囲や使われる素材を拡げた結果、あらたな織物の基本組織として「交叉織組織、からみ織組織、タテもじり織組織、ヨコもじり織組織、巻き織組織」の5種類を設定しています。

織機のからくりとして、タテ糸の張り、整経の方式、タテ糸を開口する道具、タテ糸とヨコ糸を捩り合わせる道具、杼、ヨコ糸を打込む道具など10項目が挙げられています。日常的に織機に向かっている人は、織機のそれぞれの部分の役目を再確認することができます。また、多くの方法や種類があることがわかります。

資料では、世界各地の始まりに近いと思われるものから近代の織機まで154点が掲載されています。それぞれの織機で織られた織物の写真も、モノクロですが、掲載されています。

「人類の文化遺産ともいえる手仕事のモノづくりの多くも放棄しつづけている。(中略)手仕事によるモノづくりを放棄しつづけていることは、人類がモノづくりをすることで日常的に培ってきた創意工夫能力を低下させ、自然災害でライフラインが途絶するというような非常時での生き延びる術をも放棄しつづけていることにほかならない。」として
「われわれは今こそ手仕事への回帰を真摯に実行に移すべきである。」と提言しています。


なぜ人は織を始めたのか?なぜ世界各地で多種多様な織機が発達したのか?
先人たちが工夫し伝えてきたこと。途切れてしまうこと・・・収集分類された多くの資料から学べることは、限りがないようです。