2015年12月31日木曜日

ヒツジ年もあとわずか

このブログを始めて4回目の年末。

おせちを作りながら、手織は、料理に似ている・・・・ふと、思いました。

料理も、それぞれの国の料理があり、郷土の料理があり、
家庭料理もあれば、レストランのシェフ(職人)もいますし、工場で大量生産もしています。
手早く簡単な家庭料理もはやっていますしね。

どこのどんな料理を、どの程度まで、習いたいのか?学びたいのか?
料理で考えると簡単なのに、不思議ですね。

料理も、ひとつひとつ楽しみながら作ると、おいしく出来あがる・・・・のだそうで。

よい年をお迎えください。

干支の申(Counter March Juliaのラムと)

2015年12月29日火曜日

LIISAの取扱い説明書

預かってほしいと届いたLIISAと一緒に届いた説明書は、3種類。

写真右は、織機に限らず、「組み立て式」の何かを買えば、必ずついてくる「いつものよくある書面」。
織機の組み立て方や各部の名称(英語と日本語)、ヒモの結び方やタイアップ(ヒモのつけ方)のイラストなのコピー4枚。

写真中央は、Introduction of Finland Weaving  -1-は、糸綜絖で天秤式という北欧の織機を使うための一般的な内容。
天秤と各部とのタイアップのしかた、ドラフト(意匠図)との関係、経糸の巻きかた(機掛け)などA4版8枚程度。左の小冊子の和訳版ではありませんでした。

写真左は、この織機についての英文書。よく見ると、取扱い説明書・・・・トリセツ!
TOIKA社作成の小冊子 『THE FINNISH COUNTERMARCH LOOM』 
著作デザイン;CATHRINE KVARACEUS

まず、トイカの手織機の所有者のために、特別にフィンランド式のタイアップと経糸の巻きかたやカウンターマーチの特徴、知っておくと役立つことを説明したと書いてあります。

共通一般的な天秤式織機の使い方ではなくて、トイカ社のLIISAの使い方。ですから、今風に言えば、『織機LIISAのトリセツ』。台所家電とかには買えば必ず付いてくる・・・・・このように使うと、このように使いやすいです。ここが新しくなっています。この順番で使ってください・・・・とか書いてあるあのタイプのもう少し詳しい説明書。

本文は、織機の基本的なメカニズムの説明から始まり、カウンターバランスとジャックルームの織機の特徴から、カウンターマーチ式の織機の優れた点の解説。

次に、写真入りで組み立て方の説明。天秤からのYコードを下げるのは、綜絖の前か後ろか?経糸をつけるワープビームのバーは、どの程度の緩みが必要か?など戸惑いがちなことも書いてあります。

タイアップでは、『TRADITIONALTIE-UP』と『MAXIMUM POSSIBILITY TIE-UP(なんでも織れるタイアップ)』という名前の8本踏み木で4枚綜絖で綜絖を2枚ずつのセットで使うというやりかたが載っていました。さすが、天秤式とつぶやきたくなる・・・今まで見たことも聞いたこともないやりかた。毎回の吊替えが大変と感じる人には、お薦めのタイアップとあります。

経糸を織機に巻き取る方法は、「まず、ブレストビーム(胸木)をはずし・・・・・」と細かく順序立てて続きます。ラドルとキャッスルを上手に利用して、綜絖通しから筬通しまでしています。

知っていると思っていることでも、説明書を読むと、設計した人/会社は「こう使えば、このように使いやすい」と、考えたのかと合点がいくことが多々あり、楽しめます。


国内でTOIKAを使っているお教室を見学したことがありますが、この「トリセツ」のやりかたは採用されておらず・・・・日本人にはなじまなかったのでしょうか?

とにもかくにも、こんなにきれいな状態で、30年余り大切に保管していた持ち主に、敬服するばかり。


2015年12月25日金曜日

LIISAがやって来た

預かってほしいと言われ、突然、織機がやってきました。

30余年ほど前に購入したという、フィンランド TOIKA社の「LIISA/リサ」。
組み立てるには、たたみ2畳程の広さが必要なのだそうです。

織幅は120cm。奥行は、120cm。今使っているスタンダード型の織機よりも30cmほど短いので、脇から織機の中に入れるアキ部分はありません。

届いたときの状態は、左右のサイドはそのままで、はずされたヨコ木やビームなど・・・・・そのまま運び込まれて、角材の山。
天秤、綜絖バー、綜絖、ラム、踏み木は、コードでつながったまま。
即、使っても構わないとの心使いらしい。


勝手ながら、汚れが目立つので、コードや綜絖は外して洗うことに。
で、よく見ると、いろいろと手を加えたいことに気がつきました。たとえば、

・ナイロン綜絖は、つながったままなので、このままでは、順通し以外の綜絖通しは、やりにくそう。バーの端を結ぶ はずれ止め のコードもつけたい。

・システムコードを止めているのは、ほとんどがアローピン。踏み木のアンカーピンも差し込んでいないのですが、穴の大きさが合わなかった?製織中に外れたのでは?

・綜絖バー、筬、かまち・・・・どれにもセンター印をつけたい。

・8枚綜絖なのに、汚れている天秤は、半分だけ。使わないので残りは取り付けなかったのだろうと思いますが、安定して上下するのでしょうか?

・ワープクロスのバーは、2本を1cmほどの隙間で、何か所も抜けないように、しっかりと結んであります。どうやって経糸をつければいいのやら。

・前後のビームクロスは、巻をほどいてみるとそれなりの汚れ。ガンタッカーで止めてあるのですが、悩んだあげくに、クロスを外して洗濯。気の済むまで、大洗濯。

ここまですると、「預かっている」とは、言い難い。申し訳ない。

せっかくの8枚綜絖8本踏み木の織機・・・。
北欧の織機は、織幅が広いのと躯体がしっかりしているので、タピストリー制作機として平織だけという話は、よく聞きますが・・・・もったいないの感。

まあ、道具をどう使うかは個人の自由。よくわかってはいるのですが。


Well Come & Merry Christmas !



2015年12月22日火曜日

5枚朱子を織ってみる

やりかたを本で読んで想像するのも、組織図を書き方を考えるのも・・・手織りの楽しみ方はいろいろ。

そういえば、織機を組み立てないで、部屋の隅に置きっぱなしにしていたときも、織物の本は、見ていたし、読んでいました。が、やっぱり織ってみないと、「わからない・・・」「モノを作る楽しさはない・・・」と織機を組み立てて、座ったはずでした。

前置きはともかく、ローゼンコンまで読み進んだスウエーデンの手織りのマニュアルをあきらめて、『5枚朱子』を織ってみることにしました。ろくろ式でも工夫すると織れるのだそうですが、綜絖が奇数枚数の組織は、カウンターマーチの得意技。
糸は、すっかり大きくなっておじさんを通り越しそうな「いとこ」が子供のころに着ていたセーターの残り糸。叔母たちは、「色変わりの糸」と呼んでいたような気がします。

試織なので、とりあえず色はお許しをいただくことにして、残り糸と合わせて、広幅のストライプに。もちろん、ストライプが表面です。

「朱子は、裏織にする。」ことは、織物に少し詳しい方ならご存知のこと。ホコリがつかないようにとか、ジャカードやほとんどの力織機は上口開口だからとか・・・・諸説あるようで。

ためしに、朱子表を上にして、つまり、いつもどおり、表を見て織り始めました。

緯糸をたった5本ほど織ったところで、当惑。

・下がる経糸が少ないので、しっかりまっすく投げないと杼が落ちる・・・・これは、想定内。
・緯糸の打ち込みが均一に揃っているのかどうか・・・・緯糸は所々しか見えないので、打込みは手加減だけがたより。
・組織はあっているのか?踏み間違いはしていないか・・・・緯糸の1段1段がわからないから、わからない。ミミを持ち上げて裏側をのぞいては見るけれど。
・開口しても、密度があるので、どの経糸が下がったかは確認できず・・・・開きの悪い経糸を拾ったり、ひっかけてもわからない。

やっぱり、「朱子は、裏織するべし」です。工場でも、手織でも。

経糸は■と決まっているので、朱子(表朱子のこと)は、裏織りにするので、組織図は「裏返し」なのだと思っていました。だから、□に■の点々。
表朱子の組織はほとんどが経糸なので、「方眼紙を黒く塗るのが大変だから、黒と白を入れかえて書く」という説もあるようですが、裏朱子とどうやって判別するのでしょうか・・・・?

組織図は、設計図。生産現場の人に間違いなく伝えるための指図図面。だから、裏織りにするときの組織図は、裏返しで書く・・・・・。

組織図を書くことが楽しい人と、使うのが好きな人は、根本的な考え方が違うようです。
もしかすると、テキスタイルデザインを学んで手織りをする人と、現場を見た後に手織りに戻った人の違いかもしれません。

2015年11月11日水曜日

朱子織と日本の手織りと組織と

もう一度手織りをしてみようと思ったのは、アメリカの手織りの独習書にであったから。

日本の書籍では、手織りの組織について納得のいく説明が見つからず、投げ出したのは30年ほど前。毎回、日本式での話になると・・・組織のことも、織機のことも、停滞してしまうので注意はしていたのですが。

「朱子とサテン」を書いたのが、きっかけ。欧と米の手織りの書籍では、説明も図も同じ。一方、日本の本には1冊に3種類もの朱子点のとり方がのっていたりします。読んでいたスウエーデンの本にあった説明は簡潔でわかりやい。

日本の場合「途中をはしょっている(省略している)」では、どうしても説明がつかないと思うケースもあり、『飛び数』は「組織を書くときに使うことば」という人もいれば、名称につけて「何飛何枚朱子」という人もいます。
「たて飛び」と書いてあるか、「よこ飛び」と書いてあるかかで表朱子か裏朱子かの判断ができるらしい・・・・と思ったら、たて朱子とたて飛びの「たて」は、話が違うのが超基本というから、できるらしいと感じたのはまちがいのようで、わかったように思ったけれど・・・やっぱり混乱したまま。説明を聞き過ぎたということかもしれません。

結局、多種多様に感じるのは、勉強不足で、日本には日本の手織りの「正統」があるようです。

日本には「正則朱子」と「変則朱子」があるというから、欧米には、「変則朱子」がないのかと思ったら、「イレギュラーサテン/irregular effect」があるではありませんか。


さて、織るのに、最低でも5枚の綜絖が必要な朱子組織。組織が本当に好きな人は、自分の織機で実際に織れるか?織っていて楽しいか?は気にならないようで・・・。

朱子組織を学ぶのに、ご紹介いただいた日本の書籍は 『織物構造』太田 勤治著、『織物常識』(『織物知識』は誤記?) 津田 次作著 1925・1.1も 繊維工業大学の教科書。
予想していたとおり、近年の日本の手織りの組織の知識は、繊維工業から学んでいることにまちがいなさそうです。動力機用の知識を手織り用として、スライドして使っているので、海外の手織とは基本として学ぶ組織や説明などが違うのだろうと思いたいのですが。

朱子組織もダマスクに代表される柄織よりも、量産される服地用の「トロミ」とか「オチ」に関係する地紋組織の開発のしかたが教育のメインになるのかもしれませんね。

アメリカからスウェーデンへと海外の手織りの初歩を学びながら・・・日本の朱子組織も同時に学ぼうとして・・・・・フリーズです。しばらくお休みします。

2015年11月3日火曜日

コード通しが届きました

システムコードを通す時、何を使っていますか?

編物に使う『かぎ針(写真左)』は、中央の指に馴染むように平らになっている部分がつっかえて長さが足りないことがあります。

金綜絖に使う『綜絖通し(写真中央)』は、先がとがっているので、コードを傷つけてしまうこともしばしば。それに、長いので踏み木にコードを通す時は床につっかえてしまう・・・・で、歪んでます。


『コード通し』が欲しいと織物の道具を扱っている数軒のショップで聞いてみたのですが、「専用の道具が必要なのですか?」とけげんな様子。

どうやら、タイアップを頻繁に変更する人は少ないらしい。ろくろ式で開口が安定しないから4枚綜絖の天秤式のを使う・・・という場合、「平織と綾織のタイアップ」で、一般的な組織のほとんどが織れてしまう。

ですから、購入した時から、一度も吊り直したことがないという人もめづらしくないらしい。それなら、専用の道具など必要ありませんね。


で、海外から取り寄せることになりました。『コード通し/Cord needle』

届いたのは、写真右。洋裁に使う『糸通し』の大型サイズという感じ。簡単な構造ですが、やはり道具は道具。使い心地も、『糸通し』の大きい感じ・・・・・。

頻繁に吊り替えをする方は、お試しを。


2015年10月20日火曜日

組織図の書き方 欧米とろくろ式

ついでですから、『綜絖通し、踏み木、タイアップから組織図を書くやりかた』の欧米と日本のろくろ式の違いを書いてみます。

アメリカやスウエーデンの書籍では、踏む踏木を上のタイアップへとたどり、印がついている綜絖を見つけ、綜絖の通し順で印がついている所は下へおろして組織図を、■に塗る

踏木を踏むと経糸を通した綜絖が上がるジャック式の織機では、そのままで経糸を示す「■(クロ)」になります。踏木を踏むと綜絖さがる滑車の織機を使用するスウェーデンやスコットランドの組織図やイラストでは、経糸が「□(シロ)」で、緯糸が■」

米国の書籍『THE COMPLETE BOOK OF DRAFTING』の「経糸と緯糸のどちらを描くか?」という章があります。つまり、黒で描くのは経糸か?緯糸か?

著者;Madelyn van der Hoogtは、「綜絖通しとタイアップ、踏み木順から組織図を描きおこす場合、綜絖に通っている経糸を書いていくのが描きやすいから、クロになる。」と言っています。つまり、普通、白い紙に黒いペンで書くからという単純な理由をあげています。

そして、「組織図のどちらを塗るかはそんなに大切なことではない。どちらが縦糸か緯糸か自分でイメージできて、その通りに織機を使えればいい。」と結論を述べています。

たしかに、「どのような柄が織れるのか?」「この部分だけを繰り返したい」「組織が飛んでいないか」などなど・・・確認をするなら、どちらが■でも□でもかまわない訳です。


さて、わたしの頭の中は、始めに覚えた・・あまり■□にこだわらない・・欧米の描き方。やっと自分が日本では『超少数派』ということに気がつきました。
日本のろくろ式の綜絖は、スウエーデンの織機の滑車式と同じ動きをしますが、意匠図(組織図)では、経糸が『黒』という決まりを守っています。わたしが見つけた描き方は、2種類。

『ホームスパンテクニック』では、
「・・・・ろくろ式やスプリング式の機は、踏むと綜絖が下がるので、結ばれていない□の部分の綜絖通しを組織図上に■で描きます。」とあります。<その1>

「■部分の綜絖通しを組織図上に□で描く」という方法もあります。<その2>

ろくろ式組織図の描き方』名まえをつけるとわかりやすくなると思うのですが・・・・・・どちらも同じ名称でよいのでしょうか?

「手織り手紡ぎ工房』の完全意匠図(P47)のろくろ式では、「・・・・組織図の□点の番号と踏み木の番号×印で示します。・・・・・・(中略)・・・・組織図の□点の経糸が通っている・・・・」
組織図の緯糸□を基本基準として考えていきます。本には説明がないのですが、<その2>のやり方が基本になっているようです。『ろくろ式完全意匠図の書き方』と名付けたくなるのですが、次ページのある天秤式でも同じやりかたです。

欧米式のわたしの頭は、「天秤式にも『ろくろ式組織図の書き方』を使用して完全意匠図を作成している。」という理解になりました。ですから、『天秤式〈踏み木と綜絖の結び方〉』P56では、綜絖⇒補助木上段(上ラム)⇒踏木と結ぶのは×印。天秤⇒補助木下段⇒踏木と結ぶのは印なし というスウェーデンスタイルです。

「『手織り手紡ぎ工房』の天秤式織機の完全意匠図は、ろくろ式(の描き方)で考え、スウェーデンスタイルのタイアップをする。」 この一行でお互いのやり方がすぐに理解しあえるといいのですが・・・・。

※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年10月16日金曜日

国内の完全意匠図と海外の組織図の違い

「天秤式(たぶん、天秤式の完全意匠図の書き方)は、女子美の先生とアメリカ人の先生から習いましたが、女子美の方がわかりやすかったので、本はそちらにしています。」 ちょっと意外でした。
この本とは、『手織り手紡ぎ工房』 監修;馬場きみ 著者;彦根愛 平成25年発行 

 
完全意匠図とは、『綜絖の通し方、踏み木の踏み方、タイアップが、まとめて1つの図として表されたもの』(P47)とあります。この本では、具体的に使用する織機にあわせて組織図から綜絖通し方を考え、踏み木を考え、タイアップを考える。』というやり方が詳しく説明されています。
つまり、織機の種類によって異なる・・・・「1本の踏み木に1枚の綜絖を結ぶ とか 1本の踏み木に数枚の綜絖を結ぶ」 や 「踏み木を踏むと結んだ綜絖が上がる/下がる」という問題を、完全意匠図を作るときに同時に解決しています。これがたぶん女子美で習った方法なのだろうと・・・・本には書いてないのですが。

組織図から綜絖通し方、踏み木、タイアップを求めて完全意匠図にするやりかたは、スウエーデンの組織の本では、綜絖通しとタイアップを一度に考えますから、確かに違います。米国では?と組織について初歩から詳しく書いてある米書『THE COMPLETE BOOK OF DRAFTING』を見ると完全意匠図の読み方と組織図の書き方の説明しかありません。
アメリカでは、手織のための基本的な組織やバリエーションが集められた「パターンブック」が数多く販売されていていますので、組織図を完全意匠図にするやり方は、手織をするだけなら、特に知らなくてもよいことなのかもしれません。

アメリカのパターンブックやスウェーデンの作品集などでは、綜絖通し、踏み木、タイアップしか書かれていないことがほとんどです。柄の出方や細かな確認のために組織図が必要なときに自分で描けるように・・・ということで、一般的な手織りの本の説明にあるのは、綜絖通し、踏み木、タイアップから組織図を描く方法』です。

膨大な数の組織が昔から伝わる欧米と海外からの貴重な織り柄の布を分解して意匠図を書いてきた日本の違いなのだろうと思います。このあたりに意匠図と組織図の呼び方やニュアンスの違いの原因もありそうなのですが・・・・。

さまざまな織機があり、新しい織機も生まれたアメリカでは、織機の種類によって異なる・・・・『踏み木を踏むと踏み木と結んだ綜絖が上がる/下がる。』という問題は、タイアップ図の記号のあり/なしを入れ替える、つまり、反転させるというのが一般的な説明です。

米書では『1本の踏み木に何枚かの綜絖を結ぶ』のは、マルチフルタイアップ、最近はレギュラータイアップ。『1本の踏み木に1枚の綜絖を結ぶ』のは、ダイレクトタイアップ。レギュラーは天秤式用で、ダイレクトは綜絖のある卓上機用という決めつけはありません。

女子美で習ったことを踏襲するこの本では、タイアップの名称を書くよりも使用する織機名を書いた方がわかりやすいから・・・、ろくろ式でレギュラータイアップにすると開口しにくい場合があるから・・・・と、誰にでも使いやすい配慮をしていると思えます。

欧米の書籍が入手しやすくなったがために、どのような考え方か、やり方かを整理しないと混乱するばかり。とくに日本の欧米風の手織りがむつかしい・・・・女子美式とか京都式とか名称をつけたい気がします。

※文中に誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。この文への直接の訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年10月14日水曜日

書籍;Tartan&Tweed 手織りのためのスコットランドチェック

やっとこのレベルの手織りの本が日本でも発売された・・・・と思いました。


手織りをやり方から勉強する本・・・ではなくて、こんな綺麗な布を織ってみたいと思う本。いつか手織りをしてみたいと思う本。


タータンチェックというと、有名デパートの包装紙、福岡出身の音楽グループや大勢の大勢の女子の歌グループの衣装の印象が強烈で、元気な若者を思い浮かべてしまうのですが、千鳥格子とガンクラブチェックに始まり、ゲレンチェック~タータンへと続くこの本は、そんなイメージを一掃してくれます。


まずは、巻頭に著者のことばがあるのがいい。対向のページに、著者をよく知るガーニー氏からのことばがあるのもいい。著者が今まで手織りとどのような時間を過ごし、この本を出版することで誰に何を伝えたいのかを感じ取れます。

スコットランドの風景、ヒツジ、ツイードやタータンを着た人々、布地の写真、歴史と文化の話。豊富な写真から、チェックやタータンにある本来の魅力と伝統がもたらす力強さを改めて感じます。

日本式のような海外風のような手織りの解説本が気になることがしばしばあるのですが、以前、参考にした英国の手織り作家の本と比較しても、この本がタータンとツイードについて基本に忠実な内容だと改めて思います。

『Tartan&Tweed 手織りのためのスコットランドチェック』 明石惠子著 2015.9 誠文堂新光社

さて、普通、格子や縞の柄をデザインするとき、何もない紙に向って描きはじめます。単純なデザインになりがちで、できあがった柄の良し悪しは「個人のセンス」や「個人の頑張りかた」のような話になりがちです。
どうしたら、あんなに規則的で複雑なチェックができるのだろう・・・・。

この本の興味深い点は、チェックを加える、組み合わせる。色を変える、加える。という柄をデザインするためのやりかたが豊富な写真と共にわかりやすく説明されていることです。
オリジナルな柄はもちろん、よく見かける柄をアレンジして、自分にあうようにすることも容易にできるようになれそうです。応用すれば、スコットランドチェック以外の縞や格子をデザインするときにも役に立つと思います。

手織りのノートの作り方や織りやすい本数、糸の太さとデザインの関係についても紹介されています。手織りをするための基本的な情報・・・・色の選び方、糸の密度、手織りの工程などは本の最後にまとめてあることも見やすく、使いやすいですね。

巻末の『織の工程』での経糸の巻き方は、アメリカなどでよく見かける「オーバーキャッスル」のやりかたです。あまり日本では紹介されていないようですので、ジャックルームなど背の低い織機を持っている人は是非参考に。

余談ですが、『知っておきたい手織りの基本と本書のルール(P.018)の織』のイラストでは、経糸が白、緯糸が黒になっています。スコットランドは、やっぱり「カウンターバランス(ろくろ・滑車)式の文化圏」だったに違いないと、大爆笑。ろくろ式なのに、経糸を黒と決めている日本のやり方には、やっぱり無理があるようです。

著者は、スコットランドで、つまり英語で手織りを学んだためか、「粗筬/粗筬(写真上)」を「仮筬」としています。人により学校によりさまざまなで、「ラドル」という人や表記もありますから、そのままRaddle=ラドルでよかったのでは・・・と思います。

著者のブログは、時々拝見しています。作品を真似されることに神経を使い、確か文章は読むのも書くのもお嫌いということだったと思いましたが、なぜ、突然、このように充実した内容の書籍を出版されたのか?今後の著者の活躍に注目です。

2015年8月16日日曜日

朱子織と数え方とか公約数とかむつかしい話

暑い夏にすっかりやられて秋までお休み宣言をしていたところに、3か月前に書いた「朱子織とSatin/サテン」にコメントをいただきました。

ブログに、「これがわからない」と書いたことに対する具体的な説明ではありませんでした。基礎的な説明なので、「わからない」とかいたことの答えは、これをヒントに自分でまた考えることになる・・・・。日本と欧米の手織での朱子/サテンの発想や作り方は違うという私の結論もどうやら見直しの必要があるということらしい。
休みだからと受け取ったままにしておいてもよいのですが、時間がたつと、もっと深い迷宮へと迷い込むことになりそうです。


日本では、5の2飛びたて飛びと5の2飛びよこ飛びのように両方で言います。
本がはしょった説明の場合たてだけが多いです。

基本的に、正則朱子は、公約数を持たないものになりますので、
8枚だと3飛びと5飛びになります。たてとびよことびで全部で4種
変則朱子場合は、組織が循環したときに滑らかに組織点が分散されるように
適当に組織点を移動させるので、綺麗に規則で片づけることができません。

(中略)
普通の正則の場合は、飛び数が一つの組織の中で1種類の飛び方になっていますが、
変則の場合は、2つ以上の飛び数を使います。

すべてをここでお話しすると、ながーーーーくなってしまいそうなので、
別の機会にお話ししますね。



この文面からすると

一つの朱子組織について、たてとよこの両方の飛び数をいうのが正式か? 
たての飛び数を言う場合と・よこのとび数を言う場合の2種類の言い方があるということか? 
それとも、たて飛びは表朱子で、よこ朱子(裏朱子)は、よこ飛びで書くということか?

『朱子組織は、裏面を書く』という日本独自の約束事もあるようで、まるで障害物競争を走り抜けているような気分。


⇒本を確認しました。(追記;2015/09/15)
『8枚』の説明はなく、「5枚朱子」でした。
説明と図から・・・・5枚朱子には、「3飛び」と「2飛び」の2種類の組織があり、それぞれ「たてとび」で呼ぶ場合と「よことび」呼ぶ場合の2つ呼び名(または、数え方)があるということになります。
同様に、このコメントの8枚(朱子)には、「3飛び」と「5飛び」の場合があるので、(組織は2種類。呼び名が、それぞれ2つずつあるので合計すると)『4種』あるということだと思います。


本ではしょるのは、よこ朱子は一般的でないためか、呼び名の部分だけなのか、説明自体なのか、よくわかりませんが、結局、「たて飛び」を使うのが主流という結論になるようです。朱子の組織はどちらの面を表として書くのかも諸説あるようですから、前提から整理すると、当然長い説明になりますね。


5月のブログ「朱子とSatin」で、わたしが疑問に思った「『右に3飛びで左に2飛び』と数える朱子組織は、『何の何飛びたて飛び』」になるのか?・・・・つまり、この左へ右へと飛び数をいう言い方は、一般的でない?ということのようです。 図を見ないと「たて飛び」の数え方に置き換えもできないということなのでしょうか?いろいろな呼び方があって、互換性がないとすれば扱いにくいですね。


さて、朱子織の基本説明のコメントをいただいて申し訳ないのですが、『飛び数』はしかたないとしても、『公約数』、『正則』『変則』『循環』『2つ以上』・・・・・普段はあまりつかわないし、昔風の聞き慣れないむつかしい言葉ばかり。同じような説明は他の本でも見かけますが、正直なところ、「はぁ、すごいですね。」と何もわからないのに感心したふりをして、後ずさりしたくなります。

『正則』は「基本となる、基本的な」。『変則』は、「変化した、変形した」。『循環』は、「レピート」。『2つ以上』は「いくつかの、1つとは限らない」と、アバウトな感じですがとりあえず言いかえるとしても、『公約数』は、確か中学校時代に学んだ「素数」とか「因数」とか?を覚えてないと理解したと言えそうにありません。

専門家が使うような聞き慣れない言葉やむつかしい言葉の多い説明には、「この程度の話や数学を理解できない人は、織物の組織を考える意匠師はやっていけないよ。」という欧米から導入された力織機をあやつった技術者の古き良き時代のメッセージがそのままに隠されているような気さえします。


日本の朱子組織を理解しようとすると前提や解釈はさまざまなようですから、何冊も本を購入したり、講習会に出たりと、時間とお金が必要で、あげく、日本のろくろ式織機では織れないとなると・・・・手織をしたいだけだったのに、なぜにこんなに努力をしなければならないのかと、織まで嫌いになりそうです。

多綜絖の海外の織機を使って朱子/サテンを織るなら、考え方も欧米の手織の説明にすると明快。組織図は、表だ裏だと迷うこともなく、たて飛びとよこ飛びの2つを学ぶ必要もありませんし、応用発展まで楽しめそうです。

秋までゆっくり休んで、ローズパスから再開して、そのうちじっくりと。

2015年7月31日金曜日

ふりかえればカウンターマーチのことばかり

アメリカを経て、やっとスウェーデンの本に到達して、これから本格的に織り始めようというのに、織機の前にすわる気がしない。夏バテか・・・?

英国のウールの織糸の購入量をケチってみたり、もらった糸や余り糸を組み合わせたりしていたら、どうも気持ちが 内向き になってしまったらしい。

打開策は、輸入の真っ白なリネン糸など購入して、1m余の幅のテーブルクロスかカーテンなど延々と織ること。いきなり生活が活気づいて、夕食の献立までが充実するのがわかっていても・・・先立つものがおぼつかない。余裕のない趣味ほど情けないものはない。

「多綜絖」とかいうものを本気で織ってみようかと、織機の部品を追加購入して織り始めて、気がついたら3年。
もしかすると、カウンターマーチ狂で、4枚綜絖だと気持ちがアップしないのかもしれない・・・・・。いや、やはり原因は この暑さ。 
で、3年間で、何がわかったか書きだしてみました。欧米の手織りをするなら、知識として、たぶん最低限必要なことばかり。日本語の適切な書籍が出版されていないとしても、天秤式(カウンターマーチ)織機は有名ですから、教えているお教室は、気づかないだけで、あちこちにあるのだろうと思います。

1.カウンターマーチ式の常識的な経糸の掛け方とタイアップをそのままで経糸をかける方法など基本的な織機の使いかたと準備のしかた。

2.多綜絖の場合の踏み木の調整法。

3.カウンターマーチの意味と天秤式の呼び方、西欧と東洋の概念の違い。

4.現代の手織で使われている3機種。カウンターマーチ式とジャックルームとろくろ式の関連性と共通点と違う点。

5.日本で洋織機を使用してよく勉強した人ほど、カウンターマーチとは、唯一の中口開口で、ろくろ式は下口開口と間違った知識を持っている場合があるということ。

6.国によりメインの織機は違い、それぞれに対応して組織図が変化、発展しているということ。

7.カウンターマーチ式の特性とこの織機でしか織れない組織があるということ。

8.カウンターマーチ式で織る多綜絖は、単に綾織などで綜絖枚数を増やした・・とかではなく、ブロック柄のセオリーで、地綜絖と柄綜絖を使ってデザインできるということ。

9.織はその土地土地でとれる植物や動物の繊維を糸にして織る・・・・そして、織機もその繊維が織りやすいように変化してきたということ。

10.カウンターマーチ式とろくろ式は、織機の構造の違いというよりも明らかに文化が違うということ。世界地図に時間軸、つまり歴史を重ねないと、織機も織物も理解しにくい。ここでも織は、三次元の世界。


織と織機は、どうも料理に似ているような気がしてなりません。どちらもその土地の畜農産物を加工する行為で、その土地の生活に密接にかかわっています。そして、どちらも人が人となる前から人と共にあった・・・という先生もいらっしゃるようです。

料理の基本は、世界中同じ・・・焼く、煮る、炒める、蒸す、揚げる・・・とか聞いたことがあります。基本は同じだからといっても、和食の先生にフランス料理を教えていただくと、それなり。ろくろ式の織を得意とする先生に・・・・・教えを乞うていませんか?


※文中誤解や間違いでお気づきの箇所があり、ご指摘やご教授等をくださる場合には、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールをお書き添えください。掲載文への訂正、添削はご遠慮ください。投稿は簡潔にお願いいたします。

2015年7月28日火曜日

ジャカードは手織り機ではないはず

実際の工場で、生地を生産している「ジャカード機」を見たことがあります。900口、1800口、二連、紋紙、ハツリ・・・・普通の二階家屋の屋根裏まで届きそうな機械の大きさはさておくとしても、紋紙を作らなければならないし、織機に紋紙を乗せるのも一仕事。あげく、紋紙を作る機械も必要。個人用に数m織るくらいでは、あきらかに、織るまでの手間や費用がかかりすぎ。今は、コンピューター化されたといっても、個人の趣味で購入して楽しむような価格とは思えず・・・。

手織教室のツアーとか、インテリアコーディネーターの講習会とかの工場見学会・・・・以前は、あったようですが、今も続いているのかはわかりません。どのような商品を、どのような状態で織っているかは、確かに、企業秘密。繊維産業の環境も変化して、秘密度は一段とアップしているように思えます。

個人相手の手織り教室でも、入会したいと見学を希望したら断られたこともあります。新しい織機の実物を見たいと希望したら、無料では対応できないと金額を提示されたこともあります。お行儀の悪い「ひやかし客」が多いから?氏素性のわからない人には代価の支払いを求めるのが、手織りの世界の常識?それとも、企業秘密?


さて、学校では、手織を専攻しスウェーデン製のカウンターマーチを持っているという方に、この2枚の写真をお見せしたとき、

「大きなパターンの柄は、ジャカードの織機でしか織れないと思っていた。」

確かに、国内で織りの組織の専門家といえば、ジャカードの工場で、意匠とか開発を担当している方になるのでしょう。たぶん、この写真や海外の手織りの本にある同じような作品の写真を見せれば、「ジャカードで織れるよ。」と返事が返ってくると思います。


ジャカード機でも織れるだろうし、手織り機のカウンターマーチ式ならば織れる。


1970代には国内でも参考書籍として読まれていたらしい英訳本『Manual of Swedsh Handweaving』。最後の「織と織の道具」の章にジャカード機の写真が載っていますから、手織機だと思いたくもなります。でも、日本で手織り機といえば、普通は、家庭でも使える織機のはず。

国内の手織りの本の「織機の分類」に ジャカード機 が入ってしまったのは、少なくともこの二つの偶然とHand Weavingの解釈の違いのように思えます。
それとも、本当に、個人の家で普通に使えるようなジャカード機があるのでしょうか?

たぶん、スウェーデンの織物学校では、組織を手織りで一から学んで、工場で生産をするような布地関係のスペシャリストになる方もいるので、最後にジャカード機の説明があるように思えます。もう一度、じっくり読んでみますが。

機械化、コンピューター化されたといっても、組織や地厚感、しなやかさなどがイメージできなければ、仕上がりの布のイメージもできないはずですが、日本は考え方が違うのかな?

さて、アメリカの本では、手織りとは・・・という定義について書いてあったりします。個人用の多綜絖の電動の織機(これは機械の特性からするとドビー機の一種?)もありますから、手動/電動では、区分できないようです。シャトルを手で投げれば手織りという考えもあるようですが、では、フライシャトル/バッタンを使った場合は、機械織りになるとかならないとか。結論はともかくとして、いろいろ考えていることに驚くことばかり。

国内で手織をする人は、文章を読むのも書くのも嫌いという方が多いのだそうです。集まって手織りをしながら、日々の暮らしの話をする・・・・織るものや場所は変わっても、昔ながらの日常の風景が手織り機と共に残っているようです。


※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。自分の知識や考えと違うからと直接に掲載文の訂正や書き直しをすると、違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィールを書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年7月21日火曜日

書籍;マリン セランデルのスウェーデン織

豪華本だと思います。Malin Selander/マリン セランデルとその作品に出会うきっかけになったと思うにはあまりに贅沢な本です。彼女の本は、他にも何冊か日本で出版されているようで、スウェーデンの手織りをするほとんどの方が、「色彩の魔術師」とよばれるこの手織り作家をご存知のようです。

作品の作者である著者は、「織物のデザインをすることは、製法と材料と色との三つ巴の葛藤をともなって意図した目的にかなった布に調和させる仕事」と書いています。タペストリーやアート作品ではなく、日常生活に使える「織り布」にこだわり、伝統的な技法をふまえて生まれた魅力的な布ばかりです。

この本は、たぶん英語版の「SWEDISH SWATCH」のYELLOW、BLUE、RED、GREENの4冊で発表された本と掲載されている作品は同じだと思うのですが、読み比べていないので詳しいことはわかりません。
最初のイエローシリーズを1962年に発表し、最後のグリーンシリーズは、1978年。この仕事に20年ちかくを費やしたと書いています。

日本向けに、特別に編集して発売された本で、書籍「スウェーデン織 技法と作品」の著者が監修と翻訳をしています。

「マリン・セランデルのスウェーデン織」 マリン セランデル著、山梨幹子;監修・翻訳 婦人画報社 昭和55年11月;発行

マリン・セランデルは、巻頭で、ほんの気まぐれからスワッチ(織見本)の付けることを思いついたと書いています。印刷されたページに布を貼り付けたら、ニュアンスが伝わる・・・・。

掲載されている写真は、原寸より大きくしたとありますが、実際の布地が貼られているような印象さえあります。また、色は大切な要素という考えから、シリーズは色相別に4つにわけられ、それぞれ19~21点程。合計81点。ほとんどが4枚綜絖以内の作品で、6枚綜絖以上は、ダブル織やドレルなどの技法を用いた20点ほどです。この日本語版には、各カラーのグループから2点づつ選んだ実際の布地が合計8枚ついています。

このほか、原書では、作者が伏せていた作品の題名が記されている・・・・花、鳥、女性の名前、音楽とスウェーデンの自然や空気感などが感じられるような配慮がされています。各作品には、用途、織法、材料、おさ目、打ち込み、綜絖通しと踏み木順と簡単な説明がついています。訳者によるMEMOもあり、作品の理解や使い方などの発想の手助けとなります。織機の使い方や経糸の掛け方などの初歩的、基本的な説明はありません。

スウェーデンで手織の勉強をし、生活や文化などへの理解もある優れた監修者であり訳者の存在があって、日本でスウェーデン織と、作家マリン セランデルの多くのファンが生まれたと感じる1冊です。

2015年7月14日火曜日

書籍;スウェーデン織 技法と作品

1970年の半ば過ぎ、六本木の交差点から麻布十番へ通じる坂を下った右手にスウェーデン・センターがありました。この中にあったショップで『へムスロイド』ということばを初めて知りました。

この本によると、『へムスロイド』とは、「家庭の手工芸、すなわち、ホーム・ハンディクラフトを意味するスウェーデン語」と説明されています。

日本では、女が家で家族の着物を織った時代はとっくにおわり、手織りは職人かタペストリーやオブジェを創作する芸術家のものになっていて、普通の生活とはかけ離れた行為のような印象さえ生まれ始めていたように思います。

スウェーデンで織物を学んだ著者は、スウェーデンの手織の技法や色彩の美しさだけでなく、手織した布を家庭で使うということの大切さを熟知していたようです。作家というよりも、伝統を受け継いできたスウェーデンの家庭での手工芸の紹介者としての魅力を感じます。
活動は、日本におけるスウェーデン織の基楚となったように思えます。

この本では、床置きの大型の手織り機を使用た作品が主ですが、著者にとっては、大型機をよる織もフレミッシュ織や紐織も・・・・・・織というよりも、『ヘムスロイド』、つまり、家庭の手工芸のひとつにすぎないようです。

スウェーデン織 技法と作品 昭和54年5月初版
著;山梨幹子 発行;婦人画報社

まず、スウェーデンに伝わる基本織法から代表的な28種を選び、「ローゼンゴン」「ハーフドレル」「ムンテカルベ」など聞いたことのある組織の由来や特徴が写真とともに説明されています。

次の作品・パターン集では、パーテーションやカーテン、クッション、テーブルクロス、服地など107点。作品の写真と作り方や使用糸、組織図などがあります。

手織の計画とプロセスも紹介されています。使われている道具や織機は、もちろんすべて北欧のものです。使われている織機は、カウンターバランスで、ニッケピン(ホース/天秤)を吊り下げるスタイル。4枚綜絖の織機ですから、極端に複雑な組織はありません。素材の良さを感じ、色彩の美しさを楽しめる作品ばかりです。

初版から約45年が過ぎていますので、たった4点ほどの洋服となった作品見て、古くさいと感じる方もいるようですが、伝統に根ざした技法と手織地としての魅力は色あせることはないように思われます。

技法と作品の写真にばかり目を奪われてしまいますが、スウェーデンの暮らしと織物についても3パージほどの紹介文があります。前書きには、「スウェーデンの織物は、人々の生活の中に生き、歴史の中に、風土の中に生きてきたものです。(中略)わたしたちがスウェーデンの織物から学び得る究極のものは、そのパターンや技法だけにとどまらず、実生活の中に生き、豊かにする織物は何かということです。」とあります。

家族や家庭が問い直される今・・・・へムスロイドに何かを見つけられるような気がします。

2015年7月7日火曜日

ローズパス織り?ローズパス通し?

経糸と緯糸でダイヤ柄を織り出したマフラーの技法名に「ローズパス」と書いてあると、ローズパスは、織り方だと思いたくなります。模紗織り、風通織り、オーバーショット織り、サマー&ウインター織り・・・・そして、ローズパス織り?

先日の多色を使ったマットもローズパス。でも、ダイヤ柄のマフラーとは違う緯糸の柄。スウェーデン織りでよく見かける「人形を織り出した小さなタペストリー」もローズパスの一種で、バウンド・ローズパス/ブンデン・ローゼンコンと書いてあることもあります。

織りの組織を経糸緯糸の交差の仕方から分類したり、方眼紙を白黒で塗りわけた組織図からの綜絖通しと踏み木順を書き出したり・・・・『織あがった布を基本に考える』いわゆる日本式では、どうしてこんなに違う3種類の織物に共通してローズパスという名前がついているのか?不可解です。ローゼンゴン地方に伝わる織り物?なんて、思ったりして・・・・。この話の先は、スウェーデン語を学ばないとわかりませんね。
綜絖の通し方で分類される海外の本などでは、ローズパスは、綾織の綜絖通しのしかたの一種。
これなら、3種類のそれぞれ違うように見える織物にローズパスという名前がつく理由が説明できます。日本でも、順通し、山道通し、破れ通しなどの通し方と名前がありますが、通しやすいとか、通しにくいとか、作業性の話が主。でも、ここにローズパスを綜絖の通し方として追加しておけば良さそうです。

さて、山道通し/ポイントツイル の「5ポイントツイル」と何が違う?
4枚綜絖で5ポイントツイルがよく見かけるローズパス。でも、本には6枚、7枚・・・・ローズパスは4枚綜絖と決まっていないようです。考えられる唯一の違いは、上のポイントと下のポイントが同じ綜絖にあること。たったこれだけのことで、ポイントツイルでは思いもよらない変化のある織物が生まれるなんて・・・・。先人の知恵に感心するばかり。

綜絖通しの書き方は、ポイントが重なるシャフト/綜絖を内側に置く場合と、手前か奥に置く場合の2種類があります。綜絖のバランスを重視するか、通しやすさを優先するかで、織機や使う人により好みがある訳です。
同じ綜絖通し順なのに、国内では、異なる通し順とする場合があるようです。レピートの基礎を理解していれば気づいているはずです。が、作業のやりかたを教える/習うことが大切だからでしょうか?古いコレクションを集めたパターン集からほぼそのまま写したからでしょうか?

バウンド・ローズパス/ブンデン・ローゼンコンは、「基礎技術から応用まで 手織り」土肥悦子著 昭和51年初版 に、「細かい連続模様」という題で紹介されています。ローズパス通しだけではなく、山道通しを使った織り柄も紹介されています。お人形や動物をヨコに並べていく愛らしい図案なら、山道通しのほうが適しているかもしれません。技法名をつけるなら、「バウンド・ポイントツイル」??

いままで、ローズパスのパス/ pass は「小道」と思っていましたが、「通過する。通す。」つまり、綜絖を通すという意味も含まれているのかもしれません。古くから伝わる名前の意味や由縁は、一つとは限りませんから。
それに、この上下のポイントのあるシャフトを内側に入れた通し図、最近はあまり使わないようですが・・・・バラの花が連なるパターンのようにも見えませんか?


※意見のある方は、自分の考えとその理由を必ず書いてください。掲載文が間違いだとして一方的な書き直しや書き足しをされると本来の主旨と異なってしまう場合がありますのでご遠慮ください。手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれなのかと経歴などのプロフィールを書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年7月3日金曜日

ローズパスのサンプル織のランナー

ローズパス/rosepath、スウェーデン語で、ローゼンゴン/rosengang(aの上に○○がつく)

このスウェーデン織の本によると、ローズパスには2種類あり、普通(?)のローズパスは、スウェーデンでは、最もよく知られている「art weaves/芸術的な織り方」だと書いてあります。

ローズパスは、バーズアイ/bird's eyeやグースアイ/ goose eyeとは、大きさが違うダイア(ひし形)の柄・・・と思っていたのは、アメリカの本の影響のようです。「組織織りの本」とか「古くからある英語の組織の本」とか呼ばれているあの本。

綜絖通しの本数の違いだけではないらしいと、イラストと組織図を参考に、まずは、サンプル織をすることにしました。

経糸は、漁網糸。若い頃に、マットの経糸に使った残り糸。綿や麻の経糸に慣れてしまったためか、よく伸びるので、織初めの経糸のテンションを調整するのも、結ぶのも、一苦労。

経糸の密度と緯糸のバランスもわからないまま、残り糸の綿糸を適当に引き揃えて織り始めました。

踏み木の組合せは、あっているはず。裂き織のマットを織ると楽しそうな組織。

色は同系色。キカシはホワイトとイエローで、それなりにバランスよく配色したつもりなのですが・・・・・変形してもわかるはずのダイヤ柄の見わけがつきません。基本的な柄組織の構成を理解せずに、色の濃淡を決めたのが原因のようです。

「新しくて、モダン」という評価もできるのかもしれません。が、ローズパスの特徴がほとんどありませんから、ローズパスの組織を使う必然性はあまり感じられず・・・・なんだか、無駄使いした気分。
 参考書籍;Manual of Swedish Handweaving
4枚綜絖 6本踏み木  筬 30本/10cm
経糸;漁網糸 6号 緯糸;綿 20/2、16/2など 
サイズ;75×18cm

2015年6月26日金曜日

番手、Count、毛番手、メートル番手

誰と手織の話をするでもなく、実に個人的なブログを書いているだけなので、ああ、そう呼ぶ人もいるのかと・・・頭の中に加えておけばいい事なのですが、いつものように記しておきます。

先日、「番手は糸の太さを表す。」と書いたら、

「番手自体は長さと重さの割合を表す数字。番手が具体的に意味を成すのは、糸の使用量を計算する時。何本よりかというぐらいは分かるけれど、それ以外の糸の特徴を特に表してくれるわけではないので、最終的には糸自体を見ないと、経糸の密度も決められない気がする。」というご意見がありました。

では、番手を使えば、ある程度の精度で糸量の計算ができるのかといえば・・・・実際も、撚り回数や本数などを考えてみても、誤差があります。程度問題なのかもしれませんが。
しかし、糸メーカーや問屋が計測して、手織糸に「100gあたりのおよそのm」を記載すれば、番手から計算するよりも少ない誤差で使用する糸を準備することができるはずです。

すると、「番手」の「糸の使用量を計算のための数字」としての役目はさほど重要ではないような気がします。もし、使用量の計算のためなら、手織りの場合は、さまざまな素材を使うので、全ての素材に共通して使える「テック番手」が便利ということになると思います。

結論は、経験や発想から考えるよりも、番手が必要となった 『一番目の理由は何?』なのだろうと思います。そして、なぜ素材別?
状況や理屈があっているからと、本来の解釈を変更や応用して使うよりも目的にあうように新しく作り直したほうが、たとえ時間がかかっても、誰にでもわかりやすい。利便性からも、この件の答えは、「テックス番手を使う」ということになりますね。

私の頭の中には、番手は天然素材別の糸の太さとして記憶されています。「綿は綿番手/メンバンテ、麻は麻番手/アサバンテ、毛は毛番手/ケバンテ。天然繊維の中で、絹だけは長繊維なのでデニール。」

先日の書籍 『ホームスパンテクニック』 では、「繊維の太さの表示には’S/カウンツ という繊度をあわわす表示が使われ、’Sは毛番手(Count、または、Finess,または、Quality)という。」という説明があります。

辞書を引くと、Count は、「番手。繊維の太さや糸の太さ」。確かにヒツジの毛は「繊維」ですから、Countを「番手」と 訳す/言う のは、間違いではありません。

でも、「織る」が基本の立ち位置になっている場合には・・・・多分ちょっと聞き慣れない表現。
毛番手からイメージするのは、紡績した毛の糸の太さと撚り本数のこと。身勝手かもしれませんが、ヒツジの毛の1本1本の太さは、「毛番手」という言葉ではなく「カウンツ」を使うようにお願いしたくなります。(最近は直径ミクロンで表示するように変わってきているようです。) 

では、この場合、紡いだ毛の糸の太さも毛番手? この本では、「毛番手」ではなく、「メートル番手」とあります。
さまざまな会社や協会などの換算表などには、毛番手のあとに(メートル番手)とある書かれていることがあります。綿や麻は、「ヤード番手」と呼ばないのに、「何故、毛番手だけ?」と疑問に思っていた答えのようです。

『図解 染織技術事典』柚木沙弥郎 監修 では、「毛番手」という言葉はなく、「ウール番手。もしくはメートル番手」とあります。「ウール番手」あまり聞きませんが、特定の産地でのみ使われているのでしょうか?手織りだけに使われる用語でしょうか?


内外のいろいろな書籍や文献を読み比べると、日本のろくろ式の手織りとなじまないように感じる「組織図」と「番手」。どちらも、動力機をつかって布を工場生産する時のノウハウとして、近代になり、西欧から入って来たのではないかと思います。そして、手織が着尺から洋風へと変容し始めた時に、生産現場の基本を忠実に取り入れた・・・・・?原因は、翻訳の適/不適だけではないようです。

※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。掲載文の訂正は私の主旨と違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。
また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィール、を書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。

2015年6月23日火曜日

書籍;ホームスパンテクニック

「手織をしています。」「糸もつむいでいます。」と一言くわえると、本格的に手織をしているという評価になるようです。

これは、伝統的な「紬ぎ」のイメージと「ホームスパン」がよく知られているからでしょうか?「いつかは、本格的に糸つむぎから・・・」と、思っていた時期もありました。

2-3冊購入した海外の「Spining/紡ぎ」の本では、「紡いで→編む」。なるほど、「紡いだ糸は、織る」というのは、思い込みだったようで、本格的な手織りをめざすなら「紡ぎから・・」と決めつけることもなさそうと思い直し、手織に勤しむことにしました。

ですから、復刻版が昨年(2014年7月)販売されなければ、この本を手に取ることも、開くことも、なかっただろうと思います。

「ホームスパンテクニック」 森 由美子著 2002年初版 発行;染織と生活者
復刻版 発行;株式会社復刻ドットコム 一部改定


著者は、学生時代を過ごした京都で織物に興味をもち、その土地に根ざした織物をと思っていたところに、生まれ育った岩手のホームスパンと出会ったのが学び始めたきっかけだと書いています。

総153ページで、手に取ると少し分厚く、盛りだくさんの印象がありますが、この本には、手織の本にありがちな・・・今昔の知識を書き連ねたり、工芸作家にありがちな自分の作品や制作過程へのこだわりの文章のようなものはありません。

紡ぎと手織りをするために、学び、自分の目と手で確かめ納得したこと。そして、必要なリストと資料です。
「酸性媒染染料(クロム)染料については削除する。」手織りに使う「基本的な組織は本に紹介されていているので、読み取れれば良い。」などからも、著者自身が慎重に吟味し、現在の時に即した内容に絞り込まれていることが感じられます。

「ホームスパンテクニック」という題名から、羊毛と糸紡ぎに重点がおかれている本という印象を持ちましたが、「材料となる羊毛と染」、「紡ぎ」と「織り」は、ほぼ1/3づつ同量。どれもないがしろにできないという著者からメッセージが込められているようにも感じられます。

毛織は、滑車式やろくろ式織機で織るのが適していると思っていましたが、やはり、著者はろくろ式の和機を主に使用しているようで、この織機での経糸の準備の仕方や使い方、組織図が説明されています。床上での縦巻きや織り初めにススキの軸をいれるなど、海外からもたらされたホームスパンが日本の手織の技法と融和した様子がうかがえます。

ホームスパンはベーシックな組織使いが多いためか、組織図の踏み木順の読み方などは若干疑問な点もありますが、一般的に使われている織機の種類と特色の説明もあり、手織りをするのに、必要な基本的な説明も揃っています。

「基本知識」と「経験から得た安定感のある技法」がバランスよく丁寧に説明されていることが、わかりやすく、頼れる本として、評価されているのだろうと思います。復刻が歓迎されているのは、間違いなさそうです。

2015年6月19日金曜日

バックの持ち手とマチを手織りで

「裂き織に」と、頂いたはぎれ布のなかに「印花布」らしき布を見つけました。

半端な糸があったので、持ち手とマチを織ってみることに。
経糸は、マットにしか使えそうもないと思っていたジュートのような麻糸。緯糸は、藍染風?の綿糸。これも残り糸。

単純なウネ織のつもりだったので、経糸も大ざっぱに、4本揃えたり、6本にしたり・・・。織キズも味わいと、気楽に。


それでも、もう少し変化が欲しくなり、ヨコ浮きを入れました。

組織は、4枚綜絖3本踏み木の最も単純な「緯糸が浮くハック織」になりました。
裏面のほうが凹凸の変化がはっきりして魅力的。

織幅120cmの織機で、6cmのテープを織るのは、おかしな風情のような気もするのですが、こんなに硬い麻の経糸をしっかり織れるのは、やはり織機の実力なのでしょうか?

同じく、長い付き合いの 力自慢のミシンで縫製して、できあがり。

悪くはないと思うのですが、手織をしているのに、いわゆる「民芸調」は、苦手なようで・・・・持って出歩く自信なし。
どなたかにさし上げることになるのでしょう。残りのテープは、本体を白の帆布にして、持ち手としてつけてみる・・・・?














4枚綜絖3本踏み木
筬;50本/10cm 丸羽 
経糸;麻生成 番手不明 綜絖に4~6本入れ
緯糸;綿 10/2 2本引き揃え
織幅;6cm
バック参考書籍;ハンドメイドバック 下田直子のNEEDLWORK TIME


2015年6月12日金曜日

紐を織る綜絖

どこかにあったはず・・・と探したら、ありました。3枚も。

スウェーデンの織物道具。これで平織の紐を織るのだそうです。

やっと購入した『図解 染織技術事典』の「1章 手織」の竪機の説明P.4-2では、「日本の むしろ機 も筬綜絖の竪機の原理で制作される。」という説明と写真があり、むしろ織の写真の隣に、この道具と杼の写真が載っています。(私の手元の本は、1995年発行の第4版ですから、改訂されているかもしれません。)

竪機に使われる筬綜絖の紹介として載せたと思うのですが、卓上のリジット機がよく知られるようになった今では、この 筬綜絖というもの がむしろ機など竪機にだけ使われる部品だと思う人はいないでしょう。

本の写真と同じこのものは、この一枚で、れっきとした「紐を織る道具」。大きさは、ハガキより少々小さめ。穴は、裁縫に使う「針の糸通し」を使わないと通らない程、小さい。タペストリーの経糸に使う太い麻糸や漁網糸は この筬綜絖 には通りません。

経糸を柱などに結び、織前は、腰にまわした紐などに結び付けて織っていくので、あえて分類すれば、この1枚だけで、「腰機」。せっかくですから、残り糸で少し織ってみました。


本文に「古代スウェーデンで、錘をつけた経糸を横木から吊り下げ・・・・」ともあるので、ためしに、竪機風に、吊り下げてもみました。開口や打込みの時の経糸の引き加減の調整は、うまくできません。

卓上のリジットルームが開発されて一般的になり、織幅を保ち打ち込みをする筬 と 経糸を上下する綜絖 の両方の役目を、一枚でするのが「筬綜絖」で、英語名は「リジットへドル/Rigid heddle」だと思い込んでいたのですが・・・。

「リジット/Rigid」・・・・「硬くて曲がらない。剛体の。」という意味。
なるほど、このところ大流行の卓上の「リジットへドル・ルーム」は「硬くて曲がらない頑丈な綜絖がある織機」という訳になり、納得です。

「筬綜絖」は、まずは、「筬のように硬い綜絖」と思ったほうがよさそうです。で、筬として使えることもある。

竪機や紐を織るのに使うのは、見た目は同じでも、筬としての役目はしませんから、「板綜絖」とか「穴あき板綜絖」と呼ぶとわかりやすいように思えてきます。

糸綜絖、金綜絖・・・・筬綜絖?板綜絖?いろいろある綜絖の1種と考えたいですね。まぎらわしいことに、金綜絖には metal/金属の細い板状 もあるのですが・・・・。

同じ形だとか、使い方がちがうとか・・・・言葉や理屈、呼び名などにこだわったりするのは、取るに足らぬことのようですが、初心者にはわかりにくいことばかり。専門用語だからといわれても意味もわからず覚えるのは、やっぱり苦手。

「作品制作も道具の使い方も、アイディアややってみることが大切。理屈は後。」と若い頃に諭された記憶は残ってはいるのですが。

※意見のある方は、自分の考えとその理由を書いてください。
掲載分の訂正は私の主旨と違う内容になってしまう場合がありますのでご遠慮ください。
また、手織りを学んだのは、米国式、北欧式、日本式のいづれかと参考としている書籍、経歴などのプロフィール、を書き添えてください。投稿は簡潔にお願いします。



2015年6月9日火曜日

ツイル;ボーダー柄でProgressing twill

リネンの経糸がもう少しあります。スカーフにするには、足りなさそう。

でも、最初のサンプル織のイメージが気に入ったので、同じ組織でボーダーにしてみました。織っているときの透け感は、悪くありません。



8枚綜絖のツイルの部分はシルクリネンの白の緯糸。平織の部分は経糸と同じリネンの生成です。






今年は、ボーダー柄が流行っているのですが、光に透かすと・・・・・やはりカーテンのほうが似合いそう。ランナーとしても涼しげで、悪くはありません。


リネンでスカーフを織る場合、密度は・・・、糸は・・・、表情はすこし・・・・と、コツがつかめてきたような気もするのですが、イメージする糸を探したり、サンプル織りを始めたりしたらキリがなさそうなので、先へ進みます。



参考書籍;Manual of Swedish Handweaving
8+2枚綜絖 10本踏み木
筬;35/10cm 4本入れ
経糸;リネン生成 60/2
緯糸;シルクリネン  リネン生成60/2
サイズ;125×25cm

2015年6月6日土曜日

ツイル;レース織のような Progressing twill

以前にアメリカの手織をした時にも織ってみたかった「プログレスイング・ツイル/Progressing Twill」。綜絖通しは、オーバーショットに似ています。きっと関係があるように思えます。

レース織として扱われる場合もあると書いてあったので、リネンの糸で織ってみることにしました。

組織図を描きおこしてみると、左右対称ではありません。確か同じパターンが、『ウィーヴィング・ノート』著;岸田幸吉 にもあったとはずと見たら、やはり左右非対称でした。

アメリカの本によると、古い組織図ではときどき非対称があるので、さほど問題ではないのですが、書き直したほうが良いとあるで、直しました。




使用したリネン糸は「織り試しに」と一綛買っただけなので、幅も長さもちいさめ。

緯糸は、柄がわかりやすいように白のシルクリネンなど試したのですが、経糸と同じにしました。柄がよく見えず・・・少々織りにくい。

できればスカーフにと、ゆるく、几帳面すぎないように心がけたのですが、仕上がりは、レースのカーテン風。結局、大きめのサンプル織?



原因は、組織か?素材か?・・・それとも、織手の性か?















参考書籍;Manual of Swedish Hand weaving
8+2枚綜絖 10本踏み木
筬 35本/10cm 4本入れ
経糸;リネン生成 60/2 2本
緯糸;リネン生成 60/2 
サイズ;140×26cm

2015年5月29日金曜日

ツイル;Rose Garland モール糸使い 10枚綜絖

経糸も4本で引き、緯糸もモール糸で太くなったら・・・いかにも大味な仕上がり。

オーバーショットのタビ―を織りこむ技法を応用して、当初の光沢のイメージを追加することにしました。あの絹糸を使うので、材料は同じ。

タビ―を織り入れるといっても綜絖の通し順も経糸と太さも違いますから、正しくは「〆に平織を入れる」です。

さて、柄8本の踏み木は中央に吊りましたので、左右にタビ―の踏み木を追加して織ってみたのが、前回の写真右端の布。

経糸の残りは、1m余。タビ―の踏み木は、いつも左に2本揃えているので、織りにくい。10枚綜絖10本踏み木ですから100本のうち90本のタイアップを直す?

「めんどくさい」と思うのですが、「そもそも今の時代に手織りをすること自体がめんどくさい」こと。思えば、整経も、仮筬も、綜絖通しも、筬通しも、本数の計算も・・・自宅で使う程度の2~5m織るだけなら「手間」がかかりすぎ。

いまさら、何を迷う?

組織、糸使い、色、納得のいく布を織るのが、楽しいのでは?


でも、マフラーには、しっかりしすぎ。椅子張地か、クッションカバーに良さそうですが、たりません。ポーチなら作れる大きさかも。

本や説明書にあるとおりに織るのも楽しいけれど、あれこれと試行錯誤してイメージとおりに仕上がるのは 最高。

私にとって、「試行錯誤」は、苦労ではなく、楽しみ。 気になるのは、本人以外には価値がない「サンプル織の処分のしかた」だけ。
参考書籍;Manual of Swedish Hand weaving P.27
経糸;梳毛らしきウール単糸 4本引き込み 
緯糸;綿モール糸 番手不明、絹 番手不明
サイズ;70×26cm

2015年5月26日火曜日

ツイル;Rose Garland 8枚綜絖の試織

また、ツイルから始めることになりました。

選んだ糸は3種類。「もう手織りはしないから」といただいた糸の組み合わせ。これが延々と一か月以上続いた 難行の元(?)だったのかもしれません。

経糸は、ウール。まとまった分量はなく、かなり細いので、似た色を引き揃えました。
緯糸は、正絹。既に2本取りに巻いてありましたが、着尺の残糸のようです。

組織は、Rose Garland/バラの栄冠 。8枚綜絖8本踏み木。

柔らかで、軽いストールにしたいと思ったのですが、細い経糸は撚りがあまく、シャトルがひっかかると、すぐに切れてしまします。

自分で手作りした糸綜絖は、高さがきちんと揃っていないので、無理があるようで・・・・。

風合いも表情も問題ないのですが、あえて言えば、正絹よりも紬糸がイメージには近いようです。すっきりしないので、30cmほど織って断念。

さて、経糸を4本にして綜絖も筬も通し直し、緯糸は綿のモールに変更。滑らずに、柔らかで、ボリュームも適度のようにみえたのですが・・・・・。
機からおろすと、多綜絖のポイントツイルの弱点が出ました。凝った組織に、凝った素材は、「がんばりすぎ」でした。糸色の美しさも消えてしまったのは不思議です。 さて、打開策は? 右下の?

参考書籍;Manual of Swedish Hand weaving P.27
経糸;梳毛らしきウール単糸 番手不明 
緯糸;綿モール糸 番手不明、絹 番手不明

2015年5月22日金曜日

裂き布を織りこんだバック

掃除と片づけには、最適の季節。布や糸を片づけていたら、10年ほど前に織った裂織のバックがでてきました。

バックですから、軽い布で、硬くなり過ぎないようにと、「残り布」ど「残り糸」を組み合わせました。ですから、「裂き布を織りこんだ」です。

海外のプリントの残り布の色があまりにもきれいだったので、生成の綿糸とガラ紡と彩りにコットリンの残り糸を織りこみました。

持ち手のベルトも綿麻糸を使って織りました。肩にもかけられる長さにしたので重宝しました。


















このブルー系は、何度も洗濯をしたインド更紗のツーピースから。
クタクタになった布地は、織りこみやすく経糸によくなじみました。

普通のプリント生地は、裏面が白ですが、更紗地は裏側にも染料が浸透しているので、裂き糸としては申し分ありません。
生成の綿糸と段染めした絣糸の残りを織り入れました。














残りモノでも、魅力的な布や糸は、姿が変わっても・・・やっぱり魅力的なのです。